大阪中之島美術館にて2025年3月20日より開催される「大カプコン展 ―世界を魅了するゲームクリエイション」の記者発表会が11月20日に行われ、本展覧会の見どころが公開された。
創業40周年を迎えたカプコンの原点から最新技術まで総合的に紹介する初の展覧会となる「大カプコン展 ―世界を魅了するゲームクリエイション」。本展を担当する大阪中之島美術館学芸課長の植木啓子氏によると、2025年に開催される大阪・関西万博を見据え、2025年に大阪の何を世界に発信すべきなのか、世界の何を大阪に紹介すべきなのか、検討を重ねてきたという。
ただ、大阪中之島美術館は開館以来、より幅広い分野で、良質で挑戦的で、総合的な創作活動・創造活動・芸術活動の紹介を展覧会という形で行ってきたという自負があり、「そんな当館にとって“2025年”、“大阪”、“世界”という3つのキーワードは必然的にカプコンとつながっていきました」と、今回の開催にいたった経緯を語った。
続いて、本展の監修などを務めるカプコンのプロデューサー・牧野泰之氏より展示内容の説明が行われた。
内容の説明に先立って、本展のコンセプトを紹介する動画が流された。「バルガス」、「1942」、「戦場の狼」、「魔界村」といったゲーム黎明期のタイトルから、「ストリートファイター」、「バイオハザード」、「モンスターハンター」、「逆転裁判」などの看板タイトルや近年のヒット作まで。創業40周年を迎えたカプコンの名作映像の数々が「大阪から世界へ」というキャッチフレーズとともに流れるというもので、独創性の高いゲームを輩出してきたカプコンの歴史を改めて感じさせた。
展示内容の説明の際、牧野氏が特に強調したのが「世界を魅了するゲームクリエイション」というサブタイトルの部分で、この名称には「ゲーム開発の裏側、ゲームクリエイターの情熱をどう見せるか」という本プロジェクトに関わっているメンバーの気持ちが込められているという。
キービジュアルにドット絵の表現が盛り込まれていたり、「モンスターハンター」のリオレウスがCG制作過程の状態で描かれていたりするのも、そうした意図の表れで「原画展と思われるのは避けたかった」と牧野氏は説明。もちろん、手描きの資料やアナログ原画なども展示されるが、それらが主軸ではなく、通常のゲーム・マンガ・アニメの原画展とは「“だいぶ”趣きが異なります」と、強い口調で語った。
展示が行われる会場は「Round1~3」と「BONUS」という4つのエリアで構成。「Round1」は「カプコンが見たゲームクロニクル」と題し、カプコンのこれまでの活動を軸にゲームの歴史を振り返るエリアになるという。
特に注目すべきはカプコンの歴代人気キャラクターが大行進するアニメーション。会場入口からおよそ幅16メートル、高さ4、5メートルの巨大なスクリーンをカプコンのキャラクターたちが行進するというもので、彼らと一緒に入場しているかのような特別な体験ができるとのことだ。
さらに、ゲーム業界やカプコンの歴史を年代順に振り返る巨大な年表を掲示。ゲーム機、ソフトの実物も展示予定とのことで、40年前の初代ファミコンソフトやパッケージなどを実際に目にすることができる。
「Round2」のタイトルは「テクノロジー×アート×アイデア」で、この3つの要素を掛け合わせて進化してきた、総合芸術としての「ゲームならでは、カプコンならでは」の創意工夫の歴史を見ていくものとなる。
そのひとつが「ドット絵の流儀」というコーナー。ゲームファンならご存知だろうが、ドット絵の制作はハードの性能や容量といったさまざまな制約の中、独特の知識を使った創意工夫がなされてきた。そんな現在のデジタルツールを使った制作とは明らかに異なる、黎明期のグラフィック制作を知ることができるものになるという。
牧野氏自身は現在45歳でドット絵時代のゲーム制作は体験しておらず、諸先輩やOBたちから話を聞きながら、このコーナーを作成していったそうだ。そうした事例のひとつとして紹介されたのが、1987年にファミコンにて発売された初代「ロックマン」のビジュアルだ。
ファミコンで使える色はわずか52色で、さらに1画面で表示できる色数にも限界があった。そうした制約のなかで、主人公のロックマンの表現をリッチなものにするためにどのような工夫がなされたのか。なぜ、同じステージの敵キャラクターは似たような色をしていたのか、といったことが語られた。
このエリアはこうしたマニアックな展示や説明がてんこ盛りとのことで、「カプコンファンなら1日では回り切れないと思います。2日、3日かけてじっくり堪能していただきたいなという思いがあります」と、牧野氏は語った。
もうひとつの目玉が「ゲーム作りの古文書たち」。ここでは過去のゲームの手書きの仕様書や企画書など、これまでほとんど世に出ていない貴重な資料を多数展示。牧野氏の大先輩が「意地とプライドで破棄されるのを阻止して、キレイにキレイに保管してきた」そうで、なんと8割以上が今回初めて公開されるものとのことだ。
「楽しい効果音づくりの世界」というゲームの効果音制作をフィーチャーした展示も実施。「モンスターハンターライズ」の鎧の甲冑の音はランドセルを鳴らして作っているというが、そういったゲーム中の効果音が何を使って、どのようにして作られているのか見ることができるという。
「Round3」は「カプコンが生み出す比類なきファンタジー」というもので、カプコンらしさを生む、モノづくりのこだわりについて展示。牧野氏いわく、カプコンは架空の世界や架空のキャラクターといったものに、いかにしてリアリティを持たせるかということに特に腐心してきたゲームメーカーのひとつで、そうしたカプコンらしさに触れていくエリアになるという。
そのひとつが「キャラクター造形の教典」だ。あくなき筋肉へのこだわりはカプコンのキャラクター造形の大きな特徴のひとつで、カプコンに在籍していたイラストレーターたちが「あやしい美術解剖図」なる資料を制作。これがカプコンのクリエイターたちに代々伝わり、解剖学レベルでの筋肉や人体構造への理解をうながしてきたと牧野氏は言う。このコーナーは、そうしたカプコンならではのキャラクターデザインの歴史を知ることができるものになるとのことだ。
このエリアのもうひとつの見どころが、「石膏像×プロジェクトマッピング」。カプコンの人気キャラクターの石膏像へのプロジェクトマッピングで、3DCG制作のプロセスを立体的に紹介するというもの。今回の発表会では「ストリートファイター」の春麗の石膏像へのプロジェクションマッピングが実際に行われたが、本展では「デビルメイクライ」のダンテの石膏像も設置されるとのことだ。
最後のエリアとなる「BONUS」は「体験するゲームクリエイション」。タイトルどおり、来場者がゲームづくりの一端を体験できるお楽しみエリアだ。
ここで展開されるコンテンツのひとつが「モーションキャプチャーミラー」。演者の動きをデータとして取り込んでキャラクターに反映させる「モーションキャプチャー」を手軽に疑似体験できるというもので、「ストリートファイター」シリーズのリュウの「波動拳」や「逆転裁判」シリーズの成歩堂龍一の「異議あり!」などのモーションを楽しむことができる。
ドット絵制作を体験できる「ドット打ち体験」コーナーも設置される予定。制作したドット絵はQRコードで読み込むことでスマホに保存して持ち帰ることも可能になっているとのことだ。
今回紹介したのはあくまで展覧会全体のほんの一部で、全体で30ほどのコーナーを用意したいと牧野氏は語る。展示されるタイトル数は未定だが、他社版権以外の歴代タイトルはほぼすべて何らかの形で扱いたいと考えているそうだ。
開催期間は2025年3月20日(木・祝)から6月22日(日)まで。2024年12月中旬頃にチケット情報を中心とした情報が公開予定なので期待して待とう。
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