ソニー・コンピュータエンタテインメントジャパンアジアは、バーチャルリアリティシステム「Project Morpheus(プロジェクト モーフィアス)」のユーザー体験会を11月29日と30日の二日間にわたり開催。今回はその第1回目となる初日の模様をレポートしたいと思う。
このProject Morpheusは、PS4用の周辺機器として開発が進められているバーチャルリアリティシステムだ。バイザースタイルのMorpheusヘッドマウントユニットを頭部に装着することで、目の前に広大な3D空間が拡がって見えるといった仕組みになっている。
今回開催されたユーザー体験会では、「SCEJA Press Conference 2014」で話題となったバンダイナムコゲームスの「サマーレッスン」をはじめ、様々なデモコンテンツを実際に体験できるようになっていた。
ユーザー体験会初日は、朝からあいにくの曇り模様。それにもかかわらず、多数のユーザーが誰よりも早く体験したいという思いからか、開場の瞬間を待っていた。
女の子の部屋に入り込んだかのような錯覚を感じる「サマーレッスン」
今回の体験会の目玉は、なんといっても原田勝弘氏率いるバンダイナムコゲームスの鉄拳チームが開発している「サマーレッスン」だ。当初9月に行われた東京ゲームショウに出展される予定だったが、急遽中止になっている。
これは同社にとっては嬉しい誤算だったそうだが、想定していたキャパ以上にユーザーから体験してみたいという反応があったため、後日に改めることになったそうだ。それが実現したのが今回の体験会で、ユーザー向けとしては初お披露目となる。
ちなみに会場内は、複数のブースに分かれて様々なデモコンテンツが体験できるようになっていた。この「サマーレッスン」はその中でも別格扱いで、12ものブースで同時にユーザーが体験できるという万全の体制で行われていた。
バンダイナムコゲームスの社内で開発していたときも含めて、最初にこの「サマーレッスン」を体験した人は大きく分けてふたつのパターンに反応がわかれるという。
ひとつは、単純にびっくりしてしまうタイプのユーザーだ。ゲーム内で話しかけられると、緊張して思わず声を出してしまうのだそうだ。もうひとつは黙り込んでしまうタイプの人だという。これらはまさに、その世界に入り込んでしまうからこそのユーザーの反応といえるだろう。
Morpheusヘッドマウントユニットを付けた瞬間、どこでも見渡せることができ、部屋にいるという感覚になる。リアルさをVRでやるとこういう臨場感を出せるんだという技術デモとして、この「サマーレッスン」は開発されているのだ。
キャラクターは、スカーフだったり髪の毛だったりと揺れものが多い。それぞれが物理演算されており、リアリティ感があるのだ。そのため、脳が本当にそこに存在していると錯覚してしまい、違和感を感じないのだそうだ。
体験者による開発陣への即席質疑応答も実施!?
会場内では、ソニー・コンピュータエンタテインメント WorldWide Studios プレジデントの吉田修平氏とバンダイナムコゲームス 「サマーレッスン」ディレクター/プロデューサー 原田勝弘氏が常駐しており、体験者やマスコミを問わずフランクな形で質疑応答などが行われていた。
筆者を含め、メディア側からの取材ではなかなか聞けないような話も飛び出し、会場が笑いに包まれる場面も。ここでは、その中から一部を抜粋してご紹介したいと思う。
――Project Morpheusを製品化するためには、あと何が必要でしょうか?
吉田氏:いろいろありますよ。装着感やレイテンシーなど。改善されて、大分いいんですけど、もっと改善していきたいと思います。
――「Oculus Rift CV1」は体験されましたか? 初めてOculusを被ったときの感動がまたキター! みたいな。
吉田氏:私は体験していないです。でも、いいなとは思ってますよ。だいたいOculusさんとやってることは同じで、彼らが先に新しいものを見せてくれたので。それで体験した人が良かったといってたので、私もホッとしています。
――なかなか良さが伝わらないのがもどかしいですね? ここにいるメディアの人達に頑張ってもらわないと。(会場から笑いと、おお~っという声が……)
原田氏:だいたい、記事見ればわかるじゃないですか。これは1度体験しないとわからないって書いてあるみたいな(笑)。「こう書いてしまうとライター失格だが」みたいな記事が4つぐらいあって。久々ですよね、そういう記事を見るのは。
――「サマーレッスン」は、どこまでやっていいんだろう? って躊躇してしまうところがあります。
原田氏:躊躇するっていうことは、それだけリアルということですね。初対面の人に接するのと同じで、脳が本当の人間だと半分ぐらい認識しちゃってる証拠なんですよね。それが重要なんです。
――あれを、自分の家で他人の視点が無いところでいろいろやりたいです。
原田氏:そう、思うじゃないですか。でも、外すと誰かいたりするという(笑)。
――これはひとりで遊ぶことを想定しているのですか? それともみんなで集まってやるみたいな感じでしょうか?
吉田氏:システムとしては、テレビに見ている人の画面が出せるんですね。なんで、やっている人と見ている人が一緒に遊べるコンテンツを作ってもらおうという想定はあります。
――「サマーレッスン」をソフトとして販売するとなると、いくらぐらいになりそうですか?
原田氏:それは(ハードの)普及台数によりますね。1万台ぐらいしか普及してないと、1本数百万円するソフトになるかも(笑)。それは冗談ですけど、売り方も変わってきますよね。「サマーレッスン」だけじゃなくて、アソートで短い体験をいっぱい売るというやり方もあるので。
吉田氏:あんまりあせって、いっぱい作らなくてもいいなって、わかってるんですよ。普通のゲームだと、スゴイお金かけて綺麗なステージを作ってもみんな走り抜けちゃうんですよね。歩く速さが、倍ぐらいのスピードにしないとかったるって言われてしまうんです。VRだと逆に、立ち止まってデティールを見たくなるんです。だからデータの量も小さくできて、効率がいいんですよね。
――「サマーレッスン」の開発期間はどれぐらいでしょうか?
原田氏:2ヶ月弱ぐらいです。1ヶ月半で作って、あと2週間デバッグしてました。
――女の子を作るのが難しいと聞きましたが?
原田氏:難しいです。魚眼というか近寄れば近寄るほどゆがみますので、最初はとんでもないイメージになりました。女の子は、顔の表情がどれだけ柔らかく動いてかわいく見えるかで勝負が決まるので、男は楽ですよ。揺れものも多いので、難易度は高いです。あと目が気になりますね。
――目ですか?
原田氏:普通のゲームの目だと全然だめなんです。既存のキャラクターだと、目線がこっちを見ている感じが全然しないんです。だから、眼球は実は凝ってるんです。今までにお金が掛からなかったところに掛かったりとかはしますね。
――下着って覗けるんですか? 試したかったんですけど……いざ、目の前にすると恥ずかしくてそんなことができなくて。(会場爆笑)
原田氏:ああ、それは重要です。基本的には、やらないじゃないですか。それは元々のセーフティというか、絶対そうなるなと思って作ってあります。でも、2回、3回となると、そういうことをする人も出てくるので、一応セーフティは掛かっています。AIが入っているので、向こうがこっちを認識している状態だと絶対見せないように避けるとか。ただ、AIが気づいていないと好き放題できてしまうので、そこは倫理的にセーフティをかけています。
――ありがとうございました。
「Project Morpheus」の魅力を体感できるデモコンテンツも多数展示
「サマーレッスン」とは別に、「The Castle」「EVE VALKYRIE」「"AKB0048"×"アクエリオン"多次元スペシャルライブ」「The Deep」「VR luge」「ソードアート・オンライン」といった6種類のデモコンテンツも会場内で体験することができた。
いずれも5分から20分待ちといった感じで、多くの人がProject Morpheusの素晴らしさを体験していったようだった。
発売はまだまだ先と言うこともあり、今回の体験会はユーザーにとっても貴重な場となったはずだ。メディアの力だけではこのすごさを伝えきるのは難しいため、ひとりでも多くのユーザーがこういう機会を通して自分の目でぜひ体験してもらいたい。
(C)BANDAI NAMCO Games Inc.
2014-12-01 13:30 質疑応答の質問に誤りがありました。お詫びして訂正させていただきます。
※画面は開発中のものです。
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