スクウェア・エニックスは、2018年4月14日より奏楽コンサート「BRA★BRA FINAL FANTSY VII BRASS de BRAVO with Siena Wind Orchestra」の全国ツアーを開始。ここでは、2018年4月14日にオーチャードホールにて行われた夜公演の模様をお届けする。

目次
  1. 「FF7 メインテーマ」は植松氏自らも「これはいける!」と思った懇親の一曲!22年の時を経て吹奏楽で数々の名曲を振り返る
  2. 第二部はまさかの楽曲が続く!
  3. セットリスト
  4. 公演終了後、植松氏、北瀬氏、渋谷氏、榮村氏にインタビュー!
  5. 公演概要

「ファイナルファンタジー」(以下、「FF」)シリーズの吹奏楽コンサートとして、2015年からCD展開と共にコンサートも開催されている「BRA★BRA FINAL FANTASY」。

過去3年に渡って大好評を博したこの公演が、今年は「FINAL FANTSY VII」(以下「FF7」)の楽曲に絞り、「BRA★BRA FINAL FANTSY VII BRASS de BRAVO with Siena Wind Orchestra」(以下、「BRA★BRA」)として、2018年4月14日の東京公演を皮切りに全国ツアーがスタートした。

本記事では、2018年4月14日にオーチャードホールにて行われた夜公演の模様をレポートする。セットリストのネタバレがあるので行く予定の人は気を付けてほしい反面、まだ迷っている人は「こんな曲も!?」という驚きの内容なので、ぜひ確認してほしい。

また、最後には「FF7」音楽生みの親の植松伸夫氏、コンサートマスター 榮村正吾氏、「FF7」でディレクターを務めた北瀬佳範氏、”ドット絵の匠”渋谷員子氏らのインタビューもあるので、そちらもあわせて読んでいただきたい。

会場のあちこちには、渋谷氏による「FF7」の書き下ろしドット絵キャラのパネルがある。
会場のあちこちには、渋谷氏による「FF7」の書き下ろしドット絵キャラのパネルがある。

前述の通り、今回のコンサートは「FF」の中でも特別な人気を誇る「FF7」に焦点を当てているとあって、会場に訪れていたファンのうちの6~7割が初めて「BRA★BRA」に訪れたという。

…ということは、今後のツアーでも恐らく初めて訪れるファンも多いのではないかということを踏まえ、先に記しておきたいのは、「BRA★BRA」ではファンの参加型企画がいくつか用意されている。

一つ目は、ボディパーカッション。こちらは身体しか使わないので、誰でも参加できる。二つ目が、リコーダーで吹く「FINAL FANTASY メインテーマ」。三つ目がファンも壇上に上がって演奏できる「マンボ de チョコボ」だ。

よって、「BRA★BRA」の全てを”参加者”として楽しむのなら、リコーダーと、そして「マンボ de チョコボ」用の楽器を持参する必要がある。もちろん「FINAL FANTASY メインテーマ」で使用したリコーダーでも参加可能だが、物販コーナーでグッズなどを買うと、マラカスやタンバリンなどをもらえるので、それを持って舞台に上がることもできる。

なお、持参することさえ可能ならば、巨大な楽器でも持ち込むことは出来る。大きな楽器を持ってくる人はロビーに楽器預かり場があるので、そこに預けておこう。

肝心の譜面は「BRA★BRA」の公式サイトでダウンロードができる。「マンボ de チョコボ」は、一般的なト音記号の楽譜はもちろんのこと、B♭やE♭、Fなど、さまざまな楽器にあわせた譜面が用意されているので、公式サイトをチェックしてほしい。

「ステージに上がるのはちょっと恥ずかしい…」という人は客席で手拍子などで参加することもできるが、毎回ステージには100人近くのファンが上がるので、ぜひ勇気を出して上がってみてほしい。そういう筆者も必ずこの公演に最低二回は訪れるのだが、プライベートの時は思いっきりステージ上で楽しんでいる。

「FF7 メインテーマ」は植松氏自らも「これはいける!」と思った懇親の一曲!22年の時を経て吹奏楽で数々の名曲を振り返る

ステージに上がるSiena Wind Orchestraのメンバーは、今回も全員が華やかな色の衣装を着て、どこかのパーティ会場のようにステージ上が彩られる。

オーケストラコンサートでは決して見られない極彩色のステージ衣装だけでも、「BRA★BRA」が他のコンサートとは違うというのを感じてもらえるのではないだろうか。

一曲目は、「FF7」の始まりと言えばこの曲、「オープニング~爆破ミッション」。ティンパニなどの重低音や金管楽器の音が熱い一曲だ。特に「爆破ミッション」では、ピアノの低音が大変にいい仕事をしている。

会場のファンの心も一気に高まったところで、植松氏と北瀬氏、MCの山下まみさんが登場。植松氏曰く、これまで同じ会場で昼夜二回公演の場合は大抵夜の部のほうが盛り上がるそうだが、今回は昼の部がとても盛り上がったという。ぜひ夜の部のほうも同じくらい盛り上がってほしい、と会場のファンに語り掛けた。

二曲目は「F.F.VII メインテーマ」。静かに始まる曲が、やがて壮大になっていくのが印象的な曲だ。当時はこの曲の展開に驚いてわざとフィールドで放置して曲を聞いていた、というファンも多いだろう。

三曲目は隠れた名曲と称される曲のひとつ「星降る峡谷」。過去の「BRA★BRA」や「FF」のオーケストラコンサート「Distant Worlds」でも演奏されたことのある曲だが、今回初めて訪れたというファンにとっては、吹奏楽ならではの雰囲気を味わえるアレンジになっているのではないだろうか。

そしてステージには再び植松氏が登壇。「F.F.VII メインテーマは、7の顔になる曲なので、出来た時は我ながら”もらったな”と、手応えを感じましたね(笑)」と当時のことを振り返った。なお、当時の「F.F.VII メインテーマ」の譜面にも、「これはいける」と自ら書き込んでいたらしく、これには会場からも歓声と共に大きな笑い声が上がった。

この次は「BRA★BRA」でお馴染みのボディパーカッションのコーナー。これまでは「モーグリのテーマ」で行われていたボディパーカッションだが、今回は「ケット・シーのテーマ」でボディパーカッションをやるとのこと。

ここでお馴染みのモーグリおじさん…ならぬケット・シーおじさんの打楽器奏者・東佳樹さんが黄色のメガホンを持って登場した。指パッチンで始まった、「ケット・シーのテーマ」。会場のファンも曲にあわせて指を鳴らせるので、指を鳴らせる人はぜひそこでも参加してほしい。

ボディパーカッションはアレンジに次ぐアレンジでかなりの難易度だが、正確にできる必要はないので、なんとなくついていければ大丈夫だ。むしろそのドタバタ感もあわせて楽しんでほしい。

曲の後半では、ケット・シーおじさんと共に植松氏と山下さんがタップダンスを披露するシーンも。なおこのタップダンスは前日にいきなり振られて、40分の練習で本番になってしまったそうだ。このツアーは始まったばかりなので、最後の公演ではきっともっと上達しているに違いない、と語った植松氏。ツアーに通う人は、そこにも注目してほしい。

続いても来場者企画で、客席のファンもリコーダーで参加する「FINAL FANTASY メインテーマ」。ここでは北瀬氏もリコーダーを吹きたいということで昨日息子さんから借りてきたというリコーダーを携えてステージに登場。なお、この楽曲の間は客席も明るいため、譜面を覚えられない人は安心して譜面を持参してほしい。ステージでは植松氏、北瀬氏、山下さんも精一杯にリコーダーを吹いている姿が見られた。

このリコーダー参加企画は「BRA★BRA」のツアーが始まった時から行われているが、年々リコーダーの本数が増えていて嬉しい、と植松氏は喜びを露わにした。なお北瀬氏は「後半はエアリコーダーでした」とポロリ。

六曲目は「クレイジーモーターサイクル」。昼公演ではこの曲がバトルメドレーになっており、昼夜二公演とも見に来るファンも楽しめるようにという配慮がされている。逆に夜公演しか来なかった人は、ぜひ他の公演にも訪れてみてほしい。違った曲が聞けるかもしれない。

「クレイジーモーターサイクル」は、原曲の機械のようなピコピコ音をビブラフォンで再現していたが、その音色がなんとも機械的というよりも神秘的で、聞き入ってしまう。元々が熱い曲だけに、栗田博文氏の指揮にも熱が入る。

会場が大きな拍手で盛り上がった後に続いたのは、高ぶった気持ちを静めるような「エアリスのテーマ」。「FF7」といえばこの曲なしに語れないという名曲に会場からはすすり泣くような声も聞こえ、集まった「FF7」ファンに感動の余韻を与えて第一部は終了した。

第二部はまさかの楽曲が続く!

第二部の幕開けは「ルーファウス歓迎式典」。吹奏楽といえばマーチということもあって、まさにこのコンサートのためのような曲だ。なお、この曲ではとある驚きの仕掛けもある。できればこの驚きは会場で体験してほしいので、あえてネタバレを避けたい。だが、この仕掛けによって会場は驚愕と共に最高潮に盛り上がったことだけはお伝えしよう。

九曲目は「常に闘う者達(神羅カンパニー~神羅軍総攻撃~ウェポン襲来)」。神羅が「FF7」という舞台の上で辿るストーリーを一曲のメドレーで聞けてしまう、お得感のある一曲だ。

ステージには再び植松氏と北瀬氏、山下さんが登場。北瀬氏は「こういうコンサートって堅苦しそうなイメージがあるのに、本当に楽しいコンサートですよね」と興奮気味に語り、植松氏は「ルーファウス歓迎式典」での仕掛けについて「僕も参加したかったなぁ」とニヤリとする場面もあった。

そしてハープの音色で奏でられる「旅の途中で」と共に、「BRA★BRA」ではお馴染みの、アンケートコーナーへ。

今回は「FF7」オンリーのコンサートということで、「星、カンパニー(会社)、花、腐ったピザ、末裔、花火、天使、という7つのキーワードにまつわるあなたのエピソードを教えてください」というもので、寄せられた回答を山下さんが読みあげた。

”末裔”というキーワードでは、この日の会場オーチャードホールがある渋谷の有名スポットハチ公像モデルであるハチの飼い主・上野英三郎教授の末裔です、という回答が読み上げられると、会場が大きくどよめいた。なお、この末裔に関しては、他にも”武士の末裔”、”平家の生き残りの末裔”、”農家の末裔”など、さまざまな回答に、植松氏からも「農家の末裔は、実家が農家なだけじゃないの!?(笑)」という鋭いツッコミが入った。

またキーワード「カンパニー」では「就活がうまくいきません。どうしたら神羅カンパニーのような素敵な会社に入れますか?」という回答に、北瀬氏は「神羅カンパニーは素敵な会社かなぁ」と苦笑を見せた。

植松氏に「じゃあスクエニさんに入るにはどうすればいいんですか?」と切り返されると、北瀬氏は「私はゲームの知識はまったくなくて、ちょうどその頃は映像を作っていたので、一番得意な映像を見せて採用してもらいました。その会社にあわせるよりは、自分のできることをぶつけたほうがいいんじゃないでしょうか」と真面目に回答をしてくれる貴重なシーンもあった。

ここからは小編成での演奏が続く。植松氏によれば、ワンコーラスが短いと本来のメロディよりもアレンジ部分が長いのはいかがなものか、という気持ちになってしまうし、メロディが気に入っていてもオーケストラでやるような曲でもないと思った曲に、小編成という変わった形で出番をあげたい、という狙いのようだ。

小編成の一曲目は「牧場の少年」。ユーフォニアムにピッコロ、チューバという、なかなかに面白い構成で奏でられる「牧場の少年」は、ゲームとは違う印象を与えてくれる。海チョコボまで作ったファンならば、バトル曲やメインテーマと同じくらいたくさん聞いた曲ではないだろうか。

続いては「花火に消された言葉」。ハープやクラリネット、フルート、コントラバス、ホルン、スレイベルなどでの小編成。この曲はぜひ目を閉じて聞いてみてほしい。きっとそのほうが、瞼の裏にさまざまなシーンが思い浮かぶだろう。

北瀬氏の「エアリスとのデートとシンクロして思い出しますね」というコメントから、バレットとのデートにまで話がおよび、トークでも会場を盛り上げた。ちなみにこの「花火に消された言葉」は日本ではあまりアレンジされておらず、海外で別の人のコンサートで植松氏がこの曲を聞いて、改めてこの曲を書いていたことを思い出したという逸話を披露。

また、「FF7は楽曲がいっぱいあるので、まだアレンジされていない曲はたくさんあるけれど、オーケストラでアレンジできるのか、バンドなのか、それともこのような小編成に向いているのかとかもありますし、あとなかなか発表する場がないんですよね。コンサートの最後はセフィロスやらないといやだとかで、削れない曲がいくつもあるから(笑)」とジョーク交じりのトークには会場のファンからも笑い声が上がった。

小編成の最後は、「忍びの末裔」。ユフィらしい悪戯っぽさを前面に出したアレンジはとても小気味良いテンポで、つい身体が動いてしまう。

植松氏は「FF7のコンサートを公式で開くのは初めてで、単体のタイトルでこうしてコンサートをやるのはバリエーションが不安だったけれど、通して聞くと意外と色んな曲があるなと思いましたね」と振り返り、そして「これは、FF8への布石ですかね?」と、あえて”取締役”である北瀬氏に茶目っ気たっぷりに伺うような場面も。

なお、「FF7」の制作当時の秘話は、会場限定で販売されているCDの「BRA★BRA FINAL FANTASY VII RADIO de BRAVO」の中で語られているので、そちらをぜひ購入してほしい。

そして北瀬氏は「22年前、FF7がここまで愛されてこうやって曲を間近で聴くことができて、この先20年と言わず、もっと愛される様に頑張りたいと思います」と、植松氏は「FF7はそれまでのゲームと違った印象がありましたね。ゲームが次の新しいところに進もうとしているターニングポイントに感じました」と「FF7」への想いをそれぞれ語り、「ご来場ありがとうございました」と最後の三曲を残してステージを後にした。

ラストバトル3連戦の一曲目は、「完全なるジェノヴァ」。熱いバトル曲だが、途中にはクールダウンするかのような静かなアレンジを挟み、この曲にこんなアプローチのアレンジがあるのか、と驚かされる。

14曲目となるのは、リバース・セフィロス戦の「神の誕生」。公式コンサートおよびライブなどでこの曲が演奏されるのは初となる。「片翼の天使」の影に隠れてしまいがちの曲だが、この曲がこうしてコンサートで演奏されるのを待っていたファンは多いのではないだろうか。もちろん期待している以上の演奏で楽しませてくれるので、思いきり心をたぎらせてほしい。

第二幕の最後となるのはもちろんこの曲、「片翼の天使」。これまで「BRA★BRA」のコンサートでは何回も演奏されている曲だが、こうして「FF7」単体のコンサートでラストバトル3連戦の最後として聞くとまた違った気持ちでこの曲を聞くことができる上に、「FF7」で初めてこの曲を聞いた時のインパクトも蘇ってくる。

なお、「片翼の天使」は前述の通りこれまでも何度もコンサートでは演奏されていたものの、CDには収録されることがなかった。だが、4月4日に先駆けて発売されたCD「BRA★BRA FINAL FANTASY VII BRASS de BRAVO」にはついに「片翼の天使」が収録されたので、こちらも「FF7」ファンはぜひチェックしてほしい。

熱い拍手に応えてのアンコールは、「ティファのテーマ」。激しい戦いの後の昂った心を、ティファの優しさで癒してくれるような、そんな気持ちになれる。

そして最後には、お待ちかねの「マンボ de チョコボ」だ。ファンが自分の持ってきた楽器を手にしてステージに次々と上がっていき、ステージはあっという間に満員に。

そしてここで、「BRA★BRA」で毎回可愛い書き下ろしのドット絵を披露している渋谷員子氏がステージに登壇した。渋谷氏は「ドットを描いて30年、頑張っています。グッズが結構売り切れみたいで嬉しい反面、買えなかった人もいるのが残念なので、他の公演にもきてください」と会場のファンに謝辞を述べた。

北瀬氏は「マンボ de チョコボ」のためにフルートを買ったそうだが、まだ変な音が出てしまうということで、ツアーの最後までにはちゃんと吹けるように頑張りたい、とのことだ。

演奏の最後にはステージに上がった全員と記念写真の撮影が行われた。この記念写真は、植松氏の公式LINEとともだち登録をして、会場で発表されるキーワードを送ればもらうことができる。このキーワードは毎公演変わる。

セットリスト

【第一部】
1. オープニング~爆破ミッション
2. F.F.VII メインテーマ
3. 星降る峡谷
4. ケット・シーのテーマ ◆ボディパーカッション
5. FINAL FANTASY メインテーマ ◆リコーダーで奏でるFFメインテーマ
6. クレイジーモーターサイクル
7.エアリスのテーマ

【第二部】
8.ルーファウス歓迎式典
9.常に闘う者達(神羅カンパニー~神羅軍総攻撃~ウェポン襲来)
◆アンケート「下記の7つのキーワードのうち1つにまつわるあなたのエピソードを教えてください」キーワード:星、カンパニー(会社)、花、腐ったピザ、末裔、花火、天使
 BGM:旅の途中で
10.牧場の少年
11.花火に消された言葉
12.忍びの末裔
13.完全なるジェノヴァ
14.神の誕生
15.片翼の天使

【アンコール】
16.ティファのテーマ
17.マンボ de チョコボ ◆みんなで吹こう BRA★BRA FINAL FANTASY

公演終了後、植松氏、北瀬氏、渋谷氏、榮村氏にインタビュー!

夜公演終了後、植松氏と北瀬氏、渋谷氏、コンサートマスターでサックス奏者の榮村正吾氏にインタビューすることができたので、その模様をお届けしよう。

写真左から、植松伸夫氏、北瀬佳範氏、榮村正吾氏、渋谷員子氏

――まずはコンサート初日を終えての感想をお願いします。

植松氏:まだ疲れて終わった実感もないですが、初演ってなにがどうなるかわからないので、無事に終わってホッとしています。反省点もあるのですが、「BRA★BRA」は最後まで同じものが続くと思ったら大間違いだよ、っていう感じで、毎回反省点などはちゃんと振り返っていますし、そうやって色々と次の公演に活かしていきたいですね。

榮村氏:演奏者側からすると、(演奏するのは)キツいんですが、燃えるセットリストでしたね。熱くなれました。お客様も楽しいですし、やっていてもクラシックのコンサートとは違って、いい時間が共有できますし、楽しかったです。でも昼夜二回公演はキツいですね(笑)。へろへろです(笑)。まだちょっとずつバージョンアップもしていきますので、やっていくうちに植松さんのタップもうまくなって、スパパパーンといくんじゃないでしょうか(笑)。

北瀬氏:普段は会社内でゲームを制作しる側なので、お客さんと触れ合える機会はなかなかないですし、ライブ感がないんですよね。こういうコンサートでお客さんの息が感じられるのは、改めて羨ましいと感じました。22年前の作品ですし、もしかしたらお客さんの年齢層が高いかなと思ったんですが、意外と若いお客さんも多かったですね。

渋谷氏:今回、四回目にしてはじめて名前のついたキャラクターをイメージキャラクターに描いたんですよね。今までは、白魔導師とか黒魔導師とか、名前のついていないジョブの絵を描いてきていて、それはあえてそうしていたんです。名前がついているキャラが入るとそこが悪目立ちしちゃって、幅広い意味で「FF」っていう感じじゃなくなるんですよ。

今回は「FF7」縛りなのでそういう制約を取っ払って、まずエアリスにフルートでぴたりとハマって、メインどころは一気に決まったんですけれど、いつも持たせる楽器は悩むんですよね。ドットでどこまで表現できるかという問題もありますので。それでセフィロスは、結局指揮棒になったという経緯があります。

個人的には羽を生やした状態での指揮者っていうのはよかったかなと思いますね。それに指揮棒が剣にも見えるっていうのも狙っていて。今回神羅軍も描きましたが、友人に「どうしてもレノをいれてくれ」と頼まれまして(笑)。でもレノだけじゃなぁと思って、結局神羅5人全員描いちゃいました(笑)。そのおかげでグッズも幅広くなったし売れ行きもいいみたいで、よかったですね。

会場の中に置かれている、渋谷氏作のドット絵キャラのパネル。

――今回は公式では初の「FF7」単独コンサートですが、「FF7」を選んだ理由について教えてください。

植松氏:海外でもオーケストラのコンサートとかにいくんですけれど、とにかくどこの国にいっても「FF7」の人気が異様に高いことですね。ダントツでひとつ突き抜けて人気のあるタイトルなので、ひとつのタイトルに特化するならまず「FF7」かなと。実験的ではあったんですけれどね。

――コンサート内では「FF8への布石」などもおっしゃっていましたが、次にどの作品でコンサートをやってみたいですか?

植松氏:次は、「BRA★BRA」のベストをやったらどうかなと(笑)。個人的にも「1でやったあの曲をまた聞きたい」とか「2でやったあの曲をまた聞きたい」っていうのはたくさんあるんですよね。四作もあるともう40曲以上たまっているので、ベスト的なものを来年やって、その次に何か別のものを企むっていう作戦はどうかなって(笑)。

新しい企画を考えるのってすごい大変なんですよ(笑)。でもベストなら意外と簡単なので(笑)。まぁまだ僕が考えているだけで、全然そうなるって決まった話じゃないですけれど。そのうち、FF8や、FF6あたりは単体でやってみたいですね。

榮村氏:僕はちょうど「FF7」世代なので今回とても楽しかったのですが、個人的には「FF6」がいいですね。オペラ踊らなきゃいけなさそうですけど(笑)。あと、ただ聞かせるだけじゃなくて、いいライブ感にできるものっていうのはやってみたいです。

植松氏:シエナさんは既に色々やっているじゃないですか(笑)。むしろここまで何でもありなら、コンサートではなく「サーカス」と言ってもいいんじゃないのかと(笑)。

――シエナさん側からはどんなアイデアが出たんでしょうか。

榮村氏:「ルーファウス歓迎式典」の仕掛けは、こちらからの発案です。

植松氏:あれびっくりしたでしょう(笑)。シエナさんは普段からああいうことをしている楽団なんですよ(笑)。でも初めて試したのは一昨日で、それをやるならCDにあれをいれろよって感じなんですけど(笑)。実はあの仕掛けは僕自身CDにいれることを考えていたんですが、すっごい話なんですけど録音するの忘れていたんです(笑)。で、どうしようってなったけれど、もう間に合わないのでCDはこのままいきましょうと(笑)。

そんなこんなであの仕掛けを実際にリハーサルでやってみたのは、一昨日が初めてだったんです。その時から二日間模索して、本番の一時間前にあの形に決まったとかいう、そういうスリリングなサーカスです(笑)。

北瀬氏:僕も横で見ていて、「こんな風に決まっちゃうんだ」って驚きましたね(笑)。もっと事前にしっかり決まっているものだとばかり(笑)。

渋谷氏:去年のツアーで、サイコロでアンコール曲を決めるのも東京初日ではまだなくて、二回目の東京公演の三日前くらいにいきなり「渋谷さん、サイコロやるんで(ドット絵を)これくらい大きくしていい?」って言われて、「今からやるの!?」ってなりましたね(笑)。

北瀬氏:そんななので、僕も初日終わってほっとしているんですが、次になにをやらされるのかわからなくてこわいです(笑)。そもそもフルートを始めたことも「植松さんに言うと絶対MCのネタにされるだろうなぁ、まだちゃんと吹けないのにやだなぁ」って思っていたんですけど、やっぱりMCで言われてしまって(笑)。

ほんとは最初はタンバリンあたりで参加しようとおもっていたんですが、せっかくこういう機会をいただいたんで何か始めようかとおもって、一ヶ月前にフルートを買ったんです。でも楽しかったですよ。

植松氏:過去形にしないで(笑)。

北瀬氏:いや、義務教育以降楽器に触れていなかったので、楽譜の読み方から含めて全部調べて、学びの楽しさを知りましたね。で、僕「FFのテーマ」はリコーダーでやるって知らなくて、最初はこちらをフルートで練習していたんですよ(笑)。

でもドーファーソードーシーラソの「シー」のところで必ず変な音が出るんですよ。でも譜面通りだしなぁ、とおもってずっとそれで三週間くらい練習していて、家族に「ここのシがおかしいんだけど」って聞いてみたら、「お父さんそれ違うよ、譜面の左に♭がついているでしょ?これはシはずっと♭ってことなんだよ」って言われて、「あ、だからナチュラルっていう記号があるんだ」となったくらいで(笑)。全然そんな程度のことも解っていなかったんですよね(笑)。

植松氏:いっそエアフルートでいいよ(笑)。

北瀬氏:いや、「FFのテーマ」はみんなリコーダーなんで、さすがに目立つでしょ(笑)。チョコボをがんばって練習します(笑)。

――来場者参加企画はとても楽しいと思うのですが、企画者側としてはどのようなものが得られるのでしょうか?

榮村氏:楽器を持ってまだ数年、みたいな方たちがこうしてステージにあがって僕たちと一緒に演奏をすると、引っ張られてとてもいきいきと演奏してくれますし、普段なんとなくやっているものでも、こういう楽しみ方があるんだっていうのを知ってくれると、それがやがて大きな輪につながっていくのかなと思います。

僕らもエネルギーをもらえますしね。それにすごい特殊な楽器を持ち込む方もいて、プロの僕らが「それなに!?」っていうような楽器も出てくるんですよね。僕らのほうが「それどこで買うんですか?」って聞きたいくらいです(笑)。

――来場者参加企画自体は植松さんとシエナさん、どちらからのご提案ですか?

植松氏:元々は僕がやりたかったものですね。で、シエナさんは既にそういうことをやっていて、出会ってしまった、という感じですね。オーケストラだとどうしても高尚っていうか、昔「オーケストラ」という単語を使うことでゲーム音楽の地位を高めようとしていた時期がありました。

でもそれは何十年も前のことなのに、いまだにみんながそれをやっていて、ゲーム音楽ってものを面白くしようとするんじゃなくて、ゲーム音楽の地位を高めようとしている感じがもの凄くいやだったんです。

ゲーム音楽のオーケストラコンサートなんだから、ゲーム音楽なりの存在意義があってもいいだろうと。コンサート自体がゲームっぽくなってもいいんじゃないかと、僕は前から思っていたんです。

オーケストラだからどうのっていうのじゃなくてですね、独特の守らなきゃいけないエチケットみたいなものを崩したいし、それを許してくれるオーケストラの人たちと一緒に仕事やりたかった。権威にふんぞりかえってやるんじゃなくて、シエナさんは来てくれた人に楽しんでもらいたいという意識を強く持っていますので、本当に幸運な出会いだったと思います。

――今後の来場者参加企画とかなにかありますか?

植松氏:いやまだそういう新しいことは今の時点では考えていないですけど、面白いことはやっていきたいですね。来場者に限らず、僕たちもですけれど。まぁだから昨日いきなりタップシューズはかされて舞台にでるとかそういうことになるわけですよ(笑)。

――昼公演では「FF7バトルメドレー」が夜公演では「クレイジーモーターサイクル」になりましたが、今後もプログラムは昼夜などで変えていかれますか?

植松氏:そうですね、昼夜二回くるというお客さんも多いので。曲の入れ替えもそうですけど、MCも結構大変なんですよ。昼と夜で同じこと喋らないようにしようと思ったり、地味に考えています(笑)。

――小編成での三曲はよかったですが、他にもこんな曲を小編成でやりたいというのはありますか?

植松氏:そうですね、どうしてもメジャーな曲ってもう決まりつつあるので、一方で「誰も何もいわないけど俺この曲好きなんだけどな」っていうのもあるわけですよ。でも二時間のコンサートをやるとなったら皆さんが聞きたい曲をメインに据えて、僕の趣味をある程度おさえたほうがいいでしょう。

僕の趣味全開にすると本当にセフィロスとか入らなくなるとおもいますし(笑)。ただ、小編成もこれまで4回やってきて、もう12曲あるわけですから、もしかしたらちょっと足せば小編成だけで小さいライブハウスとかでのツアーもできるかもしれないですよね(笑)。

――いつもは選曲は植松さんだけでやっていますが、今回北瀬さんも参加されてお二人での選曲はいかがでしたか?

植松氏:北ちゃんは神羅をどうしても入れたいって言って、なんでバレットのテーマが入っていないんだってずっと言っていた(笑)。

北瀬氏:結局いれてもらえなかったですしね(笑)。来年はバレットをいれましょう(笑)。

植松氏:北ちゃんはある意味音楽の専門家じゃないから、客観的なファン目線ではあるわけですよ。神羅っていうのは「FF7」の中で重要な役割があるから、その曲はいれるべきだっていう客観的な意見なんですね。

こっちは音楽的なものでいうと「いや、ワンコーラス短いし、これをどうやってひとつの曲に膨らませなきゃいけないし、でも原曲よりもたくさんアレンジされた部分があると、それってなんか違うなぁ」っていうか。わかります?この感覚。

北瀬氏:うーん?

植松氏:思い切り、わらかなさそうな顔していますけど(笑)。まぁなので、オーケストラにはオーケストラに合う曲、吹奏楽には吹奏楽に合う曲っていうのがありますし、っていう、音楽家はどうしてもそういう見方をしてしまうので、バレットのテーマも重要なキャラだからいれるべきかもしれないけれど音楽としてあまりおもしろくないんですよね(笑)。

――でも、だからこそ違う発見もあったんじゃないですか?

植松氏:そうですね、神羅は絶対僕はいれませんから。あのメドレーは。でもあの曲が入るとすごく「FF7」らしくなるなって僕も今そう思います!(笑)

――では、最後にメッセージをお願いします。

植松氏:まだ始まったばかりです。ざっと決まった台本通りにやってみました。これを反省材料としつつ、あと10回くらいあるので、最終日に向けてより面白くしていきたいです。皆さんぜひ遊びに来て下さい。

榮村氏:これから全国を回っていきますが、コンサートはチームが仲良くなっていくことでより深まりますので、各地で美味しいものをみんなで食べにいきたいですね(笑)。そして、お客さんからパワーをいただくのが何よりの励みになりますので、ぜひ聴きに来てください。

北瀬氏:演者側では初めて参加させてもらいましたが、コンサートというのはこうやって作り上げていくんだなぁと知りました。自分も公演ごとに成長していかなければいけないなと肌で感じました。あと、自分個人も楽しみなのは、アンケートで○○の末裔っていうのが、これ地方にいったらどんな人が出てくるのかな、と凄い楽しみになってきましたね(笑)。

渋谷氏:過去ずっと絵で参加してきましたが、今日は明らかに違うものを感じました。新しい曲が多く、「BRA★BRA」は新しいドアを一つ開けたんじゃないかという気がしました。これからいっぱい公演をしていくなかで、今後どう変わっていくかが楽しみです。

――ありがとうございました。

公演概要

BRA★BRA FINAL FANTASY VII BRASS de BRAVO with Siena Wind Orchestra

公式サイト:http://www.square-enix.co.jp/music/sem/page/brabraff/tour/2018/

料金(税込)

指定席6,800円/ 学生シート:4,800円

※学生シートの先行抽選でのお取扱いはございません。
※3歳以下のお子様のご入場はお断りいたします。チケットはお1人様1枚必要です。

制作総指揮

植松伸夫

指揮

栗田博文

演奏

シエナ・ウインド・オーケストラ

MC

山下まみ ※一部公演を除く

主催

スクウェア・エニックス/ローソンチケット/一般社団法人ジャパン・シンフォニック・ウインズ

制作

プロマックス

協力

スマイル・プリーズ/ドッグイヤー・レコーズ

公演スケジュール

国内9都市+台湾 全13公演
4月14日 (土) 東京 Bunkamura オーチャードホール
4月29日 (日) 大阪 オリックス劇場
4月30日(月祝) 宮城 仙台銀行ホール イズミティ 21・大ホール
5月1日 (火) 愛知 日本特殊陶業市民会館・フォレストホール
5月6日 (日) 北海道 札幌コンサートホール Kitara・大ホール
5月12日 (土) 東京 東京文化会館・大ホール
6月23日 (土) 神奈川 神奈川県民ホール・大ホール
7月15日 (日) 兵庫 神戸国際会館・こくさいホール
7月20日 (金) 福岡 福岡シンフォニーホール(アクロス福岡)
7月21日 (土) 広島 上野学園ホール
7月23日 (月) 台湾 國家表演藝術中心國家音樂廳 (National Concert Hall)

※画面は開発中のものです。

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