アソビズムがPC(Steam)向けに2021年5月27日にリリースするパーティ構築型ローグライクゲーム「ビビッドナイト」のレビューをお届けする。
目次
「ビビッドナイト」はスマートフォン向けアプリゲーム「城とドラゴン」や「ドラゴンポーカー」を手掛けてきたアソビズムにとって、はじめてのPC向け買い切りタイトル。マウスでのプレイを前提とした作品となっている。世界中に展開できるSteamでの販売ということもあってか、インターフェイスは日本語以外に英語、中国語(簡体字)、韓国語にも対応。ゲーム内で切り替えが可能だ。
“黒の魔女”によって、自分以外の王国の人間たちをすべて宝石に変えられてしまった王女アメリが、彼らを救出するために魔女やマモノが待ち受ける地下迷宮に挑む、というストーリーが展開される本作。迷宮の中では、宝石にされた人々を元に戻して仲間にすることで、彼らの力を借りて攻略を進めていくことになる。
敵との戦闘が基本的にオートで進む本作では、戦闘時の選択が勝敗を分けるような面白さは希薄と言って良いだろう。では何が重要なゲームかというと、迷宮の構造や敵キャラクターの配置、出現するユニットなどが挑戦するたびに変化する中で、限られたリソースをどのように利用してパーティの戦力を最大化するか? という、アドリブ性の強い育成要素が肝と言える。そして各種システムの絶妙なバランスによって、一度プレイをはじめるとやめられない面白さを生み出しているのだ。
それではさっそく、その各種システムについて書いていこう。
迷宮探索はマナの枯渇に注意
アメリが挑戦することになる迷宮はいくつかの階層に分かれており、各階層はさらにいくつものブロックに分かれている。
階層ごとに敵となるマモノが複数配置されていて、そのうちのいずれかが次の階層に進むための鍵を所有。次の階に進む扉があるブロックまで進んでこの鍵を使用すればより深い階層に進むことができ、これを繰り返して迷宮の最奥に待ち構えるボスを倒せばその迷宮はクリア。より難易度の高い迷宮にチャレンジできるようになる――というのが本作の大きな流れだ。
各階層では1ブロック進むごとに画面中央の上のほうに表示されている”マナ”のゲージがひとつづつ減っていく。マナは次の階層に進めば全回復するが、ゼロになったまま探索を続けると、移動のたびにパーティメンバーがダメージを受けてしまう。したがって、ブロック間を悠長に繰り返し行き来することはできない。階層ごとに、どのように効率よく探索するか、というのがまず重要となる。
マップには次の階に進む扉や、敵がいるブロック、休憩所、ショップなどの場所を示すアイコンの位置がざっくりと記されているので、これが探索の指針になるだろう(たとえば敵を倒すとお金が手に入るので、ショップを訪れるのは敵を全部倒してからにしよう、というように)。ただしブロック同士が予想した繋がり方をしているとは限らないので、そうした想定外にいかに対応するかも大事だ。
ちなみに、アイコンが表示されていないブロックでもランダムイベントが発生したり、宝箱からユニットが手に入る場合があるので、マップに何も記されていないブロックだからといって、何も起きないとは限らない。
オートバトルでは王女アメリとして、パーティメンバーをサポート
敵がいるブロックに到達したら戦闘開始。冒頭でお伝えしたとおり、パーティメンバーはオートで戦う本作。入手した宝石から元に戻った人々がユニットとして、それぞれに固有の能力を駆使して、敵と体力を削り合う。
しかし実はプレイヤーには、王女アメリとしてやることがある。1ターンにつきひとつ、所持している“ジェム”を使用することができるのだ。画面下に表示されている8つのスロットに設定できるジェムは、使うとさまざまな効果を発揮する。直接敵にダメージを与えたり、仲間たちの能力を引き上げる“バフ”の効果があったり。
ほとんどのジェムは一度使用したらそれぞれに設定されたクールタイムが終わるまで再使用できなくなるので注意。また、緑色の四角いジェムは戦闘用ではなく探索用で、非戦闘時にパーティメンバーのHPを回復したり、マナを回復してより長く探索できるようにしたりといった効果を持っている。
ここまで戦闘に関する要素として、ユニットとジェムについて書いたが、その入手方法はまだ詳しく書いていない。パーティメンバーとなるユニットを増やす方法は前述した宝箱からの入手以外にもあり、加えて、入手した仲間を実際に戦闘に参加させるためにはさらにひと手間掛ける必要がある。
これらの仕様をお伝えするために、先ほど書いた迷宮内に存在する“休憩所”や各種“ショップ”といった迷宮内の施設でできることを説明することになる。
休憩所、宝石屋、錬金術屋……各種施設の機能
休憩所と各種ショップの主な役割は以下の通り。
・休憩所:マナを消費してパーティメンバーのHPを回復/パーティ編成
・宝石屋:お金を消費してユニットを購入/パーティ編成
・錬金術屋:マテリアルを消費してジェムを入手
“休憩所”と“宝石屋”でのみ行えるのがパーティ編成。ここではお金を消費して戦闘に参加できる人数の枠を増やしたり、控えにいるユニットを戦闘に参加させたりできる。逆に言えば、迷宮探索の最序盤で仲間になるひとり目を除くと、入手しただけではそのユニットは戦いに参加できないのだ。
また、同じユニットが3人集まっていれば、それをひとつにすることで能力を「アップグレード」できる。1段階アップグレードした宝石が3つあれば2段階目のアップグレードも可能(つまり初期状態のユニットにして9人が必要ということ)。この「アップグレード」という要素は、「ビビッドナイト」において最も重要なシステムに絡んで大きな意味を持つので、先を読み進める際もぜひ覚えておいてほしい。
“宝石屋”ではユニットの売買が可能。お店に並んだユニットの中から欲しいものを購入したり、パーティに不要なユニットを売却したりできる。ペナルティなく控えに待機させられるメンバーの人数は定められており、これを超えると“重量超過”となって、一定の確率で移動のたびに減少するマナの数値が増えてしまう。これも考慮に入れてメンバーを選出しなければならない。
店のラインナップに欲しい宝石がなかった場合は、お金を支払って品揃えを再抽選することもできる。再抽選でお金を使い果たしてしまっては意味がないので、どこまで粘るかの見極めが肝心だ。
そしてジェムを新たに入手できる場所が“錬金術屋”。こちらは迷宮のブロックとブロックを繋ぐ通路を通ることで入手できる“マテリアル”を消費して、ジェムを手に入れることができる。マテリアルを消費すると、表示された複数個のジェムの中からランダムでふたつが選ばれ、どちらを獲得するかはプレイヤーが決められる。
宝石屋と違い、どれが入手できるかはほぼ運次第のいわゆる“ガチャ”っぽいシステムだ。一方で、手に入る可能性のあるジェムのラインナップ自体は、マテリアルを消費してこちらも再抽選することが可能となっている。
ちなみにここで紹介した“ユニット”と“ジェム”、それから王女アメリが身につけることで特殊な効果を発揮する指輪、首飾り、耳飾りといった“アクセサリー”は、各階層をクリアした報酬としても手に入る。何が手に入るかは迷宮のフロア数をチェックする画面で確認できるので、こちらもパーティ構築の参考にすると良いだろう。
「シンボルアビリティ」を理解すると、パーティ構築の面白さは飛躍的にアップ!
そんな本作のパーティ構築を考える上で最も重要となるのが、「シンボルアビリティ」というシステムだ。これは各ユニットに設定された“カラー”と“マーク”を、パーティメンバー内で一定数一致させることで、その“シンボル”ごとに味方へのバフ/敵へのデバフ効果が得られるというもの。発動中のシンボルアビリティは、パーティ編成画面の“発動中シンボル”という項目で確認ができる。
基本的にはパーティに入れているユニットのシンボルによって発動するこの「シンボルアビリティ」。当然、控えにいるユニットのシンボルが加算されることはない。しかし、施設紹介の際に説明した「アップグレード」を経たユニットに限り、戦闘に参加しなくてもパーティメンバーにこの恩恵を与えることができるのだ。
これは控えにいる場合でも言えるし、なんとアップグレードしたユニットを宝石屋に売却してしまっても効果が持続する。この「シンボルアビリティ」をいかに多く獲得し、より多くの効果を受けて戦闘に望むか、というのが、本作のパーティ構築の最重要ポイントと言えるだろう。
なお、この“シンボル”は王女アメリのアクセサリーにも設定されており、これも「シンボルアビリティ」発動のための頭数に入ることになる。
筆者は当初、よりレアリティの高いユニットを入手、これをアップグレードで強化して、できるだけ強力なユニットを戦闘に参加させることを重視して攻略を進めていたのだが、ゲームの難易度が上昇していくと、やがてとある迷宮の途中での中ボス戦で、まったく歯が立たなくなってしまった。
そこで、レアリティを問わずなるべく多くのユニットをアップグレードしていき、アップグレードが完了したら売却。より多くのシンボルアビリティが手に入るように、パーティメンバーをこまめに入れ替えるような運用を試みてみた。すると、歯が立たなかった中ボスにあっさり勝つことができたのだ。
下の画像は、シンボルアビリティを意識していなかったときの戦闘画面。ユニットの体力ゲージ(画面左上)の上にあるアイコンが、現在獲得しているバフ効果を表している。
次の画像はシンボルアビリティをできる限り多く手に入れる運用をするようになってからの戦闘画面。バフ効果を表すアイコンの数とその数値が、先ほどの画像とは比べ物にならないことが分かるだろう。
戦闘がはじまるや、さまざまなバフ/デバフ効果を表すエフェクトが怒涛のように発生するのも、非常に気持ちが良い。ここまで来ると、低レアリティの能力値が低いユニットであっても、シンボルアビリティの効果をあまり受けていない高レアリティのユニットよりも遥かに強い。このシステムの旨味を理解すると、地下迷宮の探索は、さらに楽しさを増していったのだった。
悩ましいが、選択に伴うテンポの良さと快適さがプレイを後押ししてくれる
シンボルアビリティの獲得をしっかり意識するようになると、探索に伴う葛藤が以前にも増して頻繁で、かつ悩ましいものになった。
より多くのシンボルを獲得するためには、できる限り多くのユニットを育てたい。しかし、控えにキープしておけるユニットの数は限られているし、すべてのブロックをまわっていてはマナが枯渇してしまうことも多い。
「もうひとりゲットしたらアップグレードできる」というユニットを複数キープしていると、重量超過してでもキープし続けたくなったり、宝石屋で購入できるユニットの再抽選を何度もトライしたくなる。しかし、ここでお金を使い果たしたら、いざというとき困るかも……などなど、あらゆる面で「こちらを立てればあちらが立たない」状態が頻発し、何を優先するか常に悩まされることに。
このアドリブ性の強い育成要素が生み出す悩ましさこそが、次の展開が読めないローグライクというジャンルの長所を活かした、本作の楽しさの本質でもあるのだと思う。
いろいろな要素が絡み合っており、難しそうに思えるかもしれないが、ひとつひとつの選択は少数の選択肢から求めるものを選ぶことの繰り返しなので、それほど重い判断は求められず、サクサクとテンポ良く遊べてしまうはずだ。
また、アップグレード可能なユニットが宝箱や宝石屋に出現したときはユニット全体が、パーティに組み込めばシンボルアビリティが完成するユニットが出現したときは、そのユニットのシンボルが、それぞれまばゆく光を放つようになっていたりと、優先すべき選択肢が可視化されるあたりもありがたい。
ユニットの買値と売値が一緒なので、育成プランの変更が必要になり、購入したユニットを手放したくなったとき、お金の面での損失がゼロだったりするのも、ストレスなく試行錯誤する上で、大変助かる。細部の快適さは、なかなかに良好だ。
うまく育成したパーティで強敵を圧倒したときの達成感は、たまらない
スタートメニューから選べる“白の館”では、迷宮のクリア報酬や、探索の道中で手に入る“輝石”を10個消費して、新たなユニット、ジェム、アクセサリーが出現する“秘儀書”を1回解法できる。これもランダムに排出された3種類から欲しいものをひとつを選び取る、要するにゲーム内のアイテム取引だけで完結する“ガチャ”のようなシステムなのだが、より多くの強力なユニット、ジェム、アクセサリーが迷宮に出現するようになるので、攻略が上手く行く可能性が徐々に高まっていく。
どうしてもクリアできない迷宮があるならば、攻略済みの迷宮で輝石を集めて、何度か“秘儀書”を解法してみるのも良いだろう。
筆者はエンディングまで10時間とちょっと掛かったが、ゲームプレイのコツを早めに理解できれば、もう少し早く到達できるかもしれない。加えて、クリア後に解禁される新たなプレイアブルキャラクターは王女アメリとは少々使い勝手が異なり、さらなる高難度の迷宮への挑戦も解禁される。これらもコンプリートしようとしたら20時間以上は掛かると思われるので、価格帯を考えたらなかなかのボリューム感ではないだろうか?
パーティ編成を変えると“増えるシンボルアビリティ”は可視化されるが、“減るシンボルアビリティ”は分かりづらい点や、なかなかそこまで同じユニットを集め切れない2段階目のアップグレードを狙うメリットが薄い印象がある点など――気になった部分も多少あったが、エンディングまで、試行錯誤を存分に楽しむことができた。
テンポよく、カジュアルに楽しめつつも、常に悩ましい課題が付きまとう。そしてその葛藤の結果、うまく育成したパーティで強敵を圧倒したときの達成感がたまらないゲームプレイ。これが「ビビッドナイト」の魅力だ。ここまでの文章を読んで惹かれた方ならば、きっと熱中できることと思う。