スパイク・チュンソフトが2016年8月4日に発売するPS4用ソフト「ウェイストランド 2 ディレクターズカット(Wasteland 2 Director’’s cut)」を紹介すべく、核戦争後の世界でたくましく生き延びる精鋭集団“デザートレンジャー”になってきました。
“真のポストアポカリプス(文明の終末、末期の世界観など)”の名を冠して発売される、クォータービュースタイルのRPG「ウェイストランド2 ディレクターズカット」。本作では、核戦争後のどうしようもない世界の中で、たくましく生き延びる“デザートレンジャー”の一員となり、さまざまな任務に赴いていく。
本作は1988年発売のRPG「ウェイストランド(Wasteland)」を初代とし、2012年にクラウドファウンディングサイト「kickstarter」で、目標額を大きく上回る290万ドル以上の資金調達に成功した続編「ウェイストランド2(Wasteland 2)」に新要素を追加したパッケージで、海外では昨年2015年に発売されている。
ゲームの中では、人類に明るい兆しをもたらすもよし、その場かぎりの享楽に身を投じるもよし、すべてはプレイヤーの選択次第である。奇抜な昆虫や機械の脅威にもめげず、荒廃した大地でバイタリティ豊かに生きる人々の生業、とくとご覧あれ。
CERO Z(18歳以上対象)に伴う注意事項
※本タイトルの年齢区分は、CERO Z(18歳以上対象)指定となります。それに伴い、本稿にもバイオレンスおよびグロテスクな表現が含まれる画像・動画が掲載されておりますので、18歳未満の方の閲覧はご遠慮ください。
ストーリーのあらすじ
地球に落下した隕石郡を敵国からのミサイル攻撃と誤認したことに端を発し、核戦争が勃発。悲劇の起こったその日、アメリカ合衆国陸軍のエンジニアチームは、砂漠の遠隔地にて、新設された刑務所やその周辺に点在するコミュニティのために橋を建設する任務に当たっていた。
兵士たちは、この核戦争を生き延びる最善の場所は刑務所であると判断。収容されていた死刑囚たちを砂漠へ追放し、代わりにコミュニティの住民たちを招き入れる。その後、彼らは砂漠地帯とその周辺における生存者の救援のため「デザートレンジャー」を結成、その活動を開始したのだった―。
終末の先? そんなことはどうでもいい。
どこかの国のお偉いさんが机上で描いた戦争により壊滅した……のかも、そこに生きている人たちにとっては定かではないこの世界。
そこら中にドブネズミのように繁殖しているのは、知性の欠片もないイカれた悪人、名状しがたい巨大な生き物、生命を持たぬ冷たいロボット、そしてそれらに怯える善良で脆弱な人々だ。そんな人たちの生活と尊厳と未来を守り抜くのが、我らがデザートレンジャーの仕事である。
ようこそウェイストランドへ。ここは人類の希望の地だ。
ゲーム開始時、プレイヤーは自身の部隊を作成する。部隊には計4人のレンジャー(キャラクター)が必要で、個別にエディットしていくか、もしくはデフォルトで用意されている中からそれぞれ選択できる。せっかくなのでがっつりエディットを決め込もうかと思っていたが、こういうゲームの類に漏れず、ビルド項目が非常にきめ細やかなために一度断念。
リーダーシップと口車に定評があるガスマスクの女隊長「コロッケ」をエディットした後は、デフォルト欄より乱暴者「ビッグ・バート」、侵入者「フェイド」、軍医「ピルズ」を加えて、即席チームを結成した。筆者は最初の1時間くらいを適当にプレイし、そのフィードバックからフルスクラッチで再スタートするタイプなので、まずは様子見なのだ。
しかし、1人1つだけ設定できるQUIRK(癖)だが、名称も絵柄も書いている文章も、ロクでもないものばかり。ウェイストランド(ゲーム内の大陸の名称も指す)の世情が図れるね。ちなみに部隊を作成した後、ルーキーからクレイジーまで4種類のゲーム難易度からいずれかを選択していく。後々どころか序盤すらも辛いので、分相応の選択を心掛けるべし。
インパクト大の実写終末ムービーを眺めた後、ゲームの幕が上がった。場所はアメリカでアリゾナ州と呼ばれていた辺り。貫録たっぷりのヴァ―ガス将軍なる人物と会話していると、コロッケ一同が新たに赴任してきたペーペーの「チーム・エコー」であること、最初の任務が“仲間を殺した犯人に正当な報いを与える”という栄誉な仕事であることが分かった。
なお、実際にゲームをプレイすると開始数十秒で理解できるかと思うが、本作における文字情報は質も量も非常に濃い。素早くアクセスできるログで、クエストの進行状況をいつでもチェックすることはできるが、ボタンをパパッと押して、会話を聞き流しているようだと、早々の内に「今、何でここにいて、何するの?」みたくなるので注意しよう。
しっかりと物語に没入するのです。
部隊作成画面に映っていた人だった。地味にイラストを反転しているこの気遣いが、将軍たる所以か。 |
無くならない嗜好品の煙草「ニコ・ポップス」。銘柄はエディット時に選ぶことができる。 |
コロッケ、死んじゃった。本作では死亡するとキャラクターがロストします。 |
墓前にあったシャベルで不届きな墓荒らしを試みた結果、正義の鉛玉で体中を穴だらけにされてゲームオーバーになってしまった。気を取り直して再出発。ゲーム開始時に自動的にセーブデータが残されているのは、すべてこの行いのためといっても過言ではないはず。
ゲーム内マップは「ワールドマップ」と「ローカルマップ」の2種類に分けられている。ワールドマップはRPGでよく見るシステム的なものではなく、“チームの移動アイコンを動かすたびに水分を消費する”ため、動き回っているだけで死のカウントダウンが刻まれていく。
水の余剰を把握しつつ、最善のルートを進まなければ、メンバーは水不足により脱水症状を引き起こし、移動する毎にダメージを受けてしまう。最悪、目的地に入った途端、無残な戦闘不能状態で地面に転がっている仲間たちを目にすることとなるだろう。ただし、マップ上には水分補給ができるオアシスが隠れているので、ここに九死に一生を賭けるのもアリだ。
とりあえず、ならず者が跋扈しているらしい無線塔にワールドマップから向かおう。隊長以外は銃火器を手に持っているのが見えるが、さてさてコロッケは何を持っているのだろう。
「棒」:棒。これ以上説明する必要はないだろう
「拳」:自分の手。他に何が必要だと言うんだ?
「XLサイズ・バック」:スーパーでメガなウルトラバッグ
ここはウェイストランド。油断した奴から命を落とす。
道端に落ちていたソードオフショットガンでコロッケを完全武装した後、無線塔の中を歩き回ることに。どうやら「レイダー」と呼ばれる、頭の故障に見舞われた無法者どもが辺り一体を占拠しているらしい。しかし、知恵も抜け落ちていたのか、コロッケの口車にのせることで敵とも味方とも呼べない間柄になった。まあ、自由に歩き回れるからいいけど。
そこから周囲を探索していると、なぜか地面にトースターが落ちている。トースターだ。パンが焼けるとチンって鳴って教えてくれるアレだ。そういえば、キャラクターエディット時、スキル習得の項目に「トースター修理」という文字があって、意味は分からなかったけど、なんとなくコロッケに覚えさせていたはず。とりあえず修理してみましょ。
すると、「まさかトースターの中に入っているとは思わなかっただろう?」とばかりに貴重そうなアイテムが出てきた。どうやらトースターとは、このウェイストランドにおける“宝箱”らしい。文字列の意味の分からなさを乗り越え、「スキル欄の1つ目だから、重要なのでは?」という疑心で確保しておいたのが功を奏した。世の中、何が役に立つのか分からないものね。
そんなこんなをしていると、前世の記憶を除けば初の戦闘に遭遇。敵の名はシンプルに「カエル」。しかし、私たちの世界で見られるカエルとは、おおよそ100倍くらいデカさが違う。ステゴロな日常生活で出会ってしまえば、まず勝てないだろう。
本作の戦闘は、ローカルマップ内にマス目が表示されるターン制のシミュレーションバトル。キャラクターがターンの順番毎に、動いて攻撃してを1人ずつ繰り返していく形式だ。移動・攻撃などの実行にはポイントが必要で、各自は持ちうるAP(アクションポイント)と行動制限の限り、それらのアクションを実行することができる。
正直、細かな項目が膨大にあるので、「スキル適性がないと戦力にならない」「回復アイテムはとても貴重」「セーブは小まめにしておこう」くらいの助言で済ませておく。設置物や遮蔽物を使った戦術、遠近のマス目を利用した戦略、やる気に溢れた釘バットで撲殺などなど、なにをどうするのかは部隊結成の時点で千差万別に違ってしまうのだから。
ちなみに、この世界のルールを教えてくれる妙齢の女性「アンジェラ・デス」から長い長い教示を受け切ったことで、アンジェラが同行者になってくれた。本作では、レンジャー4人+同行者3人の最大7人部隊まで編制できるのだ。ただし、彼らは新任レンジャーよりもはるかに心強い存在だが、ときどき命令を無視する。「暴走率」次第ではまったく役に立たない。
フォローするか、解雇するか、管理職みたいな葛藤を体験してほしい。
戦闘後、コロッケの経験値ゲージがいっぱいになった。1人だけ会話ターンでコツコツ貯めていたからだ。しかし、この世界では経験値が満タンになったからといって、超常現象のごとき「私、今レベルアップしました!」なんてイベントは起きない。だから無線。無線を使う。レンジャーの昇進(レベルアップ)には、無線で本部と連絡を取る必要がある。
原始的な世界の中でも、デザートレンジャーは組織の規範を重要視しているのか、こういうところではお役所勤めよろしく、判を押してもらわないといけないらしい。人類の秩序を回復させる模範的集団としての誇りがあるのだろう。“ゲームっぽくされがちな点”を演出で丁寧に潰しているのは好感だが、レンジャーたちにはどことない世知辛さを感じた。
任務に必要な情報を集めてクエスト達成。すると、新たな目的地が一斉にポップした。ここからは、各々の進め方次第でウェイストランドの行く末が変わっていくのだ。
ここで筆者の目についたのは、ウェイストランドの厳しい環境でも育つ植物を研究している「Agセンター」なる存在。センターが掲げているそのお題目が、まるで希望の光のように見えた。というわけで、歩いているだけでダメージを受け続ける汚染地帯を避けつつ、道中に隠れているオアシスで水分を補給しつつ、コロッケ一同はAgセンターを目指して行軍する。
なお、ワールドマップでは人や動物など、さまざまな外敵とエンカウントすることがある。イベントが発生してしまうと、そこでは交戦 or 撤退の2択しか選べない。しかし、撤退に失敗してローカルマップでの戦闘に移ったとしても、マップ内で敵とエンカウントしないよう、脱出地点のアイコンまで移動することができれば、戦闘せずに逃げ帰れる。覚えておこう。
そのほか、本作では戦闘に入らずとも、いつでも銃火器で射撃するなどのアクションが行使できる。タクティカルにスタイリッシュに切り抜けたい人は頭を悩ますべし。それにしても、さっきから無線に入ってくる救援要請が騒がしい。どうにも、コロッケたちがAgセンターに行くせいで、どこかが壊滅してしまうらしい。世紀末の英雄は全知全能ではないのだ。
一つのコミュニティの断末魔をBGMに。
ようやく辿り着きました、Agセンター。
こここそが、人類救済の始まりの地です。
そこで我々をお出迎えしてくれたのは――
ああ、“そういうセンター”ね。コロッケ一同を出迎えてくれたのは人間的な姿形の何か。気持ち悪く蠢いたと思ったら、爆発した。周囲を見回してみる。そこかしこには人間大の巨大ウジが何体も転がっている。頭くらいなら一口で持っていきそうな巨大ハエが不快な羽音を撒き散らしている。やっぱり、こういうセンターだわ、ここ。
そして、そんな気色の悪い虫たちに、己が拳で殴りかかるのが我らが一番槍、侵入者「フェイド」だ。彼のサブマシンガンは弾の消費が激しすぎたのだ。しかし、鍛えていない拳ではダメージも命中率も振るわない。生理的嫌悪もゲーム内の数値では計られない。それでもフェイドは命令のままに、ブヨブヨのウジに、毛だらけのハエに、その手を突き続ける。
ここはウェイストランド。レンジャーは命令に逆らえない。
フェイドの哀しき奮闘を仲間たちが労ってあげたのかはいざ知らず、マップの奥地に進んでいくと、厳重な機械式の扉が行く手を塞いでいる。が、扉前のドアフォンで応答を繰り返していると、白衣を着こなした高圧的な弱者「キャシー・ローソン」が扉を開けてくれた。
彼女との会話を簡単にまとめてみると、「食い物の代わりに保護する約束でしょ!」「あんたたちが来ないから8時間、殺人トマトと戦ったわよ!」「契約なんだから、さっさと仕事して!」とのことで、組織の末端としては従うほかない。はいはい、がんばりますよ、れんじゃーれんじゃー。
施設の奥にはもう一人、医学や化学に精通した「ローズ」という女性の姿が。彼女はどうやら同行者アンジェラとは既知の仲らしく、Agセンター内の探索にも付いてきてくれるようだ。ここ、アンジェラがいなかったらどうなったんだろう? 人と人との縁は大切にしたほうがよろしい。
Agセンター内を進んでいくと、毒ガスまみれ、爆発する植物、ムキムキのウサギ、人を縛り殺す植物などなど、人類の希望どころかマッドなサイエンスのワンダーランドであった。「死ぬより酷いことが待っている」とは、ここで誰かが発した台詞だ。
しかし、そろそろコロッケたちの弾薬が心許なくなってきた。回復アイテムも底を突きはじめている。でも、センター入り口にいる怪我人「マット・フォレスタル」の売り物は相場が高い。体力を12回復するだけの鎮痛剤が315$(序盤は大金)、医学の知識を持っていれば扱える回復アイテムはもう少し安いが、それでも数は揃えられない。
効果が低かろうが、知識を必要としないアイテムのほうが高いというのは、なんともニクいゲームデザインである。ただ、軍医「ピルズ」はファンキーなパープルボンバーヘッドの見かけながら、チーム内ではヒーラーとして献身的な存在だ。紫頭の天使である。ハンドガンだって撃てるし、最近はカマを振り回して、敵に斬りかかっている。天使である。
常時ダメージの毒を癒せず、次々とコロッケたちレンジャーが倒れていく中、どうにかこうにか攻略を進めていく。Agセンター内はかなり長期の活動が要求されるので、準備万端で臨むか、一定のタイミングで切り上げて体制を整えるなど、なんらかの措置を考えておくべきであった。
敵を倒すと手に入る「ジャンク」と呼ばれる素材・売却アイテムも一杯になってきたし、銃火器をたくさん見つけたときは重量過多でコロッケが動けなくなってしまったくらいだ。いまだスキルやパークの定番パターンも掴み切れてはいないし、はてさてどうしたものか。
そんな風に満身創痍で進行せざるを得ないことを気付きながら、現状への不平不満を漏らしたり、気持ちの悪い生物たちと果敢に闘ったり、施設内のユニークな人物たちと交流したりしていると……Agセンター内に悲劇が訪れた。
コロッケの相棒として活躍していたショットガンから吐き出された散弾が、モンスターに襲われている罪なきNPCの身体に、凶弾と化して降りかかったのだ。いや、だって、仲間同士だとフレンドリーファイアしなかったから、そのノリで撃ってしまっただけなんだよ、つい。
爆発する人間ガス爆弾の死体と、21g軽くなったNPCたちの死体が、汚らしい床にゴロゴロと転がっている。もはや誰が誰だかも区別がつかない肉塊の海に、同行者のローズ女史も「信じられない! この人間のクズ! 早くここから出ていって!」と魂のフレーズを浴びせかけてくる。
その日から、Agセンターは静かになった。
誰が着ていたものだろうか、物言わぬ死体から剥ぎ取ったサイエンチックな白衣に身を包み、イメージチェンジした隊長のコロッケ(※システム上、チーム内に序列などはない)。しばしの休息にデザートレンジャーの拠点「レンジャー・シタデル」に戻ったところ、ヴァ―ガス将軍から「立派に仕事をしてくれよ」とのお言葉を賜る。仰るとおりです。
「さて、これから先、どうしたものか……」。そんな風に途方に暮れているのかは私の知るところではないが、当のコロッケは曇天下の往来で、能天気に紫煙を燻らし、醜く臭いヤギの隣で、お気に入りの煙草「ニコ・ポップス」をのんでいる。
ここはウェイストランド。強き者の楽園だ。
弾詰まり? 運が悪かったな。
「戦闘中、ランダムで降りかかる弾詰まりには、寛容な心をもって対処しましょう」。これだけ覚えておけば不運に苛まれても傷口は浅い、「ウェイストランド2 ディレクターズカット」。
ポストアポカリプスの名の通り、分かりやすい理由でヒャッハーしてくる敵たちは印象的だが、それと同じくらい、SF的な観点からみても興味深いビジュアルが散在している。このクラシックでいてアナログチックな世界の中では、ビーム兵器と釘バットが共存しているからだ。
もし、仮にこれが最新VFXで形作られたゲームであれば、その対比はギャグに見るべきものであり、エンターテイメントとして捉えるガジェットとなる。しかし、こと「ウェイストランド」に関していえば、この世界の限界と本気さを表しているかのようで、未来的なビームと現実的な釘バットが、世界観としてもビジュアルとしても違和感なく共存している。
カッコよさとカッコわるさが混在した、地に足が付いた終末世界の土臭さは、パッと見で敷居の高いゲームに見えることは否めない。だが、ここまで記事を読んできたアウトローなゲーマーであれば、そんなこと構いやしないだろう?