9月15日より幕張メッセにて開催されている「東京ゲームショウ2016」。ここではセガゲームスブースにて16日に行われたPS4専用タイトル「龍が如く6 命の詩。」のステージの模様をお届けする。
本ステージにはシリーズ総合監督の名越稔洋氏が登壇。まずは、今回のサブタイトルである「命の詩。」について説明を行った。タイトルに句点である「。」が入っているのはシリーズにひとつの区切りをつけるためと言われているが、この点について名越氏は「ドラマはどこかで終わりがあるべきですし、桐生一馬も普通に歳を取るという設定をつけているので、ちゃんと完結する流れをつけたい」とコメント。「命の詩」という言葉も決定までかなり長い時間をかけたそうで、「一生懸命考えましたよ」と語った。
先日、山下達郎さんが楽曲を提供することが発表され、こちらも話題を呼んでいるが、名越氏はかねてから「いつかお仕事をお願いしたい」と考えていたそうで、「自分の憧れた楽曲をたくさんお持ちのアーティストの方にお願いできたのは本当にうれしかったです」と感慨深げ。もっともタイアップの実現はかなり大変だったようで、「会社同士でOKがでてもその上に別の会社があったりするし、最後は本人が“いい”と言ってくれないと許諾はもらえないんです」と、過去の氷室京介さんや稲葉浩志さんらとのタイアップでも同様のことがあったと振り返った。
ゲーム内ではPVでも使用されている「蒼氓(そうぼう)」のほか、山下さんの有名なタイトルがさまざまな場面で流れるとのこと。荒々しい本作と柔らかく艶のある山下さんの楽曲は合わないのではないかと感じているファンもいるというが、名越氏は彼らの不安に一定の理解を示しつつ「僕自身が(山下さんの)ファンなので使いどころは誰よりも理解できているつもりですし、その点については保証します」と自信を見せた。
次のテーマはゲームのドラマの部分について。今回はおなじみの新宿神室町に加え、新たに広島県尾道仁涯町が舞台になっていて、「ハルト」と名付けられた遥の子供の父親を探しに桐生が広島へと飛ぶことになるという。遥に子供がいるという衝撃の展開について、名越氏はいろいろなところで文句を言われているそうで、「まるで僕が産ませたみたいな感じになっています」と苦笑い。ただ、企画段階も含めると13年に渡って続けているだけに「イタズラ感覚の設定ではありません」と強調。その上で「どうしてこういうシナリオになったのか。そして、こういう結末になったのか、ぜひ体感してほしいですね」とアピールした。
キャスト陣は相変わらず豪華のひとことで、今作ではビートたけしさん、宮迫博之さん、藤原竜也さん、真木よう子さん、小栗旬さん、大森南朋さんらが出演。ステージでは名越氏によるそれぞれのキャスティングについての説明が行われたが、面白かったが大森さんに関する部分だ。名越氏は大森さんのことを「間の抑揚や表情で演技をされるタイプの役者」と感じているが、PS2の頃は役者の微妙な表情の変化といった演技をなかなか再現できなかったのだという。
そのため、PS2時代は表現不足をセリフの量で補っていたが、名越氏は「芝居というのはセリフの量が多ければ多いほど説明的になってダレてしまう。本当はセリフではなく役者の力で見せるのが一番なんです」と不本意であったことを説明。それだけに、シリーズを重ねるごとに脚本の文字数が減って適正なボリュームになりつつあることを実感しているそうで、「こういう役者さんの演技が活きるような表情づけができるところまで、我々もきたんだなと今回痛感しました」と振り返った。
名越氏は今回のキャストがすべて一発で決定できたことにも言及。通常はある役者さんにお願いしたがスケジュールなどの都合でダメだったので、別の役者さんに依頼というように2番手、3番手の起用を考えることもあるというが、本作ではそうしたことはなく「きれいに一発で仕上げることができて、かなりツイていました」と語るなど満足気な表情を見せた。
そして、話題はいよいよゲームのシステム部分へ。今回はPS4にプラットフォームを限定し、専用のグラフィックエンジン「ドラゴンエンジン」を新たに開発。名越氏のネーミングで、当人は開発した技術者たちに付けてほしかったそうだが、「技術者はそうしたことが苦手で、なかなか決まらないので僕が1日で決めました」とすまなさそうに語った。
この新エンジンの採用により美しく、早く、滑らかな映像表現が可能になり、アドベンチャー、バトル、ムービーなどのすべてがシームレス化。「プレイヤーのエモーショナルな部分でも途切れのないパワーのあるエンジンです」と名越氏は胸を張った。これまでも「ロードがない」という体になってはいたが、そのために建物や出てくる人間の数を減らすなどいろいろとボリュームを抑えていたそうだ。だが、今回は量も出して美しさやスピードも担保できるだけに「PS4に絞って良かったと思います」と語った。
もちろん、バトル部分も大幅に進化。攻撃が当たった位置のわずかな違いによって相手のリアクションが変わるそうで、「理論上、同じモーションは一切発生しません」とアピールした。桐生をブースト状態にする「アルティメットヒートモード」も注目を集めているが、名越氏によると「任意にもっとヒートアクションを出したい」というユーザーの声に応えたもので、「出しすぎても大味になっちゃうので、そこはちゃんとバランスを取っています」とコメント。ボス戦で使うと昔のカンフー映画のような滑らかな殺陣ができるなど、「演出性の高いバトルを楽しめます」と説明した。
また、今回は主観視点でのプレイも可能。一部をのぞいてほとんどの部分で主観視点に切り替えられるとのことなので、リアルに作り込まれた街の空気感をこれまで以上に感じることができる。さらに、桐生の私生活も進化していて本作ではついにスマホデビュー。武器や能力評価などができるほか、カメラを使った自撮りなども可能になっていて、過去のシリーズで事件が起きた場所で撮影すると心霊写真が撮れるといったディープな楽しみ方もできるとのことだ。
新要素である組育成モード「クランクリエイター」の説明も行われた。組員に指示を出して敵対組織と領土を取り合うというもので、100人超対100人超という大乱戦を楽しめる。さらに、このモードでは新日本プロレスの人気レスラーである棚橋弘至選手、オカダ・カズチカ選手、内藤哲也選手、小島聡選手、矢野通選手、天山広吉選手の6人が強敵として出現。桐生たちの前に立ちはだかることになるという。名越氏いわく「かなりコストも手間もかけています」とのことなので大いに期待できそうだ。
そのほかのプレイスポットも充実。経営難の猫カフェの再建に挑む「猫カフェ経営」、本格野球シミュレーションを楽しめる「草野球」、海に潜って魚を獲りまくる「素潜り漁」、美女との会話を楽しめる「ライブチャット」、常連客とのさまざまな会話を楽しめる「スナック遊び」、ハルトを上手くあやせるかに挑戦する「子守り」などを楽しめる。あまりの多彩ぶりにニコニコ生放送のでは「何のゲームだよ!」というコメントが多数書き込まれ、名越氏は「最高の褒め言葉ですね」と喜んでいた。
最後に名越氏は「11年前の1作目と同じ12月8日での発売に感慨深いものを感じています」と挨拶。さまざまな大作の発売日がのびて近い日程での発売になったことにも触れ、「何とも言えないですが、我々は発売日をずらしたくないので死に物狂いで頑張ります」と述べた。もちろん、現在もギリギリの作業が続いているが、このシリーズが第1作目から一度も発売日をずらしたことはないことが名越氏の自慢で、「ウチのスタッフを一番ほめてあげたい部分で僕たちのチームの誇りだと思っていますので、何とか今回も達成したいと思います」と語り、今回のステージを終えた。