バンダイナムコエンターテインメントから2025年5月22日に発売されたNintendo Switch/Steam用ソフト「機動戦士ガンダムSEED BATTLE DESTINY REMASTERED」(以下、「バトデス」と表記)のレビューをお届け。

目次
  1. キャラメイクの時点で闘いは始まっている!?
  2. 愛機を使い続けるか、乗り換えるか。100機以上の機体を使いこなして成り上がれ!
  3. アクションはスピーディで爽快感アリ!ただし難易度は高い
  4. “名も無き兵士”であることに特化したガンダムゲーム
  5. 好きな機体で飛び回る二周目はまさに“フリーダム”
  6. 一粒で二度も三度もおいしい、長く遊べるガンダムゲームへ

本作は2012年にPS Vita専用ソフトとして発売された「機動戦士ガンダムSEED BATTLE DESTINY」のリマスター版。UIの刷新やグラフィックの改善にバランス調整など、遊びやすさの面で進化を遂げたリマスター版となっている。

……という触れ込みだが、筆者はリマスター元のタイトルを遊んだことがなく、今回の現行機版で初めてこのタイトルに触れることとなった。そのためリマスター化による変更点や改善点のご紹介は叶わないものの、作品世界の追体験としてかなりユニークな特性を持つ「バトデス」の魅力をお伝えできれば、ということを心掛けている。

少しだけ身の上話をさせていただくと、筆者は今年1月公開の「機動戦士Gundam GQuuuuuuX -Beginning-」によりガンダム熱が再燃し、その流れで友人から薦められていた「ガンダムSEED」の視聴を始め、続編の「DESTINY」とガンダムシリーズ最大のヒット作となった劇場版「FREEDOM」を遅ればせながら鑑賞し、駆け足ではあるが外伝作品を除く「SEED」シリーズの映像作品に目を通している。

好きなMSはストライクフリーダムよりもフリーダム、フリーダムよりもストライク(換装ギミックがカッコイイ!)というひねくれた趣味をしているが、アニメシリーズにハマった絶好のタイミングに発表された「バトデス」は、まさに渡りに船。アニメで憧れた様々な名機体をコントローラーごしに操れるというワクワクには抗えず、本作を購入し全ルートのミッションをクリアした状況で本レビューを書き進めているが、実際のところはまだまだ遊び尽くしたとは言い難い、中身のギッシリ詰まった一作に「バトデス」は仕上がっている。それでは早速、中身の紹介に移っていきたい。

「機動戦士ガンダムSEED BATTLE DESTINY REMASTERED」レビュー:強機体ひしめくコズミック・イラをモブキャラ視点で駆け抜けるハイスピードアクションの画像

キャラメイクの時点で闘いは始まっている!?

ゲームを開始すると、まずは自分の分身であるパイロットと、僚機となるパートナーのキャラメイク画面に移行する。選択できるのは名前とパイロットフェイス(性別含めた見た目)の他、重要なのはタイプと勢力の要素。「ガンダムSEED」の世界=コズミック・イラでは、遺伝子操作を受け優れた頭脳や強靭な肉体などの優位性をもって産まれる「コーディネイター」と、一切の調整を受けない自然出産による「ナチュラル」によって人種概念が分かれており、大きく分類すると「地球連合軍」と「ザフト」の二大勢力が対立している、という設定だ。「バトデス」ではその設定を受け、プレイヤーは自分の分身がコーディネイターかナチュラルか、連合とザフトのどちらに所属するのかを選べるのだが、この設定は今後の命運を左右する重要なものとなっている。

「機動戦士ガンダムSEED BATTLE DESTINY REMASTERED」レビュー:強機体ひしめくコズミック・イラをモブキャラ視点で駆け抜けるハイスピードアクションの画像

コーディネイターはナチュラルよりも初期ステータスが優れており、ナチュラルはガンダム等のコーディネイター向けに調整された機体に搭乗すると性能が下がるなど、「バトデス」は産まれによる能力差を数値上で再現している。コーディネイターはどんな機体でも不自由なく動かせる一方で、ナチュラルは搭乗する機体に制限がある、という調整が施されており、原作アニメでもそうであったように、ナチュラルとして戦場に赴くのはいばらの道なのだ。ただし、ナチュラルはスキルの選択枠がコーディネイターよりも一つ多いため、その選出によっては大化けする可能性も秘めている。

所属する軍については、誰が味方につくか、誰と敵対するかを考慮して選ぶことをオススメしたい。これは「ガンダムSEED」シリーズを観ているか否かを問われる選択だが、連合なら序盤からイザークやディアッカの駆るガンダムタイプと衝突し、ザフトなら後半にオルガ、シャニ、クロトといった強化人間たちと連戦する羽目になる、という具合に、難易度曲線が原作アニメの展開に準拠するイメージを想像していただけるとわかりやすい。また、基本的には所属する軍の保有する機体が支給されるので、好みの機体目当てで所属を選ぶのもモチベーション高く遊び続けるコツである。

「機動戦士ガンダムSEED BATTLE DESTINY REMASTERED」レビュー:強機体ひしめくコズミック・イラをモブキャラ視点で駆け抜けるハイスピードアクションの画像

愛機を使い続けるか、乗り換えるか。100機以上の機体を使いこなして成り上がれ!

キャラメイクが終わると、チュートリアルを挟んで、「ガンダムSEED」アニメの1話「偽りの平和」を再現したミッションに突入する。連合サイドならザフトの襲撃を受けキラの乗るストライクガンダムと共闘し、ザフトサイドならイザークらが遂行するガンダム強奪任務を支援する形で、プレイヤーは「ガンダムSEED」世界に参戦することとなる。

「機動戦士ガンダムSEED BATTLE DESTINY REMASTERED」レビュー:強機体ひしめくコズミック・イラをモブキャラ視点で駆け抜けるハイスピードアクションの画像

この時、連合ならストライクダガー、ザフトならジンというように、プレイヤーに与えられるのは量産型の機体しかなく、アニメの主人公のような格好いい活躍はしばらくお預けに。初期機体はすぐにブーストが切れてしまうので移動や回避も思うようにいかず、武装も貧弱で殲滅速度がどんどん押し寄せてくる敵の密度に追い付かないこともある。

「バトデス」には100機以上の機体が収録されており、フリーダムやジャスティスといった主人公格の機体は当然ながら、各陣営の量産機もかなりマニアックなものが取り揃えられており、アクションゲームとしてそうした機体を操縦できるのは本作ならではの強みだが、さすがに初期機体への愛のみで駆け抜けられるほどコズミック・イラは甘くない。ガンダムのビームライフル数発であっさり落とされるこちらの量産機は、アニメで何度となく目にしたモブキャラの最期そのもの。

「機動戦士ガンダムSEED BATTLE DESTINY REMASTERED」レビュー:強機体ひしめくコズミック・イラをモブキャラ視点で駆け抜けるハイスピードアクションの画像

その打開策となるのが、一つは機体のチューン。ミッションを攻略すると手に入るTPを振り分けることで、愛機のステータスを向上させられるのだ。体力や動作性といった基礎はもちろん、武装の威力や命中、装弾数など細かく設定が分けられており、ミッションの特性によって伸ばしたいステータスを高めて挑む戦略性の他、TPに余裕があれば全ての要素を強化した機体で優位にゲームを進めることも可能となっている。このチューンはいつかは改造限界に達するものの、条件を満たせばその限界を突破してTPをつぎ込むことが出来るようになり、フルチューンした愛機で強敵を一掃する無双プレイがクリア後のお楽しみとして待ち構えている。

もう一つが、機体の入れ替えだ。「バトデス」ではミッションが進むごとに新たな機体が支給されるのだが、特定のミッションをある一定以上の評価を得てクリアすることでも、機体が解放されることがある。それらは主に量産機の〇〇専用機といった改良機の他、武装や換装ギミックが追加された強化機体、さらにはガンダムタイプが支給されることも。名も無き一般兵士としてスタートして、戦果を挙げてより強い機体を手に入れる、というロールプレイで没入度はさらに深まり、止め時を見失い同じミッションを繰り返し遊んでしまう。

使い慣れた機体を極めるも良し、新しい機体に目移りしても良し。選択肢が多い分自由度も高いストーリー攻略は、プレイヤーの数だけ様変わりするまさに自分だけの架空戦記。お気に入りの愛機を見つけたら、己の正義を実行するために強力なガンダムタイプひしめく宇宙の彼方に、勇気をもって飛び出していこう。

「機動戦士ガンダムSEED BATTLE DESTINY REMASTERED」レビュー:強機体ひしめくコズミック・イラをモブキャラ視点で駆け抜けるハイスピードアクションの画像

アクションはスピーディで爽快感アリ!ただし難易度は高い

次に、実際にMS(モビルスーツ)を動かすアクションパートをご紹介。攻撃手段は主に射撃武器となる主兵装と副兵装に、格闘攻撃の3種類。多くの機体は主兵装を複数所持しており、状況に合わせて戦闘中に切り替えることが可能。射撃武装は弾数を撃ち切ると時間回復のリロードに自動で移行し、総弾数が0になると武器が使用不可となるため、フィールドに配置されているコンテナで適宜補充する必要を迫られることも。

敵機を撃破するなどして溜まるSPゲージを消費したチャージ格闘、チャージ射撃はどれも強力で、とくにチャージ射撃は即時リロードも兼ねており、通常射撃で弾数が無くなったらチャージ射撃を挟むループで、SPゲージと総弾数が無くならない限り撃ち続けられる、重要なテクニックだ。また、SPゲージを満タンの半分ほど消費して発動する「SPアタック」は機体由来の強力な攻撃や自機強化の他、キャラメイク時に選択した2種のSPアタックのうちの一つと出撃前に選択可能。一定時間無敵+リロードをスキップして兵装の使用が可能になる「ハイパーモード」と、周囲の動きが遅くなる文字通りの「スローモーション」はどちらも破格の強さで、ピンチをくぐり抜ける最後の手段としてゲージ管理には常に気を配っておきたい。

「機動戦士ガンダムSEED BATTLE DESTINY REMASTERED」レビュー:強機体ひしめくコズミック・イラをモブキャラ視点で駆け抜けるハイスピードアクションの画像

機体によっては「換装」することで格闘モーションや兵装を入れ替えて臨機応変に対応できるもの、「変形」で機動力を底上げし戦場を縦横無尽に飛び回るものなど、戦略の幅は広い。また、実弾攻撃を一定まで無効化する「SEED」世界ならではの特殊技術「フェイスシフト装甲」の頼もしさたるや凄まじく、それらを有した機体に乗り換えた途端、ゲームバランスが一変するような感覚に陥ることも。多種多様な機体の個性を把握し、実際の戦場で役立て、勝利を我が物にしていこう。

アクションは軽快で、操作も実に簡単。射撃はロックオンや予測射撃などのサポートがあるし、格闘は足を止めるため被弾する危険性が高まるものの、威力はかなり強く設定されており、状況を見極めて使い分けることで敵機をサクサクと殲滅することが可能。機体の性能が上がり、パイロットの能力も成長するにつれ思い通りにMSを動かせるようになり、成長を実感しやすいアクションゲームに仕上がっている。

「機動戦士ガンダムSEED BATTLE DESTINY REMASTERED」レビュー:強機体ひしめくコズミック・イラをモブキャラ視点で駆け抜けるハイスピードアクションの画像

ただし、全体的な難易度は厳しめの設定で、敵はモブの一般兵ですらも射撃の命中率や回避性能が高く、エースパイロットはさらにその上を行く高機動と攻撃力でこちらに迫ってくるため、何度も再出撃を繰り返しながらようやく撃破、というところに落ち着きやすい。とくに重要なのは攻撃の回避に直結する移動速度とスラスター性能で、こちらの性能が敵に追い付くまでは苦しい闘いを強いられることも多く、原作再現としては正しいがゲームとしては難しい、という状況に陥ることも。

そうした差をチューンや機体選び、プレイスキルで埋めていくのが常道だが、多段ヒットする攻撃に対しての緊急回避がない、被弾による硬直が長いため追撃を受けてそれがループしがち、といった仕様面でのシビアさが残されており、“当たらなければどうということはない”の精神がなければ生き残ることは難しい。敵もこちらも激しく動き回りながら、相手の一瞬の隙を刺し合う闘いは確かにアニメのワンシーンを体験するような興奮があるものの、それに対応するための操作の忙しなさは、本作の高難易度な印象を後押しするものであった。幅広い年齢層にヒットした「ガンダムSEED」シリーズのゲーム化作品ということもあり、プレイヤーサイドにも難易度選択の余地があったなら、と思わずにはいられない。

“名も無き兵士”であることに特化したガンダムゲーム

「バトデス」はミッションクリア型のアクションゲームで、撃墜した敵機の数やクリア時の残り体力、クリアタイムによってE~SSまでの評価を下され、入手した機体やTPを用いて次のミッションに挑んでいく。キャラメイク時に選択した連合orザフトの所属によってルートが分かれる他、中盤のミッションでは再び分岐が現れ、今の所属部隊に残るか、アークエンジェルに合流するかを選ぶことになる。そのため、本作には連合/ザフト/アークエンジェルの3ルートが、「SEED」と「DESTINY」の時代にそれぞれ存在し、計6ルートのミッションを闘い抜くこととなる。

「機動戦士ガンダムSEED BATTLE DESTINY REMASTERED」レビュー:強機体ひしめくコズミック・イラをモブキャラ視点で駆け抜けるハイスピードアクションの画像

本作が潔い点は、基本的にストーリーは原作アニメの通りに進行し、寄り道やゲームならではのif展開がないところだ。流れは一本道で、ルートの違いは敵と味方が入れ替わる程度で、実を言うと劇的な変化は起こらない。また、特定のキャラとの有効度を深めて専用のエンディングを見る、といったいわゆるアドベンチャーゲーム的な要素を一切廃しており、MSを愛でバトルを繰り返すことに特化したゲームとなっているのだ。

このように書くと遊び応えがないように感じられるかもしれないが、美青年が揃ったパッケージに似つかわしい「渋さ」こそが、本作の魅力ではないかと筆者は考えている。プレイヤーはどこまでいっても無名の兵士でしかなく、コズミック・イラの歴史書に名前が残ることもないし、戦局を左右するほどの大きな働きをすることもない。キラ・ヤマトやアスラン・ザラといったエースパイロットの人生には1ミリも介在せず、顔も名前も覚えられることもない、それがプレイヤーの分身なのだ。

「機動戦士ガンダムSEED BATTLE DESTINY REMASTERED」レビュー:強機体ひしめくコズミック・イラをモブキャラ視点で駆け抜けるハイスピードアクションの画像

その意味でいうと、本作の苛烈な攻撃と一瞬でも油断したら即撃墜、なゲームバランスも意図してのものだったのではないか、と思ってしまう。先述した通り、ビームライフルの直撃を受けて呆気なく爆散するのはガンダムシリーズにおけるモブキャラの「お約束」であり、同時にMSを用いた戦争における「リアル」なのだろう。プレイヤーも僚機も、強力な機体を手にするまではそのリアリティの中にいて、たとえ相手が同じ一般兵でも集中砲火を受ければいとも簡単に撃墜され、性能差が離れていればこちらは雀の涙のダメージしか与えられず、赤子の手をひねるように撃ち堕とされる。

宇宙という舞台、あるいは「ガンダムSEED」のキャラクターデザインが隠れ蓑になっているものの、容赦のない戦場の厳しさを印象付けた高難易度タイトルということで、筆者はPS2時代の名作「ジオニックフロント 機動戦士ガンダム0079」を思い出した。ジャンルこそ違えど、戦場で敵に囲まれた時の心細さ、集中砲火を喰らい蜂の巣にされたり、エースパイロットに蹂躙されたりといった経験は、かの名作によりトラウマとして刻まれており、その古傷に「バトデス」が食い込んだ形になった。

原作再現を謳ったゲーム化作品でありながら、原作キャラとの交流や共闘といった方向性ではなく、コズミック・イラ一般兵体感ゲームという方向に舵を切った「バトデス」は、放送当時にキャラクター人気が凄まじかったという「SEED」らしからぬ硬派な一作でありつつ、その苛烈な戦場を生き延びるサバイバルをプレイヤーに提供する、稀有なゲームとして令和の世に蘇ったのではないだろうか。

好きな機体で飛び回る二周目はまさに“フリーダム”

難しい、硬派、などというワードで不用意に「バトデス」への警戒心を高めてしまったかもしれないが、それはあくまで一周目の中盤まで、ということも合わせてお伝えしなければならない。分岐点を過ぎたあたりからプレイヤーの手元にも着実と強力な機体が揃い始め、やられるばかりだったゲームバランスが少しずつ逆転し、待望の主人公機を手にした時はそれまでのフラストレーションが一気にカタルシスに転じる、という体験まで出来てしまうのが「バトデス」というゲームなのだ。

「機動戦士ガンダムSEED BATTLE DESTINY REMASTERED」レビュー:強機体ひしめくコズミック・イラをモブキャラ視点で駆け抜けるハイスピードアクションの画像

また、一周目では「SEED」と「DESTINY」双方の時代で、中盤の分岐点で選んだ所属先のルートを遊ぶことになるが、最終ミッションクリアで他のルートの第一ミッションが解禁され、二周目ではより自由に所属を行き来しながらミッションを楽しむことができる。所属先によって解禁される機体が異なるため、一周目では獲得できなかった機体を求めて別のルートを遊ぶのが二周目のモチベーションとなるだろう。

その際、パイロットの成長度合いは引き継がれる他、同じ時代間であれば所属に縛られず獲得済みの機体の中から搭乗機を選ぶことが可能となっていて、例えば一周目のザフトルートで獲得したプロヴィデンスガンダムで連合ルートを最初から遊ぶ、ということもできてしまう。すなわち、強くてニューゲーム状態で進行することが可能なのだ。

ミッションの高ランククリアが一部機体の解禁条件になっている以上、なるべくなら効率よくミッションを周回したい。そんな時、すでに獲得しチューン済みの機体であれば、たいていのミッションは楽に突破できるし、一週目とは比べ物にならないくらい快適で有利なMS戦は、まさに無双プレイ。もちろん、機体を縛ることで一週目同様の体験を別陣営で堪能できる他、ナチュラルでありながらザフトで闘い抜くという「ラウ・ル・クルーゼごっこ」も、一定の条件を満たすと解禁される。遊び方を自分で味変しながら繰り返し楽しめるゲーム「バトデス」の懐の深さは、辛く険しい一週目を乗り越えたプレイヤーへの最高のご褒美なのだ。

「機動戦士ガンダムSEED BATTLE DESTINY REMASTERED」レビュー:強機体ひしめくコズミック・イラをモブキャラ視点で駆け抜けるハイスピードアクションの画像

一粒で二度も三度もおいしい、長く遊べるガンダムゲームへ

「バトデス」の魅力を駆け足で振り返ってきた本レビューだが、その最終評価は実に難しい。一周目序盤はその苛烈な難易度に目くじらを立てていて、中盤以降は操作感の向上に万能感を得て、二周目以降はフルチューンしたお気に入りの機体を乗り回しての無双プレイの快適さに恍惚の表情を浮かべながら、今も別の機体でTP稼ぎに励んでいる。ゲームシステムが徐々に解禁されて遊び心地が変化するゲームはいくつかあるけれど、「バトデス」は遊びの実態は変わらないのに、操る機体の性能だけでプレイ感だけが様変わりし、その落差は別のロボットゲームに途中から切り替わったようですらある。

聞けば本作は、PSPタイトルとして続いていた「ガンダムバトル」シリーズの系譜にあるらしく、その最新作「バトルアライアンス」は現行機で遊べるものの、過去作がこうしてリマスター版として発売されるのは初めてだという。原作キャラではなく一般兵としてガンダム史を闘い抜く方針は一作目から、機体をチューンして原作の性能差をひっくり返す遊びも後のシリーズで開拓された要素であり、「バトデス」はその進化の先にあるゲームである、ということを、当時PSPでシリーズを遊び尽くした友人が語っていた。不便さと快適さを乗りこなすガンダムゲームは、携帯機の時代からすでに存在していたのだ。

そこに、「SEED」に限定したからこそのマニアックな参戦機体と、コーディネイターorナチュラルによる能力差の導入、フェイズシフト装甲を対戦バランス度外視で実装した大胆さが光る「バトデス」は、原作再現の方向性としてはガンダムを動かし戦場を駆け巡ることに特化していて、むしろ「みなさんSEEDのアニメは当然観ていますよね?」と言わんばかりのストーリー面の割愛具合は、一般兵として生きるロールプレイをより強調するものとなっている。その尖った魅力は、「ガンダムSEED」のゲームを網羅していないため断言はできないものの、かなり稀有で唯一無二のものになっているのでは、と思ってしまうのだ。

「機動戦士ガンダムSEED BATTLE DESTINY REMASTERED」レビュー:強機体ひしめくコズミック・イラをモブキャラ視点で駆け抜けるハイスピードアクションの画像
「機動戦士ガンダムSEED BATTLE DESTINY REMASTERED」レビュー:強機体ひしめくコズミック・イラをモブキャラ視点で駆け抜けるハイスピードアクションの画像

ガンダムのゲームといえばアーケードで稼働中の「ガンダムVS.」シリーズや、スマートフォンで最新作が展開中の「Gジェネレーション」シリーズが思い浮かぶけれども、両者とは全く異なるセールスポイントを有する「ガンダムバトル」シリーズの魅力に今作で触れてしまった以上、その復興と最新作への期待が高まってしまった。その熱を感じていただくためにも、「バトデス」は現行機で気軽に始められるタイトルとして、Gamer読者の皆様にも強くお薦めさせていただきたい。

君は、コズミック・イラで生き延びることができるか? 全てはあなたのプレイングと機体選びにかかっている。

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