パシフィコ横浜にて9月4日~6日にわたって開催の「CEDEC 2019」。ここでは、9月5日に行われたセッション「一流クリエイターに聞く、魅力的なキャラクターを生み出す秘訣とは!?」の内容をお届けする。

登壇者は漫画家の鈴木みそさん、カプコンの塗和也氏、アークシステムワークスの石渡太輔氏。このセッションは鈴木さんが司会を担当し、塗氏と石渡氏に公開インタビューを行う、という形式で行われた。

鈴木氏はもう30年以上もゲーム雑誌などでゲーム攻略記事やコラム、イラストを書いてきた漫画家であり、誰もが一度はどこかで鈴木氏の漫画を目にしたことがあるのではないだろうか。

塗氏は1999年にカプコンに入社し、もう20年カプコンに在籍しているクリエイター。「ブレス オブ ファイア」シリーズなどでキャラクターデザインや3Dモデリング、アニメーションを担当した後、「逆転裁判~蘇る逆転」から「逆転裁判」シリーズに参加。以後、「大逆転裁判」シリーズなどでアートディレクターやキャラクターデザイン等を担当している。

石渡氏は、1995年にデザイナーとしてアークシステムワークスに入社。「ギルティギア」シリーズの企画をきっかけに、イラスト、デザイン、グラフィック、企画、作曲、シナリオなどをマルチタスクにこなすクリエイター。現在は取締役に就任しているが、引き続き「ギルティギア」シリーズの監督を務めている。

普段どのようなことを気にしてキャラクターを作っているのかという問いに、塗氏は「ゲームのなかでの立ち位置」と答えた。具体的には、自分が操作するキャラクターなのか、物語の中の一キャラクターなのか、といったところをまずは最も重要視するという。塗氏の担当する作品のなかでも代表的な「逆転裁判」シリーズに登場する成歩堂などは意志のあるキャラクターであり、”自分が操作するキャラクター”とは別枠と位置付け。また存在感も重要で、ゲームの中でも輝きつつ、現実にももしかしたらいるかもしれないようなリアリティを大事にしているそうだ。

塗氏がデザインから関わった「逆転裁判4」のメインキャラクターたち。確かに「逆転裁判123」時代よりも現実感のあるデザインだ。

一方で石渡氏は、リアリティをまるっきり意識したことがない、と言い切り、キャラクターの性格についてはどうしているのかと塗氏に尋ねた。どの段階からプロジェクトに関わっているかにもよるものの、まだ性格などが定まっていないようなキャラクターの時は、ビジュアルを提示しながら性格も提案することはあるという。逆に、もう性格やバックボーンはほぼ決まっていて、そのイメージに合うキャラクターを描いてほしいと言われることももちろんあるので、その時々のようだ。

石渡氏の場合は格闘ゲームのキャラクターということもあって、先にビジュアルが浮かび、そのビジュアルにあわせて面白い動きを考えることもあれば、逆に面白い動きのほうが先に浮かび、その動きができるキャラクターを考えたりなど、キャラクターの出来上がっていく過程は様々だという。

また、石渡氏はキャラクターデザインというよりも、紙にえんぴつで描いた落書きのようなものが多く、それを3Dモデルにしたあとに絵に興す、ということが多いという。むしろ格闘ゲームのキャラクターの場合、最初に細かい設定画を描いてしまってもその通りに作ろとすると整合性が取れなくなるため、着地点は整合性が取りやすいところにしようということで、ラフ画から3Dモデル、そしてそこからキャラクターイラストを描く、という順番に落ち着いたとのこと。

石渡氏のデザイン画。この段階でもう3Dに興してしまうというから驚きだ。

その典型的な形ともいえるのが、ベッドマン。このキャラクターは絵のほうが先に出来てしまい、石渡氏がプランナーに「ベッドマンが魅力的に見える動きを考えてほしい」と頼んだそうだ。

ベッドマンのデザイン画。

ちなみにカプコンではアクションゲームの場合、パンチを主軸に使うキャラクターならば手が目立つシルエットを、足技を多く使うキャラクターなら脚に色味を持たせたりするのはよく使う手法、と塗氏。また、カメラが俯瞰のようにキャラクターの上部にある場合、10頭身くらいにしてしまうこともあるという。あくまでゲームのなかでの見え方が重要であり、必ずしも正しく作ることがゲームの中でキャラクターをかっこよく見せるわけではないそうだ。

石渡氏の場合は、デザインはもちろんのこと、小物など、キャラクターらしさを出せるアイテムも重視しているという。理想は「キン肉マン」で、コマには足だけしか出てきていないのに愛読者には一目でバッファローマンだとわかる、そんなデザインを自身の作品にも取り入れ、後頭部や手だけで誰だかわかるようにしているのだと述べた。

実際のキャラクターモデリングに話が及ぶと、石渡氏は「そもそも3Dモデルの時点でうそだらけなので」と笑った。「ギルティギア」シリーズは3Dで作っているけれど2Dっぽく見えるようにしていたり、だからわざわざ3Dで作ったものを手作業で加工して2Dっぽい絵に修正していたり、引いた画面だと目が小さくて見えないので遠くからでも見えるように目を大きめに表現していたり、しかしそのままの状態でキャラクターの顔をアップにすると今度は子供っぽくなってしまうため、その際は元の絵の比率になるようにしていたり、と、相当な修正を入れているのだという。

実際の修正前の画像と修正後の画像を並べてみると、元の3Dモデルよりも顎がしゅっとしていたり、口の位置も違っている。

そういった”2Dっぽい雰囲気の良さ”をいかに出すかはカプコンでも同じだという、塗氏。3Dのままだと表情が硬くなりがちなので、そこは整合性を取らないと魅力が減ってしまうのだそう。

塗氏も、「逆転裁判」シリーズが2Dから3D化しているときの3Dポリゴン検証イメージの図案を描いている。

なお、それらをふまえてデザインをする際に工夫をしているところは、塗氏の場合”なびきもの”だという。ハードのスペックにもよるものの、マントなど風になびくアイテムは嫌がられることが多く、どうしてもマントがないと成立しないキャラクターだとか、何かしら理由がない限りはつけないようにしているそうだ。同様の理由で三つ編みなどの髪型もポリゴンでの表現が難しく、2Dだと良いのだが3Dだと身体にめりこんでしまう。なのでどうしても理由がない限りはそういったデザインは最初から出さないようにしている、と語った。

「大逆転裁判」シリーズの場合、基本的に上半身しか使われないので、龍ノ介の腰のハチマキもあって良かったのだろう。だが、亜双義が頭につけていたころは…。

ひとつのゲームを作るのに2~3年かかる現在、そのなかでキャラクターを作るのにどれくらい時間がかかるのかと問われると、石渡氏はキャラクター一体で半年ほどかかる、と述べた。そこはやはりキャラクターの魅力こそが全てともいえる格闘ゲームならではの時間のかけかただろう。もちろん作業はいくつも同時に並行しているので何体ものキャラクターが同時に作られているが、単純に完成までの時間を述べるなら約半年はかかるということだ。

二人とも絵を描くことがそもそも好きなのか、と鈴木さんに振られると、塗氏は「僕は実は絵を描くのはあまり好きじゃないんです」という衝撃のカミングアウト。だが、キャラクターのイメージなどは日ごろから常にずっと考えているという。石渡氏もそれについては同様で、とにかくキャラクターを考えることが何よりも楽しいらしい。

ゲームのデザインの場合、動かしやすさなどもデザインに考慮するのかと問われると、塗氏は「逆転裁判」シリーズの場合は基本的に上半身ばかり映るので大事なパーツは下におかないようにしており、下半身はポリゴン数も極端に少なくしていると述べた。

髪のポリゴンはどうなのかと重ねて問われると、ポリゴン数が多くなるモコモコとした髪型は嫌がられる、と笑う塗氏。デザイン画では良いが、3Dに興した時にこの髪型はどうなるんだ、というキャラクターも多いが、塗氏は「大逆転裁判」シリーズに登場する下図の右側のキャラクター二人を例に挙げ、この二人は最初から立ち位置が決まっていて動かないことが解っていたので、あえて3Dにした時に横から見たらどうなるのか、背後から見たらどうなるのか、といったことを一切考えずにデザインしたという。

「大逆転裁判」シリーズのキャラクターたち。

塗氏のデザイン画を見ていた鈴木さんは、ふと「女性だと内股や重心が移動している」と気が付いたようで、それに塗氏はそのほうがシルエット上、女性らしさが出しやすいのだと解説。女性でも、どん、と構えて立っていたほうがいいキャラクターの場合はそのようにデザインをするけれど、そうでない場合はデザイン画ではほぼ重心をずらすという。

続いて、日本の枠を超えた海外を意識したキャラクター作りとかは何かしているかと問われると、石渡氏は最近e-sportsが盛り上がってきていることを挙げ、やはり格闘ゲームを作っている側としては国際的な視点は外せないと述べた。ただ、日本の文化と著しく違う点として、美少女が魔王を倒したりするのは海外ではあまり理解されないらしい。まだ今後どうしていくかなど具体的な展望はないものの、今あるものを海外向けにするならどうすればいいのかなどは話し合っているという。特に海外は露出への規制が厳しいため、ディズィーのようなキャラクターの場合はほぼ確実に修正が入るという。特にディズィーは太ももを露出しており、幼く見える女性が何故こんなに露出の高い恰好をしているのか、疑問視されてしまうのだという。こういったキャラクターデザインは日本独自であり、グローバルな観点から見るとあまり受け入れられない傾向だという。

「ギルティギア」シリーズののディズィー。なお、この見た目で3歳。(※GGX時点)確かに海外では規制対象になってしまうだろう。

ではそのグローバルな視点を無視できないほど、もうそちらの市場のほうが大きいのか、と問われると、石渡氏も塗氏も桁違いだと頷いた。日本でゲームが売れなくなっていることもあるが、いまやゲームの売れ行きは海外を無視できるほど甘くはなく、だからこそ海外で強い人気があるアクションゲームなどはわざわざ海外スタッフの意見を聞いたりすることもあるという。だが、ヨーロッパはアメリカとはまた少し違うようで、確かにマッチョ系のものが売れてはいるもののアメリカほど完全にそちらに偏っているわけではないようだ。

ただ、規制に関してはともかく、ジェンダー問題はもう無視できる時代ではなくなってきていると感じているとのことだ。

自身が描いたキャラクターの版権について話が及ぶと、それについては二人とも口を揃えて「会社のもの」と断言。デザイナーはあくまで会社員なので、そこに版権を自分で持つ権利は基本的にない、と言い切った。だが、海外などでは会社に所属せずプロジェクトごとに参加するというクリエイターも増えているため、そういう場合はまた変わってくる。日本でも最近は会社を辞め、以前から請け負っていた仕事はしつつも外部の仕事もする、という人も増えてきており、主流は変わっていくのかもしれない、と語った。

最後に3人は、「1時間だと短すぎて全然語れなかった」と残念そうに口にしていた。キャラクターデザインの過程などについてもいずれどこかで語りたい、という二人に、鈴木さんも「ぜひ」と笑顔を見せた。

石渡氏は3Dモデルを元にキャラクターのイラストを制作するという逆の手順を示した絵
「大逆転裁判」シリーズのシャーロック・ホームズの初期案。どういう過程を経て最終稿になったのか、気になる人も多いのではないだろうか。

短い時間ではあったものの、この3人は本日が初対面だったそうで、とてもそうとは思えない盛り上がりをみせたセッションだった。またどこかでこのような機会があることに、ぜひ期待しよう。

※画面は開発中のものです。

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