5pb.より2018年3月29日に発売されたPS4/PS Vita/PC用ソフト「メモリーズオフ -Innocent Fille-」。「メモリーズオフ」シリーズ7年ぶりの最新作にして、最終作となる本作のプレイレビューをお届けします。

目次
  1. 冬の湘南を舞台に繰り広げられる、ハートフル&サスペンスフルなドラマ
  2. 稲穂信の存在、そしてゲストキャラクターの登場などメモオフらしい演出にも注目
  3. 意図の通った物語の階層の構築、そして伏線の回収

1999年の第1作「メモリーズオフ」の発売以来、シリーズ7作とその派生作品の数々が展開してきた「メモリーズオフ(以下、メモオフ)」シリーズ。2010年の「メモリーズオフ ゆびきりの記憶」を最後に、なんと7年も新作タイトルがリリースされておらず、一人のメモオフファンである筆者もその瞬間を待ち望んでいました。

その発売を待ちきれずにシリーズ全作品の振り返り記事も展開しましたが、そちらも多くの方にとってタイトルを振り返る機会になったのではないかと思っています。

そんな「メモリーズオフ -Innocent Fille-」の発売から1ヶ月が過ぎましたので、そろそろネタバレに配慮しつつも中身に触れても良い頃合いかなと思い、プレイレビュー記事をお届けします。

普段は中々時間が許さずに全てをプレイしてからレビューを書けることも少ないのですが、今回はせっかくなので、すべてのルートをクリアしてから書くことにしました。その中で完全にネタバレを含まないのは難しいかなとも思いますので、今回はネタバレなしと、多少のネタバレありの項目に分けて書いていこうと思います。

冬の湘南を舞台に繰り広げられる、ハートフル&サスペンスフルなドラマ

今作の舞台は、前作「メモリーズオフ ゆびきりの記憶」から約3年の歳月が経った湘南。札幌海陵高校に通う主人公の楠瀬累(くすのせ かさね、愛称はルイ)は、神奈川県に住む幼馴染にして親友の三城莉一(みき りいち)の助けもあり、「特待生特別国内交換留学制度」(通称、トクトク制度)に参加が認められ、姉妹校である神奈川県の湘南海陵高校へと一時的に編入することになります。

作中で描かれるのは、札幌に戻るまでの期間での出来事。累は、7年ぶりに再会した莉一とその妹の柚莉(ゆずり)、さらに湘南海陵高校と同じく、シカ電の沿線にある林鐘寺女子高校に通う嘉神川ノエル(かがみがわ のえる)や志摩寿奈桜(しま すなお)との交流を重ねながら、徐々にその関係性を深めていきます。そうしたストーリーの展開を盛り上げる仕組みとして、今作では主に2つの要素が用意されています。

まず一つ目の要素が、ストーリーの進行によって、純粋な恋愛模様を描く“ライトサイド”か、恋愛を軸に人間関係の波乱を描く“ヘヴィサイド”へと分岐していくこと。そのトリガーが存在することを示すかのように用意された、それぞれのストーリーの要素を抽出した2つのオープニングムービーには要注目です!

ライトサイドおよびヘヴィサイドへの分岐は基本的に選択肢によって切り替わっていくのですが、その中でも重要な局面で出現するのが、新しい選択肢システム「R.A.I.N.s」です。これは特定の場面上で、2人のキャラクターのどちらかのことをあきらめる(もしくは捨て去る)かという、ある意味で非常にシビアな選択を求められるものになっています。ルートの分岐だけでなく、エンディングにも影響を及ぼす場面もありますし、選択には時間制限も設けられているので、まさに二者択一を迫られるシステムになっています。

各サイドに移ってからも単純な一本道というわけではなく、それぞれ複数のルートへの分岐が用意されていて、どの選択がどのような結末をもたらすのかしっかりと枝分かれした、まさにテキストアドベンチャーゲームとしての魅力にあふれています。選ぶことはもう一方を捨て去ること、そうした心情の機微がしっかりと描かれた作品です。

ひとつだけ残念な点を挙げるとすれば、やや誤字脱字が多かったことでしょうか。ボイスを聴きながら楽しむ中で気になった部分でもあったので、この先プレイされる方がより楽しめるよう、アップデートなどで対応いただけると嬉しいなと思います。

稲穂信の存在、そしてゲストキャラクターの登場などメモオフらしい演出にも注目

これらの要素に加えて、「メモオフ」シリーズファンであれば嬉しいゲストキャラクターの登場なども公式サイトですでに紹介されている通り。特に1作目「メモリーズオフ」のヒロインである今坂唯笑と双海詩音が登場し、最終作である今作のキャラクターたちとのやり取りを繰り広げる場面を見ると、作中での時間の流れを感じずにはいられません。

彼女たちは、主にシリーズを通じて登場している稲穂信がマスターを務める「シーサイドカフェ・YuKuRu」に来店します。これまでのシリーズを経たからこそのキャラクター同士の関係性、これまでにないキャラクターの組み合わせ、そして物語の展開にも影響を及ぼす、自分たちの経験から来る言葉の数々と、見どころたっぷりです。

そしてもちろん、主人公を支える立場としての信の存在も今作では大きくクローズアップされています。これまでは作品によってその距離感はまちまちでしたが、今作では信が累に対して友情を抱いていく描写が用意されています。その理由や累に投げかける言葉などにもぜひ注目してもらえればと思います。

さらに今回は、「メモオフ」シリーズを象徴する彼のためのエンディングも用意されています。非常に彼らしい内容になっていますし、より彼自身の人間味を感じられると思いますので、ファンの方にこそぜひチェックいただきたいです。

もちろん、シリーズ恒例となった警告劇場もボーナスコンテンツとして収録されています。こちらもシリーズキャラクターたちの会話を存分に味わえるので、クリア後にでもぜひ楽しんでみてください。

※ここから先は多少のネタバレ要素を含みますのでご注意ください。

意図の通った物語の階層の構築、そして伏線の回収

ここからは、詳細なネタバレは避けるものの、ルートが用意されているキャラクターにフォーカスした内容について触れていきたいと思います。

まずライトサイドの象徴的なヒロインであるノエルについて。彼女は「メモリーズオフ6 Next Relation」で子供時代が少しだけ描かれていますが、そこから高校生に成長した姿で登場します。彼女を分かりやすく表現するのであれば、心の強さと弱さが同居していること。その意味はストーリーを読めば分かると思いますが、ハーフというその容姿からくる人間関係の難しさなど、この年頃ならではの問題が正面から描かれます。そうした問題の解決とともに、累との関係をゆっくりと積み重ねていく姿にぜひ注目してもらいたいですね。

同じくライトサイドでルートが分岐するノエルの親友・寿奈桜は、その見た目に反した繊細で弱気なところが可愛らしいキャラクターです。時に優柔不断に感じてしまうところもありますが、そこも彼女が持つ優しさの裏返し。さまざまな選択が迫られる本作ですが、彼女自身が最後に掴み取る選択を見てほしいと思います。

一方、ヘヴィサイドでは柚莉と、もう一人の妹である琴莉(ことり)のエピソードが描かれます。このサイドはもうその冒頭からネタバレのオンパレードになってしまうのですが、柚莉の周りを気にかけすぎてしまうところ、琴莉の累を想うあまりの行動の数々などを通して、キャラクターのことを徐々に理解していけるのではないでしょうか。

ヘヴィサイド、というか本編を通じて大きなキーポイントになるのが、過去に北海道で起きたひとつの事故です。そこに向き合った時に本作はまたその色を変え、さらなる展開が待ち受けています。作中のテーマに応じて徐々に物語の階層を下っていく構成は、プレイしていてとても飲み込みやすかったですし、その展開にも没入することができました。

また、登場人物の配置も非常に練り込まれているのも印象的な点でした。特に日紫喜瑞羽(ひむらき みずは)については物語の進行に応じて、表面だけでは分からないさまざまな面が見えてきます。これ以上言えないのがもどかしいのですが、各ルートを飛び越えた伏線の構築とその回収については、ぜひご自身の目で味わってもらえればと思っています。

これまでもドラマとして魅せる作品が多かった「メモオフ」シリーズですが、今作では主人公である累自身が観察力と洞察力に優れた人間であることから、物語の進行においても大きな役割を果たします。そこは今回の題材ともマッチしていた点だと思います。また、フルボイスによるキャストのお芝居もとても素晴らしく、作品への没入につながっていると思います。

全てのルートをプレイし終えて感じたことは、今作からでも十分にプレイできるストーリーの下地がありつつ、これまでのシリーズのエッセンスを随所に散りばめてドラマに組み込んだことで、“メモオフらしさ”をしっかりと表現しているということです。信が度々口にする、雨に例えた心情表現は、その展開に投げかける言葉としての意味をしっかりと備えていて、さらにファンであればなじみ深さを感じることでしょう。

ダウンロードコンテンツで追加シナリオの配信も発表されるなど、まだまだ楽しみな展開もありますので、まだプレイしていないという方は、さまざまなアプローチで描かれる、“かけがえのない想い”を、ぜひ味わってみてもらえればと思います。

メモリーズオフ -Innocent Fille-

5pb.

PS4パッケージ

  • 発売日:2018年3月29日
  • 15歳以上対象
メモリーズオフ -Innocent Fille-

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5pb.

PS4ダウンロード

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  • 15歳以上対象
メモリーズオフ -Innocent Fille-

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  • 発売日:2018年3月29日
  • 15歳以上対象
  • DMM GAMES

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