セガゲームスが2016年2月10日に発売するPS4用ソフト「戦場のヴァルキュリア リマスター」の開発陣インタビューを掲載。今回はプロデューサー・三神桂氏とディレクター・小澤武氏に、リマスター版から最新作まで、さまざまな話を尋ねてみた。

目次
  1. なぜ、戦ヴァルがリマスターされたのか?
  2. PS4版になって変わったことは?
  3. もしかして、2と3もリマスターされたり…?
  4. 最新作「蒼き革命のヴァルキュリア」について尋ねてみた!
  5. 良いとこ取りを目指したRPG
  6. プロジェクトの中の“新たなヴァルキュリアシリーズ”

2008年4月24日、PS3用ソフトとして発売された「戦場のヴァルキュリア(以下、戦ヴァル)」は、シミュレーションRPG+アクションを融合した斬新なバトルシステム、新世代ハードの“らしさ”を存分に引き出した水彩画風のビジュアル表現、2つの強大な勢力の間で巻き起こるアドベンチャーが特徴のタイトル。

その後も続編シリーズの展開をはじめ、2009年4月にはTVアニメが放送、作品人気は海外まで広がり、2010年にはギネス・ワールド・レコーズに「プレイステーション3史上最高のシミュレーションRPG」として認定されている。一介のゲーマーとしては、“次世代機PS3で遊べる新作ゲームとしてお披露目された時”に受けた衝撃こそ、忘れられるものではない。

そして、8年越しとなる今年2016年。シリーズ最新作「蒼き革命のヴァルキュリア(以下、蒼ヴァル)」の発表にあわせて、PS4用ソフトとして「戦場のヴァルキュリア リマスター(以下、リマスター版)」が発売されることが明らかにされた。これは黙ってはいられない! とばかりに今回は、“リマスターされた背景”と“同梱される蒼ヴァル体験版”について知るべく、両作品でプロデューサー・三神桂氏と、ディレクター・小澤武氏に話を伺ってきた。

左から三神桂氏、小澤武氏

なぜ、戦ヴァルがリマスターされたのか?

三神桂氏
三神桂氏

――最初に、お二方のシリーズへの携わりを教えてください。

三神氏:僕は「戦場のヴァルキュリア3(以下、戦ヴァル3)」でアシスタントプロデューサーを担当しまして、ほかには「戦場のヴァルキュリア DUEL」(現在、サービス終了)の開発初期のコンセプトや、二次商品などを手掛けてきました。

資料等で把握しづらい部分などは、小澤をはじめとした当時からのオリジナルスタッフに協力してもらっています。

小澤氏:戦ヴァルではメインプランナーとして参加し、同作の特徴的なシステム「BLiTZ」などを手掛けてきました。戦ヴァル2以降はディレクターを担当させてもらっていて、戦ヴァル3の時は世界観などの根本のところにも携わっていました。

三神氏:彼はリマスター版では監修で参加してもらっています。移植に関してはテクニカルディレクターなどの領域でしたので。今回はゲーム面を変えていないので、それらが変わってしまっていないかなどを見てもらっています。

――では、リマスターとして開発することになった経緯からお聞かせください。

三神氏:リマスター版は、シリーズの展開に少し時間が空いてしまったことで、新作発売時にユーザーさんが「ヴァルキュリアってなに?」とならないよう、導入としてプレイしてもらいたいという狙いがあります。そのほかの理由も色々とあって、戦ヴァルの海外人気の高さから生まれた需要であったり、開発のメディア・ビジョンさんがPS4に初参入ということで、蒼ヴァルに向けてPS4での開発フローを一度経験してもらうためだったりもあります。もちろん、PS4タイトルの開発経験は我々にも必要なことですし。

――PS4とPS3のワークフローはそれなりに違うということですか?

小澤氏:戦ヴァル自体がPS3の初期頃に発売されたタイトルなので、大分変化していますよ。例えば当時は「トロフィー(※PS4/PS3の機能)」が導入されたばかりだったのもあり、後に「なんで、戦ヴァルにはトロフィーがないの?」という声もいただきましたし。我々はその頃にはPSPでのシリーズ展開に移っていたこともあって、単純なハード機能のギャップも感じましたね。

――トロフィーに関してはどのような内容になっていますか?

三神氏:戦ヴァルに関しては、元々やり込み要素の一環として「勲章」を導入していました。当時のオリジナルスタッフたちが想定したやり込みは、全てそこに盛り込まれているので、今回のトロフィーは勲章に倣って、同じ内容に設定しています。

――なるほど。では、勲章とトロフィーが一緒に取れる感じなんですね。

三神氏:そうなりますね。無理な改変でファンの期待を裏切ってしまうのは本意ではなかったので。追加したものをあえていうならば、「プラチナトロフィー(全トロフィー取得が条件のトロフィー)」だけですね。リマスター版の制作に関しては、“オリジナルのリスペクト”を念頭において進めてきたこともあるので。

――それでは発表から先、ユーザーさんからの反応はいかがでしたか?

三神氏:Twitter上などでさまざまな反響を受けました。PS3時代から熱心にプレイされていて「凄くやりこんだけどPS4でも買います!」という方もいれば、「2、3は遊んだことがあるけれど、初代は遊んでいないので興味がある」という方もいらっしゃいますね。中には店舗での購入特典が欲しいので、と予約して下さっている方をチラホラと見かけます。

――想定している購入層に関してはいかがでしょう。

三神氏:反響でもありましたが、PS3の時には遊ばなかった、遊べなかったという方たちはもちろんのこと、当時遊んだ方も懐かしむには少し早いかもしれませんが、またプレイする機会になったり、PS4を買うきっかけにしてくれたら嬉しいですね。

小澤氏:当時は携帯ゲーム機が爆発的な人気を博していたこともあって、戦ヴァル2以降は中高生に向けたPSP展開をしてきました。ただ、その頃のユーザーさんの中には、「このシリーズはPS3のゲームが最初にあったらしい」「ヴァルキュリアってアニメとかで聞いたことある」なんて人も多いようだったので、8年経った今だからこそ、そういう思いをしていた層に訴求したい面があります。

三神氏:戦ヴァルを実際にプレイしてもらったうえで、新作の蒼ヴァルがその人たちにどう映るのか? 戦ヴァルを踏まえたあとに体験版の内容を楽しんでもらえるのか? そういう点も気になるところの一つです。

――あと、戦ヴァルって海外でものすごい人気なんですよね?

小澤氏:一つ顕著な出来事が、昨年11月に蒼ヴァルのPV第1弾をYotubeで公開したときです。動画のコメントが全て英語でした(笑)。一つ一つコメントを和訳して読みましたよ。

PS4版になって変わったことは?

小澤武氏
小澤武氏

――PS4へのリマスターということで、実際に変化した部分はなんでしょう?

小澤氏:リマスター版は実のところ、ゲーム面に関しては大きく手を入れていません。元々、絵画的なグラフィックエンジン「CANVAS」を採用していたこともあり、「PS4だからって、変に上げなくていいかな」と考えたんです。

当然、ハードスペックを活かした解像度1080pや、60フレーム描画などにはそれぞれ対応していますが、元の作品から大きく変えるようなことはしていないですね。

――確かに。無理に高精細にしても、CANVAS特有の淡い色調から外れてしまいそうですね。

小澤氏:CANVASも「BLiTZ」(戦ヴァル独自のバトルシステム)も、あれはあの形で完結しているものですからね。蒼ヴァルで表現を変化したのも、戦ヴァルを踏まえてです。

蒼ヴァルでも元々「CANVAS 2」だの、「NEO CANVAS」だの、そんな開発コードでグラフィック制作を進めていましが、「CANVASがあのまま進化しても良さが失われるだけで、先の表現はない」という結論に至ったことで、違うアプローチ「GOUACHE」(蒼ヴァルの新グラフィックエンジン)にたどり着きました。

――では、サウンド面も同じようなものですか?

三神氏:そうですね。戦ヴァルのサウンドはスタッフたちが「弾が横を通ったら、耳元でヒュンッと鳴るべきだろう(いわゆるドップラー効果)」と追求してきたこともあって、当時から5.1chに対応していましたし。元々やることはやっていた作品なので、PS4版ではサウンドミドルウェアの進化からくる違いくらいのものです。

――そのほかに調整した部分って、何かありますか?

三神氏:細かく調整が必要だったのは物理エンジンですね。これは当時と同じハード、同じバージョンではないので、試しにPS3版をそのままPS4へと移植してみたときは、「ん? 戦車が坂を登らないぞ?」とかの課題が発生しました。

小澤氏:戦ヴァルは物理エンジンによるパラメータで世界を形作っていたので、PS4でそれらがアップデート、または仕様変更されていたことで、当時のパラメータがまったく効かなくなっていたんです。全部再現するとなると、正直なところ途方もない労力がかかりますので、リマスター版は“違和感が生まれないような再現”で仕上げています。

三神氏:完成するまでも「戦車が塹壕から出られない」とか、「帝国兵に撃たれると遥か彼方に飛んでいく」とか、色々ありました。

小澤氏:元の戦ヴァルの開発時に、物理エンジンで全てを管理していたせいで、戦車がなにかの拍子に上空へと吹き飛んでしまい、戦車カメラから遠ざかっていく地面を見ながら、ついには天球も抜けて、真っ暗闇を飛んでいく、通称“ラピュタ”という現象に悩まされていたのを思い出しましたね。あの頃はみんなで「ラピュタでたー!?」とか言ってましたよ。

――聞く側にとっては笑い話ですが、目の当たりにすると大変そうですね。

三神氏:そのほかではフレームレートの変更に起因して、30フレームだと問題なかった場所が、60フレームになったことで隙間ができてしまったりであるとかの、細かい問題はありました。それとローディングはすごく早くなっています。

――おお、それはいいですね。個人的にはセーブ&ロードを重宝しすぎるプレイヤーだったので。

三神氏:「PS4さん、スゴイ!」って感じた場面ですね。全部PS4のおかげです。

もしかして、2と3もリマスターされたり…?

――リマスター版の制作には、当時からの開発者も携わっているのでしょうか。

小澤氏:メインスタッフが既に違う部署だったり、違う立場だったりするので、大分変わってはいます。リマスター版と蒼ヴァルでもずっと一緒なのは、私と田林大輔(シリーズ設定リーダー)、戦ヴァル3からの三神、あとは複数人のプログラマーやデザイナーくらいでしょうか。縁というなら、メディア・ビジョンさんもそうです。

三神氏:今も社内に残っている人には、色々とお願いしていますね。

――今回の流れを活かして、2と3もリマスターされたり…?

三神氏:リマスターといいますか、そもそも戦ヴァル2と戦ヴァル3はリメイクになっちゃいますよ(笑)。さすがにPSPから持ってくるとなると、物足りない部分が大きくなってしまうでしょうし、実際やるとなると、ええ、それなりのカロリーが必要になりますね。

小澤氏:戦ヴァル2は私の初ディレクター作品ですし、戦ヴァル3は設定など根本のところから携わっている作品ですので、そういう意味でもそれぞれ思い入れが強い作品たちです。やれればいいなーとは思いますが、やはり当面は蒼ヴァルに注力したいところです。

三神氏:考えるにしても、リメイクだけだとシリーズ全体が盛り上がりづらいので、やっぱり新作をしっかりとリリースした後でのお話になっちゃいますね。

――ちなみに、戦ヴァルは色々な作品とコラボやクロスオーバーをしていますが、その際の監修はどなたが担当しているのですか?

小澤氏:基本は三神がやっています。ただ、私に確認をお願いしてくることもあります。この前はシナリオ一式に目を通したりもしましたし。

三神氏:現在は「チェインクロニクル」と戦ヴァルのコラボが実施中ですが、僕は「チェンクロコラボとして適当かどうか」は判断できても、「戦ヴァルとして最適かどうか」は細かい部分で確信できないことあるので、確認してもらってます。もちろん、僕自身もシリーズ作品はしっかりと把握していますが、やっぱり最後のツメの部分で「これって、どうなのかな?」という意識がありますので、そういうときは小澤に見てもらっています。

――そういうのもあって、社内の席が隣同士なんでしょうか。

三神氏:今の席はそうですね(笑)。

最新作「蒼き革命のヴァルキュリア」について尋ねてみた!

――ここからは、蒼ヴァルに関してのお話を伺わせてください。

小澤氏:まず最初に、蒼ヴァルは戦ヴァルと完全に同じ世界観というわけではなく、「ヴァルキュリア」や「ラグナイト」など、いくつかのキーワードを一緒にした世界観での作品を作ろう! というのがそもそものスタートとなります。

舞台は1850年代の架空のヨーロッパ世界で、ラグナイトという物体を用いて急速な産業革命“蒼き革命”を果たしたルーシ帝国と、帝国に飲み込まれんとするユトランド王国が物語の中心です。

本シリーズでは、「戦争」というテーマをダイレクトに扱うことこそがキモなので、そこを大事にした物語を描いていきます。

――今回はファンタジー寄りな世界観だとお見受けしますが?

小澤氏:蒼ヴァルに関しては、人間同士の物語、ミリタリー感のある戦場などは残しつつも、“咒術(じゅじゅつ)”という魔法的な要素を取り入れることで、日本ユーザーに馴染みのあるファンタジー風味に仕上げています。

ちなみに、戦ヴァルでは“リアルミリタリー”を重点に置いていたことで、特徴としての良さと同時に、「銃」や「戦車」といったワードで忌避されてしまった面もあったんです。ミリタリーこそが海外でウケた要因でもあるので、一概に良し悪しでは語れないんですけど。

国内では当時、アリシアやイサラなどの美少女がビジュアルに立っていても、戦車と聞いて「洋ゲーチックなんでしょう?」「鉄臭いんでしょう?」「血なまぐさいんでしょう?」とイメージされてしまうケースが多々ありました。その反動もあって、戦ヴァル2では学園物にしたりと、大きく舵を切ってみたんですね。

――なるほど。私は“ゴリゴリのミリタリー感”に惹かれていたので、それは新鮮なお話です。

三神氏:もちろん、そういった方も多くいてくださります。ただ、小澤の話にも重なるのですが、日本には銃文化が根付いてないので、極端な例だと「怖い」と仰られる人もいるんです。

小澤氏:「剣で斬る」はファンタジーですが、「銃で撃つ」は途端に生々しく感じてしまうんですよね。

三神氏:だからといって「銃は撃ちません!これはファイヤーです!」と極端にしてしまうのもそれはやりたいこととは違うので、蒼ヴァルはあくまで、“受け入れてもらいやすい要素”を取り入れつつ、バランスを取っている形です。

小澤氏:ある種、今回はそこがチャレンジなんです。戦ヴァル2は“そこを逆側に振りすぎた”ことから色々な反響をいただきましたし、戦ヴァル3はその反響を考慮しながら、「戦争」というテーマを扱うということ、を私自身もう一度見つめ直して、設定やお話を考えました。戦ヴァル2、3を経て見えたこと、考えたことを踏まえて、そこに私や三神がやりたいことを加味して生まれたものが蒼ヴァルですね。

――物語の概要を見ていると、「大罪人」「復讐」「私怨」というワードが。ダーク、シリアスな展開になりそうですか?

小澤氏:ダークではありませんが、シリアスではあります。シナリオの大部分は私が考えさせてもらっているのですが、その際に、蒼ヴァルでは戦場のドンパチ、コミュニティの対立、お金や情報の概念だったりをひっくるめて、“戦争のさまざまな面”を描きたいと提案しました。面白がってくれた三神らスタッフたちからも、色々な案を提供してもらっています。物語中には、単純な構造かと思えば実は……? みたいなミスリードをたっぷりと仕込むつもりです。

三神氏:戦争のさまざまな面といっても、蒼ヴァルは資金や資材など数字を管理するゲームというわけではないので、それらの要素は全てシナリオに担ってもらい、ストーリーとして展開させていきます。基本はRPGですしね。色々な物事が戦争に結びついている様に注目していくと面白いかと思います。RPGだからって「謎のラグナイトで、謎の力を得た主人公が、謎の悪役をブッ倒していく」みたいなことにはなりません。

小澤氏:ラグナイトは、これまでのシリーズではただのエネルギー体でした。それを再解釈し、そこから咒術という概念を引き出し、新たな工業を生み出した世界なので、戦ヴァルとは異なる文明・社会構造の世界といっていいです。だからこそ、まったく新しい世界観になっていますので、これまでのシリーズ作品を知らないという人でもスンナリと入れるはずです。

良いとこ取りを目指したRPG

――従来のシリーズ作品とは違い、ジャンルを“RPG”に絞った理由はなんでしょう?

小澤氏:前述した通り、戦ヴァルのシステムが下手にいじって持ってきても、新しさを創出できないほどの完成度でした。

なので、今回は日本人に最も愛されているゲームジャンル「RPG」で、その層に即した形式でチャレンジしようと考えたことが前提にあります。

ただ、シリーズ作品を謳う以上、ここはヴァルキュリアらしく“戦術的なRPG”にしたかったので、蒼ヴァルではリアルタイム性のあるアクション感と、RPGでよくみるシンボルエンカウントの良いとこ取りを目指しています。

――ゲームの基本的な流れを教えてください。

小澤氏:蒼ヴァルでは任務を選択し、決められたマップを踏破して、クリアを目指していきます。戦闘マップではキャラクターたちを操作しながら、壁や土嚢に隠れたり、敵に銃撃をくわえたり、アイテムで相手の防衛を崩していくアクションパートと、その敵たちと密接距離まで近づいた時にバトルが起きる、RPGパートの2つが存在します。

どちらも操作に関してはアクション性が高くなっていて、敵もシンボルとはいっても単に歩いているだけでなく、こちらを見つければ銃撃してきますし、土嚢に隠れて狙い撃ちだってしてきます。エンカウント前が、相手に弱体化を与えて戦闘を有利に進める「銃などの近代兵器による戦闘」、エンカウント後が、さまざまな状態異常を判断しながら展開していく「剣や咒術によるファンタジーな戦闘」となり、基本はRPGパートで敵を倒す流れです。

あと、バトル体験版ではバトル部分しか遊べませんが、製品版では主人公たちのいるユトランドを本拠地にして、作戦を引き受け、目的を果たし、そして帰ってくるという流れでゲームを進めていきます。シナリオに沿った作戦を提案されることもあれば、ラグナイトの鉱山を押さえたことで、流通されるアイテムが新しくなるなどの工夫も考えています。プレイスタイル的には、拠点からダンジョンに行く感覚が近しいでしょうか。

――私も事前に体験版をプレイさせていただいたのですが、RPGパートの戦闘もアクション性が高めですよね。

小澤氏:昨今のRPGの時流と、本作により合う形を模索した結果、やはり旧来のコマンド選択型は廃れてしまっているので、移動・攻撃・回避などをユーザーが自由に操作できる形式にしました。ただ、社内でも若干「アクション過ぎやしないか?」という意見があるので、戦闘中のターゲット方式なども含めて、ユーザーさんからの意見を待ちたいところです。

――先程仰られた、アクション感とシンボルエンカウントの関係性についても詳しく教えてください。

小澤氏:ユーザーさんの中には、移動も戦闘も何もかもがリアルタイムで進行するマルチタスクなゲームが苦手だという人がいると思います。例を挙げれば、RTSは“移動や攻撃など状況が全てリアルタイムに進行”するのでマルチタスクなゲーム、RPGは“移動や戦闘が切り分けられ、直面した課題に対応”すればいいシングルタスクなゲームということです。

戦ヴァルは「迎撃」の概念によって、少数の敵が相手でも濃密なリアルタイム性が生まれていましたが、究極的にはターン毎の1人1人の操作です。しかし、蒼ヴァルのバトルシステム「LeGION(レギオン/軍団、軍勢などの意)」は、アクションパートが完全なリアルタイム性を保っており、敵味方共に見たままのやり取りが行われます。

そして、システム名の通り、基本的に敵は軍勢で待ち受けることが多いので、敵の数が多い難所に無策でつっこむと、膨大な数を相手取り、それと一気に戦うことになって、ボコボコにされてしまいます。

――では、それらの解決方法は?

小澤氏:はい、シンボルエンカウントって、フィールドに相手がいて、ぶつかると戦闘が始まるじゃないですか? 蒼ヴァルでは敵とエンカウントすると“周辺区画に一定のバトルフィールドが形成”されるようになっています。私はこれを「戦場を切り取る」と表現していますが。

ようは目の前に10人の敵がいたら、10人と一気に戦うのではなく、vs3人、vs3人、vs4人と戦場を小分けにして、敵を倒していけるシステムです。「ここは右から行こう」などを考えて、敵に銃撃し、釣った敵と、ミニマップ上に表示される「バトルフィールド形成時に、そこで戦うことになる敵の数」をチェックして、戦術的に戦っていくことが大切となります。

――なるほど。だから私は軍勢に囲まれてボコられたんですね。

小澤氏:周囲に存在している敵と一斉に戦うのがリアルなシームレスだとすれば、RPGにおける、閉じられたバトルフィールドの概念は独特なものだといえます。

でも、蒼ヴァルは結局のところRPGですし、RPGならではの「ここからバトルに切り替わったよ」を分かりやすくしていることで、ユーザーさんも頭を切り換えやすいはずです。何よりも、アクションパートのリアルタイム性を、RPGパートで一度切り分けること、そういう交互に行き交うシングルタスク化を目指しているということです。

――アクション性を持たせるためのシンボルエンカウントということですか。

小澤氏:私は常々、RPGに出てくるシンボルエンカウントが「歩いているだけではもったいない!」と考えていて、シンボルがあるならば、そこに何かしらのアプローチを持たせたかったんです。

だから囮や索敵、銃撃でダメージや弱体化を与えたりと、バトルに向けた事前準備ができるようにしています。製品版ではアムレート、オフィーリア、ブリギッタたちのサブウェポンも入れ替えられますので、戦術も広がりますよ。

三神氏:この話を受けた時に僕は、「敵がちゃんと軍団として存在していてほしい」と意見しました。

シンボルエンカウントだと、画面上は1体の敵シンボルで、エンカウントすると敵がワサーっと増えるものが多いと思うのですが、ああいうのではなくて、敵には数も質も見たまんまで、ちゃんと構えて布陣していてもらいたいんです。

パッと見たときに、「やべっ、敵がメッチャいる!」という気持ちを提供したかったんですよね。

小澤氏:敵の大群を実在させつつ、それらとしっかり戦うために出した結論が、今回の「LeGION」というわけです。このシステムを通して、主人公たちの精鋭さやその活躍を体験してもらいつつ、戦場全体で巻き起こる影響や展開だったりを感じてもらえれば嬉しいですね。

――そうなると、ゴリ押しができないタイプのゲームになりそうですね。

小澤氏:それがそうでもないです。蒼ヴァルはやはりRPGなので、レベルさえ上げればゴリ押しができます。強くなったことの実感、というのがRPGの醍醐味のひとつでもありますし。

ただ、今回の体験版においてはキャラクターのレベルをそこまで大事に考えていなかったのですが、色々な人に試しに遊んでもらったところ、「これ、RPGなんでしょ?」とコメントをもらいましたので、RPGらしく“負けたらレベルを上げて倒す!”に対応できるように修正しました。

「LeGION」を楽しんでもらうことで頭が一杯になり、RPGの醍醐味を伝えることを忘れていました…反省しきりです。もちろん、“俺はテクニックで勝つ!”という方は、低レベルでのクリアを目指してみてください。

――ちなみに、体験版では相手によってでしたが、武器によってはアクションパートの射撃だけで、敵を倒すこともできたり?

小澤氏:できます。いくら銃撃で敵を弱体化させられても、実際にダメージのやり取りがないと、プレイする側は手ごたえがないじゃないですか? なので、武器や相手によってはできるようにしてありますが、時間がかかってしまうようにはなっています。安全をとるか、時間をとるか、そこも戦術ですね。

あと、体験版の時点では十分に機能していないこととして、画面上に「戦況ゲージ(下記SS上部、青:赤のゲージ)」が表示されているのですが、あれは今現在の戦場における戦況を表しているんです。

――……ステージクリアまでの残存戦力ゲージだと思っていました。

小澤氏:体験版の時点ではそういった意味で捉えておいても間違いではありません。ただ、製品版では戦況で、こちらが優勢になると敵がビビッて後退したり、対して劣勢になると敵が堂々と進軍してきたりと、色々な影響を見せられるよう開発しているところです。ヴァルキュリアが出てくると敵の士気が上がり、一気に盛り返されたりとかも構想中です。

――最終的な仲間の同行人数とか、仲間へ命令を出すシステムとか、聞いても大丈夫ですか?

小澤氏:ミッションに同行できる仲間の人数は、最終的に4~5人にしようかと検討しているところです。仲間への命令などAIに関してですが、各ユーザーがそれぞれの攻略パターンを構築できるよう、何らかの形で導入していくつもりです。

プロジェクトの中の“新たなヴァルキュリアシリーズ”

――咒術の“咒”の漢字が難しい字ですが、理由はありますか?

小澤氏:色々と設定を考えているのですが、今のところは秘密です。ちなみに、蒼ヴァルの世界は「車輪のない世界」なんですよ。リアル世界をベースにしつつも、ヴァルキュリアだったり、咒術だったり、表立っては出てきませんがドラゴンだっているファンタジーな舞台なんです。

だから、兵器の概念を形にした「咒機(じゅき)」のコンセプトは、我々の世界の車輌とは異なり、きっと「狂暴な怪物を作ろうぜ!」からはじまって、生物を模倣した造形(※体験版で出現)になるんです。

――咒機に主人公側が搭乗することもあったり?

小澤氏:それはないです。ユトランドは技術立国として技術は確かなのですが、もともと資源に乏しく、今は列強の経済封鎖のせいでラグナイトが枯渇していまして、咒機の研究が立ち遅れているんです。まあ、だからこそ解放戦争を仕掛ける流れなんですけどね。

――個人的なファンということで恐縮ですが、キャラクターデザインに清原紘氏が加わった背景ってどんなものでしょう?

小澤氏:(三神氏を指して)この人のイチオシです。

三神氏:最初に、キャラクター以外にも魅力的なメカも描いていらっしゃるタカヤマさんは決まっていたんですが(蒼ヴァルのキャラクターデザインはタカヤマトシアキ/清原紘の2人体制)、敵味方で色を変えようという思惑もあり、もう1人のキャラデザを立てることは予め決めていました。僕としては、小説の表紙イラストなどで個人的に目に留まっていたイラストレーターさんとして、清原さんをチームに提案しようかと考えていたんです。

小澤氏:その当時、スタッフ同士でイラストを持ち寄って、色んな絵を見比べてみたんです。中でも、三神がもってきた清原さんの絵を見て、私を含めて「この絵、イイね」と感じた人が多くいたのがきっかけとなります。その後に「この絵、どなたの絵?」と聞いたという流れなので、私たちは「清原紘」というワードをまったく知らない状態から選んだことになりますね。

――最後にシリーズを待ち侘びているファンへの一言をお願いします。

三神氏:僕たちは今、PS4を主軸に「ヴァルキュリア」を再始動しています。「蒼き革命のヴァルキュリア」に関してはシリーズ最新作として認知されている方もいらっしゃると思いますが、蒼ヴァルは蒼ヴァルで、“ヴァルキュリアプロジェクトという大きな括りの中で、新たに展開するシリーズ”として作っています。

そして、今回発売される「戦場のヴァルキュリア リマスター」は、改めて原点を楽しんでもらえるよう制作したタイトルです。当時プレイした人も、そうでない人も、この機会にぜひ遊んでいただけると嬉しいです。もちろん、製品には蒼ヴァル体験版も同梱されていますので、プレイしていただいた際はぜひ、ご意見・ご感想をいただければと思っております。

小澤氏:2008年から8年ぶり、感慨深いです。作った側がいうのもなんですが、戦ヴァルは今プレイしてみても面白いです(笑)。「BLiTZ」「CANVAS」も8年ぶりにしてはまったく色褪せない出来で、「これはスゴイものだなー」と手前味噌ながら感じました。なので皆さん、ぜひともプレイしていただけたら嬉しいです。

そして、新作「蒼き革命のヴァルキュリア」はイズムを同じくしつつも、ゲームだったり、ストーリーだったり、遊び方だったりで、色々と新体験を提供していきます。三神が言ったように、蒼ヴァルの世界観を使ったシリーズ展開として、たとえば「じゃあ、10年前には何があったのか」「同じときに違う国では何が起きていたのか」「そもそもラグナイトとは何なのか」みたいなことを通して歴史の一大絵巻を描いていく、そんなことができたら楽しそうだと考えています。

もちろん、ゲーム性を支える「LeGION」「GOUACHE」も、戦ヴァルに負けず劣らずの完成度を目指していきます! 蒼ヴァルは冬の発売予定に向けて鋭意制作中ですので、体験版での皆さんからの意見もどんどん反映していきたいと思います。戦ヴァル、蒼ヴァル共々、これからもよろしくお願いします。

――本日は2作に渡って、たくさんのお話ありがとうございました。

戦場のヴァルキュリア リマスター

セガゲームス

PS4ダウンロード

  • 発売日:2016年2月10日
  • 12歳以上対象

※メーカー発表情報を基に掲載しています。掲載画像には、開発中のものが含まれている場合があります。

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