一般社団法人コンピュータエンターテインメント協会とCEDEC運営委員会が開催した「CEDEC 2015」。ここでは会期3日目の基調講演「妖怪ウォッチ ゲーム・アニメ・映画・漫画・玩具~各界クリエイター共同戦線~」をレポートしていく。

日野晃博
日野晃博

「CEDEC 2015」会期3日目の基調講演では、レベルファイブ 代表取締役社長/CEO・日野晃博氏が登壇。「妖怪ウォッチ ゲーム・アニメ・映画・漫画・玩具~各界クリエイター共同戦線~」と題し、クロスメディア戦略を推し進めてきた日野氏の、9年にもわたる経験談が語られた。

日野氏が率いるレベルファイブは、ゲームソフトを作る会社として1998年10月に立ち上げられ、「イナズマイレブン」「レイトン教授」シリーズといったさまざまなタイトルをリリースし続け、今日の一大ムーブメント「妖怪ウォッチ」を作り上げた。小学生向けに展開されている「妖怪ウォッチ」の市場はゲームを中心としつつ、いまやアニメ・映画・グッズなどの関連メディアでも大きな成功を見せている。

今回の講演では、そんな「妖怪ウォッチ」が大成するに至るまでの道程が、各界のクリエイターたちと繰り広げられたセッション(開会・集会など)のエピソードをもとに紐解かれていく。

今年のCEDEC AWARDSにて「妖怪ウォッチ」サウンド開発チームが受賞。
クロスメディアに費やした9年間

近年、インタビューを受ける機会が急増した日野氏は、殆どの現場で「妖怪ウォッチがヒットした理由」を聞かれるという。当初は自分でも分からないままに答えていたが、過去を振り返り、次第に思い返していくと、ヒットに繋がるターニングポイントがどこであったかに気付いたらしい。

ちなみに、「今回語るものは僕らが歩んだ成功例ということで、内容が全て正しいわけではありません。あくまで1つのサンプルとして聞いて頂ければと思います」と注意を促す日野氏。実に奥ゆかしい。

日野氏がクロスメディア戦略を始めてから約9年。「イナズナイレブン」や「レイトン教授」シリーズで培ってきたその時間は、“他業種のクリエイターたちと歩んだ9年間”であったとのこと。そこでは色んな人たちと出会い、分野や文化の違いからぶつかり、次第に分かり合ってきた、氏ならではの濃密な体験が隠されていた。

VS アニメクリエイター

レベルファイブのクロスメディアを語る上でうえで欠かせないアニメーション作品。しかし、ゲームとアニメのクリエイターは近い存在でありつつ、実際に制作に取り掛かってみると、考え方や捉え方が全然違う人種であったと日野氏は述べる。

ただし、このアニメクリエイターとのセッションが“今の日野晃博”を作っているといっても過言ではないほど、日野氏の現在に大きく影響を与えているようだ。

最初はニンテンドーDS/3DS「レイトン教授」シリーズをピックアップ。本作はDSの小さな画面の中に、映画レベルのアニメメーションを入れることをコンセプトにしたタイトルで、ゲーム内容もあわせてそのインパクトから高い評価を得ている作品だ。

日野氏は当時、「ゲームに入れるアニメ映像に、本気で取り組んでくれるアニメ会社」を探していたところ、ピーエーワークスと出会った。ゲームであろうとも、小さい画面であろうとも、映画レベルの映像に取り組んでくれた同社に、本気で取り組むアニメクリエイターの熱意を教えてもらったとし、ここからゲームとアニメの融合が「イケる!」と考え始めたらしい。

次に取り組んだのが、本格的なクロスメディアタイトルとして始動した「イナズマイレブン」。本作のアニメ展開には、アニメ「ポケットモンスター」などの制作で定評のあるOLMと連携。が、ここでの出来事で他業種のクリエイターとの大きな溝を感じたとのことだ。

当時のゲームおよびアニメ制作に携わる企業は、クロスメディアの際に原作サイド(ゲーム)からのオーダー「こういう風に作ってください」を請け負うことが常識であった。しかし、日野氏はルールを決めて作品を預けるのではなく、「一緒に協力して制作しませんか?」と掛け合い、アニメならではの新しい作品作りに踏み込んだという。

一緒に制作するということで、日野氏はアニメのシナリオにも大きく介入し、オープニング映像の演出など、さまざまな場面で意見を出した。しかし、制作会議では文化の違うクリエイター同士で意見が食い違うことも多く、またそれぞれの領域で譲れない部分もあった。

会議としてはとても有意義だが、レベルファイブのクリエイターの中には「もうあの会議には出たくないです」といった意見が出るほど、しのぎを削るハードな内容であったようだ。お互いクリエイティブに対して命を削って挑戦しているからこそ、起きた衝突なのだろう。

当時の日野氏の感想は、ゲームクリエイターは「面白ければいいじゃん」の考えのもと、斬新な発想や奇抜なシステムを導入していく傾向があり、アニメクリエイターは「なぜ、それが、そうなっているのか」の考えのもと、キャラクターや世界観などの細かい設定を重視する傾向があり、結果、そこでぶつかり合いが発生しているのだと考えたとしている。

しかし、当時のこのバトルがあったからこそ、ゲームもアニメも両方を面白くするという考えが培われたと述べていた。

次は「二ノ国」制作時に出会ったスタジオジブリの話。当時は同社の映画プロデューサー・鈴木敏夫氏とのやり取りで、日常の食事をしているところや、部屋を出て行く時の上着を着方など、細かな日常的な所作を得意とするスタジオジブリならではの、生活芝居を活かせるディレクションを出してほしいと言われたとか。

この生活芝居をゲームで表現するにあたっては、(当時)同社の監督業・百瀬義行氏にレベルファイブのオフィスへと頻繁に足を運んでもらい、映像クリエイターたちに向けて絵コンテの講義が行われた。長い歴史で培われてきたスタジオジブリのノウハウやスキルを学ばせてもらう機会は、レベルファイブにとっても大変有意義であったことが伺える。

これまでさまざまなアニメ会社と出会ってきた中でも、今回挙げられた3つのアニメ会社については、レベルファイブが成長するあたり、非常に大きな影響を与えてくれた相手である。教訓では作品を作っているもの同士、「あなたの作品ですが、どうしたらいいですか」と一方的に預けるでなく、しっかりと話し合いをし、制作陣として1つになることが先決であるとした。

VS 漫画家・編集部

クロスメディアを展開する中で、漫画家・編集部とのセッションも進められた。ここで日野氏は批判するわけではなく、「漫画家は何故か先生と呼ばれ、敬われる傾向がある」と述べる。クリエイター同士、対等な関係で作品作りを進めてきた日野氏にとって、これは中々に違和感のある出来事であったようだ。

漫画の世界は制作過程がゲームともアニメとも違う、個人主体の特殊な環境下であるため、作品は漫画家に一任するというスタンスが多い。もちろん、漫画家のセンスに任せなければ面白い作品は生み出されないが、作品が面白くとも、1人で生み出したのではクロスメディアに良い影響は与えないという事例が多くあるとのこと。

そこで日野氏による、より作品同士の相乗効果を生むための実践が行われることとなった。

「イナズマイレブン」からの付き合いとなる小学館とは、漫画としてのオリジナリティを重視するため、漫画内に独特のギャグや設定を入れたり、ほかのメディアの設定をどこまで引っ張ってくるかのバランスが重要視された。このバランスが絶妙な塩梅になったときにクロスメディアは成功し、作品全体に寄与されるという考えだ。

ただ、「妖怪ウォッチ」に関しては意見の未だに意見がぶつかりあうこともあるようだが、功を奏していることはその大ヒットの結果が裏付けしてくれている。

ここでの教訓は、皆さんが参考にする時は気を付けてくださいと前置きされてからの「漫画家は『先生』ではなく、ものづくりの仲間だ。」という言葉。漫画家だけを先生と敬っているうちは一緒に良い作品を考えだすことはできない。漫画家であっても、一緒にアイディアを出し合い、対等に作品作りを進めていくことが大事なのだろう。

VS 玩具メーカー

子供向けのクロスメディア展開で最重要となるのが、この玩具。最初の例は「イナズマイレブン」からの付き合いとなるタカラトミー。同社は「イナズマイレブン」においてはトレーディングカードを主力商材として手掛けていた。

「イナズマイレブン」のゲームは大ヒットし、レベルファイブスタッフもヒットの喜びを味わった作品であった、しかし、日野氏にとってはクロスメディアが思い通りに機能しなかった、課題が大きく残る作品であったとのこと。

まず、「イナズマイレブン」はゲームのほかに一部商材も好調な売れ行きを見せていたが、全ての商材が売れたわけではなく、ある種の偏りが存在していたという。サッカーという題材を形にするために“人間のキャラクター”を作ったが、それを商材にするとなると、玩具展開が限られてしまったのだ。

日野氏は本作のクロスメディアについて、「どこが売れていて、どこが売れないのか、さまざまなデータと課題を提示してくれたタイトル」だと認識し、同時にタカラトミーには非常に苦労をかけてしまったと一言添えていた。

次は「ダンボール戦機」で連携したバンダイ。玩具展開に関しては日野氏の経験に依るところとして、「作品の世界が手のひらに入る玩具が、作品のリアリズムを与えてくれた」とし、作品に登場するロボットを1/1スケールで提供することで、プラモデルの一大ブームを作るという構想のもと進められた。ここでも玩具制作をはじめ、ゲームクリエイターと玩具クリエイターとともに良いものを作るという考えが育まれていった。

ゲームを購入するとプラモデルが付いてくるといった斬新な展開を皮切りに、「ダンボール戦機」はプラモデルの歴史の中でも大きな兆しを見せ、全盛期に至っては売り場の半分が「ダンボール戦機」で埋まっていたのを目にしたと日野氏は語る。

子供向けコンテンツを作るうえで、玩具とのセッションは非常に大事なので、子供たちにいかにゲームの世界観に対するリアリズムを提供するか、どのような戦略で玩具を出すのかが重要と述べられた。また、玩具に大きなギミックを仕掛けて発売すると、大きな効果が得られると分析したことから、玩具をただのグッズ販売ではなく、作品に魅力を与える戦略の一部とも捉えたようだ。

VS 芸能界/音楽業界

ゲームクリエイターには想像もつかない未知であったのが芸能界/音楽業界。ここも非常に充実した体験が得られたとし、話が進められた。最初のきっかけは「レイトン教授」シリーズで、大泉洋さん、堀北真希さんをキャスティングしたことだ。

当時はDSのモンスタータイトル「脳を鍛える大人のDSトレーニング(以下、脳トレ)」の大ヒットから先、後続のタイトルが伸びきっていないという状況があった。日野氏はここに、「脳トレ」に続く作品を生み出すことを念頭に、作品の企画作りを始めたという。

ここでアプローチしたのは、こちらも人気シリーズ「多湖輝の頭の体操」でお馴染みの多湖輝氏。「レイトン教授」シリーズはいってみれば「頭の体操」の二番煎じから始まった企画とのことで、オリジナルになったきっかけは、「頭の体操」という言葉を使うのに権利問題で時間が掛かることから、すぐにやれる、新しいものを打ち出せばいいんじゃないかという多湖氏の一声があった。

しかし、「頭の体操しかプレイしたことのないDSユーザー」の層に響かせるには、ゲームデザインが素晴らしい、今までなかった仕組みけなど、ゲーム的要因は通用しないと考え、とにかくカジュアルに「面白そう」「何それ」という引っ掛かりを作ることにしたという。それを象徴するゲームパッケージの裏は、ゲームソフトの裏面らしくない、女性誌のようなデザインに仕上げられている。

TVCMも含み、一般層の目を引くことに特化したプロモーションの結果、国内のみならず海外でも大ヒット。大泉さんと堀北さんの参加により、一般層に注目してもらうフックを作れたことが要因だと日野氏は分析していた。これ以降、ここぞという時に有名な俳優・タレントの起用を続けてきたレベルファイブ。同時に、ゲーム業界全体で俳優・タレントへの働きが高まったことから、業界を動かすきっかけにもなったといえるだろう。

続いては「イナズマイレブン」から始まった音楽業界との付き合い。タイトプロとエイベックスには最初に、「アーティストが自由に作った楽曲とはコラボレーションしません」と予め断ったうえで、「ゲームのためだけに作った楽曲の制作をお願いします」というスタンスが伝えられた。既存の楽曲やタイアップ楽曲は絶対に使わないというポリシーが見えてくる。

この考え方にも当然意味があり、上述してきたクリエイターたちと同様、一緒になって対等に音楽という作品作りに注力したいからだと日野氏は述べる。最初の頃は理解を得られなかったかもしれないが、昨今はスタートの時点で「次の曲はどうしますか?アーティストは誰にしますか?」と掛け合われるようになったとか。

現在はレベルファイブとエイベックスグループによる「フレームレーベル」が設立され、作品を満たす音楽提供が推し進められている。音楽の世界でも作品がヒットするということが、音楽もコンテンツ全体の成功の一員であることと捉えたようだ。なお、教訓は実に分かりやすいものであった。

VS 映画業界

映画業界に関しては、ほぼ東宝との繋がりだけだというレベルファイブ。「レイトン教授」シリーズから始まり、レベルファイブの殆どのタイトルは映画を展開してきた。ここでは映画プロデューサー・阿部秀司氏との出会いが印象深いと、日野氏はエピソード交じりに語ってくれた。

日野氏は阿部氏と実際に作品作りで関わったことはないが、非常に細かい作品作りをする仕事振りや、一緒に食事をした際は食卓の会話を通して、「阿部氏のように、こだわりを持って作品作りをしなければ」と考えさせられるらしい。

この間も、急に阿部氏から“昔の古札”をもらったという。日野氏は「なんで古札を?」を聞いたところ、阿部氏は「まとめ買いしたんだ」といい、日野氏はさらに「でも、これ要りませんよね?」と訪ねたところ、阿部氏は「タイムスリップした時に、古いお金がないと何も買えないじゃん」と言われ、そのジョークを言うためだけに古札を持っているのだろう夢のある阿部氏の姿に、こういう人だからこそクリエイティブを面白くできるのだと感じたとか。

話を戻して東宝とのセッション。「妖怪ウォッチ」という作品が世に出て間もない頃、東宝側から突然「妖怪ウォッチの映画を作ろう」と提案されたという。「妖怪ウォッチ」は最初からビッグセールスを叩き出したタイトルではなく、発売後にジワジワと売れ、クロスメディアの浸透と共にコンテンツの成熟を進めていった作品だ。

それなのに、作品自体が今後どうなるのかもわからない時期にかけ合われたことで日野氏は、「今、決断しないといけませんか?」と口に出したとのこと。しかし東宝側に「これはくるから、来年までに公開できるようにしておきましょう!」と言われ、決断に至ったとした。ヒットするかも分からない作品を映画にするこの決断、映画という資金のかかる、長期制作になるコンテンツの重みなど、日野氏にはさまざまな懸念があった。

だが、長く関係を続けてきたからこそ、東宝は「レベルファイブなら、売ると決めたら根気よく展開してくれるはずだ」と信頼を築いていた。それゆえのやりとりである。しかも実際に準備を進めてみたら、それがドンピシャ。コンテンツ人気のピーク時に映画が公開されることとなり、映画史上に残る興行成績をも記録した。

ここでの教訓はヒットのタイミング。他業種ならではの色々な思い違いがありつつも、映画は作品の出来とともに、公開や仕掛けのタイミングがものすごく大事であると語っていた。

VS 他業種の才能

クロスメディアに乗り出すことで、上述した業界以外でもさまざまな業種の人たちとセッションしてきた日野氏。まずは先程「VS 芸能界/音楽業界」の項目でもふれられた、「レイトン教授」シリーズの制作で出会った多湖輝氏のことが改めて挙げられた。

「レイトン教授」シリーズの制作は、当時にはないゲームデザインを目指し、進行していった。パズル作家である多湖氏との出会いは日野氏にとっては非常に重要で、ゲーム制作の際も毎回「合宿」を開いていたとか。

合宿に参加するのは日野氏と多湖氏のみならず、多湖氏のパズル作りには欠かせないブレインたる人材たち、それらを合わせた計10人前後。合宿中は軽井沢の宿泊地に2~3日籠もって、パズルのことだけを考えたという。

昼は延々とパズルの仕組みを考え、1回試して面白くなければ次を考え、食事を終えた後もパズル作りに専念し、夜10時頃まで煮詰めた後に睡眠、朝起きて問題点を洗い出したらまたパズルのことだけを考えると、中々ハードな合宿を体験していたようだ。一部の人たちに至っては、夜中から朝までずっとパズルを作っていたという話も。

時に日野氏は「なんで、こんなパズルを思いつくんですか?」と多湖氏に尋ねた。その答えはやはりゲームクリエイターの考える発想とは異なっていたために、レベルファイブの人材だけでは決して生み出せないその構造をゲームに組み込むことで、「レイトン教授」シリーズのような特別な個性を持った、面白い作品を作り上げられることに至ったと日野氏は語った。

加えて、ゲームに使えるほかの業種の才能はまだまだあると考えていることから、現在もさまざまな業種の人たちとゲーム作りにトライしているという。このような施策は「妖怪ウォッチ」とはまた違うクロスメディアの形であると日野氏は述べ、最後に楽しそうな教訓の一幕を垣間見せてくれた。

VS 広告代理店

広告代理店への依頼は当初、「頼んだらやってくれるが、お金をとって宣伝する業種」と穿った見ていたことで、業種への愛着を持っていなかったと日野氏は語る。しかし、この存在も日野氏にとっては例外なく、大きな影響の源となったようだ。

まず、ゲーム企業は一部を除き、全体的に宣伝への関心や能力が欠如していると考えており、実際に「レイトン教授」シリーズでパブリッシングを進めることになったレベルファイブも、初めは広告代理店・博報堂に色々なことを任せるしかなかったという。

当時、広告代理店というものは自分たちをサポートしてくれる存在と考えつつ、自分たちの考え通りの手足となって宣伝活動を行ってくれる組織だとも捉えていたようだが、その付き合いを深めていくにつれ、考え方も変わってきたとのこと。

「レイトン教授」シリーズをヒットさせる手段にはさまざまな案件があり、どういうものを作るかを博報堂のクリエイターたちと考えていく中で、ここでも一緒になって作品を考えることが大事だとの結論に至った。

日野氏が「それは間違っているんじゃないか」と尋ねると、博報堂のクリエイターも「いやいや、そんなんじゃないです」と食い下がり、話し合いが深められていく。優秀な広告代理店のクリエイターと接する際は、自分たちの言う通りに動かすのではなく、対等な存在として、彼らの思っていることを彼らのやり方で任せてみることで、色々なアイディアがテーブルに上がってきたという。

「常に宣伝のことだけを考えている」。そういう人たちのスキルというものは確かにあるので、宣伝を考えるクリエイティブは非常に面白いセッションであったと同時に、言うがままのディレクションであるとその力を生かせないので、双方のバランスを考えるのが重要としていた。

ちなみに、「レイトン教授」シリーズをヒットさせるために考えたことは、実際に世に出たものの何倍もあって、世に出ていない歌を作ったり、プレゼンテーションのためだけの造形を作ったりと、その活動自体がいい刺激であったという。

一方、電通には特別な製作委員会による運営を通す際、各業種間の理解を得られるよう働きかけてもらった。クロスメディアを進める時は、日野氏がさまざまな現場に向かい、色々なコンテンツに口出しをする、いわば感覚的な裁量でやっていたらしいが、電通にほかの企業との接点を自然な形で設定してもらったことで、これまでにないスピード感でクロスメディアを展開できるようになった。

これが、約9年間かけて、日野氏が徐々に培っていったクロスメディア戦略のノウハウである。もちろん、これまでの展開では色々な失敗に出会ったという。宣伝は奥深く、失敗もあり、成功もあり、その中でヒットが生まれる。そうやって学んだ教訓は、最終的に自分たちの判断を責任としながら、その上で宣伝のクリエイターの能力を活かしてもらうことが重要だとし、話題を締めた。

すべてを結集して「妖怪ウォッチ」へ

ここまでの日野氏の9年間は、これまで語ってきたような、さまざまなクリエイターたちとのやりとりが大きく占めている。そして、今の「妖怪ウォッチ」に辿り着くには、全ての失敗や経験がなければ至れなかったと語ってくれた。

冒頭でも述べられた、インタビューで聞かれる「妖怪ウォッチがヒットした理由」の質問。ニュアンス的には「突然変異的なヒットは何が原因だったのか?」と捉えられるそれを聞くと、日野氏は「『妖怪ウォッチ』は決して突然変異で生まれてきたのではなく、徐々に徐々に数字を上げて、やっと行きついた大ブレイク」と考え、同時に全ての経験を結集し、少しずつ、少しずつ積んできた、経験値の集大成であるという気持ちがあるとした。

また、今回の各界のクリエイターたちとのやりとりに繋がる所で、日野氏は「妖怪ウォッチ」の具体的なヒットの理由も解説してくれた。「妖怪ウォッチ」のヒットの理由は、上記画像の中心にある「妖怪メダル」が起因している。ゲームもアニメも映画も漫画も、一つ一つがよく出来ていることと同時に、そのコンテンツを大きく膨らましたものこそが「妖怪メダル」という存在であった。

これは「妖怪メダルがあるから100%大ヒットする!」という計画ではなく、企画の1つでしかなかった妖怪メダルを使い、各業種のクリエイターたちが各々のコンテンツをしっかりと練り上げ、作品を膨らました結果だ。

妖怪メダルはパックやガチャで購入できる。さらにメダル自体の価値に加え、妖怪メダルを使うことで、アーケードゲームで新しい妖怪が入手できたり、3DSのゲームでガチャを引けたりと、新しい遊びがさまざまなメディアで発生するよう作られている。形状的に書籍・CDの付録にもできるので、妖怪メダルはさまざまなメディアをつなぐジョイント(継ぎ手)の役割を果たしている。

この仕組みにより、妖怪メダルの価値が子供たちの中で肥大化し、子供たち皆が手に入れたいと思うようなグッズとなった。最盛期には妖怪メダルが5万、6万という値段でやりとりされることも発生し、ネットオークションの転売に対する対策にも努めていったとか。また、子供たちにとっては「妖怪メダルを手に入れる」自体が価値へと変貌し、妖怪メダルを入手するため、休日に家族で外出するケースも増え、結果「妖怪ウォッチを通じて家族の会話が帰ってきた」など、ありがたい言葉を多く受けたという。

ゆえに、この妖怪メダルこそが「妖怪ウォッチ」プロジェクトの主軸であり、かつこれを機能させるには、各クリエイターとの話し合いなくして成立しないと述べてくれた。妖怪メダルが欲しくなるようなアニメの内容、付録をどのように展開するかを考える書籍・CD、ゲームでは新しい妖怪メダルを読み込むためのプログラムを導入するなど、全員が「妖怪メダルを成功させるために、いかにメディア間で話し合うか」が重要だとし、各セッションに注力したからこそ、行きついたのが今のヒットであると日野氏はコメントした。

以降も「妖怪ウォッチ」を含め、自分たちのメディアのヒットだけを考えるのではなく、ほかのメディアが売れるからこそ自分たちも売れるというコンセプトの元、コンテンツ全体の成功と、作品の本質となるものを全員で考える姿勢を続けていくようだ。

まとめると、「妖怪ウォッチ」の成功には、まずターゲット層を徹底的に研究したことが挙げられる。これには子供たちの支持を受けるため、子供たちの等身大の悩みを徹底的にまとめあげた表を作り、そこに書かれていることをゲームやアニメに1つずつ組み込んでいく作業があった。

一例として、小学生にとっては恥ずかしい学校での用の足し方など、従来のコンテンツが踏み込んでいなかった、タブーともいえるそれらを演出に組み込んでいくことで、子供たちの共感が得られる、ターゲット層にあわせた話作りに至ったという。

的確なクロスメディアについては、「妖怪ウォッチ」であれば妖怪メダルを活かして、全ての作品をディレクションできるかが非常に重要であった。悪い例は「こういうネタがあるので皆さん好きに作ってね」という手段で、作品を有名するには有効だが、全てのビジネスを成り立たせることには繋がらないとし、クロスメディアとしてのスジの通った仕掛け作りが大事だと語った。

妖怪メダルの宣伝戦略については、妖怪メダルは販売目的だけの仕掛けではなく、宣伝にも大きく貢献しているとした。「妖怪メダル」という名前を使い、妖怪メダルを付ける、配布するという宣伝効果が強く作用し、コラボレーションした店舗では来店者が殺到、5時間待ちになってしまうこともあったとか。もちろん、仕掛けとして成功しているからこそ宣伝たりえるが、これは妖怪メダルの制作の際、宣伝効果を考えて作られているからこその結果と言える。

そして、講演のキモであった各界クリエイターを生かすこと、そしてコンテンツ貫通プロデュースを担う日野氏の役割。日野氏がコンテンツを貫通するプロデューサーとして活動するには、「このプロジェクトでは、こういうことをやりたい」という思いを、全分野のクリエイターに理解してもらうことが重要だとした。

例えば「妖怪ウォッチ」の妖怪とは何なのか? 何を伝えたいのか? それらを各メディアのクリエイターたちに伝え、意思統一をし、共通した思想を持つことが、妖怪メダルのような仕掛けを作るうえで何より大事であったと述べた。また、いくつか学んだクロスメディアのコツついては、これからも通用していくと考えているらしい。

そして最後の教訓。皆の力を結集し、責任をもって引っ張るという図式にも、全員が指示で動くのではなく、それぞれのクリエイターたちが、それぞれの分野で考えて作ったものを活かし、反映することで、コンテンツのヒットを創出できると語る日野氏。

これまでやってきた多彩なクリエイターたちとのやり取りはとても充実したものであったことから、今後も同様のスタイルで作品づくりを続けていくと表明していた。

今後の日野氏の向かうところ

講演の最後に日野氏は、これからの抱負を語ってくれた。1つ目は「世界に挑戦するクロスメディア」。今後は世界に通用するようなクロスメディアを展開していきたいとのことだ。もう一方は、「クリエイター日本代表チームの結成」。世界規模で展開されているコンテンツの創出者・企業と渡り合える作品作りを旨に、いつかすごいクリエイターたちを集め、世界を驚かすものを作りたいと語ってくれた。

続けての告知は、10月17日に福岡・九州大学 大橋キャンパスにて開催される「KYUSHU CEDEC 2015」について。日野氏は今後、東京ゲームショウ2015とKYUSHU CEDEC 2015と続けて公演を行っていくが、講演のテーマは今回行われた「妖怪ウォッチ ゲーム・アニメ・映画・漫画・玩具~各界クリエイター共同戦線~」と同じテーマとされている。

しかし、講演内容はいずれも異なる3部作を予定しているらしいので、違う話も聞いてみたいという人は、今年の日野氏の動向に注目しておこう。

※画面は開発中のものです。

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