PS4/PS Vita/PC用ソフト「ダライアスバースト クロニクルセイバーズ」ダウンロードコンテンツシリーズのカプコンコラボレーションの配信を記念し、片岡謙治氏、江城元秀氏、丸山博幸氏、ジェームス・ラグ氏の座談会が実施された。
丸山博幸氏:今回カプコンさんとのコラボDLCができたということで、座談会を開かせてもらうこととなりました。私が学生時代にプレイしていたゲームを作られていたという大ベテランのおふたりですから、若干緊張しております。今回DLCとして「サイドアーム」と「VARTH」と「プロギアの嵐」が出ることとなりましたが、今日はおふたりも携わられた「VARTH」をメインにお話を伺っていきたいと思います。よろしくお願いします。
片岡謙治氏&江城元秀氏:よろしくお願いします!
丸山氏:まずは簡単に自己紹介をしていただいてもよろしいですか?
片岡氏:僕は88年にカプコン入社しまして、最初はデザイナー志望だったのですが、当時のボスのもとで、プランナーとして「エリア88」と「天地を喰らう」のどちらかに参加するということになり、「天地を喰らう」を選んだのが始まりですね。その後もアーケード作品に携わってきまして、「ダンジョンズ&ドラゴンズ」シリーズや、「MARVEL VS. CAPCOM」シリーズなどにも参加していました。最近では、「重鉄騎」や「カプコン アーケード キャビネット」などを制作しています。
江城氏:僕は90年にアーケードチームのプログラマーとして入りまして。「ストリートファイターII」のチームに配属され、ガイルとバイソンを担当しました。その後は「ワンダー3」チームに入った後、今回DLC化された「VARTH」へと参加することとなりました。「VARTH」では雑魚キャラとボスキャラ数体のプログラムを担当していました。その後、「ヴァンパイア」を経てコンシューマーへ移り、「ストリートファイターZERO2」のコンシューマー移植や「鬼武者」に携わり、その辺りで企画職へと変わり、「鬼武者2」「シャドウ オブ ローマ」でディレクターを経てプロデューサーになり、「逆転裁判」シリーズを制作するようになりました。
丸山氏:ありがとうございます。それではまず、カプコンさんのシューティング全体のお話をお伺いしたいと思います。「ソンソン」「セクションZ」「サイドアーム」、新しいもの(と言っても20年以上前ですが)では「ロストワールド」といった、特に横スクロールシューティングに、カプコンさん独特の「左右撃ち分けの系譜」がありました。これはカプコンテイストだと意識して作られていたのでしょうか。
片岡氏:それ自体がカプコンテイストだと意識していたわけではないと思いますが、当時、開発スタッフの中では、大きく分けて「シューティングを作りたい」人間と、「アクションを作りたい」人間がいたんですね。ですが、その希望をそのまま通すことが当時の上司はあまりお好きじゃなくて、「シューティングを作りたいならアクションを作れ。アクションだったらシューティング」というケースもあり、純粋なシューティングにアクションゲームの要素、志向が加味されたゲームが生まれました。
丸山氏:そのアクション要素のひとつが、左右の撃ち分けだったりしたわけなんですね。
片岡氏:「エグゼドエグゼス」のボーナスフルーツなんかも、大量に出現させて、取りに行く行為も同じような理由だったんだと思います。
江城氏:ほかにも、シューティングゲームで一撃で死なないエネルギー制っていうのはもしかしたらカプコンが初めてかもしれないですね。
丸山氏:「VARTH」ではボムが自動回復する仕様も珍しかったですよね。
片岡氏:あれは海外プレイヤー向けの対策ですね。当時海外のプレイヤーは強い武器から先に使ってしまうことが多く、ボス戦時には弱い武器で戦うはめになり、負け決定だなと。弱い割には、レバーで敵の攻撃を避けるのが上手く、ボス戦に時間がかかってしまうので、時間経過とレバー操作でボムが回復できるようにしたという流れです。
丸山氏:そういった救済措置や、全30ステージということもありましたし、当時のアーケードとしてはかなりプレイ時間も長かったですよね。他のアクションゲームではステージ2のボスあたりがカプコン伝統の強敵でプレイヤーを殺しにかかりましたけど(笑)。
ジェームス・ラグ氏:当時のプレイヤーからしたらワンコインで長く遊べてうれしかったでしょうね。ゲームセンター側から見ればインカムとしてはちょっと……となりますけど(笑)。
片岡氏:日本と海外の違いでいうと、難易度の上昇曲線も変えていましたよ。日本は徐々に上がっていくのですが、海外版というか北米版だと一気にギューンと難易度が上がります。それは、北米だと1プレイが約25円(25セント)と日本の100円より安いという理由があったからです。日本はどれだけ長く遊べるか?にこだわりますが、当時北米の人は、短い時間でも楽しめればよし!という感じでした。
ジェームス氏:あれはアメリカのせいだったんですね!(笑)私はイギリスなのですが1プレイが200円ぐらいだったんですよ。それなのに、ものすごく難しかった(笑)。あとは「サイドアーム」の「モビちゃん」が代表的ですが、隠しキャラに多くの作品が登場しているのもカプコンらしさが出ていますよね。
片岡氏:タルとか牛とかリュウ(「ストリートファイター」)とかいろいろありましたよね。あれはシューティングをプレイしていて、ここ撃ったら何か出るのかなと思うところでちゃんと何かを出してあげると、喜んでもらえるのかなと思ってやっていましたね。基本、得点稼ぎですが。
江城氏:「VARTH」なんかはリュウを出してアイテムを補給しないと30面はとてもクリアできなかったんじゃないかな(笑)。
丸山氏:僕は結局ワンコインクリアできませんでした(笑)。
江城氏:うちのプログラマーはできましたよ。自分たちが作ったゲームはワンコインクリアできないといけないっていうモットーがありましたからね。
丸山氏:「VARTH」の開発はいつ頃で、どれぐらいの開発期間だったのでしょうか。
片岡氏:「VARTH」は時期としては「ストリートファイターII ダッシュ」や「クイズ&ドラゴンズ」と同じですね。ほとんど新人のスタッフで制作していて開発期間も1年はなかったと思います。開発人数も10人はいなかったはずです。
江城氏:「VARTH」はCPシステムの基板のメモリ容量の兼ね合いで、出せる弾の数に制限があったりしたこともありいろいろと工夫をしましたね。一度に出せる弾が少ない分、画面をスクロールさせる形のボスを作ったりですとか。
丸山氏:1ステージの80%をクリアすると次のステージ進める仕様などは「ゼビウス」を意識されていたりしたのですか?
江城氏:片岡は「ゼビウス」は意識していたんじゃないですかね。そのほかにも機体のあたり判定や、ボスの性質など、さまざまな過去の名作シューティングを意識しつつ制作していました。容量が16メガバイトと少なかったので、ステージをスクロール構成状にするなど、作り方にも苦労した記憶があります。「ストリートファイターII」は48メガバイトだったのでその3分の1ですよ(笑)。
片岡氏:タイトルの「VARTH」もいわば過去の名作リスペクトですからね。「ダライアス」や「グラディウス」といったように、最後が「ス」だとヒットするというのと、阪神タイガースのホームランバッターの「バース」をあわせて生まれました。
江城氏:でも最後が「TH」だからサ行の「ス」じゃないけどね(笑)。今回DLCが登場する「ダライアス」シリーズでいうと、一作目は死ぬほどプレイしましたね。当時18歳ぐらいでカプコンに入る前だったのですが、毎週ゲームセンターに行っていて友達とふたりで最後のゾーンまでワンコインクリアしていました。
丸山氏:「VARTH」の後だと少し期間があいて「19XX -THE WAR AGAINST DESTINY」がシューティングとしてありましたが、スタッフは移行されたりしたのですか?
江城氏:いえ、まったく変わっていますね。「VARTH」のあとは対戦アクションゲームのムーブメントもあり、みんな対戦格闘やアクションゲームに移行していきましたね。僕は「ヴァンパイア」などに参加しました。
丸山氏:「19XX」の後はカプコンさんのシューティングは自社制作ではない作品が続いていきましたね。今回のDLCでも収録されている「プロギアの嵐」ですとか。
片岡氏:ちょうど「プロギアの嵐」の頃は他社さんとのコラボレーションでシューティング作品を積極的に作っていた時期でしたね。その路線でも最後のシューティングはアクションシューティングだけど「ガンスパイク」になるのかな?
丸山氏:だとするとやはりカプコン純正のシューティングの最終作は「19XX」になるわけですね。シューティング作らないんですか?(笑)
江城氏:シューティング作りって一番勉強になると思うんです。「当たり判定」「スクロール」「敵設定」「難易度調整」とさまざまな要素が含まれていますから。スタッフで「やりたい!」って思っている若い子はいると思いますよ。でも、シューティングを作れるスタッフが年々少なくなってきているのはあるかもしれませんね。だけど今だとそれこそVRで「VARTH2」っていうのは面白いですよ(笑)。
丸山氏:「VARTH」の頃はそれこそおふたりも入社されてまだ数年の頃かと思いますが、開発環境はどのような感じでしたか?
片岡氏:ある程度自由に作らせてもらいましたよ「VARTH」は。プランナーとして参加したのですが、例えばキービジュアルにもなっている戦車があるじゃないですか。あれは私が企画したんですけど、砲塔の可動域を一枚の紙に描いてキャラデザの人に渡したら、その絵の通りにデザイナーが仕上げて、可動域全部が本当の砲塔になっちゃって。それがカッコイイから「そのまま使っちゃおう!」と、「スパイダー」と名前を付けて(笑)。あとステージに登場する浮遊大陸にもモチーフがありますし、メカイメージは「ヴイナス戦記」のメカニックデザインをされた横山宏さん、小林誠さんの影響を受けていたりしています。
片岡氏:ちなみに今回DLCとしてチョイスされた3タイトルはどういう基準で選ばれたんですか?
丸山氏:チョイスは基本的に僕の方でさせていただいたのですが、まず一番プレイしたのが「VARTH」ということでひとつ。そして、横シューティングからも選びたいと思っていましたので「サイドアーム」。そして「プロギアの嵐」と、完全に主観で選ばせていただきましたね。楽曲も大好きだったので、「VARTH」からは全曲使わせてもらいました。
片岡氏:とてもうれしかったですね。SEなんかも再現してくれて。あれはサウンドチームではなく僕たちも作っていたんですよ。後半の溶岩のステージでマグマが「ポコポコ」って出るんですけど、あれは僕がストローで吹いていたんですよ(笑)。
丸山氏:てっきりサウンドチームの方が作られていたんだと思っていました。開発の方で作られていたんですね(笑)。効果音を開発でというのは初めて聞いたかもしれません。すっかり取りとめのない座談会になってしまいましたが、それでは最後に、今回のコラボについてひとことお願いします。
江城氏:僕は今プロデューサーですけど、「VARTH」はプログラマー時代にやった作品の中でも、思い入れが非常にあるタイトルです。今回のDLCも実際に遊ばせてもらいましたが再現性もすごく、とても面白いコラボになっていると思いますので、ぜひダウンロードして遊んでいただけますとうれしいです。
片岡氏:「ダライアス」シリーズ30周年ということで。今回はそんなタイトルと一緒にコラボできたということはすごいことだと思います。ユーザーさんにもぜひ、僕たちの培ってきた魂を感じてもらって、楽しんでもらえればと思います。