Blizzard EntertainmentがPS5/PS4/Xbox Series X/Xbox One/PC向けに開発中の「ディアブロ IV」の合同インタビューがメディア向けに行われた。ベータテスト直前ということもあり、全体的なできばえや心境といった部分に焦点が当たったインタビューの様子をお届けする。
クォータービューのハック&スラッシュの金字塔として、絶大な人気を誇る「ディアブロ」シリーズ。日本時間の3月18日から21日まで、予約購入者向けのオープンベータへの先行アクセスが実施される。また、誰でも参加できるオープンベータ本番は日本時間の3月25日に実施予定だ。本作に注目しているプレイヤーは、このインタビューを読んだうえで、オープンベータに乗り込んでみてはいかがだろうか。
今回インタビューに応じてくれたのは、「ディアブロ」フランチャイズのジェネラルマネージャーのRod Fergusson氏と、メインディレクターを務めるJoe Shely氏の2人だ。
――発売を数か月後に控えて、お二人の「ディアブロIV」への手ごたえや感想を教えてください
Joe氏:かなり自信はあります。今回のオープンベータは開発陣もかなり力を入れており、実現できたことは大きなマイルストーンとなっています。単にオープンベータが実現しましたというだけでなく、ここでしっかりテストできるということを大きく見ているので、プレイヤーのリアクションや感想をチェックして、細かく調整を行いたいと思います。
Rod氏:私がおもしろいと感じたのは、「ディアブロ」チームのゲームの作りかたです。かなり初期の段階で、プロローグからエピローグまで通しでプレイできるようになっていたのです。もちろん内容に関しては、テクスチャがなかったり、キャラクターが棒人間だったりしたのですが、全体を通してプレイできる状態が、初期の頃からできあがっていました。ほかのゲームスタジオではあまり見ることがない作り方なんですよ。彼らが使っている単語で“スープテスト”……スープを味見するという意味のものがあるのですが、プレイしながらこの要素を足してみようとか、もうちょっとこういったフレーバーが欲しいとか、どんどん要素を足していく作り方をしているのです。
加えて、こちらは仕方なくという面もありますが、コロナウイルスの影響で、スタッフそれぞれが自宅にビルドを持ち帰ってテストしなければならないという状況が発生したため、さらにこのプロセスが磨かれたと思っています。これにより完成したのが「ディアブロIV」というゲームなのです。
――オープンベータで特に注目してほしいポイントはどこでしょうか?
Joe氏:今回のオープンベータテストはマーケティング目的ではなく、テストを兼ねたものです。皆さんの反応やサーバーの安定感を見たり、ゲーム初期のレベルアップのスピード感といった調整を行ったりしたいため、実際にプレイして頂いたうえでのフィードバックをもらいたいと考えています。
Rod氏:開発側が「ディアブロIV」にどれだけの愛と情熱を注いでいるかをぜひ感じてほしいですね。クオリティに関しては最高のものをお届けできると思っていますし、既存の「ディアブロ」ファンの方々には、“これが最高の「ディアブロ」だ”と言ってもらいたい。また新しいユーザーの方々には、心の底から「ディアブロ」を楽しんでいただきたいです。
――「ディアブロ」の魅力として膨大なスキルツリーがありますが、初心者にとっては混乱してしまう要素かもしれません。本作から「ディアブロ」に触れるユーザーに向けた、おすすめビルドやスキルを示す仕組みなどはあるのでしょうか?
Joe氏:新しいスキルを覚えていくプロセスは、これまでと比較してゆっくり進むと考えてください。厳密にはレベル帯によって違うのですが、レベルが1上がるごとに1つのスキルを覚えていきます。1つのレベルで複数の選択肢が一気に解禁されるような、初心者に混乱をもたらすものはありません。ノードと呼ばれるサブスキルのようなものも同じようにゆっくりと解放されるため、吟味しつつ進めることができるようになっています。また、新しいアイテムを手に入れたり、別のスキルを使いたいと心変わりしたときのために、スキルの降り直しも可能です。レベルが低いうちはスキルの振り直しコストも低くなっていますので、やり直しやすくなっていますよ。
全クラスに言えることですが、プレイスタイルにごとに成長後の姿をイメージしながらデザインしています。例えばバーバリアンでいえば、パッと思い浮かぶのはワールウインドや出血主体のビルドですね。各系列のスキルやノードはスキルツリーで調べられ、どのスキルが相性がいいかを確認することができます。意識していれば、ちぐはぐなビルドに仕上がることはないと思います。
Rod氏:スキルツリーのシステムは、じつは初期から何度も作り直されているのです。スキルツリーの深さは欲しいのですが、それを突き詰めた結果、理解が難しいものになってしまっては本末転倒です。現状のスキルツリーは、何をすればいいのか直感的にわかるようになっているため、新規ユーザーでもスムーズに理解していただけるのではと考えています。
――スキルやノードの組み合わせで、大まかなプレイスタイルが複数生まれると思います。そういったビルドの方向性としての数はどのくらいあるのでしょうか?
Joe氏:現状では、1つのクラスに対して4~5つのベースとなる設計があると考えてください。先ほどにも例にあげた、ワールウインドのバーバリアンなどもこれに当たります。ただしワールウインドを使用しているバーバリアンが、すべて同じようなビルドに仕上がるとは限りません。ノードやアイテムしだいでプレイヤーごとの色が出るはずです。これが5クラスぶんあり、個人のカスタマイズも考えると、かなり多くの型が生まれるのではないでしょうか。100種類以上のレジェンダリーアイテムもありますし、これを生かしてプレイヤーが新たに発見してくれるビルドもあるでしょうね。
――逆に、生粋の「ディアブロ」ファンのために心がけたことは何かありますか?
Joe氏:まず成長のしかたに関しては「ディアブロII」に似たものとなっています。「ディアブロII」をプレイしたことがある方はご存じかもしれませんが、ゲームをクリアするにあたっては、最大レベルになっている必要はありません。本作では、だいたいレベル40程度でゲームの終盤に差しかかるようになっています。ストーリーをクリアしてからが本番というのは、従来と変わりません。
そのうえでパラゴンレベルの調整やレベルキャップ……現状は100が上限となっていますが、そこに到達してからもワールドティアを上げることが可能です。ワールドティアを1つあげるためにはボスを倒さなければいけない作りになっていますし、コアプレイヤーにも十分に楽しんでいただける内容の厚さがあると思っています。
Rod氏:ストーリーをクリアしてからが本番というのは我々も思っていますし、ユーザーの方々もそう考えていますよね。なので、そこから満足させられるだけのものは用意できたと考えています。本作は、リリース時点でエンドコンテンツをしっかり詰め込んだ状態で発売します。パラゴンレベルやワールドティア以外のものもふんだんに用意してありますので、コアプレイヤーの方々にも楽しんでいただけるのではないでしょうか。
Joe氏:本作はオープンワールドという作りになっているため、世界各地を冒険してもらいたいのです。ツリーオブウィスパーという、クエストなどにアクセスできるシステムがあるのですが、ここからクエストを受けたり、プレイの指針をもらったりすることができるので、これを参考に行動してみてほしいですね。
また、ヘルタイドというエンドコンテンツもあります。今回のテストのエリアでも、ヘルタイドによってエリアが少し変化するという状態になることがあるでしょう。ヘルタイド中は敵も強くなっていますが、普段とは違うレアアイテムが出ることもあります。さらに、どの部位のアイテムが欲しいかを選択したうえで挑戦することもできるため、狙っているアイテムがある場合は、ヘルタイドのタイミングに合わせてプレイするというのが、ひとつのエンドコンテンツの楽しみかたとなっていきます。
3つめの要素としては、ダンジョンがあげられます。ゲーム全体を通して150ものダンジョンを用意してありますし、紋章のようなアイテムを使うことでナイトメアダンジョンへと格上げして挑むことも可能です。ナイトメアダンジョンでは、当然敵が強化されますが、手に入るアイテムの質も良くなっていきます。難しいダンジョンに挑戦していくこともエンドコンテンツのひとつとして楽しめるでしょう。
そして伝統的なPvPの要素もあります。PvP可能なエリアがゲーム内に存在しており、そこに入った時点で他人から攻撃される危険が生まれるので、進入する際はご注意を。もちろん、このエリアにはプレイヤーだけでなく、モンスターも存在します。PvPエリアでプレイヤーを倒していくことで名声が上昇していくのですが、名声が高いプレイヤーを倒すと、混沌の破片というリワードを多く得られる仕組みとなっており、この破片を使ってアイテムを交換することができます。ちなみに「ディアブロII」プレイヤーにはおなじみの、“倒した相手の耳”もアイテムとして集めることができますよ。
また本作はライブサービス型を考えており、ゲーム発売後も継続してエンドコンテンツの追加などをしていく予定です。
――「ディアブロIII」では、エンドコンテンツがパラゴンレベルやセットアイテムの収集に集約してしまい、「ディアブロII」のハードコアモードのような困難な目標がありませんでした。そういった、ゲームを遊びつくしたいプレイヤー向けの目標となるコンテンツはありますか?
Joe氏:「ディアブロIII」のプレイヤーから寄せられたフィードバックに、“キャラクターが強くなったところで試し切りをする環境がない”というものがありましたので、その問題は把握していました。本作では、ワールドティアを上げる際に戦うボスが最適になるのではと考えています。装備を集めて、そのワールドティアのボスを倒して次のティアへ行く。これを繰り返してトップティアまで上り詰めるというのが、試し切りをする楽しみ方への解答となっています。
これに加え、ナイトメアダンジョンではプレイヤーが到達できるレベル上限より、ダンジョンのレベルのほうがおそらく高くなる見込みです。よって、これをクリアするためには自分の腕を磨き、可能な限り良質なアイテムを集めなければなりません。それでもまだクリアに足りるかどうかは、まだちょっと私の口からは言えませんが……。しかし最終的な遊びかたとしては、いろいろな要素を用意しているつもりです。
Rod氏:ライブサービスのゲームですから、シーズンが新しくなるごとに要素が追加されたり変更されたりする可能性はあるでしょう。ローンチ直後のエンドコンテンツと、シーズンがいくつか進んだ先のエンドコンテンツがまったく異なっていることもあり得るので、プレイヤーが飽きるということは、ほぼないと考えています。
――JoeさんはMMORPG「World of Warcraft」の開発にも携わっていたとのことですが、ほかのプレイヤーと世界をシェアすることになる「Diablo IV」において、そのノウハウはどのように生かされているのでしょうか?
Joe氏:「World of Warcraft」の開発はとても楽しい時間でしたし、いろいろなことを学べました。ゲームを作るうえで、作れば作るほど問題解決の力がついてくると思っていて、その点がもっとも大きく鍛えられましたね。ノウハウという意味でいえば、そういった問題解決力かもしれません。
本作をMMO的に感じるシーンもあるかもしれませんが、ベースはあくまでもA・RPGです。「ディアブロ」の持つ雰囲気として、1人で冒険するというものを重視した作りとなっています。ほかのプレイヤーとの関わりは要素としては存在するものの、意識しているのはあくまでも1人によるプレイです。
――「ディアブロ」シリーズのような長期的なタイトルですと、開発内で原点や理想とする「ディアブロ」像が異なってくる場合もあるかと思います。世代による「ディアブロ」観の違いが生まれたとき、どのようにして方針をまとめているのでしょうか?
Joe氏:「ディアブロ」シリーズに限らず、すべてのゲームで同じことが言えると思うのですが、基本的にデザイナーそれぞれが異なる意見を持っており、何かに対して100%同意を得られることは絶対にありません。意見がぶつかることも多発します。「ディアブロ」に関しては25年の歴史がありますから、それぞれに理想とするビジョンや好きなビジョンがあります。ただ、年齢層が大きく異なるチームということが、逆にいい結果を生んでいるとも思います。違う年齢層からの「ディアブロ」への意見を、チーム内で吸い上げることができるからです。「ディアブロ」に対するパッションを持ったチームが出す意見というのは、ケンカのもとでもありますが、絶対に「ディアブロIV」をいいものにすると思っているので、積極的に組み込もうとしています。
Rod氏:開発初期からビジョンを共有し、「ディアブロIV」がどういうゲームであるかをチームに伝える努力をしてきました。チーム内では、“闇への帰還”というフレーズをよく使っています。このイメージをベースにしたうえで、違う世代の「ディアブロ」ファンからのフィードバックをまとめており、「ディアブロ」からはダークなトーンを、「ディアブロII」からはスキルや育成のシステムを、「ディアブロIII」からは戦闘の爽快感を吸い上げました。ここにさらにオープンワールドにすることでプレイヤーに選択を与えるゲームプレイを追加し、「ディアブロIV」を作り上げています。
“闇への帰還”というテーマ通り、ダークファンタジーのトーンを大事にしていますので、日本語版はCERO:Zで発売することに決定しました。極力オリジナル版に近い状態で日本のファンに届けるというのが大きなミッションでしたので、それが実現できることを嬉しく思っています。
――最後に、日本のプレイヤーへメッセージをお願いします
Rod氏:日本のプレイヤーの皆さんをまたサンクチュアリに呼び戻すことができ、どんな反応をもらえるのかが今から楽しみです。先ほども触れましたが、ダークファンタジーである「ディアブロIV」をCERO:Zで発売できることを嬉しく思っており、フィルタリングされていない生の「ディアブロIV」を楽しんでいただきたいですね。
Joe氏:さまざまな悪魔をゲームに詰め込みましたので、彼らを倒す手伝いを日本の皆さまにしていただけたら幸いです(笑)。