アニメ評論家・藤津亮太氏が話題のアニメを紹介する「ゲームとアニメの≒(ニアリーイコール)」。第25回は2021年4月~6月にかけて全12話が放送された、TVアニメ「ゾンビランドサガ リベンジ」を取り上げます。

目次
  1. こんなゲームファンにオススメ!
  2. 第25回「ゾンビランドサガ リベンジ」
  3. 藤津亮太(ふじつ・りょうた)

ゲームとアニメは本来異なる媒体ですが(≠)、その中での共通項(≒)となる部分にフォーカスしたいという思いから立ち上げた本連載。毎回話題のアニメをアニメ評論家の藤津亮太氏の切り口で紹介しつつ、Gamer編集部からはそのアニメがどういったゲームファンにオススメできるかをピックアップしていきます。

今回は、佐賀を舞台としたアニメ作品の続編として、2021年4月~6月にかけて全12話が放送された、TVアニメ「ゾンビランドサガ リベンジ」を取り上げます。

こんなゲームファンにオススメ!

第25回「ゾンビランドサガ リベンジ」

前シリーズ「ゾンビランドサガ」終了から2年余り。ついに登場した第2期「ゾンビランドサガ リベンジ」が6月で見事に最終回を迎えた。

本作はゾンビになった7人の女の子がアイドル「フランシュシュ」を名乗り地元アイドルとして活動をするという大胆な設定。「リベンジ」は、大規模会場でのライブに失敗し莫大な借金を背負っているという圧倒的なビハインドから物語がスタートした。第1期では“お当番回”がなかったメンバーの山田たえ、ゆうぎりにもスポットが当たり、クライマックスでライブ当日に佐賀が大規模な水害に見舞われるという、フランシュシュ最大のピンチが描かれた。

アニメ(や漫画)の魅力は、とてもバカバカしい設定であるにも関わらず、ある種の感動に到達することができるところだ。

まずアニメ(や漫画)のバカバカしい設定でなければ出ない“速度”というものがある。その設定を見た瞬間にこちらが「つい笑ってしまう」時の「つい」を誘うのがこの“速度”だ。そしてこの設定に基づいてキャラクターを描いていくうちに、そこに抒情が宿るようになる。バカバカしい設定を少し引いて見た時に見えてくる、現実とは決して相容れることができないその距離感が、叙情を生むのである。そしてそこで叙情が生まれる時、笑いをつい誘っていた圧倒的“速度”が叙情に宿るのである。圧倒的“速度”を得た叙情は、こうして人を感動させるに至る。

例えば「ゾンビランドサガ リベンジ」でいうならクライマックスで見せた、唸り声しか漏らさないたえが見せたライブパフォーマンなどは、まさにこの「バカバカしい設定だからこそ生まれる感動」を体現している1シーンだった。

ちなみに「ゾンビランドサガ リベンジ」では、なぜゾンビなのかという設定の根本にもある種の答えを出しているところも面白かった。下敷きになっているのは佐賀市に伝わる徐福伝説。徐福は秦の始皇帝から不老不死の薬を探す命を受け、日本へとやってきたと伝えられる存在で、佐賀市の各所には徐福伝説があり、佐賀県の観光情報サイト「あそぼーさが」でもちゃんとコーナーが作られている。この徐福がソンビ化のカギを握っていることがゆうぎりの“お当番回”である、第8話「佐賀事変 其ノ壱」・第9話「佐賀事変 其ノ弐」でほのめかされ、ゾンビという根幹の設定もまた佐賀と深く結び付いているというアイデアにうなったのである。

TVアニメ「ゾンビランドサガ リベンジ」公式サイト
https://zombielandsaga.com/

藤津亮太(ふじつ・りょうた)

アニメ評論家。1968年、静岡県生まれ。雑誌・WEB・BDブックレットなど各種媒体で執筆するほか、朝日カルチャーセンター、SBS学苑で講座を担当する。著書に『「アニメ評論家」宣言』(扶桑社)、『チャンネルはいつもアニメ―セロ年代アニメ時評―』(NTT出版)、『声優語~アニメに命を吹き込むプロフェッショナル~』(一迅社)、『プロフェッショナル13人が語るわたしの声優道』(河出書房新社)などがある。毎月第一金曜日には「アニメの門チャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/animenomon)でアニメの話題を配信中。

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