バンダイナムコゲームスより2013年2月28日に発売されたPS3用ソフト「マクロス30~銀河を繋ぐ歌声~」は、「マクロス」シリーズ30周年を記念し、数々のオリジナル要素を取り入れて制作された意欲作だ。今回、本作のプロデューサーを務める小美野日出文氏にお話を伺った。

「マクロス30~銀河を繋ぐ歌声~(以下、マクロス30)」は、マクロスシリーズ総監督・河森正治氏完全監修のもと、シリーズの小説を手掛ける小太刀右京氏によるオリジナルストーリーが展開するフライトアクションRPG。

本作では、敵との戦闘や、フィールド内の探索などを行い、指定されたクエストをクリアすることでストーリーが進む、従来の「マクロス」ゲームにはない進行となっている。

また、2008年に放映されたアニメ「マクロスF」から一年後の西暦2060年の世界を、オリジナルキャラクターを中心としたオリジナルストーリーとして描いており、時空を超えたシリーズ歴代のキャラクターたちが集結する、まさに30周年にふさわしい作品となっている。

加えて、本作は「劇場版マクロスF ~イツワリノウタヒメ~ Hybrid Pack」に収録された「マクロストライアルフロンティア」、「劇場版マクロスF~サヨナラノツバサ~ Hybrid Pack」に収録された「マクロスラストフロンティア」を経て、「マクロス」ゲーム初となるPS3用タイトルとしてもファンの注目を集めた。

発売からおよそ1ヶ月が経過した3月下旬のタイミングで、本作のプロデューサーを務めたバンダイナムコゲームス 小美野日出文氏に、本作の開発の経緯や今だから話せる裏話などをたっぷりと語っていただいた。

“フライトアクションRPG”誕生は小美野氏の舵切りがきっかけに

――「マクロス30」を開発するに至った経緯をお聞かせください。

小美野日出文氏
小美野日出文氏

小美野氏:「マクロス」のゲームというと、もともとPSPで「マクロス~フロンティア(以下、フロンティア)」シリーズを広野(過去の「フロンティア」シリーズでプロデューサーを務めた広野啓氏)を中心に作っていました。その後、「劇場版マクロスF」がパッケージで発売されるタイミングで、Hybrid Pack(映像作品とゲームを1枚のBlu-ray Discに収録したもの)という、完全なゲームの形ではないものの、手軽に遊べるものとしてPS3用のゲームを作ったというのが出発点としてあります。

その段階で「PS3で『マクロス』を作りたい」という話はあったので、まずはHybrid Packというかたちでやってみて、PS3と「マクロス」の相性を含めてトライアルしたい、ということで「マクロストライアルフロンティア」というタイトルになりました。

弊社のタイトルでは、必ず発売後に製品アンケートをとるのですが、その中に「PS3で完全なかたちのゲームがほしい」という意見をHybrid Pack2本を通してたくさんいただいていたので、「じゃあ1本作ろう」ということで、会社としても動き出しました。

――今作では、フライトアクションRPGという、フライトアクションにRPG要素を融合したようなゲームになっていますが、RPG要素を加えるという発想はどこから生まれたのでしょうか?

小美野氏:今作の発売が「マクロス」の30周年記念のタイミングだったことや、PS3での発売ということもあって、「フロンティア」シリーズとは違ったことをやりたいというのが当初からありました。その頃からRPGとしてやりたいということだったわけではなく、どちらかというとオリジナルの話でオリジナルのキャラクターが登場するオフィシャルな感じを出しつつも、ゲームとして成立するものを作ろうというのが最初に決まりました。

主人公の視点として話を追体験していくのであれば、今までのクエスト受注型にするよりはRPGのようなかたちにしたほうが、ユーザーさんとしても物語に没頭しやすいんじゃないかということで、RPGのようなかたちになっていきました。

ただ、当初からRPGだったというわけではなく、最初はRPG風のフライトアクションゲームとして開発を進めていたのですが、僕が開発の進捗を見ている中で「これ、RPGでよくない?」というタイミングがありました。開発側としてはRPGと言っていいのか悩んだところもあったそうなんですが、新しいこともやるのであればそのぐらい思いきって舵を切ったほうがいいということでRPGに寄せて、最終的にフライトアクションRPGというかたちにシフトしていきました。

――当初はどの要素がRPG風なものだったのでしょうか?

小美野氏:オープンフィールドのような大きな空間を飛び回ってお話を進めていくという流れは考えていましたが、例えばフィールド上でエンカウントする敵を倒して経験値を獲得したり、アイテムを拾ったりといった要素は、よりRPGらしさを出していくために取り入れたものです。

そもそもRPGというジャンルの定義も難しいところではあるのですが、もうこれはRPGといっても遜色ないだろうというところまで突き詰めていくことを意識しました。

オリジナルでも“オフィシャル”な作品を意識

――従来の操作方法のほかに、カメラエイムを使ったもの、イージーのみ使用可能なオートモードなど操作のバリエーションが増していますが、それぞれの操作方法を採用した理由をお聞かせください。

小美野氏:実はもともと開発側が作ってきたものには、カメラエイムとイージーのオートモードしか用意されていませんでした。

今回はオリジナルのシナリオでオフィシャルな感じを出して、原作アニメのファンの人にも楽しんでもらいたいというところが命題としてありました。原作のファンの方はやはりアニメを観たいので、よりアニメやストーリーに没頭してもらおうというところで、オートモードを入れようという話が出ました。

カメラエイムなどのコア向けのものは、やるのであれば両極端にしたほうがいいということですごく複雑な操作にして、完全に自動で動くものと二極化して作ったものが開発側から上がってきました。

僕個人としては、オートにはしたくないけれど操作はしたい、でもカメラエイムのモードは難しすぎてできないという立場だったので、「今までの『フロンティア』シリーズの操作も、2つの中間として入れたほうがいいんじゃないの?」ということで、結果的にバリエーションが3つになりました。

カメラエイム オートモード

――私も「フロンティア」シリーズを遊び続けていたので、その操作方法が入っていたのは正直助かりました(笑)。

小美野氏:最初に上がってきた操作方法は最近のFPSみたいにかなり複雑で、慣れている人はそちらのほうがやりやすいとは思うのですが、いきなりやったら少し厳しいものでした。なので、できれば割と操作しやすいものも中間として入れておくとこれまでのユーザーも遊べますし、より高みを目指したい人は難しい操作、原作ファンの方はオートで楽しめるという三軸で作っていこうと考えていました。

一方で、今遊んでいるお客さんからキーコンフィグで操作を自由にいじれたらいいという意見があったので、そこは課題だと思っています。

――本作では、全てゲームオリジナルのストーリーが展開されますが、歴代の「マクロス」シリーズとの整合性をとる上での苦労や、逆にオリジナルだからこそできたものがあればお聞かせください。

小美野氏:最初に「オリジナルでいこう」という話になったのですが、とはいえオリジナルキャラだけでやると、原作ファンの方や今までゲームを遊んでくださった方に対して、ゲームだけの作品というイメージが強く出てしまうと思っていました。やはり30周年と言っている以上、今までの歴代キャラクターのオールスター作品というお祭り的な要素は入れるべきだということは当初から話していました。

シナリオは「マクロス」シリーズの小説を書いている小太刀さんにお願いさせていただいたのですが、整合性については完全に小太刀さんが苦労された部分かなと思います。

僕らからしたら「お祭りものだからいいじゃん」というスタンスで、オリジナルストーリーで歴代キャラが登場して物語が展開するという流れを考えていました。なので、あくまでお祭りものとしてこういうのもありと思えるものを提供できればいいと思っていたのですが、小太刀さんがすごく上手く料理してくれて、本当に脱帽でした。

あと開発のアートディンクも参加してのシナリオ打ち合わせを3、4ヶ月ぐらい毎週やり続けて、小太刀さんのシナリオが更新されていく度に、ゲーム的に破綻しないか、こうすればもっとファンが喜んでくれるのではないか、といった話をしていたので、僕らと言うよりは開発のスタッフと小太刀さんが、お祭りものでありながらもマクロスの世界観に整合する、いいとこ取りを目指して作っていったという感じです。

オリジナルだからできたところというと、歴代のキャラクター同士の掛け合いだと思います。「超時空要塞マクロス」のキャラクターと「マクロス7」のキャラクターが絡んだりといったことは、僕らが作ってきたゲームの中でもなかなかできなかったことで、やったとしても亜流感が出てしまうというところでした。

そこを「マクロス」の世界で登場する“フォールド”などを設定に組み込むことで、夢の競演みたいなところを再現できたのはすごくいいことだったと思います。

――シリーズをまたいでいても、実は関係のあるキャラクターがたくさんいるので、そういったキャラクター同士の掛け合いを見るのはファンとしても嬉しいと思います。

小美野氏:ファンの方が見てみたいと思うところって結構あると思います。例えば、今回だとバサラとシャロンが戦っていたり、サラとシェリルが絡んだりといった、ファンが頭のなかで想像していた部分があったかと思いますので、それを実現できたらいいと思っていました。

特に「マクロス」って未知の技術みたいなものが多くあるので、今作ではそれを上手く使ってシナリオの中にも無理なく組み込めて、しかも夢の競演ができるという点は非常によかったかなと思います。

キャラクターデザインの苦労やミーナ役・千菅春香さんの収録エピソードも

――オリジナルストーリーということでオリジナルキャラクターが数名登場しますが、「マクロス」と言えば三角関係ということで、主人公のリオン、ヒロインのアイシャ、ミーナの3人のキャラクター誕生話をお聞かせください。

小美野氏:最初にオリジナルのシナリオを作って、オリジナルのキャラクターが中心になっていくというところはある程度決まっていたので、「マクロス」30周年を記念したオリジナルの設定である以上、最低3人は登場させて、かつ男が1人で女が2人の三角関係というのは、初代から最新の「マクロスF」まで続くシリーズのいいところなので、そこは踏襲していこうと考えました。

そして、3人の立ち位置として、2人の女の子のうち歌姫がひとりいて、もうひとりは女の子だけれどパイロットで、整備的なこともやったりする子で、主人公は完全にパイロットで飛行機バカという設定は、話の中である程度出てきていました。

そこからそのキャラクターをどう広げるか、という部分は小太刀さんがお話を作る上で広げていただいた部分だとは思うのですが、逆に僕らが苦労したのはキャラクターデザインで、スタッフも含め相当に悩みながらやっていました。

アニメの作品に寄せていきたいという考えはあったのですが、やはりゲーム作品ということで、主人公のリオンはプレイヤーの写身になるキャラクターでしたし、RPGにするというのはその段階である程度決まっていたところもあったので、あまり個性を持たせすぎてしまうと自分の意思を投影しにくくなると考えていました。

よくRPGであるような、没個性もアリではないかと思っていましたが、あまり没個性にし過ぎるとかえって個性の強い歴代主人公たちの中で埋もれていくのではないかと考え、キャラクターの顔の作りや、髪型・髪の色などを決めるのに一番苦労しましたし、一番ブレたキャラクターかなと(笑)。ただ、この方向性で行こうと決めてからは、キャラクターデザインの丸藤広貴さんに描いていただいて、これで行こうというのがすぐに決まりました。

ヒロインの2人に関しては、髪の色が赤と青でかなり個性的なのですが、これも歴代キャラクターたちに埋もれたくないという理由がありました。もともとデザインが立ち上がる前から2人が乗る機体はできていて、その機体の色がピンクと青だったので、それをイメージカラーにして、その系統の色でキャラクターデザインを組んでもらいました。

アイシャはすごく元気な女の子、ミーナはどちらかと言うとおとなしめの歌姫というところでデザインを発注したのですが、上がってくるとなかなか上手くいかず、シェリル、ランカみたいな歴代のキャラクターがいる中で、「これで果たしていいのか?」という話はしていました。キャラクターの特徴はフラッシュアイデアとしてあったのですが、それが固まっていくまでが苦労しました。

アクセサリーひとつをとってもそうですが、アイシャのメガネも腰につけるほうがいいか、メガネよりもゴーグルのほうがいいかとか、ミーナですと頭の勾玉みたいなものはつけるかどうか、また、プロトカルチャーの遺跡に眠っていたという設定なので、もう少しミステリアスな雰囲気を出したほうがいいんじゃないか、などいろいろなアイデアを全員で出してモメました(笑)。

アイシャ・ブランシェット ミーナ・フォルテ

――それでは、先行してシナリオがあって、それを基にキャラクターデザインも決めていったという感じでしょうか?

小美野氏:シナリオに容姿の情報があるわけではなく、性格と喋り口調しか決まっていないので、そこからキャラクターの絵を想像していくという流れでした。「元気な子だし、身長はもう少し高いよね」とか、「片方が大きいから、もう片方は小さいほうがいいんじゃないの?」といったフラッシュアイデアをみんなで言い合っていく中でそれが形になり、丸藤さんにキャラのイラストの上にトレスシートで描きこんでいただいて、すごく細かく最後まで調整し続けました。

キャラの立っているキャラクターが多い上、最初に仲間になるのがシナリオ上、シェリルとアルトに決まっていたので、そこに負けたらダメだろうというところで、アクの強いキャラクターになるように意識しましたね。

――本作では「ミス・マクロス30コンテスト」のシンガー部門でグランプリを受賞した千菅春香さんがOP&EDテーマとミーナの声優を担当していますが、そちらはどのような経緯で決まっていったのでしょうか。

OP&EDテーマを収録した両A面シングル<br />「プラネット・クレイドル/ワンダーリング」は現在発売中
OP&EDテーマを収録した両A面シングル
「プラネット・クレイドル/ワンダーリング」は現在発売中

小美野氏:ゲームの主題歌に「ミス・マクロス30コンテスト」のグランプリの方が起用されることは決まっていましたが、ミーナの声までやっていただくというのは、全然決まっていませんでした。

今回はRPGベースのお話ということで、メインの3キャラクターは特にしゃべる量が多くて、しかもゲームの収録は、ひとりで台本上にあるセリフをひたすらに読んでいくスタイルなので、経験がない方だと難しいのではないかと思い、最後の最後までプロの方にやっていただいたほうがいいんじゃないかという話はありました。

でもやはり30周年のコンテストで優勝した子ですし、上がってきたオープニング曲を聴いたところ、すごく上手に歌われていたので、「一回やってみてもらおうよ!」というところでお願いさせていただきました。

――歌を聴いてもすごく力強く歌われているなというイメージはありましたね。

小美野氏:正直なところを言うと、今回のゲームって歴代の歌姫の曲も当然入っていますし、歌によって遺跡が解放されていくという話だったので、そこと張り合えるかどうかというのはいろいろと心配ではありました。ですが、聴いた瞬間にその不安も全部吹き飛んで「ああ、これは素晴らしいな。これだけいい曲作ってもらったら僕らも頑張るしかないな」と思えるぐらい、第一印象から素晴らしいなと思いました。

またすごいのが、千菅さんは声優としてもすごく上手なんですよ。先ほど言ったように今回は収録も長くて、結局3日間くらい来てもらって録ったのですが、すごい物量の台本を読んでいるのに最初と最後のトーンも変わらないし、感情の入れ方も含めて、僕らが聴いていても本当に上手で「お願いしたことに全く後悔はないな」というのは、改めてそこで感じられた部分ではありました。

――声優の経験がない方にお願いするのは難しかったと思いますが、結果的によかったということですね。

小美野氏:逆にご迷惑になってしまうのではないかなと思う部分もありましたし、「ミス・マクロス30コンテスト」で優勝した方なので、僕らとしてもお願いする以上はきっちりと完成させたいと思い、最後の最後まで悩んだ部分ではありました。ですが、結果としては素晴らしかったと思います。

実は収録当時、ミーナのキャラクターデザインはまだ上がっていなかったのですが、その時に僕らが持っていたミーナの印象と、千菅さんの声のトーンがすごくマッチしていて、これはお願いしてよかったなと。その声を丸藤さんに聴いてもらって、微調整をする上でさらにその印象に寄せていくというかたちでミーナのデザインを仕上げました。

――やはり声があると、キャラクター自体のイメージも湧きやすいということですね。

小美野氏:そこは本当に大きいですね。僕自身、基本的にはゲーム屋さんなので、オリジナルのキャラクターを作ったり、お話を作ったりというのが本当に初めてで、設定の段階で文章読んでいるだけだと、「これで本当にお客さんは納得するのかな?」という考えは常に頭の中にありました。

実際に収録して、音声が入った状態でゲームをプレイした時に初めて「おお~、すごいな。全然印象変わるな」と感じました。千菅さんもそうですし、井上さん(アイシャ役の井上麻里奈さん)もそうですし、オリジナルキャラクターに息が吹き込まれる瞬間に立ち会えたのは、開発者冥利につきますね。

「マクロス」だからこその変形しながら飛行を楽しめる空間

――本作ではメインとなるストーリーだけではなく、合間で楽しめるサブクエストが用意されていますが、この要素もキャラクターや機体を成長させるというRPGの要素として用意したのでしょうか?

小美野氏:開発スタッフ側には最後まで「RPGと言っていいのか?」というのはずっと言われていて、僕が「これはRPGとしていくんだ」と言ったことで覚悟が決まったのか、僕も正直気づかないうちにサブクエストがすごく増えてました。

2週間に1回ぐらい定期的に行って開発の進捗を確認するのですが、ROMを見た時に「なんかめっちゃ増えてる!」と思って(笑)。なんでこんなに増やしたのかを聞いたら、ゲームである以上、飽きさせたくないというところが開発スタッフの思いとしてあったようです。

話を追いかけていくゲームの合間に休める部分があると、疲れてしまうということもなく、途中で止めてしまうということもなくなるので、上手く組みこめたらいいのではないかと思い、サブクエストの充実については僕もOKを出しました。

――事後な感じだったのですね(笑)。

小美野氏:最初は僕も「半分ぐらいでいいんじゃないの?」と言ったのですが、やりこみ要素は大事ということもありますし、今回はRPGのように経験値を獲得して、自分のステータスが上がっていくというシステムも入ってましたし、機体の強化についてもよりRPGのような仕組みにしていたので、育てた機体がシナリオ上のボスだけだと満足いかないこともあるかと思い、そういうのがあってもいいのではないかと思いました。

ただ、舞台となる「ウロボロス」って、特殊なフォールド波に覆われているため、流通があまり良くなく、治安がよくないという設定の星でして。そこにバンデットと呼ばれる存在がたむろしているんですが、そいつらが最新鋭機に乗って出てくるんですよ(笑)。「それってどうなの?」というお客さんの意見もあったのですが、そこはプレイヤーが上げたレベルに合わせて楽しめるようにしています。

――オープンフィールドに近いかたちだったので、いろんな場所に行けるという点とマッチした要素だと思います。

小美野氏:もともとメインの仕組み自体は、アクションゲームとしてある程度完成されていたものだったので、そこからどう幅を広げていくかというところで、オープンフィールドとまではいかないですが、変形しながらの戦闘をバカでかい空間でできるようにしたのは、「マクロス」との相性もいいですし、開発が一番頑張った部分だと思います。

高さが足りないと言われることもあるのですが、これ以上に高さを作ってしまうと処理が大変になってしまって重くなるので、そこはいろいろと悔やみながらも作っていた感じですね。

今回、多分一番変わったのは、RPGという要素というよりも、オープンフィールドで戦える点だと思うので、そこはチャレンジした部分でしたし、結果的に受け入れていただいたので、ありがたい限りです。

――近年のマクロスゲームタイトルと同様、今回もアートディンクが開発を担当していますが、今までとは作品のテイストが異なる本作を一緒に作り上げる上で、意識した点はありましたか?

小美野氏:あまり僕らが口を出し過ぎないというところは結構意識しましたね。あまり言いすぎてしまうと開発のやりたいことができないので、僕らがやってほしい部分との折り合いをつけることを大事にしていました。

僕自身も弊社としてもアートディンクとの付き合いは長いので、ある程度僕らも信頼している部分もあります。先ほどのサブクエストみたいな話もありますし、あまり何でもかんでも決めつけるのではなく、アートディンクのやりたいことを見た上で、少しだけ軌道修正するというかたちで進めました。

先ほどもお話しましたが、キャラ設定を丸藤さんのところに持っていく時にも、常にアートディンクの担当がついてきていろいろな要望を言うので、一回それを僕が受け止めていろいろと処理した上で、それを丸藤さんに伝えるという作業を繰り返していました。

――アートディンクはゲーム開発に対する熱量が感じられますね。

小美野氏:今回に関しては相当熱かったですね。何度もケンカして、電話口で「いい加減にしてくれ」と(笑)。「熱い思いはわかったけど、やれること、やれないことがいろいろあるから」という感じでいろいろと口論になりましたが、最終的にその熱がお客さんにもちゃんと伝わったんじゃないかなと思いますし、今回、ゲームの出来が良かったのもこだわって作ったところに起因しているのではないかなと思います。

実は実装ギリギリだったYF-30の誕生秘話

――そのほか、発売を迎えるまでのエピソードがありましたらお聞かせください。

YF-30
YF-30

小美野氏:本当にまだまだたくさんあって、しゃべり足りないぐらいなんですよ(笑)。その中でも特筆してこれだなと思うのが、このゲーム用にYF-30を作ったことですね。

もともとこのゲームをやる時に、河森さんにはゲーム内にYF-30を登場させたいという話をしていたのですが、結局これは河森さんの中で新しい変形機構を思いつくまでずっと上がってこないものなので、本当に発売できるのかなって思うぐらいまで待ち続けました。

そして最後の最後でYF-30を諦めて、YF-25かYF-29の改良型みたいなものにしようかという話も出てきたところでギリギリで上がってきて、そこからはもう急ピッチでしたね。

まず河森さんのところに何回もお伺いして、その場でデザイナーにCGモデルをいじらせて、変形機構を細かいところまで監修してもらって、デザインが上がってきてから1ヶ月ぐらいでOKが出るまで完成させて、なんとかギリギリ間に合わせたという感じです。

プロモーションに関しても色も決まってないし、武器も決まってないし、細かいディティールも決まってないし、頭の形も決まってないしという状態でYF-30の絵が出せなくて、本当に間に合わないギリギリのタイミングだったので、河森さんのところに何度も電話して、その場でラフの絵を描いてもらいました。

結果的には超かっこいい、この作品にしか出てこない機体が作れましたし、30周年のタイミングでYF-29に続く連番で、YF-30が出せるという、ゲームとしては奇跡に近いと思うぐらいのことができたので、もう思い残すことはないなと(笑)。

――実際、YF-30の反響はいかがでしたか?

小美野氏:結果的に時間はかかってしまったんですが、YF-30を初めて出させていただいた時に、お客さんから「かっこいい!」と言ってもらえたのは本当に嬉しかったです。また、YF-30自体が拡張性のある機体なので、今後弊社でゲームを出させていただく時に違う形で出したりといったこともできるので、お客さんに対してもそうですし、僕ら的にも今後につながるいいものができたなと思います。

――発売から1ヶ月近くが経ちましたが、発売後の反響はいかがでしたか?

小美野氏:アンケートもそうですし、それこそTwitterなども実は見ているんですが、幸いなことに好評な意見をいただけていて、とてもありがたいです。もちろん、カスタムサントラの件など至らない点もあるのですが、僕らや開発スタッフが熱をこめて作ってきた作品が受け入れられたのかなというのは感じることができたので、すごく嬉しいなと素直に思います。

まだ売り切れているお店とかもあって手に入らない人もいらっしゃるみたいで、そこは僕らの供給不足で申し訳ないのですが、長くお客さんに遊んでいただけているのかなと思います。

あと新しいことにチャレンジした点で、業界的な反響もありますね。版権物で、オリジナル作品で、オリジナルキャラクターを使って、さらに過去作品のオールスターでというのはなかなかできることじゃないので、結構いろいろなところで反響がありました。そのあたりの苦労がわかる人にはすごくわかっていただけましたね。

――当初発表されていた情報だと、完全なオールスターものになるのかなと思っていましたが、蓋を開けてみたらストーリーも完全オリジナルで私自身も驚きました。

小美野氏:そのあたりは完全にプロモーションの戦略で、いきなりオリジナルキャラを前面に出してしまうと、ユーザーのみなさんも入りづらいと思ったので、最初は歴代のキャラクターを見せながら、「おなじみのキャラクターが登場する、新しい『マクロス』のゲームが出ます」というところで見せていきたいと思い、あえてやった感じです。

――一方で発売後に見えた反省点があればお聞かせください。

小美野氏:ご好評いただいているとはいえ、まだこれは直せたなと思う部分はありましたし、あとはいろんなお客さんに買っていただいているとはいえ、まだやっぱり一部のお客さんとかに難しいと思われてしまう部分があったように思います。

アクションゲームというだけでもアニメのファンの方から見ると難しそうですし、「ストーリーは見たいけれど、ゲームとしてやるのは…」というお客さんに上手くアプローチできなかったかなと感じています。

今回、イージーモードでオート操作が可能とは言っているのですが、実際どのくらいオートになるのかとか、見てるだけで本当に楽しめるものなのか、というところの伝え方やゲームの作りも含めて、もう少し考えるべきポイントがあったかなと。このシリーズとしてやるかどうかは別としても、「マクロス」のお客さん向けにもう少し簡単にした、原作のファンが気兼ねなく遊べるものはあってもいいのではないかと思いました。

――もし今の段階で本作をベースとした続編を作れるとしたら、どんなアイデアを盛り込んでいきたいと考えますか?

小美野氏:先ほど原作ファンに向けたところとしてもう少しライトなものにという話はしたのですが、アクションはアクションでたくさんの方に受け入れられているので、これを崩したものを出すわけでなく、これはこれとしてあっていいものだと思いますし、当然続編についてはこれから考えていく部分だと思います。世の中の評判を見るとこの流れでやるべきかなと思いつつ、今はまだ試行錯誤というか、反省点を回収して次のアプローチをしていくか考えているところです。

――今ゲームを楽しんでいる方、これからゲームをプレイするという方それぞれにメッセージをお願いします。

小美野氏:「マクロス30」は、全ての「マクロス」ファンの方に向けて作ったつもりでいるので、少しでも興味を持って、「マクロス」が好きだという気持ちがあればぜひプレイしてください。

今ゲームを楽しんでいただいている方は、やりこみ要素が非常に豊富なので2周、3周と遊んでいただいて、引き続き「マクロス」のファンでいてほしいですし、「マクロス」のゲームのファンでいてくれればと思います。

――ありがとうございました。

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(C)1982,1984,1994,1995,1997,1999,2000,2002 ビックウエスト
(C)2007 ビックウエスト/マクロスF製作委員会・MBS
(C)2009,2011 ビックウエスト/劇場版マクロスF製作委員会
(C)2013 NBGI

※画面は開発中のものです。

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この記事のゲーム情報

マクロス30~銀河を繋ぐ歌声~

フライトアクションRPG
機種
PS3
プラットフォーム
パッケージ
OS
会社
バンダイナムコゲームス
シリーズ
マクロス
ジャンル
アクションRPG
公式サイト
公式サイト
  • セール情報
  • 「黎の軌跡(くろのきせき)」特設サイト
  • プリコネR特集

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