ゲーム音楽を愛するすべての人に捧ぐ―JAGMO「英雄達の譚詩曲 ～聖なる交響楽団～」をレポート

JAGMOは「ゲーム音楽を音楽史に残る文化にする」というビジョンのもと、2014年に立ち上げられた日本初のゲーム音楽プロ交響楽団だ。

2016年だけでも「闘会議2016」への出演にはじまり、2度の東方Projectフルオーケストラ公演や、フランス「JAPAN EXPO2016」への出演、初のテレビ出演となったNHK 音楽祭2016「シンフォニック・ゲーマーズ」での放送など、精力的な活動を行っている。

2016年を締めくくる本公演は、これまでのJAGMOの公演に足を運んだ観客のアンケートから特に要望の多かったゲーム作品に焦点を当て、JAGMO初演奏楽曲がふんだんに盛り込まれたプログラム構成になっていた。

「サクラ大戦」に始まり、「ICO」「クロノ・クロス」「アトリエ」シリーズや「大神」など、普段ゲームをしない人にも知られる名曲の数々を、生のフルオーケストラで堪能した公演の模様をお届けする。

最初のプログラムは「サクラ大戦」シリーズより、ゲームファンにはお馴染みの「檄！帝国華撃団」をはじめ、「御旗のもとに」「地上の戦士」の3曲。いずれも原曲の荘厳さはそのままに、爽やかさをふくらませたアレンジで一気にテンションが上がる。これがフルオーケストラだ！と冒頭から身体に叩き込まれる音の厚みだった。

続いて「ICO」より「ICO-You were there-」「Castle in the Mist」。アイルランド民謡を思わせる曲調の楽曲から、画面越しでは伝わらない情感を得ることができたのは生演奏ならでは。セーブ中のほっとする音楽も挟まれる遊び心にはくすっとさせられた。

「ワンダと巨像」からは「プロローグ～古えの地へ～」をはじめ、7曲が演奏された。筆者は「ワンダと巨像」をプレイしたことも楽曲を聞いたこともないのだが、戦いを感じさせる重厚で迫力ある曲や、悲壮感を纏った曲がどんなシーンで流れるのか、音楽からゲームへの興味を持つことができた。

4つ目のプログラムは筆者の大好きな「MOTHER」シリーズから「Pollyanna（I Believe in You）」「Saturn Valley」「摩天楼に抱かれて」「Bein' Friends」「Eight Melodies」「SMILES and TEARS」。原曲の音のシンプルさが身体に染み込んでいるため、フルオーケストラだと受ける印象がこうも変わるものか、と最も強く感じたパートだった。どの曲もゲームの名シーンを鮮明に思い出せたが、どせいさんで頭がいっぱいになる「Saturn Valley」のアレンジがお気に入りだ。

前半のラストを飾ったのは、筆者が最もフルオーケストラで聞きたかった「クロノ・クロス」シリーズの楽曲。「CHRONO CROSS～時の傷痕～」から「死線」「疾風」「勝利～春の贈り物～」「星を盗んだ少女」「夢の岸辺にアナザー・ワールド」「運命に囚われし者たち」「龍神」とファンなら目頭が熱くなる構成にして圧巻の演奏だった。

後半の1曲目は「ワイルドアームズ」から、当時CMでも使用された「荒野の果てへ」。続いて「アトリエ」シリーズの楽曲だが、筆者は「アトリエ」シリーズもプレイしたことがなく、可愛い女の子が錬金術で色々作りながら成長していくハートフルなゲームという勝手な印象を持っていた。なので、9曲中8曲が戦闘曲で構成されていることに良い意味で期待を裏切られ、演奏が始まるとあまりのカッコよさに前のめりになって聴いていた。この曲が流れるならゲームをプレイしなければ、という使命感すら与えてくれる、やはりゲーム音楽の力は偉大だ。

ここからは舞台上に太鼓、尺八、津軽三味線が登場。オーケストラと和楽器の融合という特別な編成で「俺の屍を越えてゆけ2」から11の楽曲が演奏され世界観が表現された。

最後の曲目となる「大神」では太鼓の“ドドンッ”からの「大神～」というタイトルコールにはじまり、チャンチキの激しいリズムから始まる三味線を中心としたウシワカとのバトル曲「ウシワカ演舞～ウシワカと遊ぶ」や、掛け声と太鼓が印象的な通常バトル曲「妖怪退治」など、鬼気迫る三味線の旋律はぜひ生で聴いてほしい。

オーケストラと和楽器による壮大なフィナーレを迎えた後は、クリスマスソングとゲーム音楽がミックスされた特別なメドレーが披露され、クリスマス公演に相応しい最後を飾った。

ゲーム音楽をフルオーケストラで聴くという、ちょっと贅沢なコンサートだが、思い入れのある楽曲への想いに浸るのはもちろん、知らない作品の楽曲を聞いて新たなゲームとの出会いを果たす音楽体験もできる。興味のある人は2017年のJAGMOの活動に注目してみてはいかがだろう。