スパイク・チュンソフトは、PS Vita/ニンテンドー3DS/PC(Steam)用ソフト「ZERO ESCAPE 刻のジレンマ」を、本日6月30日に発売する。シリーズをプレイしてきた筆者による、本作のプレイレポートをお届けしよう。

目次
  1. 唐突に告げられた、絶望に満ちたデスゲームの始まり
  2. 貴方の決断1つに、人の生死がかかっている。

本作は、2009年「極限脱出 9時間9人9の扉」、2012年「極限脱出ADV 善人シボウデス」と続いてきた「極限脱出」シリーズの最新作にして最終作。“ゼロ”を名乗る謎の怪人物によって、とある施設に閉じ込められ、強制的にデスゲームへと参加させられた9人の脱出劇を描いている。シナリオは、シリーズを通してシナリオ&ディレクションを担当してきた打越鋼太郎氏が務める。

本稿では、「ZERO ESCAPE」のストーリー概要やシステムなどを中心に紹介しつつ、合間にインプレッションとして筆者の感想を挟んでいきたい。ネタバレ要素が強い作品のため、ストーリーに触れる部分は最小限に押さえるが、その中から同作の魅力を感じ取ってもらえれば幸いだ。なお、プレイの際に使用したハード、および掲載しているスクリーンショットは、PS Vita版となる。

唐突に告げられた、絶望に満ちたデスゲームの始まり

舞台は2028年12月31日、ネバダ砂漠にある実験施設Dcom。とある理由から共同生活をはじめていた9人だが、ある日、彼(彼女)らは監禁室の中にいた。

左腕には見覚えのない黒い腕輪(バングル)。何が何だか分からないといった様子で困惑する9人。そこに、“ゼロ”を名乗る人物が現れ、唐突に、Decisionゲームのスタートを告げる。C、Q、Dから成る3つの区画に3人ずつ分かれて収容されることになった彼ら。果たして生き残るのはチームは? 彼らの決断には、全人類80億人の未来がかかっている……。

以上がストーリーの概要だ。本作の注目ポイントは、9人の男女が3人1組のチームに分けられ、3つの区画に隔離されているということ。区画内であれば自由に移動できるが、活動時間は90分に制限されており、90分経つと、手首に装着されたバングルから麻酔薬と記憶消去薬が投与され、深い眠りと同時に記憶を失ってしまう。目を覚ました時は、自分たちの現状が分からないまま、新たな90分間を活動することになる。

本作では90分間を、1つの「物語の断片」として進めていくのだが、怖いのは、物語の断片が作品全体のどの時系列に位置するか分からないということ。つまり、キャラクター同様、プレイヤーも、いま自分がプレイしている時間が、どの時系列に位置している物語なのか分からないのだ。手がかりとなるのは、バングルに設置された時計機能で現在の時間を知ることができるということだ。

貴方の決断1つに、人の生死がかかっている。

ゲームは大きく分けて、クエストパート、シネマパート、ディシジョンパートの3つだ。1つずつ説明していこう。

シネマパートは、テキストウィンドウを通さず、文字通り映画を見ているかのような気分を味わえるパート。今作は、全体的にリアル寄りのキャラクターデザインになっているためか、前作、前々作以上に実写的なリアリティを感じた。

ストーリーも全体的にアダルト(大人)さを感じさせる内容になっており、キャラクターがいちいち人間臭い。「こういう人いるよね」と素で思わせてしまうようなキャラクター作りは、さすがの秀逸さだ。本作は謎解きのほか、彼らが織りなす人間ドラマも絶対に外せない要素なので、その辺りもぜひ注目してもらいたい。

個人的には、前作のシグマとファイが登場しているのが嬉しかった。シリーズファンの方は、彼らの違いを比べてみるのも面白いかもしれない。

クエストパートでは、施設や部屋を探索して、仕掛けられた謎を解き明かしていくことが目的となる。制作室、娯楽室、管理室、書斎、トランスポータールーム、ヒーリングルームなど、仕掛けの内容は部屋ごとに異なる。

例えば制作室では、ニッパーやドライバーでロボットの起動を行う謎解きが存在するなど、部屋の特色と謎解きの内容がリンクしている点が面白い。筆者が最初に挑戦したヒーリングルームは、スイッチを入れただけで部屋の壁紙や内装が一瞬で変化したり、花をテーマにしたパズルがあるなど、どことなく癒やしを感じる面も。

謎解きに関しては、ちゃんと考えないとクリアは難しい、やや骨のある難易度設定となっている。ただ、ヒントは随所に含まれているし、仲間が助言してくれることもあるので、謎解き初心者でも十分クリアできる内容になっている。

筆者もどちらかというと脱出ゲームがあまり得意な方ではないが、そんな筆者でも、少々苦戦はしたがきちんとクリアできた。このさじ加減は、ディレクションを担当した打越氏の絶妙なバランス感覚によるものなのかもしれない。いずれにせよ、「謎解きは苦手だから……」と二の足を踏んでいる方も安心してチャレンジしてみてほしい。

続くディシジョンパートは、ゲームの流れに大きな影響を与える「究極の決断」を迫られるもの。筆者が経験した決断の1つは、選択次第で人の生死が決まってしまうという、選ばされる方としては非常にキッツイ内容(褒め言葉)。

公式サイトでは、実弾が発射される確率が50パーセントの銃を引くシーンが紹介されているが、このレベルの決断が数種類あるのだから、はっきり言って生きた心地がしない。自分の選択によって悲惨な結末を迎えてしまうと、とても申し訳ない気持ちになってしまうのである。まあ、これこそが本作が持つ独特の魅力なのだとは思うが……。これから本作をプレイするという方は、ぜひ覚悟して臨んで欲しい。

インプレッションは以上となる。すでに伝えられている通り、今作「ZERO ESCAPE」で「極限脱出」シリーズは終わりを迎えるわけだが、最初の発表では「ついにフィナーレを迎えるのか……!」と、いちファンとして感慨深いものを感じたのだが、いざプレイしてみると「ああ、今回で終わっちゃうのか」と寂しさを感じたのも事実。

謎解きアドベンチャーゲームの代表格として常に新鮮な驚きを届けてくれたシリーズだけに惜しい気持ちもあるが、有終の美を飾る本作の内容を、ぜひその目で確かめてみてほしい。そして見届けて欲しい、シリーズ最後の謎を。

ZERO ESCAPE 刻のジレンマ

スパイク・チュンソフト

PCダウンロード

  • 発売日:2016年6月30日
  • Steam

※メーカー発表情報を基に掲載しています。掲載画像には、開発中のものが含まれている場合があります。

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