バンダイナムコ研究所とACESは、AI技術を用いたキャラクターモーション作成に関する研究・開発プロジェクトを発足したことを明らかにした。
ACESは、画像・映像認識AIアルゴリズムの力でリアル産業のDXを目指す東大の松尾研発となるAIスタートアップ会社だ。これまでスポーツや製造業、小売、保育など、さまざまな業界にAIアルゴリズムの開発・提供を行ってきたが、エンターテインメント業界向けに開発・提供を行うのは今回が初めてとなっている。
昨今バーチャルキャラクター市場の拡大に伴い、キャラクターの属性や場面に応じた自然で多様なキャラクターモーションの作成需要が高まっている。そうした中でバンダイナムコ研究所では、メタバース(※1)とxR技術(※2)の研究を進めていくのに、さまざまなキャラクターで複数のモーションを検証する必要があり、膨大な数のモーションデータを用意しなければならないという課題を抱えていたという。
そこで、人の知見や行動のデジタル化に強みを持つACESの技術と、バンダイナムコ研究所のエンターテインメントにおけるモーション制作のノウハウを生かし、AI技術である「モーションスタイル変換」を用いて、より多様なキャラクターモーションの生成を手軽に行うために発足されたのが今回のプロジェクトとなっている。
バンダイナムコ研究所では、このプロジェクトを通して、キャラクターの自然で複雑な表現が可能になることで、見ている側のユーザーはより深く感情移入することができるため、ゲームや映像などコンテンツの価値向上に繋がる。また、メタバースをはじめ、オンライン上でユーザー同士のコミュニケーションを活性化させることは、新しいエンターテインメントの創出にも繋がるとしている。
※1:メタバースとは、インターネット上に構築された仮想空間・世界やサービスの総称です。オンラインで全世界から参加することもできるため、ゲームやイベントといったエンターテインメントのほか、ビジネスとしての活用も行われています。
※2:xR技術とは、AR(拡張現実)、VR(仮想現実)、MR(複合現実)といった現実世界と仮想世界を融合する表現技術の総称で、ゲームの他、様々なエンターテインメントコンテンツに利用されています。
プロジェクトの概要
多彩なキャラクターモーションを生成するためには、AI技術である「モーションスタイル変換」を用います。「モーションスタイル変換」とは、モーションを動作の内容を表す「コンテンツ」(例:歩く)と動作のニュアンスを表す「スタイル」(例:楽しそうに)に分解し、2つのモーションをかけ合わせた時に、一方のモーションの「コンテンツ」を維持し、もう一方のモーションの「スタイル」を反映した新しいモーション(例:楽しそうに歩く)を作成する技術のことを指します。
エンターテインメント向けデータに適用可能な「モーションスタイル変換」モデルを作成するためには、多種多様なキャラクターのモーションのデータセットが必要になります。
そのため、ACESがこれまで培ってきた人の行動をデジタル化する技術ノウハウを元に、バンダイナムコ研究所にて、プロの演者による移動や格闘等の動作に、喜怒哀楽の感情、老若男女といった属性はじめキャラクターらしさや状態に応じた個別のスタイルを適用させたモーションを撮影します。
本プロジェクトでは、アルゴリズムを各種エンターテインメントに実装すべく研究開発を邁進してまいります。