千葉・幕張メッセにて9月12日より開催の「東京ゲームショウ2019」。幕張メッセの近くに設けられた体験会会場での「シェンムーIII」プレイ後、開発者の鈴木裕氏へのインタビューを行ったため、その模様をお届けします。
目次
「FREE」ではあくまで自由度を上げていきたい
――「シェンムー」シリーズというと、「FREE」というジャンルが使われていたと思うのですが、今作ではどうなのでしょうか?
鈴木氏:元々、なるべく自由度を高くして、一本道ではなくしようという感じで、理想として、何かをやったら何か反応する、だからフルのリアクティブっていう。何かを触ると何かの変化が返ってくるようなことをやろうということが発想にあったので、それは踏襲しています。
――鈴木さんはあまりジャンルを気にされてはいないと思うのですけど、そういう感じで「自由」という意味を使われて……。
鈴木氏:僕は、ワールドの中で色んなことができるという意味では「オープンワールド」というのはいい言葉だとは思うんですけど、密度の方が大事だと思っているので、「FREE」にとっては広さが必須かというとそうでもないですね。
――では、「FREE」は「オープンワールド」とは概念的には違うということですね。
鈴木氏:元々「シェンムー」でやったアプローチが元になって「オープンワールド」というジャンルができてきたと思うので、「FREE」と「オープンワールド」は似ているとは思うんですけど、「FREE」ではあくまで自由度を上げていきたいということです。
――最近のゲームだと、ミッションを受けるとマップにポイントが表示されるとか、見回すと遠くの方に本来あるはずのない矢印があって何mとか表示されることがありますけど……。
鈴木氏:それは「シェンムー」とは全然違う考え方ですね。それだと目標が提示されて、一本道になっていくと思うんですけど、「シェンムー」の場合は、目的はあるけど手法は自分で探すんです。
チュートリアルみたいなことで教えちゃうと面白くなくて、目的地に対して行く方法が何種類か用意されていて、自分でゲームの中を歩いていると、いくつかの手法で目的地に行けるんです。
鈴木氏:自分で探したものや好みのものを複数見つけた時は、その中で好みのものを選んで進んでいく感じなので、プロセスを選んでいけます。
目的に対して5種類のことができるとしたら、これを30%やって、こっちを20%やって、こっちを10%やって、というようにミックスしても行けるし、目的が一緒でも手段を発見して選んでプレイしていくスタイルなので、ゲーム側から指定されるわけではなく、自分で探していきます。こういうタイプのゲームはあまりありません。
――「シェンムーII」では、次の目的地に行くプロセスで、最初に話しかけると、どこどこだよ、との回答を貰い、もう一度聞くと、そこへはあの道を右に曲がって左に曲がってまっすぐだよ、と教えてもらえて、通行人に話しかけたら、実は僕もそこに行く予定だったから、と導いてもらえましたけど、今作ではいかがでしょう?
鈴木氏:「シェンムー 一章 横須賀」や「シェンムーII」とは道案内のバリエーションが変わっています。もう少し違う手法が用意されていて、「シェンムー 一章 横須賀」や「シェンムーII」とは違う遊びになります。
――それでは、今作では目的地まで導かれるようなシステムはないんですか?
鈴木氏:今回は、「シェンムーII」のときのエスコートのシステムはありません。莎花(シェンファ)が先導するようなことはあります。
――じゃあ、ロックオンしてコントローラの操作なしに手放しでついていくようなことは?
鈴木氏:今回はないです。
エンターテインメントなのでその時代にないようなものも
――「シェンムー 一章 横須賀」の舞台は横須賀で、「シェンムーII」では香港が舞台になり、最終的に桂林にたどり着きましたけど、今回の大まかな舞台は?
鈴木氏:桂林です。
――今回試遊したような山村あたりが中心になるのでしょうか?
鈴木氏:大きな村と街があります。街はプロモーションフィルムに入っていて見ることができます。
――「シェンムーII」では香港の街が結構広く、九龍城では建物の中がかなり入り組んでいましたけど、それと比べると今回のマップの規模はどうなっているのでしょう?
鈴木氏:比べたことはありませんが、おそらく「シェンムーII」よりも大きいんじゃないかと思います。
――山村も街と同規模のサイズなんですか?
鈴木氏:山村は街と比べると小さいです。
――桂林の山村と街は行き来できるんですか?
鈴木氏:村と町は行き来できないです。
――「シェンムー」というと、生活感がある中でバイトやゲーム内ゲームを楽しめる印象があるのですが、日本や香港とは文化的にも環境的にもかなり違う中国にもバイトやゲーム内ゲームがあるのでしょうか?
鈴木氏:あります。
――今回体験した中だと、バイトで薪割をやったんですけど、あの村ならでは、または街ならではのバイトが……。
鈴木氏:フォークリフトのバイトはありますし、釣りなんかもあるし、大きなゲームセンターもあります。
――時代的には、中国でも日本と同じものが遊べちゃうような?
鈴木氏:エンターテインメントなので、その時代にないようなものも置いてあります。
――それは、具体的にセガさんのタイトルだったりするんですか?
鈴木氏:今回は具体的にセガのタイトルは入れてないです。
――「シェンムー 一章 横須賀」の時のパンチングマシンみたいな
鈴木氏:そういうのも入っています。
――ガチャガチャは?
鈴木氏:ガチャガチャは結構いっぱいあります。力を入れて作りました。
連続で出すのと18年目に出すのとではアレンジが変わります
――「シェンムー」シリーズは日本では「シェンムー 一章 横須賀」が1999年に発売され、「シェンムーII」が2001年にそれぞれドリームキャストで発売され、海外ではXboxに流れたりしていて、「シェンムーIII」はコンシューマという意味では18年ぶりくらいの登場になるのですが、「シェンムーII」の開発を終えたころに構想していた「シェンムーIII」と現状の「シェンムーIII」では違いはありますか?
鈴木氏:違いますね。
――それは、実現しようとしていた内容が違うという事でしょうか?
鈴木氏:定期的に出していける状態と、20年後に出すものというのは、やっぱりアレンジが違います。20年前と今とは違うので、ゲームのプレイヤーの傾向も違うし、例えば、どれくらいシナリオを進めるのか、ということも考慮しないといけないし、過去のユーザーがどの程度残っているか、そういうことも考えないといけなく、「シェンムーIII」から入る人のことも考えなくてはいけません。だから、連続で出すのと18年目に出すのとではアレンジが変わります。
――技術的なところでの違いはどうですか?
鈴木氏:毎年、CPUもハードウェアの性能も進化し、期間もバジェットも昔とは違います。プロジェクトのチームも、「シェンムー 一章 横須賀」や「シェンムーII」を作ったそのままの流れで技術スタッフを継続できるわけでもないので、まずチーム作りから始めて、エンジンもスクラッチから作ると予算も期間も合わなくなるので、ライセンスして使うことになり、自ずとアプローチも変わります。
あと、プレイヤーの傾向もだんだん速い展開になっているので、そこには少し合わせていかないといけないし。
――「シェンムーIII」では「バーチャファイター」のシステムとは違うバトルシステムになるという話を聞いているのですが?
鈴木氏:「シェンムー 一章 横須賀」や「シェンムーII」では「バーチャファイター」のシステムを使って、RPG用のバトルにアレンジを加えていました。
今回は「バーチャファイター」のエンジンを使わず、バトルは0から考えて、RPGにフォーカスしたシステムになっています。ちょっとプレイするとわかりにくいかもしれないですね。レベル上げに対応して、道場のシステムと一緒にやっていたり、技書を入手の段階からどういう風に入手してから鍛えていくといった、全部のシステムをミックスしてトータルでバトルのシステムになっています。
ぜひ時間を掛けてゆっくり遊んでほしい
――最後に、「シェンムーIII」を長く待っていたゲーマーの方々にコメントをお願いします。そして、蛇足ですが、「シェンムーIII」で完結していないとすれば、「シェンムーIV」というか、その後の具体的な話があればお願いします。
鈴木氏:「シェンムー 一章 横須賀」と「シェンムーII」が違うように、「シェンムーIII」もまた違う「シェンムー」という遊びになっていると思うのですが、誰がどう見ても「シェンムー」という世界観になっていて、シェンムーファンのみなさんはシェンムー感を味わえるシステムになっているので、ぜひ時間を掛けてゆっくり遊んでほしいと思います。
今回、「シェンムーIII」で「シェンムー」は完結しませんが、無理矢理完結させると無理な進行になって、ゲームとして面白くないだろう、という配慮でそうなっています。今後も機会があればぜひ、ユーザーの声がある限り決して諦めずにチャンスがあれば続編を作っていこうと思っていますので、引き続き応援をよろしくお願いします。
――ありがとうございました。
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