アニメ評論家・藤津亮太氏が話題のアニメを紹介する「ゲームとアニメの≒(ニアリーイコール)」。第4回は2019年7月~9月にかけて放送されたTVアニメ「からかい上手の高木さん2」を取り上げます。

目次
  1. こんなゲームファンにオススメ!
  2. 第4回「からかい上手の高木さん2」
  3. 藤津亮太(ふじつ・りょうた)

ゲームとアニメは本来異なる媒体ですが(≠)、その中での共通項(≒)となる部分にフォーカスしたいという思いから立ち上げた本連載。毎回話題のアニメをアニメ評論家の藤津亮太氏の切り口で紹介しつつ、Gamer編集部からはそのアニメがどういったゲームファンにオススメできるかをピックアップしていきます。

第4回は、2019年7月~9月にかけて放送された、「ゲッサン」(小学館)にて連載中の青春コメディ「からかい上手の高木さん」が原作のTVアニメ「からかい上手の高木さん2」を取り上げます。

こんなゲームファンにオススメ!

・「ラブプラス」シリーズ(スマートフォン向けに最新作「ラブプラス EVERY」が10月31日配信予定)や「サマーレッスン」シリーズなど、女の子とのコミュニケーションを楽しめるゲーム
・AR機能も搭載したアプリ「からかい勝負の高木さん」、クラウドファンディング実施中のVRアニメ「からかい上手の高木さんVR」など「からかい上手の高木さん」を題材とした派生コンテンツも

第4回「からかい上手の高木さん2」

『からかい上手の高木さん』は第2期の『からかい上手の高木さん2』になって、「からかい上手」ではなくなってしまった――というのは衆目の一致するところではないだろうか。『高木さん2』の高木さんの振る舞いは、からかうというより、西片に「好きだよ」と一生懸命サインを送っているといったほうが正確だ。

にもかかわらず西片くんはこれまでどおり「高木さんにからかわれている」「なんとかしてやりかえしたい」としか思っていない。鈍いのか幼いのか、その両方か。だから『高木さん2』は、高木さんがからかい上手というより、「西片はひとりずもうが上手」という感じで進行していくことになる。

とはいえ高木さんの視点に立ってみると、彼女もまた「ひとりずもう」をとっているのは同じなのだ。なにしろ、彼女が送る「好きだよサイン」はことごとく「からかい」として処理されてしまうのだ。それでも高木さんは飽くことなくサインを送り続けるわけで、これまた間違いなく「ひとりずもう」である。

つまり『高木さん2』は、この噛み合わない2つの「ひとりずもう」で出来上がっているのだ。この「ひとりずもう」を象徴するのが、意味ありげな笑みとともに西片を見つめる「高木さんの視線」と、からかわれまいと高木さんを睨み返す「西片の視線」だ。

だからこそ第9話「メール」で、この西片・高木間の視線の関係が崩れたのはとても印象的だった。「メール」というエピソードは、メッセージのやりとりを通して高木さんと西片がやりとりをするという内容で、二人はここで「いかに告白っぽいことを相手に書かせるか」ということに意識を集中している。

この時高木さんは、西片が仕掛けた「(魚の)キスはすき?」というトラップにあえて引っかかったふりをする。そして「好きだよ」としゃべる自分の動画を送る。これは高木さんの“負け”に見えるが、高木さんはそこに、西片が見えるはずがないのに「カオ赤いよ」「写真をみせて」とメッセージを付け加えて、西片にカウンターを放つのだ。

もちろん「好きだよ」という動画を見た西片の顔は真っ赤。西片はそれをさとられまいと「赤くないよ!」と返すが、高木さんは「ホントかなー じゃあ今、写真とってみてよ」と西片を追い込む。もちろん西片は写真を送ることはできないから、こうして今回の勝負もまた高木さんの“勝ち”に終わるのだった。肉を切らせて骨を断つといった、高木さんの戦略であった。

とはいえこれは対面での勝負ではない。高木さんは、いつものように西片の照れた顔を見ることはできなかった。しかも高木さんは、最後にカメラのほうを振り返って視聴者に「私もひとのこといえないけど」と照れて赤くなった顔を見せるのである。つまり、対面でなかったから“勝ち”になったけれど、高木さんはここで実質的に“負け”ているのである。

それはつまり、いつもの視線の関係が失われている場所になると、高木さんは「つい本音が出て」負けてしまうのだ。きっと西片の前であんなふうに「好きだよ」とは言えないのだろう。スマホ相手だから言えた「好きだよ」。普段見せない高木さんの本音。それを垣間見たのは視聴者だけなのだ。

この第9話「メール」でシリーズを締めくくってもいいんじゃないかと思ってしまうような、そんなグッとくるエピソードだった。

「からかい上手の高木さん2」公式サイト
http://takagi3.me/

藤津亮太(ふじつ・りょうた)

アニメ評論家。1968年、静岡県生まれ。雑誌・WEB・BDブックレットなど各種媒体で執筆するほか、朝日カルチャーセンター、SBS学苑で講座を担当する。著書に『「アニメ評論家」宣言』(扶桑社)、『チャンネルはいつもアニメ―セロ年代アニメ時評―』(NTT出版)、『声優語~アニメに命を吹き込むプロフェッショナル~』(一迅社)、『プロフェッショナル13人が語るわたしの声優道』(河出書房新社)などがある。毎月第一金曜日には「アニメの門チャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/animenomon)でアニメの話題を配信中。

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