フリューが2015年1月22日に発売を予定しているニンテンドー3DS用ソフト「レジェンド オブ レガシー」。同作でディレクターを務める、松浦正尭氏へのインタビューをお届けする。
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「レジェンド オブ レガシー」は、幻の大陸「アヴァロン」を舞台とし、往年のRPGファンに向けた本格的なファンタジー作品だ。またゲームデザインに小泉今日治氏、イメージイラストに小林智美氏、キャラクターデザインに平尾リョウ氏、コンポーザーに浜渦正志氏を迎え、豪華なスタッフでも注目を集めている。
今回はゲーム序盤の展開からバトルシステム、サウンド面や開発に至った経緯まで、さまざまな角度からディレクターの松浦正尭氏にたっぷりとお話を伺った。
――早速ですが「レジェンド オブ レガシー」では、まず7人から1人を選ぶんですよね。誰もが主人公であってもおかしくない設定の持ち主ですが、どのような経緯でアヴァロンを訪れるのでしょうか?
松浦氏:まず、本作を開発するうえでのキーワードの1つに「わかりやすさ」があります。本作は完全新作なので「未開の島を冒険するゲームです。そして、この7人が主人公です。この中から1人を選んで自由に冒険してください。」というように、ゲーム内容を一言で説できるくらいのほうが、わかりやすくて手に取りやすいと思ったんです。また、これは私個人の感覚なのですが、いわゆるかつてのRPGにおける王道的な要素も、時代が一巡して、むしろ珍しくなってしまっているので、あえて踏襲しています。ちなみにこの主人公は難しい、こっちは簡単ということはありませんので、自分の直感で好きなキャラクターを主人公に選んで頂いて大丈夫です。
リベルは宝を求めて旅をするトレジャーハンターです。アヴァロンに「星杯(せいはい)」という不老不死をもたらす秘宝が眠るという噂を聞きつけて、この島を訪れました。
ミュルスは「精霊使い」と呼ばれる一族の末裔で、精霊の声を聞くことができます。そこで、精霊たちがアヴァロンに集まっているという異変を察知します。その原因を探るべくアヴァロンに来ました。
オーウェンは腕利きの賞金稼ぎです。アヴァロンには、ある男に「神」の名を騙る存在がいるので倒してほしいという依頼を受けて訪れました。
ビアンカは唯一、最初からアヴァロンにいます。目覚めたら名前以外の記憶を失ってしまっていて、さ迷っているうちに冒険の拠点となる「イニティウムの街」にたどり着きました。そして、この島に記憶を取り戻すために冒険に出ました。
この世界には「エミリア教会」という組織があって、ガーネットは教会に所属する正騎士です。エミリア教会では、ある1人の神だけを信仰しているのですが、しかしアヴァロンにも「神」を名乗る者がいるらしいので、その正体を探るという任務を受けて島に来ました。
エロイーズは島に来た経緯が他のキャラクターのように描かれておらず、イニティウムの街でバイトしてるところから始まるという、ちょっと特殊な主人公です。目的としてはリベルと同じように星杯を狙っているんですが、彼女の場合どうしてなのかという謎も含めてゲームが進行していきます。
フィルミアは、かつてアヴァロンに存在したというカエルの国の王子です。アヴァロンは異変によって沈んでいたんですが、10年前に突如浮上しました。フィルミアは近郊の島で冬眠していて、目が覚めたらアヴァロンが現れていたので、仲間を探しに向かいます。
――この魅力的な7人から1人を決めなくてはいけない、という時点で難航しそうです。その後はどのようにゲームが進んでいくのでしょうか?
松浦氏:アヴァロンについてからは、ある遺跡の探索に向かいます。その途中で2人のメンバーと出会い、いわゆるチュートリアル的なイベントが終わるまでは一旦その3人でパーティを組みます。
その後はイニティウムの街の宿屋でパーティ編成ができるようになるんですが、他の仲間は街の中にランダムで登場します。ランダムというのは、例えば宿屋で寝たらいるかもしれませんし、他の場所に冒険に出かけて戻ってきたらいるかもしれないと、そういった感じですね。たくさんの冒険が日替わりで往来する街なので、その1人として他のメンバーも現れるんです。そこで出会って仲間にしたら、入れ替えできるようになります。
――主人公たちを含め、冒険者たちがリアルに生きているような印象ですね。ストーリーは選んだ主人公によって大きく変化するのでしょうか?
松浦氏:前提として本作には、起承転結のあるドラマ仕立てのストーリーはありません。要するに、次にここにいけ、あれをもってこい、というようなゲーム側からの目的の明示は一切なく、主人公別に設定された大目的を達成するための間を、プレイヤーが自由に冒険するシナリオなんです。ただ、実をいうとこのシナリオの作り方は、先の「わかりやすさ」のコンセプトとは矛盾していて、どこで何をすればいいかわからないという方が当然出てくると思います。また選んだ主人公やプレイヤーの進め方によって、クリアするまでに得た情報が大きく異なると思うので、初回のプレイでは「結局あれはなんだったんだろう?」という感じで、起承転結のあるストーリーのゲームや映画と比較すると、消化不良に感じる方も多いと思います。
しかし、実はこれが本作のシナリオの醍醐味で、舞台となるアヴァロンの過去の出来事や、キャラクターの正体といったシナリオの「裏側」は、知りたいと望んだ人が自分で発見して解き明かすことができる構造になっています。そのためのピースは、ゲーム中のあちこちに散りばめられていますので、そういう遊びが好きな方は、ぜひいろいろ冒険して探してみてください。
この一見すると「わかりにくい」構造が前提のシナリオに対する、「わかりやすさ」の部分についてですが、最もこだわったのは、プレイヤーが何かを調べたり、行動した時のキャラクターのリアクションです。例えば冒険中に間欠泉のようなものにぶつかったとすると、ミュルスの場合は「ぐっ、こいつは危険だな…」というリアクションですが、フィルミアは「ゆでガエルになってしまう!!」、という感じで、キャラクターの個性に合わせた異なるリアクションをとります。これも本作の印象が大きく関わる部分でもありますので、初回の主人公は一番好きなキャラクターでのプレイが個人的にはオススメです。
それと、ボス戦に突入する時、選んだ主人公や連れているメンバーによって、一言セリフが入ることがあります。サラっと流れますが、キャラの個性が垣間見える部分だと思いますので注目してみてください。
あともう一つ、冒険するフィールドにも、一般の冒険者だけでなく、パーティメンバーに入れていない主人公キャラクターと出会うことがあり、話が聞けることもあります。
このような感じで、プレイの仕方によってシナリオの楽しみ方も大きく変わります。
――それは色々な組み合わせを試してみたくなります。あと、1つとても気になっている事があるんですが、小林智美さんが手掛けたキービジュアルに、ミュルスともう1人誰かがいますよね。男性のように見えますが、これはいったいどのような人物なのでしょうか?
松浦氏:それは実際にゲームをプレイして確かめてみてください(笑)……というのは答えになっていないかもしれませんので、現時点で一つ言えるとすれば、彼はラスボスでも主人公でもありません。ヒントは「ミュルスと背中合わせ」であるという事は「何かの対比」であり、それが何なのかという事ですね。
一般的にキービジュアルといったら、普通はキャラクターの集合絵とかじゃないですか。でもあえて、ラスボスでも主人公でもない人物がいる。そこに意味があるんです。これはゲームをクリアした後に改めて見た時に、この絵の意味がわかるようになっていますので、今は「小林智美さんの絵は綺麗だな~」くらいの印象に留めておいて頂いて問題ないと思います(笑)。
「ポジション」を決めて「フォーメーション」を展開―精霊による「属性」も絡む戦略性の高いバトルシステム
――続いて、バトルについてお聞かせください。本作ではまず「フォーメーション」を決めて、コマンド入力をするといったシステムですよね。
松浦氏:フォーメーションは、3人のパーティで「ガード役が攻撃を受ける」「アタック役が敵を攻撃する」「サポート役が支援・回復をする」というのが基本構成になります。ターンごとにフォーメーションを切り替えることができるので、例えばガードを2人用意してターンごとに切り替えるのもいいですし、全員が防御を固めてカウンター技だけで倒すとか、サポートが精霊術の壁を張って、次のターンに全員で攻撃するとか、戦況に合わせてさまざまな戦略がとれるんです。
ちなみに、各キャラのコマンドを選択し終わると、AボタンもしくはLボタンを押している間だけ倍速にできます。ただ個人的にプレイヤーが倍速を必要とする状態って、要は早送りしたくなるくらい戦闘が作業的に感じているからだと思うのですが、本作はモンスターが強いので、適当にAボタンを連打して倍速で片付けようとすると、特に初見のモンスターが相手の場合は、結構あっという間に負けてしまいます(笑)。倍速は便利ですが、敵に何をされたかというのも見逃せない部分なので計画的にご利用ください。
――実際に試してみたくなるバトルシステムですね。その中で、主人公はどのように成長していくのでしょうか?
松浦氏:本作には「アタック」「ガード」「サポート」というポジションがあって、そのポジションごとにレベルがあります。それが、いわゆる経験値ではなく、戦闘に勝利することで、その戦闘で指定したポジションのレベルがランダムにアップします。さらに、戦技に対してもポジションごとにレベルがあり、戦技を使い込めば使い込むほど、指定したポジションの戦技のレベルもアップしていくという仕組みです。
――バトル中に、戦技がレベルアップしたり新しい戦技を習得する「覚醒」というシステムがあるんですよね。
松浦氏:戦闘中に新たな戦技を覚えるか、ポジションに応じて戦技のレベルが上がるというのが「覚醒」です。例えば、初期の戦技でも使い込んでいけば最強になる可能性を秘めています。ゲームの後半で覚えるような戦技は強力な分、これまで使い込んできた戦技と比べてレベルも低くコストパフォーマンスが悪いといった部分もあるので、消費コストの少ない序盤の戦技を徹底的に使い込むのも十分にメリットがあります。
また、敵にトドメを刺されそうになったときに覚醒が発生して、カウンター戦技を習得して大逆転なんていう、緊張感のあるバトルに仕上がっています。このようなプレイヤーとシステムが生み出す偶然のドラマが、本作の戦闘の醍醐味でもあります。
あと、覚醒で習得した戦技は、全滅してしまうと戦闘中に覚えた戦技は全部なくなってしまうんですが、戦闘から逃げた場合は習得できますので、撤退も戦略の一つとお考えください。ちなみに戦闘から逃げるには「全力逃走」というフォーメーションを選択すれば逃げられます。ただし逃げるとエリアの入り口に戻ります。だから全力逃走なんです(笑)。
それと、本作はゲーム中にスタートボタンでスクリーンショットが撮れるので、好きなタイミングでいろいろ撮影してみてください。
――90年代のRPGを遊んでいたプレイヤーなら、これまでにも似たような経験をしているでしょうね。ほかにも7種類の武器や、素手の「体術」も性別や職業などを問わず自由に装備できるそうですが。
松浦氏:ビアンカなどの女の子に斧や大剣を装備させてもいいですし、男は肉弾という方は体術で戦ってもいいですし、剣でも防御できるし、盾でも攻撃できるので、このキャラクターはこの武器や防具しか装備できないということはありません。武器の見た目でキャラクターの印象も変わると思うので「この武器が好き」「カッコイイから」「変だから」という理由で選んでも大丈夫です。むしろ全員同じ装備にしてもクリアは可能なので、とにかく好きなキャラに好きな武器を持たせて戦ってください。
また、宝箱の中身も完全にランダムなので、冒険中にたまたま強い武器が手に入ったので試し斬りしてみようとか、そうやって色々な装備を試しながら、自分に合った武器や戦い方を見付けていくのも楽しいと思います。
――装備も自由ですと、主人公の性能にほとんど差はないといった感じですね。
松浦氏:ほぼありません。固有の装備や技があると、どうしても優劣が生まれてキャラにアタリ、ハズレが出てしまうんですよ。本作では、そういった要素をあまり持たせないようにしています。ただし、やりこんだ人にしか気が付かない微妙な性能差は、ゲームデザインの小泉今日治さんが仕込んでいるかもしれませんので、ぜひプレイして解析してみてください(笑)。
――ステータス画面にHPが2つ出ていますが、これはどのようなシステムなんでしょうか?
松浦氏:本作には最大HPと通常のHPがあって、倒されてしまうと最大HPが減った状態で復活します。この減った分は、街に戻って宿屋で回復するまで戻りません。戦闘終了後に減った分のHPは全回復するんですけど、探索中に何度も倒されると、その分だけ最大HPがどんどん減っていきます。いわゆる傷を負った状態で、プレイヤーはそのまま進むか、一旦退くかを迫られるというわけです。パーティメンバーのうち誰かの最大HPが0になるとゲームオーバーになります。ただし最大HPが0にならなければ、戦闘中に主人公が倒されても、仲間のうち誰かが生き残っていれば戦闘は勝利となります。
――考えさせられる駆け引きですね。データのセーブはどのように行うのでしょうか。
松浦氏:セーブについては、まずメインのスロットが2つあって、これは宿屋で行います。基本的に1つのセーブにクリアした主人公や図鑑の情報などが記録されていくので、やりこみたい人は周回プレイでセーブデータを上書いていってください。また、メニューもしくは、X+Rボタンでどこでもセーブができる「クイックセーブ」がとても便利なのでオススメです。メインのセーブデータも、クイックセーブデータも、タイトル画面からそれぞれロードできます。
――アヴァロンでは「精霊」が見えて、彼らの力を借りて魔法のような「精霊術」が使えるんですよね。このモンスターとの戦いだけでなく、精霊の次元で勢力を争うという「双次元バトル」とはどのようなものなのでしょうか?
松浦氏:精霊には水・風・炎・邪という4種類がありますが、まず言えるのは、水が炎に強いというジャンケンのようなものではありません。簡単に説明すると、まず精霊と契約することで、その属性の精霊術が使えるようになります。また、どの精霊がその場を支配しているのかによって、プレイヤーには様々な影響があります。回復効果だったり、何かが強くなったり弱くなったりすることがあるんですが、こうした精霊がもたらす様々な影響についてプレイヤー自身が気付き、精霊の力を自分のものにしていくのが「双次元バトル」の醍醐味です。
この精霊がもたらす「場」の効果は、プレイヤーだけでなくモンスターにも影響するので、うまく操作することができれば、戦闘を優位に進めることができます。また敵側も精霊と契約してくる連中がいるので、プレイヤーが精霊術を唱えるのを邪魔されたり、逆にプレイヤーが邪魔したりとプレイヤーと敵との「精霊の奪い合い」が発生するんです。この駆け引きが非常に熱いので、ぜひ体感してみてください。
こうやって説明すると戦略が幅広い分、色々悩みそうとか、難しく思えるかもしれませんが、プレイして頂くと、実はものすごく直観的なゲームです。プレイヤーには「武器」「戦技」「精霊術」「ポジション」といった非常に豊富な選択が与えられていて、それを自由に取捨選択して強大なモンスターを打ち倒していく、単純かつ男気に溢れたゲームだと思ってください。そして、実はそれが一番楽しいゲームなんですよ。
プレイヤーの感動を盛り上げる、ボイスではない「音」の数々―ビジュアルにも徹底したこだわり
――本作はサウンド面にとても力を入れていると伺っています。そのこだわりについて改めてお聞かせください。
松浦氏:ボイスがないゲームって最近では珍しいですよね。個人的に些細な挨拶1つにしても、ボイスがつくとキャラクター付けされてしまうと思うんです。本作はあくまでもプレイヤー主導のRPGのため、主人公であるキャラクターの細かい描写の補完はプレイヤーに委ねたかったので、あえてボイスは付けませんでした。その反面というか、これは元々のコンセプトでもあるのですが、プレイヤーの想像力を補うために「楽曲」「効果音」「ナレーション」という音の要素にはこだわっています。
まず、本作の「楽曲」を手掛けるコンポーザーは、浜渦正志さんです。浜渦さんは情緒的な楽曲を作られる方なので、キャラのセリフだけではなく、音楽を前面に出すことでキャラの感情表現を委ねた部分が多くあります。また、本作は浜渦さんが「全曲作曲」というのがポイントで、1つのメロディに対する劇的なアレンジが得意な方でもあるので、ゲーム中にさりげないメロディから、グッと琴線に触れてくる瞬間を感じて頂けるはずです。
また、本作は「効果音」にもこだわっています、例えば主人公ごとに足音が違ったり、水辺だと水が跳ねるパシャパシャという音がしたり、地形ごとの足音の違いも細かく作っています。実は効果音はクオリティが高ければ高いほど、良さに気付きづらいんです(笑)。つまり気が付かないということは、それだけゲームに馴染んでいるということでして、だから本作では「効果音にこだわっています!」と言うようにしています(笑)。風や木々のエリアの環境音も細かく作っているので、ふとした時に耳を傾けてみてください。
最後に本作では、ゲームの冒頭や幕間などで、白鳥英美子さんによる「ナレーション」が挟まれます、また冒険の中でプレイヤーが初めて訪れるエリアでは、その地にまつわる謂れや言い伝えが語られます。このナレーションは、すべてのエリアに用意されているので、探索が始まる前のフレーバーとして、お楽しみ頂ければと思います。
――ビジュアルも、本来だと後から設定として出てくるような一枚絵のイラストがそのままゲーム内に登場するという、ちょっと変わった演出ですね。
松浦氏:昔のゲームって、モンスターもドット絵だったし、背景も2Dだったじゃないですか。でも、実はあの「決めのカット」がプレイヤーの印象に焼き付いていると思っていて、それをただ3Dに起こすだけだと、その決めのカットの持ち味が薄れてしまうと思うんです。だったら昔の手法に習って、一枚絵をそのままゲーム中に出したらいいんじゃないか、それがさらに立体視で見えたらもっといいんじゃないか、それにナレーションや環境音が乗って……と重ねていくと、ゲームの世界観がかっちりと決まる。こうした考えのもと、背景イラストそのものをゲームに取り入れたんです。また、探索するフィールドも、元のイラストの手描きのテイストを残したデザインを意識しています。
――地図を使って冒険するフィールドも美しさはもちろん、少しずつ明らかになっていくというリアルな感覚がありますね。冒険者も手助けしてくれるそうですが、具体的にどういったことが起きるのでしょうか?
松浦氏:実際にプレイしながら気付いてほしい部分ではあるんですが、基本的には地図を売ると街の冒険者達に情報が出回り、売ったエリアが「共同探索状態」になります。これによって、そのエリアに冒険者が訪れるようになり、彼らによって出現するモンスターの数が減ったりします。他にも細かい変化があるので見付けてみてください。また、地図は「情報を売る」だけなので、地図そのものは残ります。
ちなみに、地図の出来栄えによって得られる対価が大きく変わるので、作りこんだ地図ほど高く売れます。とはいえ100%にするのは、マップも広いですし、敵も強いので正直かなり大変です(笑)そのため、どこで落としどころを見つけるかも考えてみてください。
――ほどほどにして売って、冒険者の手助けを得ながら攻略する…というのが良さそうですが、こういうのはどうしても100%にしたくなりますね(笑)。
松浦氏:普通はそう思いますよね(笑)私もそういうタイプなんですけど、全部100%にするのは苦労するので、高額の装備が買いたいとか、どうしてもまとまったお金が必要にならない限りは、そこまで完成にはこだわらないほうが良いかもしれません。こんな感じでゲームを進めていくうちに、自然と冒険の動機がプレイヤーによって設定されていくので進め方には、プレイヤーの性格が色濃く反映されると思います(笑)。
――今更ですが松浦さんがお持ちの、PVやキービジュアルなどに時々出ている可愛らしいマスコットキャラクターのような生き物は一体何なんでしょうか?
松浦氏:ネコ族の「ココ」といいます。ココはフィルミアに負けず劣らずのぶっ飛んだキャラクターでして、話しかけると一方的に話をしてくれます。冒険中の様々な場所に現れるので、いろいろ話を聞いていくと内容が分かったり、分からなかったりみたいな感じなので、興味が向いたら話しかけてあげてください。
――人の言葉をしゃべるんですね! それは驚きました。
松浦氏:主人公が知っていようが知らなかろうが、とにかく勝手に話すので中身に脈絡はありませんが、少し変わった話が聞けることもあります。小林智美さんのキービジュアルにも描いて頂いたくらいなので、ただのマスコットキャラクターではありません(笑)。
「コンシューマ向けのRPGを遊びたい!」というニーズに、本格スタッフが応えた意欲作
――そもそも、松浦さんは本作のようなRPGを作るためにフリューに入社されたそうですが。
松浦氏:入社の理由としては、コンシューマゲーム業界が縮小傾向にある中で「オリジナルのRPG」を作り続けている、その一点に尽きます。
コンシューマゲームの開発って、小規模なプロジェクトでも発売まで早くても1年半~2年くらいはかかるので、ほんの数タイトルを作るだけでも、どんどん歳をとっていくんですよ。しかも近年は、コンシューマゲーム業界自体の規模が縮小傾向にあるので、こんな状況では自分でオリジナルのRPGを作る機会は、もう一生無いと思いました。だから転職を決めたんです。ただ、転職するにしても既存のゲームメーカーでは、自由にコンシューマゲームを作れる風土は恐らく無いと思いました。そうなると、ゲーム事業一本でやっている会社では、もう無理だろうと思ったので、ゲーム以外に様々な事業を行っているフリューに決めたんです。といっても、実は入社前はフリューの名前すら知らなかったのですが、話を聞いてみると、根っこがしっかりした会社でハッキリ言っていろいろと誤解していました(笑)。
当社は、ゲームメーカーとしてはまだまだ知名度が低い会社かもしれませんが、なかなか面白い会社なんです。コンシューマゲーム事業というのは、膨大なお金がかかるビジネスだと思います。自分が思う企画を実現し発売するためには、様々な理論が求められますが、その理論さえ筋を通すことができれば、商品の内容に関しては企画者の意向が通りやすい会社です。フリューは、チャレンジが通用する社風でありながらも、根は非常に堅実な企業なので、良くも悪くもゲーム会社らしくないんですよ。
――「ロストディメンション」などをはじめ、完全新作に意欲的に取り組んでいらっしゃいますよね。特に我々のような、RPGと共に育ってきたゲーム世代はなかなか新しいRPGが遊べない…そういった思いを抱いている人は多いと思います。
松浦氏:現時点で当社がそういった方々のニーズに応えられているかというと、私は正直まだまだだと思いますが、それでも企画者の個性が詰まったタイトルを作れるのが、フリューの一番良い所だと思っています。「レジェンド オブ レガシー」もハッキリ言ってしまえば、自分の好きな人たちと、自分の好きなゲームを作っているにすぎませんので、こんな酔狂な企画が実現できる会社はいまどき珍しいと思います(笑)。
とはいえ、本作の企画を立てるうえでは、私も予算を預かる身なので、「フリューが今、どんなゲームを出したら人々の“目にとまる”のか」というのを実は一番考えました。実際に商品が売れる、売れないは今のコンシューマゲーム市場は、ゲームの面白さに尽きると思っているので、そこは内容を頑張ればいいのですが、当社の場合は、知名度もブランドもまだまだ低いメーカーだと思いますので、このメーカーとしての弱さが、この企画を実現するうえで、最大の問題かつ致命的でした。つまり認知度が低いメーカーの新作RPGでは、このご時世に90年代のRPGをプレイしてきたユーザーは買うわけがないと、私自身が最も感じていた部分だったからです。
そのため「自分がどんな内容だったら、フリューのゲームでも買うか?」を切り口に、どんな順番でどんな情報が公開されたら嬉しいかを基準にしてプロモーション展開を含めて企画を強化し、そこまで説明することで、ようやく周囲の理解や協力を得ることができました。このようなプロデュースとディレクションを兼業するのは苦労しましたが、それぐらいしないと今の時代に中小メーカーのコンシューマの新作RPGなんて確実に埋もれてしまうので、とにかく存在を忘れ去られないように開発着手から発売までの導線を、あらかじめ細かく引いておく必要があったんです。そんな感じで日々荒波に揉まれながらも、ようやく発売目前まで漕ぎ着けることができたので、今は純粋に発売が楽しみです(笑)。
――最初の発表から、とにかく「制作スタッフがすごい!」という印象でしたね。一体どのように集められたんだろう、というのは非常に興味があります。
松浦氏:よく聞かれますが、ドブ板営業です(笑)。もちろん元々知り合いだった方は何人かいますが、基本的には、今回は自分が好きな人と一緒に仕事がしたいと思っただけなので、一人ずつ直接お会いしてお願いしました。ゲームはチームの人員構成でクオリティが決まる部分があるので、最初のチーム作りには時間をかけ、盤石にしてから開発をスタートしました。
尚、制作スタッフについては、本作の場合は少し変わった試みをしていて、スタッフの名前と担当箇所を、かなり細かく公開しています。実はこれは私の方針で、そろそろメーカーだけでなく「個人」もフォーカスされる時代が来るといいなと思っているからです。そして本作では、「ゲームデザイン」「背景美術」「効果音」「ナレーション」「タイトルロゴ」といった、ゲームを構成する要素はすごく細かくあって、それぞれをその道のプロ、いわば「職人」が手掛けているということを、しっかりお伝えしたかったんです。
一般的に、制作スタッフの名前というのは「宣伝的に売りになるか、ならないか」で露出の判断がされるものですが、そういった意味においても、私は各分野で高い技術を持った人こそが、ゲーム制作では本来売りになるべきだと思っています。だから本作では、大規模な開発体制を敷かなくても、これまでのRPGの文化を作ってきた職人たちと一緒に作ることで、面白いRPGは作れるということを目指してみたいと思いました。そして、もしこれが実現できれば、当社のような中小メーカーの新作でも手に取ってもらえる「きっかけ」ができるんじゃないかと希望が持てたんです。
本作は、数百人規模で作る重厚長大なRPGではありませんが、その分スタッフそれぞれの個の力が凝縮されたゲームです。そのため本作をプレイして頂いて、特に良い部分があったら「それを実際に作った人」に注目してもらえたら嬉しいです。
――最後に、発売を待つユーザーへメッセージをお願いします。
松浦氏:発売を目前に控えて、ゲームについて私から言えることはもう何もありません。「プロジェクト・レガシー」チーム一同、とにかく全力で作りました。完全新作でしか味わえない、予備知識がない状態でのRPG特有の「手さぐり感」を、存分に楽しんでください!
――ありがとうございました。