Gamerで執筆しているライターに、年末年始に合わせて自由に書いてもらおうという企画。田中一広による、「これからのゲーム」のひとつのかたちをイメージさせてくれた2024年の謎解きゲームジャンルの記事をお届けします。
コンシューマーでは「鉄拳8」「メタファー リファンタジオ」「ドラゴンボール Sparking! ZERO」、スマホでは「スクワッド・バスターズ」「ゼンレスゾーンゼロ」そして「Pokémon Trading Card Game Pocket(ポケポケ)」などの話題作がリリースされた2024年。ただ筆者が個人的に注目したいのは、脱出ゲームやマーダーミステリーといった謎解きゲームジャンルの作品たち。というのも、謎解きゲームジャンルの作品たちは、筆者にこれからのゲームをイメージさせてくれたからだ。そこで、記念すべき年末年始の記事として、謎解きゲームが持っているポテンシャルについて語りたい!

アナログとデジタル!そして現実と非現実が融合!新たなエンターテインメントのかたち
脱出ゲームやマーダーミステリーといった謎解き系ゲームは以前から存在しており、今年になって急激に流行りだしたものではない。ただ、着実に進化を重ね、さらにはファンの裾野も拡大してきている。筆者が謎解き系ゲームのこうした勢いを感じたのは、アナログゲームの祭典「ゲームマーケット2024秋」。数年前の同イベントと比べて、謎解き系ゲーム系の存在感は確実に増していると感じた。これは謎解き系ゲームに限った話ではないが、最近のアナログゲームは、スマートフォンと連携するものが少なくない。TRPG的なゲームにおけるゲームマスター役をスマートフォンアプリに担わせるなど、ルール的に人間がやらない方が効率的な部分に関して、スマートフォンを活用しているのだ。脱出ゲームやマーダーミステリーといった謎解き系ゲームもそうで、謎解きの結果判定などにスマートフォンを活用している。つまり、「アナログとデジタルの融合」。たとえば筆者が「ゲームマーケット2024秋」で出会った「海底基地ネオアトランティスからの脱出」は、探索と謎解き部分にスマートフォンを活用し、謎の手掛かりについては紙媒体で提供するというスタイル。スマートフォンのみで完結するゲームとは違い、紙のリアルな手触りによって、より強い臨場感を味わうことができた。

一方、デジタルゲーム分野では、海外のスマートフォン向けアドベンチャーゲームにおいて、現実と非現実を融合させたものが一定の存在感を放っている。たとえば「ダスクウッド (Duskwood) - 探偵ミステリー」はそんな作品のひとつ。行方不明になった女性の最後に伝えた電話番号がプレイヤーのものだったというかたちで、事件に巻き込まれていく。ゲームのインターフェースがスマートフォンのチャットを模しているため、自分自身が事件の渦中にあるという感覚が強く味わえる。こちらは、「現実と非現実(フィクション)の融合」といえるだろう。

「アナログとデジタルの融合」と、「現実と非現実の融合」の両方を備えた作品も登場している。SCRAPの「DETECTIVE X」シリーズはそんな作品。現実の捜査資料を模したコンポーネントを用い、殺人事件を捜査するという構成。もちろん、ゲーム進行上にスマートフォンも組み込まれている。SCRAPといえばリアル脱出ゲームの運営で知られているため、ついついなぞなぞや暗号解読的な謎をイメージしてしまう。しかし、同作は正統派の推理ものとして作られているため、自分がサスペンスドラマの主人公になったかのような感覚が味わえるのが魅力だ。

こうした謎解きゲームジャンルが、2025年に一気にブレイクするのだろうか?…個人的には、その可能性はゼロではないものの、そんなに高くないだろうと思う。「ここまで紹介してきたのに、そりゃないだろ」と思うかもしれないが、謎解きゲームジャンルの作品は、基本的に一回プレイしたら終わり。ということは、FPSや対戦型格闘ゲームのように、1つの作品に対してプレイヤー人口が蓄積されていくわけではない。
その一方で、一回プレイしたら終わりだからこそ、ファンは新作を欲し続ける。なので、継続的に作品がリリースされ続けることになり、2025年以降も着実に進化と拡大が広がっていくだろうとも思う。これは非常にワクワクする!ちなみに筆者もインディゲームクリエイターのはしくれだ。だからこそ、この状況に動かずにはいられない。…そう思い、2024年は脱出ゲーム系のゲームの開発に時間を費やしてきた。2025年は筆者も「アナログとデジタルの融合」「現実と非現実の融合」といった要素を押さえた脱出ゲームをリリースし、謎解きゲームコミュニティの盛り上がりと進化に貢献したいと思う。
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