さまざまな制限から生まれ、コンセプトを守り抜いてプレイヤーに届けた「都市伝説解体センター」セッションをレポート【CEDEC2025】セクションごとに“3つの掟”を順守

CEDEC2025
0コメント 近藤智

2025年7月22日~24日にわたり、パシフィコ横浜 ノースにて開催のゲーム開発者向けカンファレンス「CEDEC2025」。本稿では7月23日に実施されたセッション「制限こそが武器になる『都市伝説解体センター』の創り方」のレポートをお届けする。

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本公演には集英社ゲームズの林真理氏、墓場文庫のハフハフ・おでーん氏(グラフィック/デザイン)、MOCHIKIN氏(プログラマー)、きっきゃわー氏(シナリオ/キャラクターデザイン)、あだP氏(BGM/SE)が登壇。誰もゲーム開発会社を経験したことがないという墓場文庫の4人と、集英社ゲームズがどのように二人三脚で制作を進めていったのかについて語った。

墓場文庫ではゲーム制作にあたり、3つの“ユルい掟”を掲げていたと紹介。「制限した中で遊ぶ」というのは、ゲーム開発は基本的に何でも実現できてしまうため、アイデアが広がるとスケジュール通りにいかなくなってしまう。そのため最初に「ここまでしかやらない」と決定し、開発コストを減らしながら可能な範囲でできることを相談するというスタイルを取ったという。

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「期限順守か、捨てるか」というのは、スケジュールは飾りではなく“刃”であると説明。過去にリリースした「和階堂真の事件簿」は「3カ月で作りきる、たとえ完成していなくてもそこを含めて自分たちである」と決定し、捨てるところは捨てて期限をしっかり守るという判断基準を取り入れていた。

「とりあえず一旦まあええんちゃう進行」は、墓場文庫の中では合言葉になっているとコメント。さまざまな意見が出て決まらない場合ひとまず実装し、いければよし、ダメなら消せばいいという方向性で、一旦動かしてみるのが意外にも上手くいったと振り返る。

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では、この3つの掟が具体的に各セクションでどのように働きかけたのか。グラフィック面では「ドット絵こそ制限の権化である」とし、色数や解像度を極端に制限。これにより作業工数を圧縮しつつ、アニメーション演出やキャラクターの表情差分といった物量を増やすことができたそうだ。

期限を順守するため、ハフハフ・おでーん氏がシナリオの骨組みを作る間、きっきゃわー氏がキャラクターデザインを担当し、得意分野をスイッチして効率的に進行。インディーゲームといえばこだわりを選ぶと思われがちだが、自分のこだわりよりもチームの反応を信じ、質を捨ててでも量を選ぶほうがゲーム全体としてはプラスになると語った。

シナリオの変更などでシーンを書き換えなくてはならないケースも出てくるため“どうせ書き直すしスピリット”を宿し、メンタルの疲弊を抑制。なかでもロゴとキービジュアルは最初期のままリリースしたと明かし、こうした「とりあえず」や「一旦」がそのままフィットする場合も多いと説明した。

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シナリオ面では「読み物が苦手な人でも、最後まで読めるゲームを目指す」という基本の姿勢に沿うべく、プレイヤーの負担になりがちな設定や裏話は本筋から除外してキャラクターのセリフやポーズ、手帳などで補足。最後に極力減らしたテキストへ違和感なく納得度が高められるような隙間を見つけ、わずかに伏線を忍ばせるといった作業を繰り返したそうだ。

期限を守るためにメンバーと情報を共有し、孤軍奮闘による判断ミスを起こさないよう安全重視で進行。とくにシナリオは「本当に面白いのか?」という不安がつきまとうため完璧ではなく完成を目指し、プレイヤーが負担なく読めるよう「補足したい気持ちを抑えて、書かない勇気も必要」と振り返った。

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システム面では、Unityのアドベンチャーゲーム制作支援ツール「Adventure Creator」の範囲で可能なことをやると決定。これにより制限内でどう工夫するかをメンバー各自で試行錯誤できた一方、ユーザビリティの向上には注力したそうだ。そして、ゲーム開発に答えない。深く考えすぎたからこそ失敗してしまうケースも少なくない中“まあええんちゃう”という考えは心理的負担を軽減できた話す。

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BGM/SE面では、とくにSEのトライ&エラーにはサブスクリプションサービスが有効だったと説明。「Adventure Creator」のフル活用と、自らサウンドの実装も引き受けてプログラマーの負担を軽減した。これまで作ったことのないシンセサイザーのサウンドというリクエストにも“まあええんちゃう”の精神でチャレンジし、シナリオや演出に沿うべくメンバーの意向を最優先に進行したそうだ。Nintendo Switch実機スピーカーの考慮不足でリリース1カ月前に音源修正を行う苦労もあったが、オリジナルサウンドトラックは非常に高い評価を受けたと喜びを見せていた。

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とはいえ墓場文庫だけでは机上の空論で終わっていたかもしれず、集英社ゲームズのサポートがあってこそだとコメント。集英社ゲームズは「原石の輝きを世界へ」をミッションに掲げ、規模を問わず才能あるクリエイターたちを発掘して世界を目指すことを目的としている。また、好きなものを作りたいディベロッパーと、売れるものを作りたいパブリッシャーは対立構造になりがちだと思われているが「お客さんを一緒に制限する」ことで上手く協業できるのではと話す。

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そのために必要なのはコンセプトをはっきり決定し、守り抜くこと。「都市伝説解体センター」の場合、墓場文庫側からの「ミステリーなので最後までシナリオを読んでほしい」「ゲームクリアを体験してほしい」という要望から普段ゲームをしないプレイヤーもクリアできる設計にすると決めた。またプレイヤーには、都市伝説という題材とピクセルアートを売りにしつつ、ホラーではなくミステリーであると伝え続けることも重視。異なるチームが二人三脚で歩むためには、目標をしっかりと作ってから動くことが重要であると訴えた。

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なお、各講演は8月4日10時までタイムシフト配信での受講も可能だ。詳細は公式サイトで確認してほしい。

CEDEC2025公式サイト
https://cedec.cesa.or.jp/2025/

CEDEC2025特集

趣味のゲーム系をはじめ、IT/ビジネス系などWeb媒体を中心に活動。AAAタイトルから乙女ゲーム、インディーズまで何でも遊ぶ雑食ゲーマー。あらゆる次元のアイドルと映画も愛してます。 https://contacos.hatenadiary.jp/

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