工画堂スタジオよりPS4/Nintendo Switch/PS Vita/PC向けに2019年2月発売予定の「夢現Re:Master」。同作が発表された東京ゲームショウ2018の会場で、ディレクターのみやざー氏にショートインタビューを実施した。
「夢現Re:Master」(以下、「ゆリマスター」)は、工画堂スタジオ しまりすさんちーむが手がける、キラ☆ふわガールズラブゲーム制作会社アドベンチャーゲーム。過去に手がけた「白衣性恋愛症候群」(以下、白恋)「白衣性愛情依存症」(以下、白愛)と同様、女性同士の恋愛を描く百合を題材としている一方で、今作ではゲーム制作現場という、工画堂スタジオにとってより身近な舞台での物語が描かれる。
今作が初のゲーム原画としての参加となるイラストレーターの藤ちょこ氏、「FLOWERS」シリーズで知られる志水はつみ氏など、工画堂スタジオ作品に初めて携わるクリエイターにも注目が集まる本作。東京ゲームショウ2018でお披露目となったが、まだまだ情報も限られており、一体どのようなゲームになるのか気になるところ。
そこで今回は、一般公開日のステージに登壇したディレクターのみやざー氏にお時間をいただいて、ショートインタビューを実施。改めてゲームの制作経緯を聞くとともに、いくつか気になる疑問を投げてみたので紹介しよう。
――前作「白愛」を発売してから3年以上になりますが(PS Vita版が2015年4月30日に発売)、「ゆリマスター」についてはどのぐらいの時期から動かれていたのでしょうか?
みやざー氏:「白愛」のPS Vita版を出して、PC版への移植作業を進めていた頃から企画の話は進めていたので、2015年の冬頃には動いていましたね。
――では今回の発表にたどり着くまでには紆余曲折が…。
みやざー氏:大変でしたね(笑)。「白衣性愛情依存症」のメインシナリオライターである向坂氷緖さんと一緒にお話を作り上げていったのですが、そもそも向坂さんがゲーム会社に勤めたことがなかったので、勘どころを掴むのに時間がかかったというのはありました。
また、今はまだ言えないものの作品の根底にあるメインテーマが結構深いものになっていて、その咀嚼にも時間を費やしました。キャラクター設定はある程度早い段階で出来上がっていたのですが、テーマに沿ってお話を構築していく部分で苦労しましたね。
――今回はイラストレーター、シナリオともに著名な方々が参加されますが、そちらは制作の過程で加わっていったということなのでしょうか?
みやざー氏:そうですね。最初はメインシナリオライター1人でやろうと思っていたのですが、分量的にも内容的にも大変だという話でライターを追加することになりました。その最中、「FLOWERS」の志水はつみさんと知り合いになったので百合つながりということで1ルート、あとは社内のライターである竹内なおゆき(代表作:「蒼い海のトリスティア」)、西川真音(代表作:「シンフォニック=レイン」)に1ルートずつお願いしました。
――参加されているライターの名前だけを見ると、工画堂スタジオのファン、百合作品のファンともに刺さるところはありますね。
みやざー氏:イラストレーターも笛さん(イラストレーター ・ゲーム原画家、代表作:「カタハネ」)、藤枝雅さん(漫画家、代表作:「飴色紅茶館歓談」)、前作から続いて早瀬あきらさん(イラストレーター)と、百合に強い方々にお願いしています。
――みなさんに参加を打診した時の反応はいかがでしたか?
みやざー氏:藤枝さんも笛さんも個人的に知り合う機会があって、志水さんと同様、会った時に「お願いしますよ~」と言ったところ、その後本当にお願いすることになりました(笑)。そこでスケジュールが空いたらというお話をいただいたこともあり、結果的には制作期間が延びましたが、まあそこはただの言い訳ですね。
――ゲームの制作現場を題材にするというのは、ゲームとしてはあまり見ないシチュエーションですよね。
みやざー氏:「SHIROBAKO」というアニメ制作会社を題材とした作品がありましたが、そのノリに近いですね。実際に「SHIROBAKO」を見て、「じゃあうちはゲーム会社だしゲームもの作ろうぜ、きっと面白いもの作れるよ」みたいな感じでした。
――作中ではゲーム制作の工程などの細かな表現も意識されているのでしょうか?
みやざー氏:「白恋」や「白愛」と同じく、あまり分からないことをやってもユーザーさんは理解されないと思うので、分かる範囲に留めています。そうした点からゲーム制作を分からない人間が必要だったので、田舎から出てきた、ゲーム制作については分かっていない子を主人公に据えて、アシスタントとして手伝いをする中での断片的な見せ方をしています。
――過去2作では医療用語に対するフォローとしての用語辞典がありましたが、今作では予定されているのでしょうか?
みやざー氏:ゲームですと用語辞典を作るほどの内容にするとプレイヤーの方が全然分からなくなると思い、今作に関してはゲームファンの人たちが分かるようなレベルの用語だけで済ませるようにしています。なので、恐らく用語辞典は用意しないと思います。医療はやはり特殊でしたからね(笑)。
――現時点で話せることは少ないかと思うのですが、過去2作と比べて、百合作品としてより意識を向けている点があればお聞かせください。
みやざー氏:ゲーム開発って、追い込まれると徹夜をしだしたり、仕事に詰まっちゃって逃げ出したくなったりするじゃないですか。そういうピンチに芽生える百合というのを意識しています。「白恋」「白愛」でもピンチはあって、そこに対してどうしようというところで周りが助けてくれたりしましたが、今作では助けに来たはずの主人公が、でもゲームが分からずに苦悩するところで、周りの人達が助けてくれたり、突き放したりするという人間同士のやり取りの中で百合らしさを表現できているんじゃないかなという気がします。あとは姉妹百合でもありますね。
――Twitterでも実の姉妹というお話をされていましたね。
みやざー氏:そうです、今回は完全に姉妹です。
――紹介されているキャラクターの中で犬のばな子(CVは大坪由佳さんが担当)が気になったのですが、今回マスコットキャラクターを入れようとした理由はあるのでしょうか?
みやざー氏:「白恋」も「白愛」もこれというマスコットキャラクターがいなかったので、今回は入れたかったというのはあります。あと、僕が工画堂スタジオに来る前に小さなゲーム会社で働いていた頃、社長がでかい犬を連れ込んで来て、社員の周りをぐるぐるして遊んでいるという光景があったのが印象的で。
工画堂スタジオにはいないのですが、犬って誰にでも懐きますし癒やしになるんですよね。なので、ゲーム会社に犬がいて放し飼いされているような会社もあるというのを見せるためというのもあります。
――ゲーム制作会社のモチーフというのは工画堂スタジオ単体だけでなく、ご自身の経験を含めたさまざまなところから取り入れてるんですね。
みやざー氏:そうですね。ちなみにあの犬はメスです(笑)。
――そこはお約束というか、「ゆリマスター」は「白愛」と同様、女性しかいない世界ということですよね。ちなみに時間軸としては、「白愛」からどのぐらい経っているのでしょうか?
みやざー氏:過去作を含め、開発を始めた時期がそのゲームの時間軸になっていますね。なので「白恋」は2012年だろうし、「白愛」は2015年だろうし、「ゆリマスター」は2017年あたりの設定になっています。だから登場するキャラクターもみんなスマホを持っています。
――「白愛」も女性しかいない世界だからこそ、男性らしい女性がいたりと独特の空気感があって印象的だったのですが、ゲーム制作会社の中でもそういう部分が見えるのかなと期待しています。
みやざー氏:いわゆる女の子同士の恋愛という禁忌を排除するというのがうちのゲームの命題ですので、女の子同士の恋愛も普通のことだという世界観であることは今作も変わらずにやっています。
――今後も徐々に情報を発信されていくと思いますが、期待されているファンの方に向けてメッセージをお願いします。
みやざー氏:新作を出すときには半分は期待にそのまま応え、もう半分は期待を裏切りたいといつも思っていますので、今までの「白恋」「白愛」を遊んでくれていた方は、そのあたりも込みで楽しみにしていただければと思います。キラ☆ふわですから!
――(笑)。ありがとうございました。
(C)KOGADO STUDIO,INC.
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