バンダイナムコゲームスが2012年11月1日に発売したPS3用ソフト「テイルズ オブ エクシリア2」。本作のプロデューサーを務める馬場英雄氏に、開発の経緯や制作のこだわりについてインタビューを行った。
「テイルズ オブ エクシリア2」は、2011年9月8日に発売されたPS3用ソフト「テイルズ オブ エクリシア」の続編として、リーゼ・マクシアとエレンピオスがひとつとなってから約一年後の世界を描いた“選択が未来を紡ぐRPG”だ。
プレイヤーは主人公のルドガー・ウィル・クルスニクとなり、就職先への出勤初日に見知らぬ少女のエル・メル・マータを助けたことから、とある事件に巻き込まれ、多額の借金と世界の命運を背負うことになる。
発売から約1ヶ月が過ぎ、すでにプレイしている方やクリア済みの方もいると思うが、今回、本作に込められた意図や開発時のこだわりなどを、プロデューサーの馬場英雄氏に伺うことができたので、その内容をお届けする。
――発売から1カ月ほど経ちますが、今の心境をお聞かせください。
馬場氏:スタッフたちと一生懸命作ってきたタイトルですし、開発しながら多くのお客様に知っていただけるよう各地域を回りながら体験会などを実施してきましたので、無事に発売を迎えられて、まずはホッとしているというのが正直なところですね。
――「エクシリア2」の開発を決めたのはどのタイミングだったのでしょうか?
馬場氏:正式なタイミングは「エクシリア」が発売されたときでした。「エクシリア2」でもウェブアンケートを実施していますが、前作のアンケートで「続編を遊びたい」といった、ミラとジュードの次の物語に興味を持っていただけている方が多かったんです。
その中で、単純にミラとジュードの物語を作るのではなく、新しい主人公を立てて、新しい物語を作ろうと思いました。このタイミングで制作に入りましたが、「エクシリア」は15周年記念タイトルということもあり、通常よりも世界観などの設定を作りこんでいたんです。そういった設定を活用し、制作しました。
――マザーシップタイトルでは初となるパラレルワールド(本作で言う分史世界)の概念を採用していますが、そのきっかけを教えてください。
馬場氏:「エクシリア」の世界で「彼らがもしこうだったら…」というifの世界を、ユーザーの皆さんは知りたいのでは、という考えがありました。せっかく「2」という世界観が繋がっているタイトルなので、そういったifの世界を描くことで、キャラクターや物語の表現に深みを出したかったんです。
それからルドガーの骸殻という能力も、しっかり活用できるようにしなければいけませんでした。ここに紐付いてくるのが「エクシリア2」でキーとなる“選択”と、選択による“背徳感”ですね。分史世界を壊すことによって、選択することの大切さ、そして何かを選択することによって何かを失う背徳感を感じてほしかったんです。こういったいろんな要素を複合的に表現しようと思ったのが、今回の分史世界です。
――その分史世界を表現するうえで気を使ったことは何でしょうか?
馬場氏:まず第一に、キャラクターたちと世界観の整合性ですね。ifの世界ではありますが、プレイしてくださった方が「きっとこうじゃないかな?」「こういうことだったのか!」という驚きや納得がないと、いくらパラレルワールドと言っても「何のために分史世界に来ているんだろう…」となってしまいます。なのでそこに対する理由づけ、分史世界を壊さなければいけない意図というのは、非常に気を付けたところですね。
――シリーズでは久しぶりに「2」と数字の付くタイトルですが、完全オリジナルの新作と比べて気を付けたことはありますか?
馬場氏:「エクシリア2」には、15周年記念タイトルとして制作した「エクシリア」がお客様にご評価いただいたこともあり、それを違った形で早くお届けしたいという意図がありました。あとは「2」という数字が付く明確な続編というのは「テイルズ オブ デスティニー2」以来だったこともあり、これまであまりやってこなかったがゆえのチャレンジという面もありますね。
――「エクシリア」の続編ということで、リーゼ・マクシアとエレンピオスがひとつになり、それらを繋ぐ新しい街「マクスバード」が登場しました。ここに対する思い入れをお聞かせください。
馬場氏:やっぱり両方の世界を繋ぐ橋渡し的な役割がある街なので、そういった部分での思い入れはありますが、逆に記者さんで何か感じられたことはありますか?
――最初に訪れた際、ローエンが街の成り立ちをエリーゼに解説していたのが印象に残っています。プレイヤー側にとっても、勉強するような形で街の設定を知れるというのは新鮮だな、と。
馬場氏:観光地ではありませんが、確かにそういった“おじいちゃんからの説明”みたいなものをワンクッション入れることで、理解度を深めてもらいたいというのはありました。それを演出で表現するというのも、やり方のひとつとして取り入れています。
――新たに登場したディール地方に関してデザイナーにお任せしたという感じでしょうか?
馬場氏:そうですね、細かいロケーションに関してはシナリオの段階でOKを出していますし、そこからデザイナーたちがどんな雰囲気を作っていくかという考えも出してくれていましたので。
――では新しく登場したもので、馬場さんのオススメや見どころはどこでしょうか?
馬場氏:エレンピオスのトリグラフは前作でも少し登場しましたが、「エクシリア2」ではここが中心になりますし、今までシリーズではあまり表現してこなかった列車を新しく取り入れています。列車に関してはデザインが上がってきた時点で、どうするかの話し合いを重ね、最終的に今のデザインになっています。
この列車の面白いところなんですが、おそらく皆さんは電車のようなイメージで、横幅もそんなに広くないと思っているんじゃないでしょうか。ですが、イベントシーンや戦闘ができるということは、実は設定的にすごく横幅が広い列車なんです。冷静に考えると「あれ、横幅広くない?」みたいなところがあります(笑)。
――「テイルズ オブ」シリーズではタイトルによって精霊の扱い方が変わってきますが、今作では大きく扱われています。精霊に対する思い入れや意識していることはあるのでしょうか?
馬場氏:そこは「エクシリア」からの繋がりの部分ですね。「エクシリア」は15周年記念タイトルということもあり、僕の考えとして「原点回帰をしましょう」という話をしていたんです。例えば、最近のタイトルでは人間と精霊が共存しながら生活するといった世界をあまり描いていなかったので、精霊術という形で精霊との関わりや世界を表したり、それにまつわる歴史とクルスニク一族の謎など、精霊と絡めた表現をしたかったというのがあります。これらの要素を考えたのは、「テイルズ オブ ファンタジア」の原点に戻ろう、というのが出発点でした。
――確かにシリーズでは共存もひとつのテーマになっていますね。
馬場氏:ただ、同じ“共存”という言葉でも、「テイルズ オブ リバース」ではヒューマとガジュマといった種族の共存、そして「エクシリア2」では精霊と人間の共存、リーゼ・マクシアとエレンピオスの共存など、いろんな形があります。前作でも、リーゼ・マクシア内ではジュードとガイアスが、“想いは違うけど目指す方向は一緒、でもぶつからなければならない”という部分での共存を描いています。
――今作では登場する一般人の間でもリーゼ・マクシア人とエレンピオス人に溝があることが感じられますが、こういった関係を描くときにこだわったところはどこでしょうか?
馬場氏:人間の今までの歴史上もそうですが、新しいことが始まると保守的な方には抵抗感がありますよね。今までの生活で満足していたり、安心・安定があって平和な世界だったのに「なぜ新しく変えなければならないんだ」と感じる方がいっぱいいると思います。そういった人たちに「新しい世界はこうしていくんだ」と理解してもらうのは難しいと思いますし、「エクシリア」でリーゼ・マクシアとエレンピオスがひとつになりましたが、それで平和になってお終いかというと、そうではないんですよ。
2つの世界が共存することを阻止しようとする人もいますし、お互いが相手の世界に対して理解できていないと、やっぱり反発してしまいます。そういった表現を街の中にも入れていくことで、世界はひとつになっても、日常で生活している人たちにはまだまだ大変なことがあるんだなと感じてほしいですし、それを描くために私服で暗躍するガイアスを登場させてみるといったやり方も取っています。
我々のゲーム開発も同じで、シリーズが長く続くほどお客様の中で楽しかったイメージが美化されて残っていくんですよね。それはすごくありがたいことですが、毎回同じシステムでキャラクターだけが違うようなものを作っていたら、当然飽きられてしまうと思うんです。なので、シリーズの良い部分は残しつつ、そこに+αの要素を入れ、どんどん進化させていこう、「テイルズ オブ」を新しくしていこうという考えでやっています。
もちろん、プレイするまでは「なんでこんなシステムを?」と感じる方もいると思いますし、やっぱり新しいものに対する意見はさまざまだと思います。「エクシリア2」の中でも、世界がひとつになったけど、深いレベルでの理解度は実感してもらわないと分からない、そういった表現をしたかった気持ちがあります。
――新しいことと言えば、本作では選択がキーワードになっているので選択肢が多数出てきますが、選択後も当のルドガーはほとんど喋りませんよね。これにはどういった意図があるのでしょうか?
馬場氏:すでにプレイされた方はそれぞれご意見をお持ちだと思いますが、我々の意図としては、皆さんにルドガーとして選択をしてもらいながら物語を綴ってほしいという想いがあります。声は良くも悪くも、キャラクターのイメージに関わってくるじゃないですか。ボイスがあるとキャラクターに命が吹き込まれる側面を持っていますので、キャラクターが独り歩きする部分が出てきます。ですが今回は、あまりボイスを入れず、プレイヤーの皆さんがルドガー自身として物語を進めてもらえるようにしたかったんです。
とはいえ、今までのシリーズは主人公にボイスが入っていたので、そこに対する不自然さや、遊んでいて物足りないなと感じる方もいると思います。そういった部分も理解したうえでやっていますので、お時間があって2週目をプレイしていただける際には、ボイスが入った状態でプレイできるようにしています。
――ほかにゲーム部分でユーザーから寄せられている意見にはどういったものがありましたか?
馬場氏:「ゲームで久しぶりに泣いた」「久しぶりに『テイルズ オブ』で泣いた」といったように、ストーリーが非常に泣けたという意見をたくさんいただいています。実は今まで秘密にしていたのですが、選択した内容によってエンディングの見え方が変わってくるんですよ。そのエンディングによって、この物語におけるルドガーの想いや、エルの存在などを考え、泣けたという意見をいただいています。後は戦闘システムが安定して面白いという意見も多くいただいていますね。
――戦闘システムではルドガーのウェポンシフトが導入されましたが、馬場さんが一番好きな武器の種類はどれでしょうか?
馬場氏:やっぱり一番は双剣ですね。相手の懐に入って攻撃するという爽快感と気持ちよさ、それからスピード感がありますし、王道RPGでは主人公=剣士という印象もありますので、そういう意味でも双剣です。でもハンマーは攻撃範囲が広くて一発が重いですし、双銃も遠距離から攻撃ができたりと、それぞれ違う面白さがあると思っています。
開発の際、スタッフには「『テイルズ オブ グレイセス』で評価が高かったスタイルシフトをうまく入れたい」という話をしたんです。ですがスタイルシフトと全く同じでは面白くないと考え、3つの武器を持ち替える「ウェポンシフト」という形式になりました。プレイヤーの方にとっては武器が3つになって楽しんでいただけると思っていますが、武器が3つになるというのは、実は労力が3キャラクター作るのと同じくらいなんですよ(笑)。武器が違えばスキルも新しく作らなければいけませんから。
――モーションなどもそうですよね。
馬場氏:そういったものも全部やらなければいけないんですが、それでも3つの武器を持ち替えられるようにすることで、戦う爽快感をお届けしたいという想いがありました。
――「テイルズ イノセンスR」のような、キャラクターとの親密度が目に見える形になりましたが、このシステムを導入した理由は何かあるのでしょうか?
馬場氏:「エクシリア2」で親密度を導入するにあたって、僕個人としては「イノセンスR」を全く意識していなかったですね。あくまでも、共鳴(リンク)という繋がりに対して何かができたらいいよね、という考えで採用しました。あとは選択によっても展開が変わりますので、その選択によって親密度が上がっていく表現を入れたかったので、歴代のタイトルが…という意識などはありませんでした。
――普段からプロデューサー間でゲームに関する相談などはあるのでしょうか?
馬場氏:話はしていますが、プロデューサーもたくさんいるわけではなく、スタッフは私のチームの内にいますので、基本的にはマザーシップタイトルが作るものをオールスタータイトルがうまくカスタマイズしていくという流れになっています。「イノセンス」は私も関わっていましたが、だから「イノセンス」の要素を…ということはないですね。「テイルズ オブ ハーツR」に関しても、発表したのでようやく言えますが、以前からディレクターに「オリジナル版を作っていた時はどんな思いで作っていたのか」「この仕様はどうなっているのか」といった相談を受けていました。
――「ハーツ」もオリジナル版ではアニメ版とCG版の同時発売といった新しいことにチャレンジしていましたよね。
馬場氏:そうですね。あのときは「どこにも負けない最大容量のDSにおけるRPGを作ろう」と言って、とにかくいろんな要素を詰め込んだんですよ。ボリュームもすごいことになりましたね。
――ゲーム開発は毎回苦労の連続だと思いますが、今回の開発で一番苦労したこと、それから嬉しかったことはなんでしょうか?
馬場氏:ゲーム開発に限らず、日々問題ばかりが上がってくるので、それを解決して進んでいく形なんですよね。なので発売日を迎えるまでが一番苦労したというか…でもウェポンシフトでは、各武器のバランスを取っていないと「これだけ使えばいいじゃん」という正攻法が見えてしまうので、3つの武器のバランス調整は大変でした。キャラクターの想定レベルと、それに対するモンスターの強さといった問題もありますし。
――確かにメインストーリーだけをプレイすることも、寄り道をすることもできるので、ストーリー進行と難易度を合わせるのは大変だったように思います。
馬場氏:そこもありますね。物語はチャプター形式にしていて、チャプターの合間は自由に行動できますので、全体のバランスをキープするのは非常に難しかったです。僕らはお客様がプレイする方法を想定し、想定したことすべてを踏まえて作っていくのですが、やっぱり想定をはるかに超えたプレイをする方もいらっしゃるんですよね。それも踏まえてトータルとしてバランスよく作る必要がありますので、調整期間とデバッグ期間はものすごく時間を取りました。
開発が終わってマスターアップしたときは嬉しかったですね(笑)。それまでが本当に大変でしたので、マスターアップして本当に良かったなって思います。
――今お話に出ました、チャプター形式を採用した理由は何でしょうか?
馬場氏:今までの「テイルズ オブ」であまりやってこなかったというのがひとつです。それから自由度を持たせることで、チャプターの合間にキャラクターエピソードで前作の掘り下げをしていきたいという想いがあったので、分かりやすいチャプター形式にしました。これまではイベントなどのフラグに気付かず、先に進めるともう発生しなくなるといった事態もあったので、今作では自由で分かりやすい形にしました。物語的にも、チャプター形式にすることで、章仕立ての本を読んでいるような雰囲気を感じてもらえるかなというのもありました。
――今作ではクエストも搭載されていますが、自由度の後押しのようなイメージでしょうか。
馬場氏:そうですね。借金システムがあり、物語だけ進めていくとなかなか借金を返せないので、借金の返し方もクエストやミニゲーム、それから猫を探したり(笑)、いろんなやり方でお金を稼げるようにしました。システマチックに返済していっても面白くありませんので、楽しみながらお金を貯めてもらうという意図があります。
――借金システムはそれだけを見るとシビアな要素ですが、採用時にためらいなどあったのでしょうか?
馬場氏:一番最初にスタッフから「借金を背負わせたいんです」と聞いたときは「おおっ…」と思いました。ですが、それにはちゃんとした理由があったんですね。なので今回、ルドガーの年齢を上げ、大人になりかけている男性と言いますか、青年のようなイメージで、責任を背負える存在で考えています。これまでのシリーズでもいろんな形で責任を表現していますが、「一番わかりやすい責任は?」と考えたとき、お金を背負う重みが出てきたんです。
――借金システムが入ったので、武器を購入するのと借金返済で使うお金のバランス調整も大変だったように思います。
馬場氏:移動できる制限において返さなければいけないお金のバランスと、アイテムや装備を買うためのお金のバランスは、イコールではないと思うんですよ。移動範囲は物語の進行と合わせて広がっていくので、借金返済で支払うお金のハードルを高くするとストレスになってしまいます。なので程よく返せる金額設定で、なおかつ催促の時のやり取りをユニークにすることで、借金を返さなければいけないシステマチックな面を中和させる役割を持たせています。
――単に催促が来るだけだと「またか」と思ってしまいますが、ノヴァとのやり取りはニヤッとできますね。
馬場氏:「次に何を言うんだろう」とか「どんな態度で来るんだろう」といったことを楽しんでもらい、システムに自然に馴染んでもらえるよう、あえてそういった作り方をしています。でなければ、ゲームという遊びでありながらもシステマチックになってしまうので、借金という難しいシステムではありますが、それを中和するための表現を取り入れています。
――先ほどのお話にもありましたが、猫を100匹探しますよね。この猫には歴代シリーズのキャラクター名が入っていたりしますが、名前付けや開発の手間というのはどうだったのでしょうか?
馬場氏:やっぱり大変でしたよ(笑)。大変でしたが、こういった要素はスタッフたちが面白さを見出して作っていたりするんです。なので歴代キャラクターの名前を入れたり、パッケージのジャケットも実はリバーシブルで、裏には猫を描いたりといったことをやっています。
――猫の名前を付ける際、馬場さんがこのキャラクターを入れたいみたいなことはありましたか?
馬場氏:これまでのシリーズタイトルから偏りが出ないように名前を付けるようには気をつけました。遊び要素でシリーズを知っている方が分かる内容を入れるのと入れないのでは全然違いますし、そういったところが「テイルズ オブ」の良さでもあると思います。
――今作の開発で次回作に活かしたい要素などはありましたか?
馬場氏:スケジュールの関係で「今回はこっちを優先しよう」といったことは発生しますが、毎回やりきっていますので「これができなかった」というのはないですね。ただ、毎回「前作を超えるものを作らなければいけない」というハードルを自分たちで設定していますので、戦闘システムなどもどんどん新しくしています。
「テイルズ オブ デスティニー」のリメイク時には「『テイルズ オブ』の戦闘システムはもっと楽しくなるはずだ!」と突き詰めて、2D戦闘ながら縦軸、空中での戦闘も楽しめる「AR-LMBS(エアーリアル リニアモーションバトルシステム)」を生み出しました。そこからずっと、「ハーツ」や「グレイセス」、そして「エクシリア」でも、常に「前作も良かったけど今回もいいよね」と思ってもらえるような戦闘を目指しています。もちろん物語も同じように思っています。
――ユーザーと直に接するためにプロモーションでは自ら体験会に出演されていますが、自ら出ようと思ったきっかけはあるのでしょうか?
馬場氏:東京ゲームショウという大きなイベントはありますが、参加できない方はたくさんいらっしゃると思うんです。体験版の配信についても予定していなかったところがあるので、自らいろんな地域に行ってみて、皆さんに体験してもらいたいという意図がひとつです。
もうひとつは、イベントなどでユーザーさんと直接お話しさせていただくことで「全国にはこんなにもたくさんのお客様がいるんだ!」ということを実感できる、意識できる、非常に意味のあるイベントだと考えています。
また、皆さんにはゲームが発売する前と発売した後、それからゲーム以外にも「テイルズ オブ」というタイトルを楽しんでもらえる場所を提供したいという想いがあります。実はそれで生まれたのが「テイルズ オブ フェスティバル」なんですよ。ゲームが発売されていないときでも、フェスティバルを開催することで「テイルズ オブ」を楽しんでもらえるように。
そのひとつとして体験会も実施していますが、お客様と触れ合って直にお話しできるのは、僕たちが一番大事にしなければいけないことだと思っています。正直なところ、イベントをするための時間を作るのはすごく大変ですが、それでもやる意味があると思っているので、今回も強行スケジュールでしたが各地域に行かせていただきました。
――今回全国を巡った中で、一番印象に残った出来事はありますか?
馬場氏:どこの体験会も面白くて全部印象に残っていますが、体験会のほかにもパルコさんとのコラボでサイン会をさせていただきました。名古屋会場では台風が来ていたので、お越しいただいた方と「台風が来ているのにありがとうございます。気を付けて帰ってくださいね」とお話ししていたんですが、そんなことを言っていた自分が、名古屋駅で新幹線が止まったので帰れなかったことがあります(笑)。
あとはキャラクターの絵を描いてきてくれたり、会場でお話していると、こういった理由で「テイルズ オブ」が好きなんですといったように、いろんな形で「テイルズ オブ」を大切にしていることを伝えてくれるんですよ。ただ、今でも申し訳ないと思っているのが、今年はどうしてもスケジュールが合わず、北海道地域に行けなかったことです。
それでも体験会でいろんな情報や映像を公開すると、それを見てくださっているお客様が本当に嬉しそうな顔をしているので、それを見ると嬉しくなりますね。
――海外でも多くのユーザーと触れ合ってきたと思いますが、日本人ユーザーとの違いを感じる部分はありましたか?
馬場氏:基本的には日本と海外、どちらのユーザーさんも似ていますが、ひとつ違うのは、やっぱり日本のユーザーさんは大人しいんですよね。海外でもシャイな方はいらっしゃいますが、嬉しいときは体全体を使って喜びを表現するんですよ。
日本の場合だと、例えば新作を発表したときなどは「ワーッ!」「キャーッ!」という感じで声を上げて喜んでいただけるんですが、海外の場合はそれと同時に、座っていたところからいきなりジャンプして「オーッ!」といった感じで嬉しさを表現するので、その辺りは違うなと感じます。
それ以外の部分では、むしろ「テイルズ オブ」を好きになってくれている方というのは、むしろ似ているなと感じますね。まず、すごく礼儀正しいんですよ。
――確かに日本だとイベント会場などでの整列に協力的な印象があります。
馬場氏:海外だと、サイン会をしているとワラワラと皆さんが集まって来て、サインしているポスターを持っていこうとすることがあるんですが、スタッフが「これはサイン会で、あちらに列があるので並んでください」と説明すると「OK!」という感じで並んでいただけて、すごく協力的です。そういったところが、日本とも似ているユーザーさんの特徴かなと感じています。
あとは、日本と海外、どちらのユーザーさんも一タイトルに対する思い入れがすごく強いですね。まんべんなく「テイルズ オブ」シリーズが好きだと思うんですが、その中でも「僕はここで感動した!」「このキャラのここが好きで、何周もプレイしています」といったように、自分が好きなタイトルを詳しくお話ししてくれるので、好きになったタイトルを長い間好きになっていただけているという印象です。
――ストーリーが好き、戦闘が好きといったゲームに対する評価の面での違いはいかがでしょうか?
馬場氏:海外ユーザーさんでも、やはりRPGは物語が半分、戦闘などゲームとしての遊びが半分というイメージを持っていると思います。なので、物語の良し悪しは非常に大事にされていますね。戦闘システムでも、アクション性が高いゲームシステムなので、オープンワールドのゲームとは違いますが、任意でキャラクターを操作して遊べるところを評価していただけています。
どのシステムが良い悪いという訳ではありませんが、「テイルズ オブ」シリーズではアクション性の高い戦闘が魅力のひとつなので、お客様にもそれを意識していただけているのかな、と感じるところがありますね。
――「エクシリア2」は、開発をはじめ、コラボを含めたプロモーションもかなり短期間に内容を詰め込んでる印象ですが、そうしようと思った理由にはどんなものがあるのでしょうか?
馬場氏:僕らとしては、一生懸命作ったタイトルを少しでも多くの方に知ってもらい、遊んでもらいたいという気持ちがあります。仮に「ゲームを作ったので後は営業部で頑張って」なんて言ったら、何の一体感もないじゃないですか。なので、いろんな部署が一緒になって、やれることをやってから結果を待とうよ、というのが私の基本的なスタンスなんです。
弊社にはライツ事業部という、商品のライセンスに関する部署があるんですが、そこと話をしてナムコ・ナンジャタウンさんとのコラボイベントを行ったり、プロモーション部と組んでアムラックスさんとコラボさせていただきました。ほかにもユーフォーテーブルさんやパルコさん、新宿マルイワンさんともコラボをさせていただきました。
先ほどお話ししたように、ゲーム以外でも遊べる場所を提供したいという想いもありますし、ゲームを発売するにあたって多くの人に興味を持っていただきたいというのもあります。そのための取り組みが、形として表れてくれたのかなと思っています。
ナンジャタウンで提供されていたオリジナルフード「クリームルルケーキ」は、ユーザー作品から採用されたメニュー(左)。
アムラックスとのコラボでは、シリーズ初の試みとしてデコレーションカーが制作された(右)。ユーフォーテーブルとのコラボでは、「ufotable cafe」と「ufotable DINING」が期間限定でオープンした。
カフェではシリーズでお馴染み「マーボーカレー」(左)などが、雰囲気の違うダイニング(右)ではコース料理が楽しめた。――コラボ関連の取材でお伺いしたときなど、お店の予約がいっぱいだというお話を聞いたりと、ひとつひとつのことがしっかり実行されているんだなと感じました。
馬場氏:例えば中途半端にイベントを実施して、お客様が「つまらなかったね。もう行くのやめよう」なんて思ってしまうような内容にしたら、ゲームの「テイルズ オブ」に対しても「あんなイベントやるゲームだから…」となってしまいます。やるからには責任を持って実行しないと、お客様に笑顔になってもらえないですし、こちらの想いや意図も伝わらないんです。
ナンジャタウンさんとのコラボでは、ユーザーさんからデザートのアイデア募集をさせていただきましたが、自分が関わったものが商品になるのって面白いじゃないですか。商品になることも嬉しいと思いますが、そういう企画があった時、「これが商品になったらいいな」とアイデアを考えている時がすごく楽しいと思うんですよ。しかもその時間というのは「テイルズ オブ」のことを考えてくれている時間ですよね。それは僕らとしても嬉しいですし、皆さんにも楽しんでもらえることだと思いますので、いろんな形で提供していきたいと考えています。
――それでは最後にユーザーの方へメッセージをお願いします。
馬場氏:発売から時間が経ちますが、遊んでいただいた方はいろんな感想をお持ちだと思います。僕たちは「エクシリア2」で、選択することの意味と、それに対する責任をメッセージとして込めました。選択するということは可能性であり、可能性は無限にあります。その可能性の中のひとつを選択したものに対する自分なりの意味や、選択しなかったものにはどういう想いがあるのか、そういったことを考えて遊んでいただければいいなと思っています。それを踏まえて次の「テイルズ オブ」を皆さんにお届けできればと思っていますので、楽しみにお待ちいただき、温かく応援していただければと思いますので、今後ともよろしくお願いいたします。
――ありがとうございました。