6月20日に最新拡張パッケージ「ファイナルファンタジー:紅蓮のリベレーター」が発売され、累計プレイヤー数も1,000万人を突破した「ファイナルファンタジーXIV」。今回は作品の中核を担う二人、祖堅正慶氏と石川夏子氏へのインタビューを実施した。

目次
  1. 「紅蓮のリベレーター」はヤンサから始まった!祖堅氏オススメのSSスポットまで
  2. 祖堅氏の自信作は、ぜひともでっかい音で聴くべし!
  3. プレイヤーからも好評の美神ラクシュミBGMには意外な秘話が満載!
  4. ドマ城周りはBGMでもシナリオでもこだわりと苦労が―「FFXIV」だからこそのドマとは
  5. 紅蓮の音楽のコンセプトは「THE RPG」と「オリエンタル」
  6. 今作でも話題のバトル曲、祭囃子に隠された苦労話やオメガの楽曲について語ってもらった
  7. ラールガーズリーチの曲で起こってしまった大失敗とは!?
  8. スクエニ社員さんの間でも「余輩」は「余輩」だった…アジムステップやクガネなど特に印象的なフィールド曲たちの制作秘話!
  9. 9月開催のオーケストラコンサートは、これまでの旅を振り返るようなものになる?

「ファイナルファンタジーXIV(以下、FFXIV)」2作目の拡張パッケージ「紅蓮のリベレーター」。恐らくこれまでプレイしてきた人たちはメインストーリーを終えて、極蛮神攻略や「次元の狭間オメガ(および零式)」などを楽しんでいる頃だろう。

今回は、サウンドディレクターの祖堅正慶氏と、メインシナリオライターの石川夏子氏に「紅蓮のリベレーター」の楽曲について、インタビューを行った。

主に祖堅氏の音楽への話題が中心となるインタビューだが、石川氏にも「シナリオ担当としての音楽へのこだわり」という視点からの話も聞けた、大変貴重なロングインタビューとなっているので、ぜひパッチ4.05までのコンテンツをほぼ終えたファンに最後まで楽しんでもらえれば幸いだ。

また、2017年9月に行われる「FFXIV」初の公式オーケストラコンサートについてなども語ってもらった。セットリストのネタバレなどはないので、こちらも行く予定のあるファンにはぜひ目を通してもらいたい。

なおこのインタビューでは、4.0のメインシナリオと、4.05までのレイドコンテンツのネタバレが含まれているため、まだクリアしていない方はご注意願いたい。

「紅蓮のリベレーター」はヤンサから始まった!祖堅氏オススメのSSスポットまで

――祖堅さんはGamer読者にもお馴染みですが、石川さんはGamerでは初登場となりますので、まずはそれぞれの自己紹介をお願いいたします。

祖堅氏:「FFXIV」でサウンドをやっています祖堅です。よろしくお願いします。

石川氏:「FFXIV」のメインシナリオを担当している石川と申します。今日はシナリオというよりは曲の発注者、プランナーとして参加させていただきます。よろしくお願いいたします。

祖堅氏:この2人でのインタビューって初めてじゃないですか?

石川氏:そうですね、初めてですね。

――今回は音楽をより一層深く掘り下げるために、石川さんにもご同席いただきました! まずは今回のタイトル画面で流れるプレリュードですが、随分と勇ましい感じになりましたね。

石川氏:あれは、私が「勇ましい感じで」と発注しました。とりあえずその一言だけ伝えて、詳細は後日と思っていたのですが、先に絵などができあがって、祖堅さんがパーンと音を入れて、そのまま採用という流れでした。

祖堅氏:進軍しているイメージとはいろんな人に言われました。「とりあえずこんな感じでどう?」と試聴データを渡したら誰からも異議がなかったので、あっさりと実装されました。一番早かったんじゃないかな?

石川氏:プレリュードは本当に早かったですよね。

――今回は結構時間を設けて取り掛かられたんですか?

祖堅氏:発注はかなり前から来ていたんですが、実際に量産し始めたのはだいぶ遅かったです。このプレリュードを作ったのは2月くらいですかね。

――今回もカツカツじゃないですか(笑)。

石川氏:発注自体は昨年からしていたんですよ。でも祖堅さんの手が空かなくて。

祖堅氏:少しずつやってはいたんですけれど、なにせ忙しくて……。サントラがあって、オープニングムービーがあって、ティザーで公開されたものの後半も作らなきゃいけなくて、結構時間がかかっちゃいました。ファンフェスもあったりして、ドタバタしていてましたね。

祖堅正慶氏

――4.0での祖堅さんと石川さんの“推し曲”を教えていただけますか?

祖堅氏:ヤンサのフィールドですね。

――お、意外ですね。なぜヤンサなのでしょう?

祖堅氏:「紅蓮のリベレーター」は全体的にオリエンタルな感じのテイストを入れたんですが、その中でもヤンサは“東方感”がよく出ているかなと。自分の中で表現したかったイメージを込められた曲ですね。

石川氏:私は新フィールドの6曲に思い入れがありますね。その中でもヤンサで使われている曲は一番はじめにできあがってきて、祖堅さんと「これヤンサだよね」ってお互いに言っていたので、これは残りもうまくいくなと思いました。

祖堅氏:できたときに「これどこがいいかね?」と話し合って、大体あのあたりの地方の曲だろう、と当てはめていったんです。

――ヤンサの曲として作られたわけではなく、どこかに使おうという感じで作られたんですか?

祖堅氏:一番最初に、東方地域のどこかに当てる曲のモックアップを作ってみたんですよ。楽器の数や尺を考える指標になるものを作って、それを聞いてもらったんです。まだ盛る前で、半分くらいの出来だったと思うんですが、その時点で「これ、あと倍あればヤンサにできますよ」という感じでした。あれができた後は早かったよね。

石川氏:鳴らす具合の指針になりましたからね。あとはフィールドごとの特色を出していけば……。

祖堅氏:今回のフィールド曲は旅情を大事にしたいという気持ちがあったんです。フィールドをふと見まわしたときに「遠くまで来たなぁ」という感じが出るといいなと思っていて、それは表現できました。

ヤンサのデモを作ることで二人の落としどころが見えたんでしょうね。オープニングの曲を作ったときは、まだそれが見えてませんでしたね。

――それほどまでにヤンサがキーになっていたというのも、少し驚きですね。

祖堅氏:大きな赤い壁、遠くに見える大きな建物、近くにあるバラックのような民家、小川、「あまり綺麗じゃないんだけれど綺麗」という独特の感じですよね。土臭いんだけど見たことがあるような感じがビビっときたんです。

音楽としては、ヤンサで昼と夜どちらもピタリとハマったのが、「紅蓮のリベレーター」の楽曲作りの中でも相当大きかったですね。

――ヤンサは日本っぽくもあり、中国らしくもあるような、不思議な場所ですよね。どちらとも取れる不思議な風景、そしてそれに合う曲だったと思います。

祖堅氏:ヤンサをね、ぜひ歩いてほしいんですよ。

石川氏:それなんですよ。走ってもいいんですけど、スプリントを使わないで走ってみてほしいんです。そうすると、ちょうど曲とテンポが合うんですよ。

祖堅氏:最初ヤンサを作ったときはもう少しテンポが早かったんですよね。ちょっと落としてみたら、走ってる音とぴったり重なるようになりました。

石川氏:種族によっては曲と歩調がばっちり合うので、ぜひスプリントを使わないで走ってみてください。

――私もあとで試してみます!

祖堅氏:夜のヤンサの、木の船がある海のあたりが、霧がたちこめるとめちゃくちゃ綺麗なんですよ。そこでピアノの音を聞きながらぼーっと眺めるのがおすすめです。スクショを撮るなら、おすすめのフィルタは「鮮やか3」ね!

――それはスクショ勢としては気になりますね。私、普段は「鮮やか4」なんですけれど、「鮮やか3」なんですね。

祖堅氏:「鮮やか3」だと青がとても綺麗に写りますよ。フィルタを水墨画みたいなものにすると、良い画になります。

祖堅氏の自信作は、ぜひともでっかい音で聴くべし!

石川夏子氏

――「紅蓮のリベレーター」のメインシナリオを全部踏破した上で、聴き直してほしいポイントはありますか?

祖堅氏:帝国バージョンのアラミゴの歌かな。思い入れがありますね。

石川氏:私は神龍戦の後半やIDのボスですね。出だしが帝国のテーマやアラミゴ解放軍のテーマに聞こえたり、後半の「紅蓮のリベレーター」の部分が東方のみんなに感じられたり、同じメロディでもその時々によって誰を指しているのか変わるようになっていると思います。聴きなおしていただいたときに「あ、ここは帝国っぽいな」「ここはラールガーズリーチっぽいな」と浮かんだものによって、自分がこの旅で何が思い出深かったのかわかるかもしれません。

――特に神龍戦の曲は、いろんな曲がさまざまなアレンジで混ざっていますよね。後半部分の盛り上がりもすごいですし。

祖堅氏:もう、そのつもりで作りましたから!

石川氏:祖堅さんから「気合い入れて作ったんで大音量で聴けよ!」って言われましたよ(笑)。

祖堅氏:あれはね、でっかい音で聴いてほしいんですよ(笑)。自信のある曲は「でっかい音にして聴けよ!」と石川に渡してます。

石川氏:クガネ城も「大音量で聴けよ!」ってきましたね。

――神龍戦は途中で熱いメロディが来たと思ったらメインメロディにつながって、あの流れが祖堅さんらしかったです。あれは最初からそう決めていたんですか?

祖堅氏:あれは石川から言われていました。

――前半は、3.56の神龍対オメガのムービーの部分を使われていますよね。

石川氏:そうですね。「FFXIV」における神龍の登場シーンなので壮大な曲ではあるんですが、バトル曲としてはまだテンションがマックスではないので、後半はラスボスな感じで! とお願いしました。

――クガネ城もすごくおもしろかったです。律動四層のブルートジャスティスを思い出すような遊び心が感じられました。

祖堅氏:あれは発注段階で「遊びすぎず、でも時代劇っぽい感じ」と難しいことを言われました。最初はもうちょっと遊んで作ったんですが、これはやっぱりダメだろうと思ってボツにしちゃいました。

石川氏:聴かせてすらもらえなかった(笑)。

祖堅氏:ボツになった曲なんて、山のようにありますよ。ファイルネームにバージョンナンバーをつけているんですが、クガネ城はバージョン11でしたね。

石川氏:何かが20を超えてませんでした?

祖堅氏:ドマ城がバージョン31。でも意外とラクシュミがバージョン33までありますね。ラクシュミは“女子大生問題”があったから(笑)。

――今聞き逃せないワードが出てきましたね(笑)。ラクシュミについては、ぜひ色々お伺いしたいです。

プレイヤーからも好評の美神ラクシュミBGMには意外な秘話が満載!

――今回一番驚きだったというか、祖堅さんの引き出しから出てくると思わなかったのがラクシュミでした。

祖堅氏:発注で来たのが「オリエンタル+ピラミッド+etc…」みたいな、すごい内容だったんですよね(笑)。

石川氏:中東からインドあたりのオリエンタルらしい感じで発注したんですけれど、そのときは直前で出た女神ソフィアの曲との違いが私自身、あまりはっきりついておらず、どう差別化しようかと考えていたんですね。祖堅さんにも一度持ち帰って精査してもらって、インド寄りに調整してもらいました。

祖堅氏:ソフィアは、メロディラインの旋律をストレートに、どこの地域にも属していない感じで作ったんですよ。ラクシュミはみんなインドらしさを感じているかもしれないですけれど、「ヨナ抜き」という東方寄りの音階を使っています。意外とインドよりもさらに東方なんです。かつ、ベースラインにシタールを使ったり、パーカッションを多用したりして、印象をインドにもっていきました。

――さきほどの女子大生問題とは……。

祖堅氏:それは深い理由がございまして……(笑)。そもそも開発当初のラクシュミさんは、今リリースされているラクシュミさんよりもぽっちゃりしていたんですね。全体的にオリエンタルな雰囲気なんですが、日本人が想像するオリエンタルではなく海外の人が想像するオリエンタルに寄っていた、土着感の強い女神だったんですね。

それが、とあるえらい人……あのジャラジャラしている人(※「FFXIV」ディレクター兼プロデューサーの吉田直樹氏)が出てきて、「かわいくない!」と(笑)。そうして、すごくオリエンタルだったラクシュミさんが美容整形を施されることになったんです。

とにかく締め切り時間も差し迫っていたんで、やれるところまでやろうと動き始めたんですが、その時点で石川も僕も、前のラクシュミのほうのイメージでBGMを作ってしまっていたんですよ。それで、美容整形を施された現在のラクシュミさんができたときに、「これあうかなぁ」と心配になってしまって。

石川氏:「これ、曲をもっと若くしたほうがいいんじゃない?」と。

祖堅氏:僕らがイメージするオリエンタリティにはハマっていると思うけれど、女子大生みたく生まれ変わっちゃったラクシュミさんを見て、シヴァを歌っている村田(ローカライズ部・村田あゆみ氏)が歌う女子大生バージョンを作ってみたんですよ。ちょっとはにかんでいるような、「恥ずかしい!」って顔を覆いながら歌っているようなバージョンです。

ただ、それで実際プレイしてみたところ、どっちもどっちという感じになってしまって。最終的にジャラジャラした人に聞いてみたんですが、ジャラジャラした人は女子大生バージョンがいい、残り全員が前のほうがいいと割れてしまって。結局、一番偉い人が「こっちがいい」と言っているのに、現BGMが採用されることになりました。

――村田さんのバージョンのほうはお蔵入りになっちゃったんですね。以前、ボツになったリヴァイアサン女性ボーカルバージョンがサントラに入ったこともあるので、ぜひそういった展開に期待したいです(笑)。ボーカルといえば、あのラクシュミの歌詞はヒンズー語ですか?

祖堅氏:あれは英語ですね。

――えっ、英語だったんですか。聞いていると何語だかわかりにくいような感じですよね。
―祖堅氏:それはコージ(※ローカライズディレクターのマイケル・クリストファー・コージ・フォックス氏)がそういう方向に寄せたんです。

――なるほど。ヒンズー語っぽいし、でもボーカルはいつもスクウェア・エニックスの社員さんだし、これを歌える方が社内にいるのかな? と思いながら聞いていました。

祖堅氏:今回もまた新しいボーカルの方をコージが発掘してきましたよ。歌ってもらったらバッチリはまりましたね。

――でも、この曲をプロじゃない方が歌うのは難しかったんじゃないでしょうか?

祖堅氏:それがすごく上手い人で。もちろん編集作業はしていますけれど、ほとんど録って出しです。社員の中にもこんなに歌の上手い人がいるんだなと驚きましたね。

村田の可愛らしい歌バージョンとザ!オリエンタルな歌バージョンのどちらを選ぶのか、ローカライズチームやシナリオチームとかなり話しあったんですが、そもそもコージがつけた歌詞の内容が、テンパードにされたアナンタ族たちがラクシュミに対して歌っているものなんですね。

――そうだったんですか。英語は苦手なもので、まるで解りませんでした。

祖堅氏:今回海外の方たちにはわかりやすい英語を使っているので、ヒアリングのできる方なら一発で歌詞がわかるはずだとコージが言っていたんです。英語のわかる人たちなら、アナンタが歌っているんだから「なるほどこういうことか」と。

アナンタ族は結構猛々しいイメージのある種族じゃないですか。あのイメージで可愛らしい声はやっぱり違う、というのが僕らの総意だったんですよ。

ただし、日本人含めて英語のわからないプレイヤーさんの中では、ラクシュミが歌っているであろうというイメージが先行してしまうのではないかと。見た目が女子大生で大人の声が乗っているものと、見た目が女子大生で女子大生の声が乗っているものとのリンク度を比べたら、後者のほうがリンクするだろうという、その葛藤で色々と話しあいました。

でも、アナンタ族がラクシュミを称えているのは英語が解る人ならすぐに理解できるし、歌詞もプレイヤーの人がやり取りをしていくうちにわかるだろうから、アナンタ族が歌っているものにちゃんと添おうということで、今のバージョンになりました。

ドマ城周りはBGMでもシナリオでもこだわりと苦労が―「FFXIV」だからこそのドマとは

――では、今回一番苦労したのラクシュミだったんでしょうか?

石川氏:(吐き出すように)ドマ城……。

――あら、ドマですか(笑)。先ほどもドマはバージョン31まであったとおっしゃっていましたね。

石川氏:ドマ城のテストプレイをしていた吉田さんが「これ音楽違うんじゃない?」と言い出したんですが、ちょうどそのとき、祖堅さんはコミュニティ放送の生放送に出演していたんですよね。

にもかかわらず「ちょっと行ってくるわ」って吉田さんがそのまま生放送に乱入して「祖堅、ドマ城おかしいんだけど!」って出てしまった事件です(笑)。

※2017年4月20日放送の第18回FFXIVコミュニティ放送での出来事

祖堅氏:そのとき俺は「なになに?」くらいだったんですが、吉田に「いいからちょっと来て」とかなり強引に連れ出されたんで、「嫌な予感しかしない」と思いながらついていきました。

石川氏:そのあと吉田さんが「呼ばれた祖堅が思いのほかマジ顔で出てきて深刻になった」と言っていましたね(笑)。

――ドマ城はどの部分で苦労されたんでしょう?

祖堅氏:最初は情景だけで作ってしまったので、「取り返しにいくぞ」という気迫が楽曲の中になかったんですね。ストーリーラインを踏んでいなかったのが原因です。だからもっと「乗り込むぞ!」という感じでやってくれ、と。

――ドマ関連は「ファイナルファンタジーVI」のファンにすごく訴えるものがあったと思います。ヒエンが出てくるシーンにカイエンのテーマが使われていたり、すごく「FFVI」ファンの気持ちを揺さぶってきますよね。

石川氏:あそこは、アジムステップの最初のプロットから「ここではカイエンのテーマを流す、という強い意思」と書いていたほどです。ヒエンの名前のからくりや、ヒエンと「FFVI」との関わりがあるこのシーンには、あの曲が絶対に必要だと思っていました。後半になると曲数を絞らなくてはいけないこともあるのですが、ここだけは絶対に使いたかったのでお願いを貫かせてもらいました。

――それほど石川さんの中でも強いこだわりがあったんですね。

石川氏:過去作の曲は流せばいいというわけではなく、あくまで「FFXIV」の世界だということを踏まえた上で、ここぞの場面を選ばないといけません。今回は、「カイエンのテーマを絶対に使うぞ!」という思いが最初からあったんです。なので、曲の要望も祖堅さんに伝えやすかったですね。

祖堅氏:こちらからは発注する曲には優先度をつけてくれと頼んでいたんですけど、カイエンのテーマの優先度が落ちることがなかったですね。大事なシーンで使うのはわかっていたんで、「FFVI」に大変詳しい知人に色々ヒアリングしました。家族構成や設定をとくとくと聞いたんですが、「これは余計な尾ひれをつけないほうがいいな」と思ったんですよね。カイエンのテーマに関しては思い入れが強い方が多い印象だったので、原曲を「FFXIV」の世界に持ってきた上で、かつ漬物石のようにドーンとくる感じにしたかったんです。それが今の形になっている。

よく聞くとアレンジ違いの二回し構成になっているんですが、あまりアレンジの違いを前面に出さないようにしています。ちょっと違う感じに聞こえるけど、でも同じにも聞こえる、というように作っています。

――パッチ3.56までの流れで今回ドマが出てくるのは解っていましたが、どこにどのタイミングでドマを出すか、どこまで「FFVI」のドマを踏襲するかは、吉田さんと一緒に決められたんですか?

石川氏:そうですね、ドマが出る時点で、何かしら「FFVI」を踏襲する部分は出すべきだろうという話はしていました。私と織田(世界設定/メインシナリオライター・織田万里氏)と吉田さんで、川のそばにある城にしたいとか(筆者注:「FFVI」で登場するドマ城が川に囲まれている設定のため)、土台の部分を話しましたね。

私も織田も過去の「FF」が好きなので、「自分たちが喜ぶようにいれる」という基準を設けていたのが大きかったです。過去作を利用しようとして入れるというより、ここにはこのネタを仕込もう、という感じで楽しく企むことのほうが多いですね。

――石川さんと織田さんが、ある意味でひとりのFFファンとして「ここにこういうものがきたら楽しい」という視点をもちながら作られた部分もあったのでしょうか?

石川氏:そうですね。ただ、「FFXIV」はあくまで「FFXIV」の世界の中の話として、過去作と関係あるかもしれないし、ないかもしれない、くらいの温度感を保っています。あまり無理にやろうとは思いませんし、喜ばせようというよりは「このネタがこうだったら嬉しいよね」「こうくるからにはこの話に触れておいたほうがいいよね」というところに落とし込んでいますね。

紅蓮の音楽のコンセプトは「THE RPG」と「オリエンタル」

――石川さん、織田さん、吉田さんの三人でメインストーリーにまつわる合宿をされたと伺いましたが、楽曲のイメージもお三方で決められるんですか?

石川氏:その合宿では曲の話はまったくしていません。そこで話し合ってきたことを元に、私が勝手に発注書を起こしますね。曲の発注には意外と吉田さんは絡んでこないんですよ。

――吉田さんから発注が来ることはないんですね。

祖堅氏:オープニングムービーは吉田の発注です。他の細かい部分では、吉田からの直接の発注はありません。

――以前にもオープニングムービーの曲は絵尺が変更できないので作るのが大変だとお伺いしましたが、今回もやはり大変でしたか?

祖堅氏:もうむちゃくちゃ大変ですよ! 外注だったらこの発注、誰も受けないだろうなっていうくらいですよ!(笑)

――まずムービーがあって、それにあわせて音楽をつけるんですよね。

祖堅氏:そうなんですけど、そんな自由自在に音楽は作れません! 毎回言ってるんだけど、直らないんですよね(笑)。

――やはりリテイクも多いんですか?

祖堅氏:めちゃくちゃ多いですね。そもそも生録なので、尺関連のセンシティブな部分の調整は、すごく大変なんですよ。演者の方が100人以上集まってやるわけですから、こっちも後戻りできない状況で録音しなきゃいけないんです。だから戦争ですよ。

――絵尺が変更できない以上、少しずれただけでやり直しですもんね。

祖堅氏:そうですね。今回はその中でもよくできたほうかなとは思います。オープニングムービーのモチーフはゲーム中にも使うことを前提にして作りましたが、そこはうまくできたかなと。要所要所、大事な部分で使えたのは良かったですね。

――そのモチーフはいわゆる今回の「メインメロディ」と言えばいいのでしょうか、「紅蓮のリベレーター」の一連の楽曲の中で何回も出てくるフレーズですよね。まさに要所要所で使われて、全体的に楽曲の統一感が出たと思います。

祖堅氏:手法としては「蒼天のイシュガルド」からずっとやっていることなんです。違うことというと、新生、蒼天、紅蓮と進むにつれて、メロディラインの個性をちょっとずつ強くしているんですよ。新生ではニュートラルなところを作り、蒼天ではちょっと強くして、紅蓮では「THE RPG」感をより強くしています。そのほうが音楽的にも前へ進んでいる感が出ますね。

これは結構大事な要素で、後半にいくほどクライマックス感を出したい、というのと同じ原理なんです。進んでいるのであれば、よりメロディアスに仕上げなくてはならない、というのがRPGにはあります。よりその作品に愛を感じてもらえるための工夫ですね。

――「蒼天のイシュガルド」のときは、よく聴けば同じメロディが使われていることがわかる、くらいだったのに対して、「紅蓮のリベレーター」はあちこちで「あっ、このメロディ」って気づきました。「今度はこんなバージョンになって出てきた!」というのがわかりやすくて、プレイしていておもしろかったです。

祖堅氏:わかりやすいですよね。まだまだあると思いますよ、これからパッチ4.1、4.2……とね。もう発注書が来ていますから(笑)。

――「蒼天のイシュガルド」のときは、最初から最後まで実は一つの曲につながっている、という話をされていましたが、今回もそういう隠しネタはありますか?

祖堅氏:それはこれからのお楽しみということで! もうちょっと待ってください。色々構想はあります。

――全体でひとつの曲になっているかは別として、今回もアジムステップからのバルダム覇道などで、フィールド曲がIDでアレンジになっていますよね。

祖堅氏:それも「蒼天のイシュガルド」から変わっていません。フィールドに対してひとつのメロディラインがあって、それが各土地に紐づいたダンジョンやコンテンツにつながるようにしています。

――今回のIDボス曲はどういった発注だったんでしょう?

石川氏:「東方でもアラミゴでも使えるよう、両方のテーマを使った……いつものIDボス!」と(笑)。

――面白い雰囲気でしたね。

祖堅氏:オリエンタルが今回のテーマですからね。IDボスも前半は、中東でもインドでも東方でもあるような和っぽいメロディにしつつ、後半はメジャーなオーケストレーションをかけて一気に壮大感を出しました。

石川氏:今回はアラミゴ側と東方側でまったく違う文化圏のエリアになっているのですが、すべて2通りずつ曲を用意すると、全部通したときに「紅蓮のリベレーター」というひとつの物語である感じが薄くなっちゃうなと考えていました。それで祖堅さんに「東方で聴けば東方っぽく聴こえるし、アラミゴで聴けばアラミゴっぽく聴こえる」ところを探してもらうのが、最初に苦労していただいたところですね。それがハマってからは、どんどん進んでいきました。

――そうですよね、クガネ城の用心棒で聴いても馴染むし、アラミゴのゼノス戦で聴いても違和感がありませんでした。

祖堅氏:難しかったですけどね(笑)。でも今回はポンポンできたので、順調でした。「蒼天のイシュガルド」はかなり悩みながら作っていましたが、「紅蓮のリベレーター」は勢いでぶわーっと作れた印象です。

今作でも話題のバトル曲、祭囃子に隠された苦労話やオメガの楽曲について語ってもらった

――バトル曲について、まずはスサノオからお願いします。あれはまさに祭囃子といった雰囲気でしたね。スサノオ自身「祭りだ、祭りだ!」って言っていますし。

石川氏:発注の段階で「こういう曲をつけてくれ、私もそういうテンションで書く!」という感じでしたね。スサノオというキャラクター自体、あの曲ありきで作った部分もあります。

祖堅氏:あれ、難しかったですねぇ……。祭囃子って各楽器がリズムフレーズをループしているんですけど、楽器ごとに小節がバラバラなんですよ。だけど合うところは合うんです。何回も祭囃子を調べたんですけど、もうわからないんですよ!(笑)

何分の何拍子かもわからない、でも終わるところはちゃんと一斉に終わる。もう「どうなってんだこれ」って思いながら研究しました。ねぶた、三社祭、沖縄まで全部調べて、結局わからなかったですね(笑)。

――祭囃子がそんな風になっているとは知らなかったです。

祖堅氏:でも、よくわからないままではいけないので、グルーヴと楽器の種類、楽器構成は本物の祭囃子に準じて、尺の構成自体には西洋を取り入れたんです。和洋折衷というやつで、拍子は4分の4にしています。そうすると起承転結がつけられる。皆さんがよく聴く音楽は大体そうなっているはずです。現代音楽はまたちょっと別ですけれど。

そうやって、和の割とめちゃくちゃな尺をバトル曲に落とし込みました。だから、聴きやすい祭囃子になっていると思いますよ。

――オメガの曲では「FFV」からバトル2やエクスデス戦、次元の狭間などが使われていますが、割と正統なアレンジになっていますよね。

祖堅氏:発注が「王道で」「余計なことすんな」という感じだったんですね。それでいて「FFXIV」の曲になるようなアレンジにしました。

石川氏:オメガはこれからも続いていきますが、とりあえず第1弾はまっすぐに投げようと思っていました。

祖堅氏:エクスデス戦にはちょっとした仕掛けがあって、今皆さんがチャレンジし始めているであろうオメガ零式四層なんですが、ノーマルのほうだと真のラスボスBGMが聴けないんですね。そことの繋がりが難しかったです。

――零式……。私は当分たどり着けそうもないです。

祖堅氏:でも出来はめちゃくちゃいいですよ。

――そう言われると聴きたくなりますね。

石川氏:とはいえ、たどりつくのが本当に難しいので……。私もキツい(笑)。

祖堅氏:俺もILの暴力が振るえるようになったら行こうかなってくらい。ただ、ゲームコンテンツ的には頂点にもってくるべき場所なので、そこよりはどうしても「バトル2」や「決戦」のアレンジはテンションを若干落とさざるを得ないですね。その調整が難しかったです。

――落とすのは難しいですか?

祖堅氏:難しいですね、それでいて原曲を壊さないようにしないといけませんし。

――ファンが喜ぶように進化させてくれたと思っていますよ。実際、私の周りでも「FFV」をプレイした人たちはみんな感涙していました。

ラールガーズリーチの曲で起こってしまった大失敗とは!?

――次はフィールドやイベントの音楽についてお伺いします。まず今回の旅で最初に足を踏み入れる大地はギラバニア辺境地帯でしたが、哀愁漂う雰囲気でしたね。

石川氏:最初に足を踏み入れたとき、ここは戦争中ですよね。見渡す限り戦場の大地という荒涼としたイメージです。ただ、4.0の物語が終わった後も皆さんが来る場所なので、単純に寂しいだけではなく、そこにいて不愉快ではない、居心地が良いというのは、発注する上でも気をつけました。

祖堅氏:大体どのフィールドやバトルでもそうですが、「プレイヤーの感情はどうなっているの?」とよく質問しますね。「悲しい」でも、色んな悲しいがあるじゃないですか。戦争に負けて悲しいのか、大事な親友が死んで悲しいのか。プロット段階だと細かいところまではわからないことが多いので、「これをプレイしているときはどうなっているの?」「どれくらいそこにいるの?」とは結構聞きます。

――滞在時間を聞くのは、長い間いると曲を長く聴くことになるからですか?

祖堅氏:そうです。足りているかとか、長すぎないかとか。

――ラールガーズリーチはアラミゴ解放軍の拠点ということで、ちょっと軍歌っぽい感じの曲だと感じましたが、そこは意識されましたか?

祖堅氏:はい。描写的に色々想像してもらうところではあるんですけれども、元々あの土地に根付いていたメロディがあって、それがあるときは帝国の歌になって、ある時はアラミゴの民衆の歌になります。それは僕から提案しました。

――曲の変化がラールガーズリーチと同期するんですね。

祖堅氏:こういう描写がほしい、ってカット班や石川に頼みにいきました。

――ラールガーズリーチは物語中で何度も状況が変わりますからね。

祖堅氏:最初は帝国バージョンから始まりますしね。曲単体で考えたらそれが一番カッコよかったかな。自分で「カッコよすぎね!?」って言っていました(笑)。

石川氏:言っていましたね、「これは帝国万歳になるわ」って。

――最終バージョン以外はどれもあまり長くは聴けないんですよね。

祖堅氏:スタッフロールで帝国バージョンが全尺聴けますよ。あと、民衆バージョンというのがあるんですが、それが最初はちょっと“民衆民衆”させすぎてしまったんですよね。

――“民衆民衆”とはどんな感じなんですか?

祖堅氏:帝国バージョンは50~60人くらいいる男性聖歌隊が歌い上げる国歌、軍歌という感じで、プロにお願いして録ったんですよ。バックの演奏も全部生演奏で。それに対して民衆バージョンは「ここが俺たちのアラミゴだ!」という雰囲気を出すために、わざと上手くない人に歌ってもらったんですよ。

石川氏:みんなで横一列になって、肩組んで歌っているような感じですね。

祖堅氏:それが何万人といるイメージだったんですが、上手い人に頼むと帝国バージョンとの差別化ができなくなるので、コージに「歌があまり上手くない選りすぐりの人たちを集めてくれ」とお願いしたところ、下手すぎてやばいことになっちゃって。なんていうか、“大人幼稚園”みたいな……。

――それは上手くない方たちが歌ったのを全部重ねたらそうなっちゃったんですか?

祖堅氏:そうですね。スタジオに入れる人数は限られているので、何回も録って重ねたんですが、なにせみんな下手すぎてリズムの拍すら取れないんですよ。コージが歌う前にメロディと譜割り(筆者注:メロディに対する歌詞の乗せ方)の例を見せると、向こうは「オッケー!」と言うので、「よし、じゃあやろう!」といざ歌ってみるとガッタガタなのね(笑)。コージが一生懸命「1、2、3、4!」って全身で指揮を大きく振るんですけど、それでもガッタガタで。

そのレコーディングが半日くらい続いて、コージがヘトヘトになっているところを吉田に目撃されたりしてましたね。本当は手で拍子を打って皆でタイミングをとればいいんだけど、そうすると音が入っちゃうので、指揮を振るしかないんですよ。

――そこまでやってできたのが、大人幼稚園だったと(笑)。

祖堅氏:大人幼稚園ですね。「やばい」ってなりましたね。

石川氏:各所からリテイクの嵐でしたね。

――結局使えなかったんですか?

祖堅氏:ほぼ使えなかったです。一応うっすらと混ぜてはいるんですけどね。結局、もうちょっと歌える人たちで後日録り直しました(笑)。

スクエニ社員さんの間でも「余輩」は「余輩」だった…アジムステップやクガネなど特に印象的なフィールド曲たちの制作秘話!

――次はレストエリアについてお聞きします。「蒼天のイシュガルド」でもレストエリアで曲が変わりましたが、エリア内に切り替えなしで入れるレストエリアが増えたことで、曲が目立つようになりましたね。

石川氏:今回はレストエリアの曲がかなり主張するので、流れているなと強く感じるようになっていますね。

――「蒼天のイシュガルド」のときは、エリアの最初や終点に拠点がありましたが、今回はエリアの中にたくさんレストエリアがあるので、フィールド曲からレストエリアの曲に切り替わるのが新鮮に感じました。

石川氏:特に東方側のエーテライトがある場所では結構主張してきますよね。

祖堅氏:今回のエーテライトは開けているところにドーンとあることが多いので、印象の問題ですかね。「蒼天のイシュガルド」とは、やっていることもエリアの広さもほとんど変わっていないんですが、印象的にはなっていると思います。

――クガネで特に印象的な旋律を刻んでいるのは尺八ですか?

祖堅氏:そうです、尺八です。

――クガネなどでは特に、これまで「FFXIV」ではあまり使ってこなかった楽器をたくさん使われているように思えます。これまで使われてきた音色と和楽器の融合がすばらしかったですが、琴なども使われていますか?

祖堅氏:大正琴を使っていますね。夜のクガネでも使っていますよ。クガネは打ち込みでできるものとは別に、生でやらないと表現できないことがたくさんあったので、尺八に限ってはプロの方を呼んで生収録しています。

――今回は聞いてもすぐに解らない音色の楽器が多く使われているように感じました。

祖堅氏:胡弓とかですかね。僕ら作曲家からすると「東方といえばこれ」というメジャーなものばかり使っているんですけど、今まで「FFXIV」ではこういう音は入れてこなかったので、変わっているように感じられるかもしれません。

スサノオの打楽器は、祭囃子を表現するための楽器がソフトウェアで出ていなかったので色々やりました。あと、アジムステップのNPCが弾いている馬頭琴の音は、僕が胡弓を弾いてピッチを下げて入れています。

――アジムステップは「紅蓮のリベレーター」の中でも清涼剤のような役割を果たしているエリアだと思いました。音楽のイメージはモンゴルなど中央アジアのあたりでしょうか?

石川氏:そうですね。ただ、中央アジアの曲と言われても想像しにくいと思うんですよ。なので、草原の雄大さや力強さ、大地を表現した上で、先ほど出てきた馬頭琴や胡弓などのアジアらしい楽器でアクセントをつける、というのを祖堅さんがうまくやってくれました。

祖堅氏:「コーラスとオカリナ」という音色が発注書から想像できたので、その浮かんだイメージ通りに作りました。直感的に感じましたね。

リズムがあるのかないのか、メインメロディの音色が胡弓なのか笛なのかオカリナなのかは、本当に微妙なところなんですよ。そんなに変わりはないはずなんですが、そこを変えることで各フィールドに独特の土着感を出しています。絵も合わさって、まったく違う地域の音楽に聴こえるように工夫していますね。アジムステップは、フィールド曲にコーラスを乗せること、オカリナを鳴らすことで色付けしました。

――アジムステップの雰囲気と曲の相性があまりにすばらしかったので、レストエリアで曲が変わってしまうのがもったいないな、と感じるくらいでした。

祖堅氏:よし、張り直すか!

――(笑)。

石川氏:でも、アジムステップっぽいレストエリアの曲を出してくださいという意見はよく見かけるんですよね。

祖堅氏:つまりは余輩のところを、レストエリアの曲じゃなくてアジムステップの曲にしてくれってことでしょ?

石川氏:余輩の砦っぽい曲ですよ。

――皆さんも通称は余輩なんですね。

石川氏:マグナイって言っても伝わらないから、もう余輩でいいかなって(笑)。

祖堅氏:余輩、大人気だもんね。

――余輩は最高ですよ!

祖堅氏:俺のよく遊んでるフレンドが、完全に頭から先まで余輩になってるんですよね。完全再現。

石川氏:じゃあ誰かとエターナルバンドをしてもらわないと(笑)。

祖堅氏:これがいるのよ。シリナちゃんを完全再現している子といちゃいちゃしているの。

石川氏:それは祝福された余輩ですね。

――ナーマがちゃんといる余輩なんて余輩じゃない(笑)。

祖堅氏:IDに一緒に行くと「あ!余輩だ!」って言われるんだよね。「余輩さん、こんなところに何か用ですか?」「余輩さん、随分遠くまできましたね」とか話しかけられて、それに「うむ」とか答えるから、またおもしろくて。

石川氏:余輩の持っている武器ってタイタン斧に似ていますけど、実はタイタン斧じゃないんですよ。一応。アジムステップのオリジナルの斧なんですけれど、タイタン斧を持つと大体それっぽくなりますね。

祖堅氏:そのフレもタイタン斧を持ってるね(笑)。ヒーラーでついていくときは、「余輩だから戦士か! よし、ラクシュミ行こうぜ」みたいな。戦士だからヒールを厚めにしておかないとな、とか思いながらやっていますよ。

――余輩のお話で当分続いてしまいそうなので、無理やり話題転換します(笑)。今回水中で音が変わりますよね。あれはエフェクトをかけているんですか?

祖堅氏:あれは水中用のフィルターを新しくプログラムで用意しました。そのために1個専用のシンセサイザーを作ったということになります。

本来水中でああいう音はしませんけれど、”人間が想像する水中の音はこういう音、という専用フィルター”を作って、それを実装しています。技術的には簡単じゃないことをやっていますね。

ただ、「あの音が聞こえない」「この音が聞こえない」って声がぽつぽつと来ているので、ひとつずつ対応中です(笑)。

9月開催のオーケストラコンサートは、これまでの旅を振り返るようなものになる?

――9月のオーケストラコンサートについても聞かせてください。セットリストなどはもちろん明かせないとは思うんですが、おおよその構想を教えていただけますか?

祖堅氏:交響組曲と言っている手前、交響組曲の構成になりますね。

――新生からこれまでの冒険を振り返っていく、という感じですか。

祖堅氏:そうですね。そんな感じに捉えていただければいいかと。

――2日間で4公演行われますが、セットリストは共通ですか?

祖堅氏:共通です。違うから全部行かなきゃ、というのはやめたかったんで。都合の良い日時の公演に来てください。ただ、オケなんで同じ譜面であっても毎回同じになるとは限らないですね。

――オケコンは初演から最終公演までの数回の演奏で、演奏者の方たちがこなれてくる感じもありますからね。

祖堅氏:それもありますし、4公演の間に色々変わるでしょうね。やたらと主張する楽器があったりとか(笑)。

――オケコンへの意気込みを聞かせてください。

祖堅氏:この間、オペラシティで東京フィルハーモニー交響楽団さんとオーケストラアレンジアルバムの録音をしてきたんですけど、前途多難という感じではあります。

――ええっ、そうなんですか?

祖堅氏:やらなきゃいけない課題が浮き彫りになってしまって。録音は録り直しができるんでまだいいんですが、公演は一発勝負なので、「ここをこうしないと」というところがたくさんありますね。

音源にはないことを色々やろうとしていますし、もちろん僕がやるからにはきっと他にも何かあるんでしょう!(笑)

――ちょうど2年前に「蒼天のイシュガルド」のインタビューでお伺いした際に、「国際フォーラムでオケコンやりたいですね」とおっしゃっていたのが、もうすぐ叶いますね。

祖堅氏:本当にやっとなので、上手くいくといいなぁと思いますね。演奏はもちろん、他のことも。

あと、ひとつ言っておきたいことがあるんですよ。石川はこないだのレコーディング、見学に来たんだよね? オペラシティのやつ。

石川氏:行きましたよ。

祖堅氏:僕、コントロールルームで録っている音をモニターしながら指示を出さなきゃいけなかったんです。生音を直接この耳でまだ聴いていないんですよ、一回も。今度のオケコンでも僕は裏で色々仕事があるんで、たぶん一回も聴けないんですよ。生音。つまり、僕は一回も自分の曲を正面から生音で聴けないんですよ! これ、どうにかならないんですかね!(笑)

色んな人に「聴けるチャンスないのかなぁ」って言っているんですけど、音楽出版部のスタッフも苦笑いしながら「いやぁ、多分ないっすねぇ」とか言うのね。みんな冷たいです。

――正面から聴きたいですよね。

祖堅氏:一応、俺の曲なんだけどなぁ(笑)。

――でも作曲者さんは裏で控えていることが多いので、大体正面で聴けないということが多いですよね。

祖堅氏:そうなんですよね、悲しいですよ。一度は聴きたいなぁ。

――中国でのローンチのときにやっていたミニオケコンも正面からは聴けなかったんですか?

祖堅氏:あれは正面から聴けましたけど、修正前の譜面だったので、自分の満足いく状態ではなかったんですよね。今回のが聴きたいです。

――今回の指揮は栗田博文さんですよね。ゲーム音楽コンサートの指揮といえば栗田さんになりつつありますが、以前からご親交はあったんですか?

祖堅氏:あまりないですね。お願いできればぜひ、という方だったので、引き受けていただけて良かったです。ゲーム音楽を理解していただける指揮者さんって、まだあまりいらっしゃらないんですよね。なおかつできる方となると、やはり栗田さんですね。

――オーケストラと祖堅さんのバンドのコラボとかはありえますか?

祖堅氏:オーケストラの良さと、THE PRIMALSの良さは僕の中では相容れないと思っているので、ないんじゃないですかね。同じタイムスケジュールに並んでいたとしても、一緒にはやらないんじゃないかと思います。あれをバックに演奏するのは無理だって言っているんですが(笑)。

――なるほど、それで察しました(笑)。さて、それでは気が早いですけれどもパッチ4.0のサントラの発売予定などはありますか?

祖堅氏:これはずっとやっていることなので、作っていないということはありません。いつ出るかは現時点では何とも言えないです。早く出したいとは思っていますが、今はパッチ4.1やオーケストラコンサート、ミニアルバムもありますし、順番にやっていきます。

――これは大人の事情を抜きにしてお伺いしたいんですが、GLAYのTERUさんが最近すごく「FFXIV」にハマっていますよね。THE PRIMALSでコラボしてみたい、という気持ちはありますか?

祖堅氏:やるのであれば全力でやりたいですよね。でもそうなると軽々しく「やりたいな」とは言えません。「FFXIV」は全部そういう感じでやってきているので、自然とやるときがきたら全力でやるようになるんじゃないでしょうか。

――ではそろそろ〆に入らせてください。

祖堅氏:今日も上手くしゃべれなかったなぁ、自分の曲を解説するの、すっごい苦手なんですよ。色々ありすぎてわからない。

石川氏:時系列もめちゃくちゃですしね。

祖堅氏:後半はあまり覚えていないんだよな(笑)。

石川氏:もうグダッとしていたあたりですからね。

祖堅氏:心配だったでしょ、本当に終わるのかって。

石川氏:最終的にはあがると信じてましたよ! ラールガーズリーチの、一回寂しくなっちゃったときの曲が、最初は汎用の曲を使い回していたんですけど、祖堅さんから「これ、新しくつけたほうがいい」って提案してもらえて、そのテンションを見るに「大丈夫、祖堅さん全部いける!」って思っていました。でも周りがそわそわしてくるので、「大丈夫です! でもちょっと待ってて、ごめんなさい!」と言っていましたね(笑)。

――なんとなく末期状態が想像できますね……(笑)。

祖堅氏:周りもそわそわしてただろうね。いつになったらあがってくるんだよ、って不安になっていたと思いますよ。モックアップっていう、聴かせたとしても作曲者以外は理解できない状態のものを渡してもしょうがないので待ってもらっているんですが、急かしてくるんですよ、特にカット班が(笑)。

石川氏:カット班はその後に音楽に合わせてカットを調整しなきゃいけないんで、ヤキモキしていましたね。「大丈夫、できてはいる! 違う曲が!」となってました(笑)。

――なかなか〆にならないのですが(笑)。それでは「紅蓮のリベレーター」よろしくね、ということで。

祖堅氏:はい(笑)。

石川氏:ありがとうございました。

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