アニメ評論家・藤津亮太氏が話題のアニメを紹介する「ゲームとアニメの≒(ニアリーイコール)」。第13回はこれまで2期にわたって放送され、先日3期の放送決定も発表された「本好きの下剋上 司書になるためには手段を選んでいられません」を取り上げます。

ゲームとアニメは本来異なる媒体ですが(≠)、その中での共通項(≒)となる部分にフォーカスしたいという思いから立ち上げた本連載。毎回話題のアニメをアニメ評論家の藤津亮太氏の切り口で紹介しつつ、Gamer編集部からはそのアニメがどういったゲームファンにオススメできるかをピックアップしていきます。

今回は香月美夜氏による同名小説を原作として、2019年10月~12月(第1部)、2020年4月~6月(第2部)と2期にわたってアニメ化された、「本好きの下剋上 司書になるためには手段を選んでいられません」を取り上げます。

こんなゲームファンにオススメ!
  • 「アトリエ」シリーズなどに代表される、異世界ベースの世界観での生活風景を楽しめるゲーム
  • 「牧場物語」シリーズやカイロソフトのタイトルなどの経営シミュレーションゲーム
第13回「本好きの下剋上 司書になるためには手段を選んでいられません」

「本好きの下剋上 司書になるためには手段を選んでいられません」を手短に紹介するなら、“いわゆる”異世界転生ものということになるだろう。この作品は流れる時間がゆったりしていて、それが“いわゆる”に収まらない魅力になっている。

本が好きな女性が死んでしまい、中世ヨーロッパに似た異世界で幼い少女マインに転生してしまう。このジャンルのお約束どおり、マインは前世から記憶や知識を引き継いで持っていて、彼女はこの異世界で、自分の知識を生かして本造りを目指して活動を始める。この世界では本が非常に高価なので、庶民は本を手にすることができないのだ。

本を作るというのは、実はそんなに単純なことではない。本作のミソは、マインの本造りを通じて、本が製紙、印刷に代表されるさまざまな技術の積み重ねでできていることが丁寧に描かれるところだ。そして技術は商業活動と大きく結びつく。マインは紙の製造で大商人ベンノと契約もするのだ。ここでは、商業による資本の蓄積は文化を底支えしている、という社会の仕組みがちゃんと描かれているのである。

もちろん、本という物体を通じて社会のあり方が見えてくるおもしろさは、この作品を大きく下から支える部分だ。そこに支えられた上で本作は、平民であるにも関わらず魔力を持つマインが、この世界でどう生きていくかというもうひとつの物語が展開する。例えば第1期でマインは、魔法が蓄積される不治の病「身食い」であることが明らかになる。

しかし、そういうドラマチックな展開があったとしても、この作品に流れている時間は変わらずゆったりと落ち着いたままだ。ことさらに視聴者を煽るわけでもなく、かといって登場人物を突き放しす冷たい感じはまったくない。そこにある登場人物の状況や感情を、素直にすくい取る語り口。平熱の魅力がそこにある。

この語り口は往年の「世界名作劇場」に通じる。「世界名作劇場」は、19世紀末から20世紀初頭ぐらいまでの欧米を舞台にした児童文学・家庭小説――もちろん例外も多い――などを原作にしたアニメのシリーズだ。具体的にいうと「赤毛のアン」「愛少女ポリアンナ物語」「愛の若草物語」などといった作品がこのシリーズから送り出されている。

この「世界名作劇場」は登場人物の日常を描くことに基本が置かれていた。だから、ちょっとした会話、一挙手一投足もはしょらず、丁寧に時間を積み上げていく作品が多かった。そこから生まれる自然な時間の流れが、視聴者と作品を繋ぐ絆になっていた。

その昔、漫画家のゆうきまさみが「名作劇場って、パフスリーブやログハウスがないと描けないものだろうか」という趣旨のことを描いていた。答えからいうなら、もちろんそんなアイテムがなくても“名作劇場”的な作品を作ることはできる。その点で「本好きの下剋上」は“異世界転生もの”という題材を「世界名作劇場」の語り口で映像化した作品ということができる。本作にはマインと家族のドラマという側面もあり、その点でも「世界名作劇場」の語り口とは大変相性がよい。

本作は第3期の制作も発表されている。またマインと一緒のゆったりとした時間を過ごすことができそうだ。

「本好きの下剋上 司書になるためには手段を選んでいられません」公式サイト
http://booklove-anime.jp/

藤津亮太(ふじつ・りょうた)

アニメ評論家。1968年、静岡県生まれ。雑誌・WEB・BDブックレットなど各種媒体で執筆するほか、朝日カルチャーセンター、SBS学苑で講座を担当する。著書に『「アニメ評論家」宣言』(扶桑社)、『チャンネルはいつもアニメ―セロ年代アニメ時評―』(NTT出版)、『声優語~アニメに命を吹き込むプロフェッショナル~』(一迅社)、『プロフェッショナル13人が語るわたしの声優道』(河出書房新社)などがある。毎月第一金曜日には「アニメの門チャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/animenomon)でアニメの話題を配信中。

告知

8月8日18時 朝日カルチャーセンター新宿教室「アニメを読む」講座
お題:「AKIRA」
https://www.asahiculture.jp/course/shinjuku/16aa2316-3046-7982-58d9-5ee05f3b2093

(C)香月美夜・TOブックス/本好きの下剋上製作委員会

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