アニメ評論家・藤津亮太氏が話題のアニメを紹介する「ゲームとアニメの≒(ニアリーイコール)」。第31回は2022年1月14日より全国7館で順次公開中の劇場版「銀河鉄道999」のドルビーシネマ版を取り上げます。

目次
  1. こんなゲームファンにオススメ!
  2. 第31回「劇場版『銀河鉄道999』ドルビーシネマ版」
  3. 藤津亮太(ふじつ・りょうた)

ゲームとアニメは本来異なる媒体ですが(≠)、その中での共通項(≒)となる部分にフォーカスしたいという思いから立ち上げた本連載。毎回話題のアニメをアニメ評論家の藤津亮太氏の切り口で紹介しつつ、Gamer編集部からはそのアニメがどういったゲームファンにオススメできるかをピックアップしていきます。

今回は、1979年に公開された松本零士氏原作の劇場用長編アニメーションの名作を、最新の上映システム「DOLBY CINEMA(ドルビーシネマ)」を用いて2022年1月14日より上映している、劇場版「銀河鉄道999」を取り上げます。

こんなゲームファンにオススメ!

  • 「電車でGO」シリーズや「A列車で行こう」シリーズ、「鉄道にっぽん!路線たび」シリーズなどの、鉄道を題材としたゲーム

第31回「劇場版『銀河鉄道999』ドルビーシネマ版」

1979年に公開され大ヒットした映画「銀河鉄道999」とその続編「さよなら銀河鉄道999-アンドロメダ終着駅-」が、ドルビーシネマ化され、上映が行われた。

ドルビーシネマとは、4KHDRマスターによる映像(ドルビービジョン)と、3次元空間内の中に狙った音を配置できる音響システムドルビー・アトモスを組み合わせたフォーマットのこと。ドルビーシネマに対応した劇場で楽しむことができる。

「銀河鉄道999」は、機械の体をタダでくれる星を目指して少年・星野鉄郎が旅をしていく物語。原作やTVアニメの鉄郎が10歳だったのに対し、映画は鉄郎を15歳に設定し、青春映画として再構築したところに特徴と魅力がある。

宇宙を題材にした作品であり、作品の要所要所で宇宙を含め黒が印象的に使われている作品だけあって、HDR化によって映像の魅力は大いに増した。例えば地球を発進する999を捉えたカット。背景のビル群は、建物本体が黒で、窓は鮮やかな青・ピンク・黄色などを薄く塗るられている。黒がきっちりと締まり、窓の色の発色がよくなったことで、松本零士の描く未来都市像が、美術スタッフ(美術監督は椋尾篁)の手で実に魅力的に描かれていることがよく伝わってくる。また、両作を監督したりんたろう監督は、透過光を活用した演出に特徴があり、この光がちゃんと光らしく感じられるようになっているのもHDR化の効果だろう。鉄郎がホテルの窓から、メガロポリスの風景を見るカットや999号のヘッドライトなどにその効果が顕著だった。

そして映像以上に印象が鮮明になったのが音だ。オリジナルはモノラル。その後、5.1ch化された時に音楽がステレオに差し替えられており、今回はその5.1chの音源をもとに、ドルビーアトモス化された。もちろん海賊船アルカディア号やエメラルダス号が頭上を通り過ぎる時の低音はこれまでになく迫力のあるものに仕上がっていたが、それ以上に印象的だったのは環境音だ。風やエアカーの通過音など、モノラルの時は埋もれていた様々な音が立ち上がって(音を特に足しているわけではない)、こんなにいろんな音が鳴っていたのか、と思わされる。

映画の内容はストレート。だからこそクラシックとして今もなお光を失っていない。こうして作品寿命が伸びたことで、これからもアニメ映画の古典として、この作品は生き続けていくはずだ。

劇場版「銀河鉄道999」ドルビーシネマ版 公式サイト
https://www.toei-anim.co.jp/movie/ge999dolby/

藤津亮太(ふじつ・りょうた)

アニメ評論家。1968年、静岡県生まれ。雑誌・WEB・BDブックレットなど各種媒体で執筆するほか、朝日カルチャーセンター、SBS学苑で講座を担当する。著書に『「アニメ評論家」宣言』(扶桑社)、『チャンネルはいつもアニメ―セロ年代アニメ時評―』(NTT出版)、『声優語~アニメに命を吹き込むプロフェッショナル~』(一迅社)、『プロフェッショナル13人が語るわたしの声優道』(河出書房新社)などがある。毎月第一金曜日には「アニメの門チャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/animenomon)でアニメの話題を配信中。

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