いよいよ明日2018年4月19日に角川ゲームスより発売されるPS4/PS Vita用ソフト「メタルマックス ゼノ」。「メタルマックス」シリーズ最新作となる本作を、発売に先駆けてプレイする機会を得たので、そのインプレッションをお届けする。
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荒廃した近未来に西部劇を組み合わせた独特な世界観と、「クルマ」と呼ばれる戦車に乗り込み戦う異色のRPG「メタルマックス」シリーズ。近年では、ニンテンドー3DSを中心に展開されていたが、およそ5年ぶりのコンシューマ向け最新作となる「メタルマックス ゼノ」では、シリーズ初のPS4/PS Vita向けタイトルとしてリリースされる。
非常に熱いファンからの根強い支持を得続けている「メタルマックス」シリーズだが、長い歴史をもち、「戦車」というややマニアックな題材が特徴の作品だけに、「気にはなっていたけど、実際にプレイはしたことない」と、その機会を逃していた読者もいるのではないかと思うが、恥ずかしながら筆者もその一人だった。今回はそんな「メタルマックス」初心者の視点からのインプレッションをお届けする。
死の世界と化した「デストキオ」での、人類の存亡を賭けた冒険
物語は、かつての「TOKIO」と呼ばれた地区「デストキオ」に存在する「アイアンベース」へと、主人公(デフォルトネームはタリスで、自由に変更可能)が訪れたところから始まる。
本作の地球は、かつて人類が作り出したマザーコンピューター「NOA」の反乱により発生した核戦争によって荒廃し、死の大地と化しており、数少ない生き残った人々が集まる街である「アイアンタウン」も、物語開始時の時点で「SoNs」と呼ばれる強力なモンスター達の襲撃によって壊滅。生存が確認できる人類は、アイアンベースの住人である3人と主人公の4人のみという絶望的な状況下の中、主人公はモンスターへの復讐を果たすためアイアンベースの一員となり、人類の僅かな生き残りを探して世界を回ることになる。
本作には、そんなギリギリまで追い込まれた人類の現状を数値化した「絶滅指数」なるパラメーターが存在しており、生存者を発見したり、人類の最大の天敵であるモンスター「SoNs」を撃破すると数値が低下していく。ゲームを進めていくと、自然とこの数値は順調に下がっていくため、いかに自分が人類に貢献しているかを数値として実感することができるのが気持ちいい(ただ個人的に、こうしたパラメーターがそのまま素直に下がってくれた記憶がほとんどないので、後にどのような展開が待ち受けているかが怖いところだ)。
今回のプレイでは、アイアンベースで育てられた戦災孤児の「ヨッキィ」、主人公に窮地を救われた、元・アイアンタウンの住人の少女「トニ」、盗賊団のボスとして、アイアンタウンの住人達からは忌み嫌われていた「ディラン」と、3人の仲間キャラクターを発見。3人はそれぞれ心強い仲間としてパーティに加わってくれるのだが、中でもインパクトが抜群だったのは、本作のヒロイン的なキャラクターである「トニ」に関するイベントだ。
主人公に救出されたトニはその旅へと同行を希望するのだが、この時点ではアイアンベースの人員の中には男性しかおらず、トニは世界で生き残っている唯一の女性である可能性が浮上してくる。万が一トニが命を落としてしまうと、子孫を残す道を失ってしまう……という、人類が滅亡寸前まで追い込まれた状況ならではの生々しい問題が噴出することになる。
ここまでの段階でも他のゲームで目にする機会はそうそうない展開だが、この問題に対するトニの告白が、「このシーンだけでレーティングが一段階上がったんじゃないか」と思わず邪推してしまう内容となっている。ネタバレになってしまうため詳細は伏せるが、その真相は是非自分の手でプレイして確認して欲しい。
なお本作の主人公は台詞を喋らないアバター形式ではなく、一人のキャラクターとして台詞を発し、個性付けがされているタイプだ。しかしその一方で、会話シーンでは頻繁に選択肢が登場し、主人公がどんなキャラクターなのかをプレイヤー側がある程度ロールプレイで操作できるようになっている、アバターとしての側面も持ち合わせたキャラクターとなっている。一見、復讐のためには手段を選ばないダークヒーローのような性格をしているが、微妙に抜けているコミカルな一面を覗かせることもあり、一般的なRPGの主人公像とは一味違う存在としても印象に残った。
クルマに乗り込んで、荒廃した世界を自由に駆け回る
そして本作の魅力を語る上で欠かせないのが、「クルマ」と呼ばれる乗り物の存在だ(この世界では戦車を代表した乗り物を総じてクルマと呼ぶ)。本作では、フィールドマップでの移動から戦闘まで、多くの時間をこのクルマに搭乗した状態で行うことになる。
荒廃し、ほとんどの土地が砂漠と瓦礫と化したデストキオのフィールドには人類の天敵ともいえる大型モンスター達が我が物顔で闊歩している。主にフィールド上でのモンスターとの遭遇は、ある程度モンスターに近づくことで対象が出現する、俗に言われるシンボルエンカウント方式で行われるが、敵と接触するよりも先に、クルマに搭載された武装で先制攻撃をしかけることで、ダメージを与えた有利な状態で戦闘へ突入できる。
HPの低いモンスターなら、この一撃だけで倒せることもあり、経験値やドロップアイテムもしっかりと獲得できるので、ゲームテンポは非常に良好。レベル上げやパーツ集めをする際にもサクサクとプレイできるようになっているのは嬉しい。
フィールドの各所に配置されている宝箱からはさまざまなアイテムを入手できるのだが、とくに今回プレイした序盤の範囲では、その周辺エリアの敵やボスとの戦いで有効となる装備が入手できることが多く、攻略する上での重要性がかなり高めだと感じた。ストーリーの先の展開が気になって仕方なかった筆者は、先へ先へと進めてしまい、後になってからアイテムを回収しにきた際「あの時持っていればボスの弱点属性をつけたのに!」と後悔することも少なくなかった。
クルマからは戦闘・非戦闘中を問わずいつでも乗り降り可能だが、フィールドの敵は非常に強力。生身の状態ではまず太刀打ちできないため、基本はクルマに乗ったまま移動することになるが、クルマから降りないと入手できない狭い場所に宝箱などが置かれていることも。なお今回のプレイでは、宝箱を拾い、クルマの場所へと乗り込もうとした瞬間に敵とエンカウントしてしまい、あっという間に全滅されられてしまうという場面もあった(クルマに乗っていればほぼ一撃で倒せるようなレベルの敵であるにも関わらず、だ)。
このクルマの外に一歩踏み出るだけで、死が隣り合わせになるという緊張感は、人間が生きていくことができなくなった本作の世界を的確に表しており、「フォールアウト」や「マッドマックス」といった、退廃的な世紀末世界観の作品が好きな身としてはたまらないものがあった。
またフィールドには「リメインズ」と呼ばれるダンジョンも存在している。リメインズの内部はクルマでは入り込めない広さとなっているため、クルマから降りて生身で探索をする必要がある。中には生身で立ち向かうのが難しいようなモンスターもおり、リメインズの探索には大きな危険が伴うが、その最奥部には主人公の活動の拠点となる「アイアンベース」のテクロノジーレベルを上昇させるアイテムが落ちていることが多い。
アイアンベースのテクロノジーレベルが上がるとクルマの改造やパーツの購入など、システム的にできることが増え、その後の難易度が劇的に変わってくるため、発見したリメインズはできるだけ探索しながら進んでおくと、その後の展開が楽になるはずだ。
なお本作のフィールドはかなり広大。武器の弾薬や、クルマのHPとも言えるシールドのエネルギーは、戦闘を繰り返す内に消耗していくが、回復が行える場所は拠点であるアイアンベースだけ。その際に役立つのが、「ベスターポート」と呼ばれる各地に存在する中継地点だ。ベスターポートを開放すると、いつでもその場所に即座にファストトラベルを行えるようになるので、まずは各地にあるベスターポートを開放し、アイアンベースからの移動手段を確保していくのが探索の主な流れになる。
チェックポイント式のファストトラベルというシステム自体は一般的なRPGでもよく見られるものではあるが、地球上のあらゆる場所がモンスターによって支配されている本作の世界観においては、この工程で少しずつ人類の生息範囲を広げている実感のようなものを得ることができるのが楽しい。先ほど触れた、クルマから降りた瞬間に危険度が跳ね上がる敵の強さと合わさって、「世紀末的な世界を冒険する」ハラハラ感をあますことなく堪能できるシステムとなっている。
クルマの生命線となるSP(シールドポイント)がバトルのカギ
本作のバトルシステムは、敵・味方がそれぞれのターンに選択したアクションを行うという、オーソドックスなコマンドバトルだ。クルマとそれに乗り込むキャラクターにはそれぞれ別個のステータスが設定されており、戦闘中にもいつでも乗り降りを行え、クルマが破壊された場合はそのまま生身で戦うことになる。
クルマには、豊富な弾数とある程度の攻撃力を兼ね備えた主力武器となる「大砲」、弾数制限はないが、その分攻撃力が低めの「機銃」、弾数制限は非常に厳しいが、広範囲や複数の敵を攻撃する強力な性能をもつ「S-E」の3種類の兵器が用意されており(搭載できる兵器の数は、クルマの素体となる「シャシー」の穴と「エンジン」のパワーによって決まる)、攻撃の際には搭載したものの中から一つを選んで使用する。
しかしこの兵器は、戦闘中にダメージを受けると破損してしまうことも。それを防ぐ上で重要になるのが、先程にも少し触れた、それぞれのクルマがもつSP(シールドポイント)と呼ばれる耐久値だ。このSPは、HPの代わりにモンスターの攻撃を防いでくれる効果をもち、SPが残っている間はクルマ本体がダメージを受けることはほぼない。
しかし一度このSPが尽きると、搭載した兵器にもダメージが通過していき、最後には使用不能に陥ってしまう。それまで順調にダメージを与えていたとしても、残弾を温存していた武装が破壊されると、まともな攻撃手段がなくなり敗北してしまうといった事態も起こりうる。そのためSPは、攻撃と防御の2重の意味でクルマにとっての命綱的な存在となっている。
普段からRPGをプレイしている読者の中には「HPが瀕死に近い状態であっても、通常と変わらないコンディションで攻撃を行えるのはおかしいのでは」という疑問を抱いたことがある人がいるかもしれない。ダメージを受ければ受けるほど、戦闘力が低下する本作のシステムは、その問題に対する回答として、非常に納得のいく仕様になっているとも感じられた。
攻撃には「ビーム」「火炎」「冷気」「電撃」「音波」 の5種類の属性が存在し、戦闘中は初めて戦う相手でも、どの攻撃が有効なのかを一目で確認することができる。だが戦闘中に装備の交換を行えない本作においては、弱点属性がわかっても武器を装備していなければ意味がない。そこで重要になってくるのがクルマのアセンブルだ。
装備できる兵器の数は、クルマのベースともいえる「シャシー」に設定された穴の数により決まるため、穴が多いシャシーを選び、ありったけの武器を搭載すればどんな敵にも対応できる……かというとそうはならない。
さきほど説明した、クルマの第2のHPともいえるSPは、基本的には「シャシー」自体の持つ固有のSPと、心臓部にあたる「エンジン」のパワーを合計した値から、搭載した兵器の総重量を引いた数値によって算出される。つまりは、強力な武装を多く装備するほどSPは減少してしまうというとだ。
さらに強力な武器は重量が高めに設定されていることが多く、調子にのって武装を搭載しまくっていると、SPが低い紙装甲のクルマが出来上がり、あっという間に折角搭載した武装が壊されてしまうことも。これでは完全に本末転倒となってしまうため、兵器とSPの割合を、どのように配分してチョイスするのかがアセンブルのポイントになる。
キャラクターを育てながらクルマのパーツを集め、試行錯誤を繰り返す楽しさ
キャラクターにもクルマとは異なるシステムが用意されており、それぞれのキャラクターにはモンスターへの攻撃能力に特化した「ハンター」、生身での戦いが得意な「ソルジャー」、クルマを修理可能な「メカニック」、人間を治療することができる「メディック」、クルマ・白兵戦ともにバランスのいい能力をもつ「ギャングスタ」、生き残ることに特化した「サバイバー」の6種類の職業が用意されている。それぞれの職業でクルマか生身か、攻撃かサポートかとった、得意するシチュエーションが明確に差別化されているのが特徴で、目的に応じたパーティ編成を行っておく必要がある。
なお主人公ならハンター、ヨッキィならメカニックと、それぞれのキャラクターにはパラメーターに適した職業がデフォルトで割り振られているが、アイアンベースの施設を活用し、転職を行わせることもできる。複数の職業のスキルを組み合わせれば、オールラウンダーなキャラクターへと育て上げることも可能だ。
筆者が注目したスキルは、サバイバーの「ヘル・クッキング」。 モンスターからドロップした素材で料理を作成するという、一見地味な効果だが、 料理は序盤で入手可能なアイテムの中では破格の回復量を誇るため、生身での探索がかなり楽になる。 |
キャラクターは、パーツを交換していくことでパワーアップするクルマとは異なり、 レベルアップにより新たなスキルを習得し、成長していく。 |
キャラクターを強化していく上で要となるのが「スゴ腕への道」。これは「宝箱を○個開ける」「絶滅指数を○%以下にする」といった、プレイヤーのやり込みに応じて獲得できる「スゴ腕ポイント」を、それぞれのキャラクターに割り振ることができるというシステムだ。基本的なパラメーターにクリティカル率やドロップ率、クルマの全武装の攻撃力を上げるといった汎用性の高いものから、○○属性の武器のダメージをアップさせるという、使い道が限定される効果までさまざま。
基本的に、効果が限定されるものは倍率が高めに設定されており、レベルアップでの恩恵が大きいため、主人公はビーム、ヨッキィは音属性など、パーティ内でメインに使う属性の役割をある程度分担させておき、それぞれに特化させた能力を伸ばしていくのがオススメだ。
そうして成長させたキャラクターやクルマで、「SoNs」をはじめとした、強力なボスに挑むことになるのだが、本作のボスモンスターはとにかく手強い。中には遭遇した時点ではまず勝ち目がないような敵とでくわしてしまうことも少なくない。今回のプレイでも、「とりあえず試しに挑んでみるか……」とうかつに喧嘩を売りまくった結果、何度も返り討ちにあうハメとなっていた。
非常にシビアな面をもつ本作だが、その分全滅した際のリスクは少なめに設定されている。全滅すると強制的にアイアンベースへと戻され、蘇生処置を受けることになるのだが、それまでに入手したアイテムやレベルを全て引き継いだ状態でリスタートできる。
しかもボスに負けた際には、「撃破指数」と呼ばれる、ボスの残りHPをどのくらいの割合まで削ることができたかの目安を表示してくれるため、現状の状態から戦い方やパーツの編成を変える程度の調整でいいのか、根本的に育成が足りていないのかが分かるユーザーフレンドリーな仕様になっている。
今回のプレイでは、空中を自在に飛び回り、高い回避を誇るSoNs「スカイスペクター」相手に苦戦を余儀なくされていたのだが、撃破指数が80%まで達していたことから、あと少しの工夫をすれば十分に勝機があると確信。
次の挑戦では、スカイスペクターの弱点である冷気属性の兵器と、クルマの能力を補強する装備である「特性チップ」から、空中の敵に対して有効な「対空」性能をもつものを装備させ、さらに「スゴ腕ポイント」で冷気属性の装備を使用した際のダメージをアップさせるという万全の準備で、見事撃破することに成功。本作ではキャラ、クルマのアセンブル、実際の戦闘での戦術と、プレイヤーが関与できる要素が多いので、試行錯誤の末に最初はかなわないと思った強敵を倒せた時の達成感は格別だ。
そんなやりごたえ十分の内容となっている本作だが、メタルマックス初心者である筆者がプレイして受けた印象は、「予想以上にユーザーフレンドリーで、とっつきやすいゲーム」だということ。
戦闘中に装備を切り替えられない関係で、弱点が分かってもそれを攻撃する手段がなく負けてしまうなど、俗に言う「死に覚えゲー」的な側面も確かに持っているのだが、全滅してしまった際のプレイヤーへのフォローがしっかりとなされているので、まったくと言っていいほどストレスにならなかった。クルマもアセンブルもそれほど複雑ではなく、敷居が高そうだという印象は誤りで、歯ごたえのあるゲームを求めるコアユーザーからライトユーザーまで、幅広い層が楽しめる作りとなっている。
そして何より忘れてはいけないのが、3Dフィールドで自分がカスタマイズしたクルマを自由に乗り回せる楽しさ。自分で作ったクルマを乗り回してモンスターを倒し、集めたパーツでさらにクルマを強化していくという工程にはかなりの中毒性がある。人類がギリギリまで追い込まれた状況から始まるストーリーも、続きの気になる引き込まれる展開となっており、つい時間を忘れて先へ先へと進めたくなること請け合い。戦車好きはもちろん、巨大ロボなどのメカニック・乗り物好きなら、プレイしている最中に脳内麻薬がドパドパと溢れてくることは間違いないだろう。
そんなオンリーワンの楽しさとロマンが詰まった、オリジナリティに溢れるRPGとなっている「メタルマックス ゼノ」。「メタルマックス」の新作を長らく待ちわびてきた長年のファンはもちろんのことながら、シリーズ未体験のプレイヤーにも、是非とも体験してもらいたい一作だ。