メディアコンテンツ研究家・黒川文雄氏主催によるトークイベント「エンタテインメントの未来を考える会」の第9回、「黒川塾(九)」が5月20日に開催された。
今回は、日本国内でのUnityの普及活動に尽力している、ユニティ・テクノロジーズ・ジャパン合同会社 日本担当ディレクターの大前広樹氏、現在、イレギュラーズアンドパートナーズでゲームの企画・制作に携わる一方で、ブロガーとして大きな発言力を持つ山本一郎氏、そしてenchant.jsをベースとした独自開発のハードウェア製品「enchant MOON」の発売を控えるユビキタスエンターテインメントの代表取締役社長兼CEO・清水亮氏がゲストとして登場。第5回で議論された「次世代ゲーム開発論」の際、話題の中心となったUnityに再度焦点を当てた「Unityによるゲームの民主化は共産化か?」というテーマで白熱した議論が交わされた。
山本氏がUnityが業界で普及していくことによる問題点として大きく挙げたのは、“手法が便利であるがゆえのゲーム開発の平準化”と“Unityでゲームを開発する若者の増加”の2点だ。
現在、作り手側としてプラットフォームに対するアプリケーションの存在感が大きくなっていることには理解を示しているものの、ビジネスを構築していく上では決済の仕組みなど、プラットフォームに頼る部分はまだ多いと前置きした上で、各プラットフォームのユーザーに対するアプローチとして、便利だという理由でUnityそのものを使うだけでなく、状況に応じて別のテクノロジーを加えていくことも考慮しないといけないという。
そのためには個人のクリエイティビティが必要となってくるが、Unityに頼ることでその仕組みが統合化されてしまうことを懸念、たとえ失敗したとしても挑戦的な開発体制を組むことで、その結果をどういう手法でほかのテクノロジーに応用していくのか、そしてプラットフォームに適合させていくのかというマインドが必要になると述べた。
そして、今後Unityの普及が進むことでゲーム開発の縦軸、横軸ともにUnityに依存してしまうことで、開発ツールをいろいろ試すことが難しくなり、Unityでないと開発ができない若者が増えてしまうのではないかとも指摘していた。
一方の清水氏は、Unityがプラットフォームを選ばないことで最適化がなされてしまい、いい意味で熱量のある作品が少なくなっていること、そしてオープンソースされていないことによるサービスの永続性への疑問を指摘。特に、オープンソース化していないことについては、将来的にUnityが買収されたり現在の経営者が退任した時にサービスが変質してしまうこと、そしてサービスのメンテナンスができないことにより、全力でアクセルが踏みづらいと述べた。
それに対して大前氏からは、例えば開発における全てのライン、開発工程をUnityにしないことで開発そのもののリスクを減らす必要があるとしたものの、オープンソース化については回避策としてベストな手段ではないという見解を示した。
また、自社でオープンソースのHTML5向けゲームエンジン「enchant.js」を提供する清水氏は、同エンジンがゲーム開発者というよりは、プログラマーそのものを育成するためのツールとして開発しているという、あくまでゲーム開発を主としたUnityとの違いを説明。実際に触っているという大前氏もその点は触ってみて把握したそうで、そうした点について互いの知見が語られたのも本セッションの大きなポイントだった。
もちろん、大前氏が語ったように「ゴーストトリック」などに代表されるようなプラットフォームに囚われない展開が可能な点、大手パブリッシャーを含めて個人のクリエイティビティに比重を置く傾向が強まった点など、Unityがもたらした民主化についての功績も大きい。現状で答えを出せる議論ではないが、今後のゲーム開発者が考えるべき点について、さまざまな視点から考えさせられる議論となった。
※画面は開発中のものです。
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