スクウェア・エニックスより発売中の「ファイナルファンタジーXV(FFXV)」でディレクターを務める田畑端氏にインタビューを敢行。後編となる今回は、「アサシン クリード」とのコラボレーションやPS VR用タイトル、今後のアップデートについて伺った。
ノクトは「アサシン クリード」のファン!?大規模コラボはなぜ実現したのか
――「アサシン クリード」とコラボレーションするという発表は驚きました。これはどういった経緯で実現したのでしょうか。
田畑氏:旅をする4人の仲間たちの好きなゲームとして「キングスナイト」がありますが、それとは別にノクトは「アサシン クリード」も好きという設定を最初に考えたんです。元々「FFXV」のキャラクターには釣りが好きだったり、写真が好きだったり、現実の世の中にいる人と同じ趣味を持たせることを大事にしていて、「アサシン クリード」もその一環です。
この設定を考えたのは数年前のことで、その時点でユービーアイの方々にも承諾をいただいていました。そのとき「ノクトはどのくらい『アサシン クリード』が好きなんですか」という質問をされて、僕は「イーグルダイブの真似をしたがるくらい」と答えて、それがきっかけになり、より深い取り組みになっていきましたね。
――PVだとコスチュームはもちろん、動きにひとつひとつもそっくりですよね。
田畑氏:僕自身「アサシン クリード」は好きですし、「アサシンズ・フェスティバル」を担当するスタッフもファンが揃っているんです。当初予定していたボリュームの3倍くらいで、かなりリッチな作りになっています。アクションも可能な限り「アサシン クリード」に近づけているので、「FFXV」のファンにはプレイの幅広さを楽しんでもらいたいです。
――「アサシン クリード」はアクションだけでなく、高い場所から風景を見渡せる魅力もあると思います。それと同じ魅力を「FFXV」でも味わえそうですね。
田畑氏:「アサシン クリード」シリーズはパリの小学校で歴史の街の参考資料にされているくらいで、最新作の「アサシン クリード オリジンズ」も恐らくエジプトの世界を再現していると思います。「FFXV」はそこまでの真似はできていませんが、高い場所から町を一望するのは新鮮に見えるでしょうね。
――「アサシン クリード」といえばステルスアクションは欠かせませんが、コラボイベントでも楽しめますか?
田畑氏:「FFXV」のストーリーにも隠れながら進むパートはありましたし、その流れで今回のイベントにも多少収録されていますね。イベントのストーリーはレスタルムで街に伝わる伝説の「アサシン」に関連したお祭りが開催され、そこで起こる事件に巻き込まれていく流れです。その中で、敵にバレないように進んでいくパートもあります。
――では、戦闘のシステムになにか変化はありますか?
田畑氏:基本は「FFXV」と同じで、「アサシン クリード」をプレイしたことのない人でもすぐに楽しめます。もちろん「アサシン クリード」を知っている人であれば、モーションや演出の共通点を楽しむこともできます。
――ストーリーのボリュームはどのくらいになりますか?
田畑氏:大体3時間程度で終わります。配信期間は来年1月までありますが、これは受け皿として長期間置いておくためです。いつ始めても、すぐにクリアできると思います。開催期間中には「アサシン クリード オリジンズ」も発売されるので、そこで興味を持った人にも参加してもらいたいですね。
PS VRによって、よく知る場所がまったく違う世界に
――「FFXV」に関連した展開のひとつとして、PS VRに対応した「MONSTER OF THE DEEP: FINAL FANTASY XV」もありますよね。
田畑氏:今回の発表からも分かる通り、「FFXV」をさまざまなプラットフォームで展開したい考えを持っていて、PS VRもその一環ですね。昨年のE3ではプロンプトを操作するデモを公開しましたが、あれはあくまでもデモで、あそこからVR展開の決め手となるものを掴もうとしていました。
「FFXV」のバトルをVR空間で体験できる案もあったものの、それだと開発期間が長引いてしまいます。だから、まずはそれほど開発期間をかけずにゲームの世界を楽しめる作品にしようと考えました。そこで、「FFXV」にもあった釣りに絞り込んでいったのです。実際に戦ったり、冒険したりはこの次のステップかなと思っています。
――「FFXV」内の釣りは数ある遊びのうちのひとつでしたが、「MONSTER OF THE DEEP: FINAL FANTASY XV」はかなり内容の濃い作品に仕上がっている印象です。
田畑氏:ちゃんとしたメインストーリーもあって、あの世界に自分自身が存在する気分を味わえると思います。ゲームの中に入れるのはVRならではであって、これはもうミニゲームの枠を超えていますね。
また純粋に釣りのゲームとして、「FFXV」を知らない人でも楽しめるように作っています。プレイヤーが操作するのは自分で作ったアバターであり、「FFXV」のメインキャラクターたちは、初めて出会う人として登場します。仮にキャラクターに思い入れがなくても、十分に楽しめるはずです。
――以前からのファンとしては、仲間たちの新たな一面が見られるのではと期待しています。
田畑氏:これまではモニターの中で行われていた会話が、今度は自分自身に対して話をしてくれるわけですからね。本作では特にプレイヤーと直接会話することを強く意識していて、ボイスも新たに収録しています。ノクト役の鈴木達央さんもこだわりを持っていて、VRに試行錯誤しながら収録に臨んでくれました。
――本編では出てこなかったロケーションもあるのでしょうか。
田畑氏:いえ、本編で言うとオルティシエに渡る前、前半の大陸に出てくるロケーションが舞台になります。よく知っている場所ではありますが、一人称視点になることで見え方もまったく変わってきます。プレイする前提がまったく違うので、そこは新鮮な気持ちで見ることができるのではないでしょうか。
――PS VR対応の作品を作ってみての感想はありますか?
田畑氏:VRは大きな可能性を持つ技術ですね。まだどうしてもヘッドセットが重いので、長時間のプレイは正直難しいですね。「MONSTER OF THE DEEP: FINAL FANTASY XV」もワンプレイの手軽さは意識して作っています。あとはプレイしているとコードが気になるので、これは第2世代、第3世代と進むに連れてアップグレードしてほしいですね。
遊んでくれるファンがいるからここまで成長できた
――「FFXV」ではこれまでにもさまざまなアップデートやDLCの配信が行われてきましたが、振り返ってみていかがですか?
田畑氏:発売直後のアップデートは、当初の計画を大幅に変更したものでした。それは僕たちが提供した作品より遥かに高い期待をファンの方が持っていたこと、そしてクリアして終わりではなく「まだまだ遊びたい」と思ってくれる方が多かったからです。僕たちとしても発売の時点では実現できなかったことがあると認識しています。だから時間をもらって、僕たちも成長しながらもっといいゲームにしようと挑戦していったのです。
挑戦した結果、本当に長くプレイしてくれた方が大勢いるので、より良いものをより効率的に開発できるようになり、提供できてきたと実感しています。僕たちが作りたいゲームと、ファンの方々が遊びたいゲームが両立できてきた気がします。
――アップデート以前と以後で、具体的にプレイヤーの状況に変化はあったのですか?
田畑氏:今年の1月に「ゲームクリアキャンペーン」を行ったのですが、そのときはゲームクリア率が30%くらいでした。これが今は約60%にまで引き上がっています。僕たちはアップデートを闇雲に繰り返していたわけではなく、途中でやめた人がどこで挫折したか、クリアした人はどこに不満を持っているかをリサーチしながらの作業でした。クリア率が劇的に上がったのはそのおかげかと思います。
――今後もアップデートは続いていくと思いますが、その中で注目のポイントはありますか?
田畑氏:まず8月30日のアップデートでチャプター選択機能が追加されます。「特定のチャプターを遊びたい」という意見も多くいただいていて、ようやく実現できました。あとはエネミー図鑑も新たに登場します。世界の中をもっと探求したい人には嬉しい機能になると思います。
その先にはオンラインマルチプレイの搭載も予定しています。「FFXV」はプレイヤーごとの異なる体験を大事にしていて、マルチプレイが入ることによってさらに多様化すると思います。「FF」シリーズしかプレイしないライトな方でも楽しめるように調整しているので期待してください。
そして年末には、イグニスのエピソードを収録したダウンロードコンテンツですね。イグニスの視点でも、仲間を通じて物語が立体的に見えるような仕掛けを用意しています。できるだけたくさんの人にプレイしてもらいたいですね。
――直近のアップデートでもかなりの魅力があると思います。チャプター選択は、ファンからの要望も特に多かった機能なのですか?
田畑氏:多かったですし、それに応えたいとも常々思っていました。チャプター選択は1周クリアして解放される機能で、2周目のセーブデータのステータスで再開することが可能です。「FFXV」はクリアしたあとものんびりとプレイしてもらいたいゲームですけど、その一方で好きなエリアでのんびりできない側面もありました。チャプター選択によって、そんなユーザーさんの願望を叶えられたらいいですね。
――「エネミー図鑑」も面白い機能だと思いますが、図鑑にはどんな情報が書かれているのでしょう。
田畑氏:大きさも視覚的に分かりますし、モンスターを紹介するテキストも、図鑑のために新たに書き下ろしています。大きさに関してはノクトを基準にして、その周りにモンスターが並ぶイメージですね。人間とどれくらい違いがあるのかがすぐに分かるんです。テキストは世界観に関連するうんちくが盛り込まれており、作品に興味のある人はずっと読めると思います。コンテンツが追加されるたびに新しいモンスターも登場してきますので、そのたびにエネミー図鑑も注目してもらいたいですね。
――今後のコンテンツの広がりにも期待できそうですね。それでは最後に、これからの展開に期待しているファンに一言お願いします。
田畑氏:今現在まで遊んでくれているファンの方たちには、僕自身、本当に成長させていただいているので、まずはそのお礼を言いたいです。感謝の気持ちも込めて、もっと良いゲームにしていきたいと考えています。今は遊んでいない人でも、ソフトに手元にあるのならば以前とは違う「FFXV」を体験できます。良くなっているところはあっても、悪くなったところはありません。興味を持っていただいたら、ぜひもう一度起動してもらいたいです。そして「FFXV」に触れてこなかった人たちにも、これから先さまざまなプラットフォームで展開していきます。その人に合ったプラットフォームで楽しんでもらいたいですね。
――ありがとうございました。