千葉・幕張メッセにて9月21日より開催中の「東京ゲームショウ2017」。ここでは、22日にDMM GAMESのブースにて行われたステージ「DMM GAMESの新たなる挑戦とは?」をレポートする。

このイベントではDMM GAMES ビジネスデベロップメントエグゼクティブの藤井隆之氏、DMM GAMES ゲーム企画本部 神山敬介氏、シェード プロデューサーの河野一二三氏が登壇。週刊ファミ通編集長の林克彦氏のモデレーターを務め、各クリエイターがDMM GAMESで手掛けるゲームの話題を中心に、それぞれの「挑戦」についてディスカッションを展開した。

左から林克彦氏、藤井隆之氏、神山敬介氏、河野一二三氏

まずは、それぞれが制作中の新作ゲームの紹介が行われた。藤井氏が手掛ける「がるメタる!」は女子高生「星野凛子」の身体に精神を注入されてしまった男の子が、ガールズメタルバンドを組んで異星人と「メタルの力」で戦うという音楽ゲームだ。監督・脚本は「東京魔人學園伝奇シリーズ」などで知られる今井秋芳氏、キャラクターデザインはマンガ家、イラストレーターの青木俊直氏が担当。ハードはNintendo Switchで発売は2018年2月予定となっている。

ゲーム制作にはESP、ヤマハ、ローランド、アンペグ、ジルジャンといった有名楽器メーカーが協力していて、ゲーム中に実在の楽器が登場するのはもちろん、藤井氏によると音作りの部分でも協力してもらっているとのこと。ちなみに、これらのメーカーに話を持って行った際、「DMMが来たぞ」「何をされるんだ?」とかなり警戒されたそうだが、「メタルをやりたい」と持ちかけたところ、快く賛同してくれたと藤井氏は明かした。

神山敬介氏が企画・プロデューサーを務める新タイトル「デメリトクラシーあるいはアリアス・ルースの2つの顔」は、DMM GAMES初となるPS4専用のオリジナルタイトルである。ジャンルはシナリオアドベンチャーで、メインキャラクターのデザインは「Fate」シリーズも担当するワダアルコ氏、ディレクターとシナリオは「クロックタワー」シリーズなどを手がけた河野一二三氏が担当する。

右が主人公のアリアス・ルース、左がそのライバルとなるカラヤ・ディアルだ。

河野氏がこれまで手がけてきたゲームはすべて自身が企画したもので、他者の企画に参加するのは今回が初めてとのことだが、神山氏から話をもらったときに彼のパッションを感じ、「やらしていただきたい」と答えたという。タイトルにある「デメトリトクラシー」とは社会学の用語であるメリトクラシーをもとにした造語で、元の言葉が能力主義による政治的統治を指すことから、それを否定する意味を持つデメリトクラシーという言葉を作ったと神山氏は語った。いわば反逆的な意味合いを持つ言葉で、ゲームの内容を象徴する重要なキーワードとなっているという。

ここで、夜の街を描いた本作のイメージボードが表示。神山氏によると舞台は中世もしくは近世ヨーロッパをイメージしたものになるというが、なぜそのような世界観を選んだのか、なぜに夜の街が描かれているのかはのちのち明らかにしていくとのことだ。

さらに、ゲームをひもとくためのものとして「復讐×女装×2つの顔」、「権謀術数×相関図×計画書」、「特殊能力×トラウマ×キス」という3つのキーワードが紹介された。「復讐×女装×2つの顔」は主人公のアリアス・ルースがどういうキャラクターか表したもので、出生に秘密があって復讐のために動いている、いろいろな顔を持つ男になるという。気になる「女装」というワードだが、決して色物的なものではなく、ちゃんとシステムにも組み込まれていて、必然があって女装することになると神山氏と河野氏は語った。

「権謀術数×相関図×計画書」はゲームシステムに関わるもの。主人公は策略をめぐらして復讐を行っていくそうで、そうした策謀を立てるための計画書や人物相関図、組織図などをプレイヤーが操作していくようなものを神山氏はイメージしているもよう。河野氏によると物語もけっこう複雑で入り組んでおり、システムとも密接に関わってくるとのことだ。

最後の「特殊能力×トラウマ×キス」だが、主人公にはある特殊能力があって、その能力を使って復讐を果たしていくことになるという。「トラウマ」と「キス」は主人公の能力発動に関わるキーワードで、どのようなものかは不明だが、神山氏の話しぶりからかなり不穏なものであることがうかがわれた。開発はすでに始まっているが、ゲーム画面やデモなどを見せられるのはもう少し先になるとのこと。発売は2018年予定だ。

ここからは「挑戦」をキーワードに、ゲスト陣が開発するゲームの内容に絡めたディスカッションが行われた。最初のテーマは「音ゲーでの挑戦」というもの。現在の音ゲーの大部分は音符などのインジケーターに合わせてボタンを叩いたりするものが大半で、いかに正確にプレイできるかを競うものだが、音楽をやっている人間からすると、音符をそのタイミングで鳴らすというのは当たり前のことであると藤井氏は言う。

例えば、クラシックのコンクールでは一音でも間違えたらアウトなわけで、楽譜どおり正確に弾けることが前提にあって、その上でそれぞれの表現力が審査される。同じように「正しく弾くことプラスアルファ」をゲームでも実現できないか、画面を見ないでも楽しめる音ゲーはできないかと、藤井氏はかねてから考えていたそうだ。

こうした音楽の性質に近いものが格闘ゲームであると藤井氏は語る。つまり、小パンチや小キックだけでも一面はクリアできるが、勝っていくためにはコンボを覚える必要がある。ただ、どのタイミングでどのコンボを出すかはプレイヤーに完全にゆだねられていて、決まったら「オレ、すげえ」となる。

この発想を突き詰めたのが「がるメタる!」で、本作は画面上には楽譜が一切表示されず、音楽に合わせてプレイヤーの好きなタイミングで、好きなリズムを突っ込むことができる。いわば格ゲーのコンボのようなもので、完全な正解はないし、どんな演奏(操作)をしても間違いにはならないというわけだ。ここには、「音楽なんだから耳でやろうよ」というコンセプトがあり、バンドも互いのサウンドを「耳」で聞きながらタイミングを合わせていく。そこを突きつめていくことで得られる面白さをゲームに落とし込めたのではないかと藤井氏は語った。

ちなみに、似たようなアドリブができるものに任天堂の「Wii Music」があるが、この作品には藤井氏も刺激を受けたそうで、「音楽そのものを(ゲームで)やらせようとした、すごい挑戦だった」と称賛。同時期に人気となった「リズム天国」は楽譜をゲームに落とし込んだもので、コンセプトは異なるが、こちらもすごいと思っているとのことだ。

Switchをハードに選んだ経緯についても質問が出された。実は藤井氏は12年ほど前に任天堂のクリエイター募集に応募したことがあって、二次面接くらいまでいったそうだが、そのときに「絶対に新しいモノを創る、必ず世の中にない遊びを創る。そして、これが新しい遊びだというお手本になるものにする。それが我々(任天堂)の使命だ」と言われたのだという。

Switchは持ち運べるコンソールであり、ジョイコンを使ってみんなで遊べることを目指したハードであるわけだが、藤井氏はそうした部分に任天堂の新しい挑戦を感じたそうだ。さらに「どこでもみんなで楽しめる音ゲー」という自身の構想を実現できるハードであることからSwitchでの挑戦を決めたと答えた。

次のテーマは神山氏、河野氏が制作中の作品にちなんだ「アドベンチャーでの挑戦」というものだ。河野氏は3Dのモデリングなどが必要なアドベンチャーの場合、あるひとつのシーンを作るたびにかなりのコストがかかるため、いろいろ絞り込まなければならないと説明。しかし、テキストは無限なので、その無限力を全開で出していくというのが今回の挑戦であると答えた。

自身でもシナリオを書く神山氏も同様の考えを持っていて、絵やプログラムはリソースに限りがあるが、シナリオはシナリオライターが頑張れば無限であり、そこに可能性があるのだという。河野氏も神山氏の持つイマジネーションの大きさに感銘を受けつつ、最初に話を聞いたときはUbisoftとかでオープンワールドでやるのかなと思ってしまったそうだ。しかし、テキストベースでやりたいと聞き、じゃあ神山さんとふたりで想像の翼を広げていったらやれるかもしれないと思い、快諾したと振り返った。

世界観の部分でも挑戦がなされているという。テキストアドベンチャーは現代や近未来を舞台にしたものが多いと神山氏は感じていて、特に推理モノが多いという。そんな中で中世ヨーロッパを舞台にするというのはかなりの挑戦で、実際にそうしたシナリオアドベンチャーはほとんどないそうだ。中世のヨーロッパとなるとやはりRPGが主流で、そこにあえて文章を読むことでアタマを使って爽快感を得るアドベンチャーで挑むというのは非常に挑戦的なことであると神山氏は述べた。

なぜ、PS4なのかということも話題に。もちろん、国内だけでも500万台近く売れている土壌があり、そうした市場性は前提にあったという。さらに、うまくいけば海外でも展開したいという考えがあるそうで、そうなったときに世界中に普及しているPS4というフォーマットはやはり魅力的であるとのことだ。また、本作はテレビの前でがっつりやってもらうほうが合っているという考えもあって、コンソールであるPS4を選んだと神山氏は語った。

ここで、DMMがなぜコンソールゲームにチャレンジするのかというテーマを司会の林氏が提起した。神山氏は決してDMMのプラットフォームでは作らないというわけではなく、あくまで今回の企画はオンラインではないなという考えからであることを強調。藤井氏も企画段階でPCで出せといったようなことは言われなかったという。神山氏も会社からストップがかかるといったことはなかったそうで、DMMのフトコロの深さをうかがわせた。

最後は林氏が挙げる、さまざまなキーワードについて議論。「プレイ時間は長く」というキーワードについて語ったのは神山氏で、クリエイターのエゴであると認めつつ、今回のゲームはじっくり遊んでもらうのが一番楽しいと作り手としては思っているし、そうしたゲームにしたいと熱くコメント。河野氏も神山氏から大河ドラマ、群像劇であると再三言われているそうで、かつて自身が手がけた「無限航路 -Infinite Space-」を思い出したとのことだ。

物語があるということは終わりがあるということで、次のキーワードは「終わりがあるゲーム」。音ゲーながら「がるメタる!」にストーリーの要素を取り入れたことについて、藤井氏はやり込んでもらってもいいが、一周したときに「やって良かった」と思ってもらえるところがコンソールの美学のひとつで、そこを突きつめたいと強調。神山氏もすべてはテーマ次第で、ソーシャルだからできるシナリオもあるとしつつ、「デメリトクラシー~」は終わりをちゃんと決めて、プレイヤーに納得してもらえるものを出さないとIPとして評価されないという思いがあると決意を見せた。

最後のキーワードは「ゲームは努力してなんぼ」。音楽は楽器などを学んでいくことによって好きになっていくジャンルで、時間をかけたからこそ得られる次のステップがある。それに比べると、ゲームは簡易型、アチーブメントシステムなものではあるが、そこにも音楽と同じような努力の楽しさがあって、これまでのコンソールゲームが培ってきたものでもあると藤井氏は説明。「ココを改めて見せて、こういう遊びを若い人たちに残していきたい」と強い言葉で語った。

アドベンチャーの場合は試行錯誤を繰り返すことがゲーム的な努力なのかなと神山氏はコメント。シナリオの内容が少し難しいと感じても、もう1回やり直すことで快感を得られるということもあり、それも努力ひとつなのだろうと述べた。

このように「腰をすえて遊べるゲーム」「テレビの前でみんなと遊べるゲーム」の制作をDMMでチャレンジしていくという藤井氏と神山氏。DMMがオンラインに強い会社で、その強みを活かすのは当然のことだが、それとは違うやり方でもやっていきたいと神山氏は改めて意気込みを述べた。藤井氏も「ゲームを作るって楽しいよねっ」ていうところ次の世代に伝えていきたいと語り、「来たれ、若者よ!」とエールを送った。

※メーカー発表情報を基に掲載しています。掲載画像には、開発中のものが含まれている場合があります。

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