千葉・幕張メッセにて、9月21日から4日間にかけて開催されていた東京ゲームショウ2017。同イベントに合わせて9月22日に行われた「GUNGRAVE VR」のメディア向けセッションの模様をレポートする。
「GUNGRAVE VR」は、BLUESIDE より発売を予定しているPSVR対応のアクションシューティングゲーム。2002年にレッド・エンタテインメントからPS2用ソフトとして発売されたガンアクションゲーム「GUNGRAVE」を元に、PS4・PSVR向けの最適化が行われている。
韓国で「GUNGRAVE VR」が作られるまで
本セッションに登壇したのは、パブリッシャーである韓国のゲームメーカー・BLUSIDEのキム氏と、開発を担当するデベロッパー・IGGYMOBのケイ氏。実はキム氏とケイ氏は共に日本のセガに勤めていた時期もあり、日本のコンソール市場への憧れが強かったというのも、「GUNGRAVE」という日本の作品を選んだ理由の一つとなっているそうだ。
IGGYMOBは、元々モバイル向けのゲームを開発しているデベロッパということもあり、本作も最初はモバイル向けに開発されていたタイトルだった。その後にBLUSIDE側から、3Dガンシューティングとの親和性の高いVRタイトルにしないかという提案がなされ、それからわずか半年の間でIGGYMOBはVRに対応した雛形を作り上げた。
しかもその際に作られたものは、VRゲームにとって課題となる「VR酔い」がほぼ起こらないという完成度となっており、その仕上がりを見た瞬間に、BLUSIDEはパブリッシングすることを即断したという。
なおBLUSIDEがVR向けにプラットフォームを変更することを提案した背景には、現在韓国ではVR熱が非常に高まっているのに加え、国からの支援が行われているという、VRタイトルを開発するための土壌が整っていたという理由が大きいのだそうだ。
また「GUNGRAVE」という、10年以上前の作品をチョイスしたのは、元々IGGYMOBは韓国よりも日本に向けたゲームを多くリリースしているデベロッパであったことと、ケイ氏らと同じ世代の日本のゲーマーに向けた作品を作りたかったからなのだという。
「VR酔い」を防ぐための、一人称と三人称の視点が混在する、独特のゲームスタイル
「GUNGRAVE VR」では、PS VRのヘッドトラッキング機能で視点を動かしつつ、デュアルショックを用いてキャラクターを操作する。ゲームの流れである、二丁拳銃「ケルベロス」を用いて現れる敵を撃ち倒していくガンシューティングという基本的な要素は、PS2版から継承されている。
一方で「GUNGRAVE VR」ならではの要素として、一般的なVRコンテンツで一人称・もしくは三人称(いわゆるFPSとTPS)のどちらかに固定されているが、本作では両方の視点で切り替わりながらゲームが進行していく。
例えば何らかの乗り物の上に乗った自動で移動が行われるようなシチュエーションなら一人称、キャラクターが自ら移動を行う際には3人称視点という切り替えが行われる。一人称視点のVRコンテンツでは、視点に対して自身の身体の動きがリンクしないため、「VR酔い」が発生しやすくなるのだが、本作では3人称視点の際に移動を限定させることでこれを解消している。
またメイン武器である2丁拳銃「ケルベロス」は、連続して射撃を行いすぎるとオーバーヒートを起こし、再使用までにクールタイムを挟む必要があるようになった。これは、ゲームが短調になってしまうのを防ぐためで、当初はリロードのシステムを入れたいと考えていたという。だがケルベロスの設定と齟齬が出てしまうこともあり、レッド・エンタテインメントからのNGが入ることに。その代わりとして、オーバーヒートのシステムを導入したという経緯があったようだ。
また本作には、オリジナル版のスタッフも関わっており、イラストのアドバイザーとして内藤泰弘氏が、メインテーマの作曲を今堀恒雄氏がそれぞれ参加。加えてキャスト陣も、グレイヴ役に関智一さん、浅葱ミカ役に佐久間紅美さんと、アニメ版に準拠したメンバーが揃っている。他のキャストについても、できるだけオリジナル版と同じ配役を考えているそうだ。
具体的な発売時期に関してはまだ「2017年内」としか明言されなかったものの、日本が最速でリリースされる予定。これは、日本が「GUNGRAVE」の熱いファンがもっとも多く、オリジナル版が作られた地域でもあるからだそうだ。
なお発売後には、プレイアブルキャラクターの追加といったDLCの配信も予定されている。「GUNGRAVE VR」は、オリジナル版の後のストーリーという時代設定となっているが、オリジナル版で死亡したキャラクターが使用可能となる予定もあるという。ただこれにはしっかりとファンが納得できるような仕掛けが用意されているとのこと。
PS VRでのガンシューティングとなると、PS Moveへの対応も気になるところだが、こちらは現状ではデュアルショックのみの操作となっている。本作の開発にはVRヘッドセットを装着する以外のストレスをできるだけ減らしたいというコンセプトもあり、そのためにはもっとも慣れ親しんだデバイスであるデュアルショックを用いるのが、もっとも適していると考えたためだ。
ただし、技術的には十分に対応可能なのだそうで、実際にPS Moveに対応させたバージョンを試作したこともあったほど。ユーザーからの要望が高ければ発売後に対応を行う可能性もあるという。
近年では、PS VRの他にも数多くのVRデバイスが発売されているが、その中でも真っ先にPS VRへの対応を決めたのは、技術的なアドバイスなど、ソニーからの手厚いサポートが受けられたため。半年という非常に短い開発期間でゲームを形にすることができたのも、その恩恵が大きかったらしく、キム氏は「もしVR事業を始めたいなら、PS VRで展開することをオススメしたい」と、そのサポート体制の素晴らしさについて何度も語っていたのが印象的だった。
オリジナル版から15年という月日を経て、現代に再び蘇ろうとしている「GUNGRAVEVR」。会場では実機でのプレイ映像を見ることもできたのだが、スタイリッシュかつ小気味いい、「GUNGRAVE」らしいガンアクションが見事に表現されており、FPSとTPSの視点の切り替わりという本作ならではの要素も、VRが抱える問題への一つのアンサーとなっている出来だと感じられた。発売日の発表やDLCの詳細など、今後の続報にも期待しよう。