パシフィコ横浜で開催中の「CEDEC 2016」にて8月24日、セッション「第1回 VRクラウド開発者会議 @ CEDEC 2016」が行われた。
モノビットとパートナー企業が発起人となり開催された本セッションでは、VRクラウドで今後必要となる、低遅延・広帯域通信技術の概要と、その具体的な開発課題などが説明された。また、VRクラウドにおけるモノビットのビジョンも紹介されている。本稿では、セッションの内容をまとめてみたい。
出席者
モノビット 最高技術責任者(CTO) 中嶋謙互氏
モノビット 代表取締役社長 本城嘉太郎氏
NTTコミュニケーションズ株式会社技術開発部担当課長 大津谷亮祐氏(Skypeでの出席)
サーバーワークス代表取締役 大石良氏
オキット 土橋ひとし氏
まずモノビットの中嶋氏から、VRクラウドの概要や、同サービスに必要な通信技術などが紹介された。氏いわく、低遅延であること、サーバコストが低いこと、ゲームエンジンと併用できることなどは、今後のキーになっていくことのこと。
インターネットを使った通信とは、いくつかの階層構造に分けて表現される。その分かりやすい例が、スライドにも登場している「DARPAモデル」だ。一番下の物理層とは、いわゆるハードウェアのこと。身近なところでは、PC、スマホ、ルーターなども含まれる。その上には、Link、Internet、Transport、Applicationといった流れになっている。モノビットでは今後、物理層までを含め、全体的な視点で遅延をどうやって小さくしていくかということに取り組んでいくとのこと。
続いて土橋氏が、インターネットの経路について自身の考えを披露した。まず、インターネットは距離が近いから遅延が小さいとは限らないとコメント。
では、距離ではなくレイテンシはどうなのか。モニターしておいてパパっと切り替えられればいいのだが、実際のところ、そういった方法を行うと、色々な部分で混乱が発生するという。例としては、オペレーションをミスったり、より早くしようと手を加えることによって繋がらなくなってしまうことなどが起こりえるのだ。物理があるかぎり、レイテンシを無くすことはできない。何がベストなのかを選択することはできるが、それをやっていくためには、オペレーションに負荷がかかる。
つまり残念ながら現段階では、これらの取り組みはあまり現実的ではない。これからは、ゲームのアプリとプロバイダとクラウドが協力する必要があると述べていた。
続いては、大石氏が口を開いた。氏は、先日Amazonが発表したALB、さらにサーバーレスアーキテクチャについて言及。今まではリアルタイムでゲームをやろうとしたらWebサーバーを立ち上げ、その中に色々なミドルウェアを入れてゴリゴリとやっていくのが一般的だった。しかし現在は、リクエストが来たらその時だけインスタンスが立ち上がり、処理を行い、処理が消えるという流れのシステムが出てきているという。
ただ現状では、TCPじゃないと上手くいかないなど、いくつかの制約もある。そのため、すぐVRクラウドに勢いが付くかというとそうでもない。とはいえ、少なくとも、これからはサーバーレスアーキテクチャが、1つのキーワードになってくることは確実なのではないかと大石氏は語っていた。