朝日学生新聞社は、「朝日小学生新聞」の読者を対象とした実態調査「子どもとゲーム」のレポートを公開した。

目次
  1. 調査概要
  2. 小学生の家庭でのゲーム実態
  3. 小学生にとっての勉強とゲーム
  4. ゲームと子どものコミュニケーション能力/親にとってのゲーム
  5. 東大馬場教授に聞く、子どもにとってのゲームの有用性と望ましいルール

朝小読者を対象に、家庭で遊ぶゲームについてのアンケート調査が実施された。本件では小学1年生~6年生の男女723人から有効回答を得たのち、あわせてその保護者にも子どものゲームに関する調査が行われている。その結果、子どもたちの87%がゲームを好きで、ゲームを楽しんでいる子と禁止されている子で成績が変わらないことが判明したとのことだ。

調査概要

小学生はゲームが好き。ルールの中でゲームを楽しむ子、約90%。

  • 小学生の86.7%がゲームが好き!学校でもゲームの話題がたびたび登場。
  • 88.5%の子が、家庭内でのルールに従ってゲームを楽しんでいる。ゲーム禁止の子は4.4%。
  • ゲームに関するルールの内容は、「宿題や勉強を済ませてから遊ぶ」「ゲームをしていい時間が決まっている」など。
  • ゲームの頻度は1週間のうち3.1日、1日(1回)平均55.9分。

「ゲーム禁止」と「OK」、親から見て成績は変わらず。44%が「ゲームが役に立った」

  • 朝小読者はゲームだけでなく勉強も好き!81.1%が「勉強が好き」と回答。
  • 1日の勉強時間はゲーム禁止の子が長い(92.2分)が、ゲームをする子も平均80.3分勉強している。
  • 親から見て、ゲームをしていても成績が良い子が9割(92.5%)!ゲーム禁止の子(92.6%)とほぼ変わらず。
  • 44.0%の子どもがゲームが勉強の役に立ったと回答。ゲームをする頻度が高い子ほど「役に立った」と回答。いちばんの効果は、「いろんな知識が身につく」こと。

ゲームをする子の方が家族や友だちとのコミュニケーションは多い。

  • ゲームOKの子は家族との会話も、友だちも、ゲーム禁止の子より多いことが判明。

東京大学大学院 馬場章教授に聞く、子どもにとってのゲームの有用性と望ましいルール

  • ゲームはルールを決めて遊ぶべきだが、親が一方的に決めるのではなく、親子で話し合ってお互い納得して決めることが重要。
  • ゲームと勉強は対立しない。勉強前のゲームは勉強の能率アップにつながり、また直接的に勉強に役立つゲームもある。上手く 取り入れる工夫を。
  • ゲームはコミュニケーション能力やリーダーシップ、向上心の醸成にも役立つ。

実施時期:2016年6月16日(木)~6月27日(月)
調査手法:朝日小学生新聞読者に対するインターネット調査
有効回答:全国の「朝日小学生新聞」の読者の小学1年生~6年生の男女723人、およびその親723人

小学生の家庭でのゲーム実態

小学生はゲーム好き!学校でもゲームの話題がたびたび登場。88.5%の子が、家庭のルールに従ってゲームを楽しんでいる。ゲーム禁止の家庭の子はわずか4.4%。

朝日小学生新聞の読者である小学生の子どもたちを対象に、ゲームの実態について調べてみました。まず、ゲームが好きかどうかを聞くと、「好き」と半数以上(55.7%)が答え、「まあ好き」(31.0%)と合わせ、計86.7%の子どもたちがゲームが好きだと答えています。当然、ゲームが学校での話題に上る頻度も高く、「よくある」(29.0%)、「時々ある」(35.7%)を合わせ、計64.7%が学校でゲームのことが話題になると答えています。

また、家庭でのゲームに対するルールについて聞くと、「ゲームで遊んでいいが、ルールや決まりがある」(88.5%)が最も多く、以下「ゲームで遊んでもいいし、ルールや決まりもない」(5.9%)、「ゲームで遊んではいけない」(4.4%)となっています。

ゲームに関するルールの内容は、「宿題や勉強を済ませてから遊ぶ」「ゲームをしていい時間が決まっている」「夜遅い時間に遊ぶのは禁止」。ゲームの頻度は1週間のうち3.1日、1日(1回)平均55.9分。

上述のように、約90%の小学生の家庭でゲームに何らかのルールが設けられていますが、ゲームのルールの具体的な内容を聞くと、「ゲームをする前に、宿題や勉強をすませないといけない」(61.7%)、「1ヶ月または1週間や1日に何時間までゲームをしてもいいか決められている」(47.9%)、「夜遅くにゲームをしてはいけない」(43.5%)などがあげられました。ゲームで遊ぶ頻度は、1週間のうち平均で3.1日、1日(1回)のゲーム時間は平均55.9分。家庭ごとのルールに従ってゲームを楽しむ様子がわかります。

小学生にとっての勉強とゲーム

朝小読者はゲームだけでなく勉強も好き!1日の勉強時間は「ゲーム禁止」の子の方が長い。親から見て成績が良い子の割合は、ゲームをするしないは関係なく、約90%にも達する!

続いて、ゲームと勉強の関係性について見てみます。まず、小学生全員に勉強が好きかどうかを聞くと、「好き」(30.7%)、「まあ好き」(50.3%)を合わせ、計81.1%もが「好き」と回答。朝小読者は、ゲームも勉強も好きな好奇心旺盛な子たちのようです。

彼らに宿題や勉強をする時間を聞くと、1日平均81.4分となりましたが、これをゲームで遊んではいけない、つまり禁止されている小学生(27人)と、遊んでいい、ゲームOKの小学生(575人)とで比較すると、ゲーム禁止の子が平均92.2分、ゲームOKの子が平均80.3分と、ゲーム禁止の子の方が長いです。

もっとも、ゲームで遊んでいる子も80分強は勉強をしていることを考えると、ゲームで遊んでいても、勉強の時間はきちんと設けていることがわかります。親に子どもの成績を聞くと、成績がよいという回答は、ゲームを禁止されている子の親で92.6%、ゲームOKの子の親で92.5%とほぼ変わりません。

44.0%の子どもがゲームが勉強の役に立ったと回答。週5日以上ゲームする子では59.5%。いちばんの効果は、「いろんな知識が身につく」こと。ゲームOKの子はゲームを勉強に役立てようとしている。

ゲームが勉強に役立つことはあったかを聞くと、44.0%が「役に立つことがあった」と回答。ゲームOKの子の49.2%が「役に立った」と感じ、週に5日以上ゲームをする子では「役に立った」という回答が59.5%と上がっています。

具体的に勉強の役に立った内容を聞くと、「いろんな知識が身についた」(65.1%)が最も多く、次いで「集中力が上がった」(23.0%)、「計算問題が早くなった」(22.0%)が上位にあげられました。ゲームOKの子は、勉強にもゲームを役立てようという意識があることがわかります。

ゲームと子どものコミュニケーション能力/親にとってのゲーム

ゲームOKの子は家族との会話も多く、友だちに囲まれている。ゲームが子どものコミュニケーションにプラスの効果をもたらしている。

家族との1日の会話時間について聞くと、ゲーム禁止の子で71.4分、ゲームOKの子で80.5分となり、ゲームOKの子の方が、家族とのコミュニケーションをとる時間は長いようです。また、「友だちや仲間が多い」という回答も、ゲーム禁止で74.1%、ゲームOKで80.7%と、ゲームOKの子がゲーム禁止の子を上回り、ゲームが小学生のコミュニケーションツールとなっていると考えられます。

ゲームにいろいろなメリットがあれども、親のほぼ全員(98.1%)が子どもにルールを守ってゲームを楽しんでほしいと考えている。

これまでの調査で、子どもがゲームをしても成績にマイナスの影響はなく、勉強にゲームを活用していたり、ゲームがコミュニケーションにプラスの効果をもたらす可能性があることがわかりましたが、親にゲームについての考えを聞くと、「ルールや決まりは必要だと思うし、実際に作っている」(88.9%)、「ルールや決まりを作るべきだと思うができていない」(9.1%)を合わせ、実に98.1%がルールを設けるべきと考えています。ゲームをすることで子どもにとっていろいろなメリットがあれども、親からすればルールを守って遊ぶことが大前提のようです。

東大馬場教授に聞く、子どもにとってのゲームの有用性と望ましいルール

ゲーム研究の第一人者である、東京大学大学院情報学環馬場章教授に、子どもにとってのゲームの有用性と、望ましいルールについて解説していただきました。

ゲームはルールを決めて遊ぶべきだが、親が一方的に決めるのではなく、親子で話し合ってお互い納得して決めることが重要。ルールは子どもから親に報告させる形で守っているかチェックするとよい。

ゲームには子どもにとってさまざまなよい効果がありますが、薬も飲みすぎはよくないように、制限なしで遊ばせては生活リズムの乱れなどにつながります。そこで調査でも認識されていたように、ルール決めが必要になる訳ですが、その際大事なことは三点あります。一つはルールの決め方。親が一方的に決めるのは望ましくありません。ルールを決めるときは親子で相談して、お互いが納得できるように決めます。その過程で子どもの家庭の中での社会性が芽生えます。

二つ目はルールの内容。昔は「ゲームは1日1時間」と言われていましたが、今の子たちは忙しいので1時間はできない子もいます。ただ、30分では満足できないので週末まとめて遊ぶ。このように子どもの置かれている状況、環境に合ったルールを決めるべきです。三つ目は決めたルールを守ること。親が厳しく言って守らせるのではなく、子どもに自ら管理させましょう。それを親に報告させる。そこでゲーム外のコミュニケーションも生まれます。

今の多様化した家族の中で、子どもの行動を把握するには、子どもに表現させることが大事です。また、ルールを破った際の罰則を決めるより、守れた時にほめる方がよいでしょう。

ゲームと勉強は対立しない。勉強前のゲームは勉強の能率アップにつながり、また直接的に勉強に役立つゲームもある。上手く取り入れる工夫を。

ゲームが勉強に役立つか、ですが、ゲームと勉強は対立するものではなく、むしろさまざまな要素が重なっています。そもそも、子どもたちをこれだけ社会に根付いているゲームから遠ざけるのは現代においては難しい。ゲームはいけないものとして遠ざけるのではなく、よいものとして積極的に取り入れていく、そういう考え方が必要です。なお、ゲームの学習における具体的な効果は、主に二つあります。

一つは勉強の進め方に対する効果。私たちの研究では、最初にゲームで遊んでから勉強した方が、勉強の能率が上がるというデータがあります。ゲームで子どものモチベーションを高め、脳を活性化させた状態で勉強に持っていくことになるので、勉強前のゲームは効果的です。また、二つ目は直接的に勉強に役立つゲームがあることです。

ある種のシミュレーションゲームなど極めて精巧に作られたゲームは、直接的に知識の増大、成績の向上に結び付きます。ゲームは積極的に勉強に活用した方がよいと考えます。

ゲームは現代の社会で重要なスキルと言われているコミュニケーション能力やリーダーシップ、向上心の醸成にも役立つ。

ほかにもゲームの効果はさまざまです。今回の調査同様、私たちの研究でもゲームをやっている子の方がコミュニケーション能力は遥かに高いという結果が出ています。今のゲームはコミュニケーションツールであり、ゲームを話題にする、具体的には攻略法を相談する、新しいゲームの情報を交換するなど、現代ならではのコミュニケーションがゲーム内外で生まれています。それだけでなくリーダーシップも芽生えます。

ゲームの中で攻略法をいち早く身に付ける、集団を作って対戦するときに、リーダーシップを発揮するためです。そういう子どもに学校の先生が気づいて、日常の生活の中で役割を振ってあげると、その子は日常の中でもリーダーシップがとれるようになります。また、向上心も違います。向上心も、ゲームをうまくなろうという動機があるとゲームをやらない子より高くなります。この調査結果を敷衍し、ゲームではなく他の課題をうまく与えてあげるのが大事。

今の子は日常生活で悔しいと思う場面は少ないようなのですが、向上心の高い子は「悔しい」という思いを持っています。悔しいと思うとうまくいかなかった試験の問題をもう一度解いてみる、そういった行動に結びついていきます。そういった向上心がゲームをやっている子とやっていない子で違いが出てくるのです。

馬場章(ばば・あきら)

東京大学大学院情報学環・教授日本デジタルゲーム学会(DiGRA JAPAN)・会長

1958年茨城県生まれ。2005年より現職。専門は日本経済史、歴史情報論、コンテンツ創造科学。2003年、学生とともに制作したゲーム「組んでなんぼ」がゲーム学会第1回ゲーム作品コンペティションアカデミック部門大賞を受賞したことをきっかけに本格的にゲーム研究をはじめる。

2006年4月には日本デジタルゲーム学会(DiGRA JAPAN)を設立して初代会長に就任、2007年9月には学際的ゲーム研究の国際会議「DiGRA2007」を東京大学で開催し、大会組織委員長を務めた。社団法人コンピュータエンターテインメント協会(CESA)理事

※メーカー発表情報を基に掲載しています。掲載画像には、開発中のものが含まれている場合があります。

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