韓国・釜山にて、11月17日から開催中のゲーム展示会「G-STAR 2022」。会場で行われた「Lies of P」のアートディレクター・Changkyu Noh氏によるセッションをレポートする。

「Lies of P」は童話・ピノキオをモチーフにしたソウルライクアクションRPGで、gamescomでも多くの注目を集めてていた。アクション性もさることながら、ピノキオという題材のチョイスと独特の脚色、それらを表現するアート性も注目を集めた理由だろう。ここでは、本作のアートディレクターを担当したChangkyu Noh氏が世界観や表現について語ったセッションをレポートする。

本作を開発するRound8 Studioで新作の構想をスタートしたのは2019年。何人かの開発者と話し合って決まったのは、19世紀のヨーロッパを舞台にしたソウルライクという点のみだったという。錬金術などさまざまなシナリオを考えたものの、なかなか決められなかったという。

SFが好きだったChangkyu Noh氏は、もともと人間の本質を扱うプロジェクトに高い関心を持っていたそうで、そこから人間になりたいピノキオをダークな世界観で扱うというアイデアを思いついたそうだ。

プロデューサーのJiwon Choi氏も同じタイミングでピノキオを思いついていたそうで、本作のテーマが決定。そこからChangkyu Nohがイメージを膨らませ、どのような表現を行えば良いかを考えていくことになる。

原作となるピノキオは、風刺やモラルへの問いかけなど人々を魅了させる物語だ。誰もが知るこの物語に脚色するには勇気が必要だったという。童話ということも難易度を上げ、うさぎや猫などのキャラクターをどのように解釈し表現するのかにも悩んだそうだ。

そこで「奇妙だが美しい」というフレーズから、ホラーとサイエンスを融合したSFホラーにする発想につながったという。ゴシックホラーとSFを融合し、ベルエポックパンクと名付けた。

ベルエポックを選択した理由は、フランスのパリが一番美しい時代だからだそうで、オスマン様式やロマネスク様式、バロック様式といった当時の建築物を扱い、柱や金属のアーチなどを活用して古典的な感じとホラーを融合した。機械に職を奪われることに反発する運動などの暗い部分も溶け込ませていったという。

Stargazerや金庫やゲートなども古典とSFを見事に融合している。

キャラクターのデザインも独特だ。主人公となるピノキオは、「奇妙だが美しい」を表現するために、奇妙な世界を生きる美しい少年をテーマにしている。最初は20代半ばをイメージしていたが、途中で少年に変更し、今のデザインになったそうだ。

Geppettoは、主人公よりも背を高くし、青いマフラーを象徴的なものとして扱っている。

Venigniは19世紀の富裕層の服装を重視して表現。まだファスナーがなかった時代のデザインで、靴などの形もこだわったという。

Antoniaはピノキオを最初に発見したAntonioをモチーフにしており、性別が女性に変わったことで名前も変化している。

青い髪の妖精であるSophia。

ピノキオを阻むクリーチャーたちも人形となって表現されている。憲兵や犬、サーカス団の団長はボスとして登場する。

原作では棺を担ぐウサギは仮面をかぶった人の姿で登場する。

技術的な面では、Bleach Bypass / ENR現象技法が用いられており、重厚感のある表現となっている。

雨の降る街の照明とモンスターの光の反射などを美しく表現。ボスをスポットライトでテラスなど戦闘での演出にも凝っており、世界観の演出とプレイフィールを両立させている。

時間や天気によって、湿度や温度、風などを視覚的に感じられるように工夫されている。

アクションが注目されがちな本作だが、多彩な技術で表現された世界観にも目を向けるとストーリーを一層堪能できることだろう。

※メーカー発表情報を基に掲載しています。掲載画像には、開発中のものが含まれている場合があります。

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