バンダイナムコエンターテインメントが開発中のPS4用ソフト「GUNDAM VERSUS」。シリーズ伝統の2on2によるチームバトルアクションはそのままに、家庭用に特化した独自の展開が予定されている本作のプレイレポートをお届けする。
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「機動戦士ガンダム VS.」シリーズは、「機動戦士ガンダム」をはじめとした歴代の「ガンダム」シリーズに登場したモビルスーツを操り、相手のモビルスーツと戦う対戦型アクションゲームだ。
アーケード版「機動戦士ガンダム 連邦VS.ジオン」を皮切りに、アーケード・家庭用の両シーンでシリーズが展開されており、現在全国のアミューズメント施設にて稼働中のシリーズ最新作「機動戦士ガンダム エクストリームバーサス マキシブースト ON(以下、EXVS.MB ON)」を含めて今年で15周年を迎える。
そんな「ガンダム VS.」シリーズの新たな展開として、今年2016年の「PlayStation Press Conference in Japan」にて、家庭版専用となる「GUNDAM VERSUS」が発表された。シリーズ伝統の2on2によるチームバトルアクションはそのままに、新たなアクション“ブーストダイブ”など新システムが追加された本作。
ここでは、いよいよその外観が明らかになり始めた本作について、体験プレイを経て感じた筆者のプレイフィールをお伝えするとともに、ゲームの方向性や新アクション実装の経緯など、開発陣に聞くことができた気になる要素を紹介しよう。
基本はそのままに、新たなアクションでよりテクニカルな戦闘が可能に
「機動戦士ガンダム VS.」シリーズではあるものの、家庭用専用ということでどのようなゲームシステムが搭載されるのか、またはどのくらいこれまでのシステムが踏襲されるのか、「EXTREME VS.」(以下、EXVS.)シリーズをプレイしていたユーザーは非常に気になっていたはず。まずは、本作の基本的なゲーム概要について説明しておこう。
本作は、これまで通り2on2によるチームバトルアクションとなっており、コスト制であることも変更はない。ただ、総コストが1000に変更され、各機体のコストも高い方から500、400、300、200に変更されている。
各種アクションについても「EXVS.」シリーズのアクションが踏襲されており、ブーストダッシュによるあらゆる行動のキャンセル、格闘攻撃のブーストステップによるキャンセルもできるので、これまで可能だったことが本作で不可能になるような不自由はない。現行の「機動戦士ガンダム VS.」シリーズをプレイしているユーザーなら、すんなりと遊ぶことができるだろう。
もちろん、すべてがそのままというわけではない。本作では、新たにSPボタンというものが用意されている。このSPボタンを用いて行える新アクションは主に2つある。
1つは、“SPボタン+ジャンプボタン”によるブーストダイブだ。これは、ブーストダッシュと同様にあらゆる行動をキャンセルして行えるアクションで、実行すると機体が急降下するというもの。従来のシリーズで分かりやすく例を挙げるなら、アシスト攻撃のような完全に足が止まってしまう武装の後に、メイン射撃などの硬直のない武装でキャンセルすることで機体が急激に落下するような、いわゆる“降りテク”がブーストアクションのひとつとして実装されたというわけだ。
例としてアシスト系の武装を挙げたが、照射ビームのような武装でも瞬時に落下することができる。落下速度については慣性の引き継ぎ方によって微細に変化するため文字で説明するには難があるが、今までとは少し異なるより立体的な戦闘・回避行動が、本作では肝になりそうだ。
もう1つは、ストライカー・セレクトだ。αバージョンでは、出撃前の機体セレクト時に、その機体に設定された数種類の“ストライカー”の中から2つを選択することができた。戦闘中にストライカーを呼び出すことで、さまざまなモビルスーツやモビルアーマーが自機を援護してくれた。
例えば、ガンダムならばボールが出現し、180mmキャノン砲で援護射撃を行ってくれたり、ガンキャノンが出現して敵機に向かって格闘攻撃を繰り出してくれる。従来のアシスト系の武装がシステムとして実装され、すべての機体に追加されたと考えてもらって問題ないだろう。
より堅実な攻防が繰り広げられるよう深化したゲームバランス
すべての機体に共通したシステムが実装されるのにあわせて、覚醒システムやブーストゲージ関連の仕様にも細かな調整が加えられている。
αバージョンではブーストゲージが0になる、つまりオーバーヒート状態になると、一切の行動ができなくなっていた。これまでのシリーズでは、たとえオーバーヒート状態になったとしても、射撃や格闘による攻撃、シールドガードや移動技によって着地を誤魔化すことが可能だった。しかし、本作ではオーバーヒート状態になるとあらゆる行動が不可能になり、着地して再度ブーストゲージが回復するまで全く動けなくなってしまう、という調整になっていた。
この仕様によって、ブーストゲージの読み合い、堅実な着地の取り合いが大切になってくるだろう。“ブーストダイブ”の追加でより攻撃の隙を無くすことができるようになったが、その分ブーストゲージの管理がさらに重要になり、戦闘のセオリーが一変するかもしれない。もちろんバランスに直結する要素であるため、クローズドαテストで出た意見を元に今後も調整を続けていく、とのことだった。
覚醒システムについては、「EXVS.MB ON」では「ファイティングバースト」「シューティングバースト」「エクステンドバースト」の3種類が用意されていたが、本作では「BLAZE GEAR」と「LIGHTNING GEAR」の2つが用意されていた。ゲージが50%溜まっていれば任意のタイミングで発動することができるものの、被弾時は2つともゲージが100%の時のみ発動することができるので、この点についてはあらかじめ注意しておきたい。
「BLAZE GEAR」は、発動時にブーストゲージが一定量回復し、格闘の追従性能が大幅に向上、格闘攻撃を繋げて与えた際のダメージがより伸びやすくなっている。発動時間は「LIGHTNING GEAR」より短いものの強力な移動速度アップもあり、瞬間的にダメージを狙いに行きやすいタイプだ。
「LIGHTNING GEAR」は、発動時にブーストゲージが一定量回復する点は「BLAZE GEAR」と同じだが、こちらは発動時に僚機の武装の弾数を回復する。さらにロックオン距離が大幅に延長され、リロード速度も大幅に上昇する。「BLAZE GEAR」に比べ攻撃力アップや移動速度アップは控えめだが発動時間が長いため立ち回りで戦場を制圧していく戦い方に向いている。また、一部の射撃攻撃をステップでキャンセルできる効果については覚醒の共通効果として割り当てられている。
注目すべきは、今作から覚醒の発動によって僚機にブーストゲージや弾数の回復効果があること。これまでも覚醒の発動タイミングは勝敗を分ける大きな要素として、プレイヤースキルが問われる部分でもあった。覚醒を使用して味方を助けにいったり、または味方と覚醒のタイミングを合わせて敵を追い込んだりと、本作のチームバトルアクションの要ともいうべき要素だった覚醒システムが、本作からはよりその気色を強くしたといえるだろう。
特に、ブーストゲージの回復は、2on1の状況で追い立てられている味方を助ける直接的な要因として非常に重要で、これまで以上に覚醒の発動タイミングが勝敗のカギを握るようになるのではないだろうか。
さまざまなバランス調整の実施や新規アクションが追加され、「機動戦士ガンダム VS.」シリーズの系譜を受け継ぎつつも新たなゲームプレイの実現を予感させてくれる本作。最後に、これらの調整の意図や新アクションの実装に至る経緯など、いくつかの気になるポイントを開発陣に直接聞くことができたので、インタビュー形式で紹介しよう。
まずはPS4で安心して遊べるオンライン2on2の「機動戦士ガンダム VS.」を―安田直矢氏インタビュー
――基本的なゲームデザインはそのままに、本作では「ブーストダイブ」や「ストライカーセレクト」をはじめとする新システムの搭載など、数多くの新要素が加えられています。まずは、これらの意図についてお聞かせください。
安田氏:「機動戦士ガンダム VS.」シリーズは歴史も長く、多くのユーザーさんに親しまれてきました。中でも「EXVS.」シリーズは現在も稼働中なので、今現在プレイされているプレイヤーが違和感なく遊べるように、大まかな要素は引き継いでいます。一方で第五世代の最新作として楽しんでいただけるよう、、本作では従来シリーズとはもう一歩異なるゲームプレイが体験できるように、さまざまなシステムを加えています。
――新システムである“ブーストダイブ”の実装経緯について教えてください。
安田氏:ステップにしろダッシュにしろ、今までは基本的に横軸の動きが主になっていました。“ブーストダイブ”を追加することで縦軸での移動が可能になり、より動きの自由度が高まると思います。
また、この縦軸の動きというのは、従来シリーズでは機体によって大きな差があったので、その差を埋めるためにシステム化して共通のアクションとして“ブーストダイブ”を実装しました。
――降りテクがあるかどうかで、機体の動かし方や強さに大きく影響していましたね。
安田氏:“一部の機体だけが持っていたものをシステム化した”という点では、ストライカーセレクトも同様ですね。機体呼び出しがある機体とない機体、射撃系なのか突撃系なのか、キャンセルができるかできないか…こうした差が機体毎にあることで性能差がどんどん広がり2on2バトルの間口を狭くしてしまったので、この2つのシステムを実装することで第五世代のスタートとして許容できる程度まで是正できるように考えています。
――実際にプレイしてみた感じだと、「EXVS.MB ON」よりも全体的にややスピードが抑え目であると思いました。
安田氏:そうですね。そこは意図的に抑えてあります。「EXVS.」シリーズも稼働がスタートして6年目を迎え、プレイヤーのご要望もありゲームスピードがどんどん速くなる方向にアップデートしてきました。しかし、その要望にばかり応えていくと、ついていけずに振り落とされていってしまうユーザーも少なからず存在するので、一度リセットをかけようと思いあえて抑えてあります。
今回はウイングガンダムゼロとガンダム・バルバトスに触れることができた。
バルバトスには、グシオン戦で見せたデブリを盾にする新たな武装が追加。
射撃を防ぐことはもちろん、格闘カウンターとして相手にそのまま切りかかることもできる。――自分も咄嗟にシールドガードを出せないことが多々あります…(笑)。じっくりと腰を据えてやる家庭用としては、丁度いい調整だと思います。
安田氏:ゲームスピードに関しては、クローズドαテストに参加頂いたユーザーさんからも概ね好評でした。またバトルのテンポは、“ブーストダイブ”を使いこせるようになってくると、その印象も変わるのではないか、という意見も頂いております。
――というと?
安田氏:見た目など、動きの部分のスピード感というのは前よりもゆっくりになっていますが、ゲーム展開という面では早くなっているかもしれません。キャンセルできる行動も多くなりましたし、“ブーストダイブ”によって攻守の入れ替わりも激しくなるので、こうした部分に従来シリーズとのゲームプレイの違いを実感して頂けると思います。
――これまでと違う部分と言えば、オーバーヒートについても大きな変更がありました。
安田氏:最初に縦軸への動きを取り入れようと考え、“ブーストダイブ”という要素を追加しようとした時、単純にそのまま実装するとシステムとして全体の調和が保てなくなると思ったんです。何のリスクもないと、着地を取るのが非常に難しくなりますからね。
なので、そこはしっかりとブーストを消費するようにして、かつオーバーヒートした時のデメリットを強調するようにしました。タイミングを読まずに適当に“ブーストダイブ”を使うのではなく、限られたブーストの中でどのように行動するかという、読み合いが生まれる要素の一つとして捉えて頂ければと思います。
――ちなみに、“ブーストダイブ”を使用した際の、ブーストの消費量はどのようになっていますか?
安田氏:現状ではすべて一律になっていて、ブーストステップやブーストダッシュと比べると消費量は多めの調整になっています。“ブーストダイブ”という行動自体やはり強いので、これからユーザーからのフィードバックを受けつつ、大きな課題の一つとして随時調整をしていきます。
――本作もすべてのガンダム作品を対象とした“オールガンダム”というスタンスに変更はありませんか。
安田氏:そこについては変わりありません。これまで同様に、いろいろな作品の機体が登場します。
――本作はPS4用ということですが、アーケードへの移植などは想定されていますか。
安田氏:いえ、アーケードでは「EXVS.」シリーズがこれからも継続して展開していき、「GUNDAM VERSUS」は家庭用のシリーズとして全く別軸で展開していきます。
本作の開発コンセプトとしては、まず第5世代のシリーズ最新作としてのバトルシステムを確立させて、安心してPS4でオンライン2on2プレイしていただける「機動戦士ガンダム VS.」を作ろうとしています。プラットフォームの世代も変わっており、ここで作ったものがこれからのベースになると考えているので、挑戦的な要素を取り入れるというよりも基本的な要素を追及して、土台のしっかりとしたものにしようと思っています。「GUNDAM VERSUS」も、「EXVS.」シリーズなどと同じように、これから長く親しまれるようなシリーズにしていきたいと考えていますので、、ぜひ今後の発表にも期待していてください。
――ありがとうございました。