ソニー・コンピュータエンタテインメントジャパンアジアが2013年9月に発売を予定しているPS3用ソフト「パペッティア」。本作のファーストインプレッションと、開発陣へのショートインタビューをお届けする。

「パペッティア」は、ムーンベアキングと呼ばれる魔王によって人形にされてしまった少年クウタロウとなり、魔法のハサミ「カリバス」を使ってさまざまな世界を冒険していくアクションゲーム。“劇場”をコンセプトに開発されており、次々と移り変わっていくステージや登場キャラクター同士の独特な掛け合い、プレイヤーの活躍によって客席から歓声が上がるといった、一風変わった演出が採用されている。

公式サイトではいくつかトレーラーが公開されているが、ゲームシステムはまだまだ不明なところも多かった本作。今回、そんな謎多きタイトルを一足早くプレイすることができたので、そのインプレッションをお伝えする。また、先行プレイ時に同席してくれた本作のクリエイター陣に話を伺うこともできたので、同時にショートインタビューもお届けしよう。

劇場という独特なコンセプトを持つ「パペッティア」ワールド

今回プレイできたのは、ゲーム開始時のチュートリアルと、ゲーム後半に登場するステージの2つ。劇場がコンセプトになっているだけあって、物語は基本的にナレーター(ボイスは藤原啓治さん)が語っていくのだが、そのナレーションに登場キャラクターがツッコミを入れるという珍しい掛け合いが、プレイしてすぐゲームの世界に引き込んでくれる。

チュートリアルでサポートしてくれるインヤン(左)と、それ以降一緒に冒険する妖精のピカリナ(右)。
インヤンは無気力な感じ、ピカリナは関西弁で明るく、それぞれ特徴ある喋り方で場を盛り上げてくれる。

物語冒頭では、人形にされてしまったクウタロウがムーンベアキングの機嫌を損ね、ヘッドを食べられた後に思いっきり投げ捨てられてしまう。その投げられた時の演出も、プレイヤー側のカメラに向かって迫ってきたと思ったら、すぐ別のステージに移り、今度は画面奥に向かって壁に激突するというユニークな内容になっている。

文章として見るとこれらの演出はなかなか伝わりづらいところだが、公式サイトではこうした特徴的な演出が見られるPVが公開されている。百聞は一見にしかずと思い、ぜひムービーをチェックしてほしい。

主人公のクウタロウ
主人公のクウタロウ

あらすじが語られた後は、早速クウタロウの冒険がスタート。最初はチュートリアルを兼ねた内容となっており、基本的なシステムを一から覚えることができる。本作の特徴的なところは、やはり主人公が人形であり、ヘッド(頭)の切り替えができるところ。

ヘッドは敵から攻撃を受けると外れてしまい、一定時間が経過すると消えてしまうのだが、落ちたヘッドをすぐに拾えば再び体にくっ付けることができる。攻撃を受けたらダメージを受けたりするのではなく、ヘッドを拾い直せば何度攻撃を受けても倒れないという、アクションゲームが苦手な人にも優しい作りになっている。

実際に攻撃を受けてヘッドが外れてしまったり、それを付け直したときは、何かを壊してしまった時の“やっちまった感”と、誰にも知られずそれをうまく対処することができたときの“何とかなった感”があって面白い。

なお、ヘッドは装着しているものを含めて3個まで持つことができるので、1個失くしたらゲームオーバーという訳ではない。ヘッドは100個もの種類が用意されており、隠し要素の鍵になったり、攻略に役立てることができたりと、それぞれに使いどころがある。

例えばステージにはそれぞれのヘッドに共鳴するポイントがあり、そこで“ヘッドアクション”を行うことで、ボーナスステージに行けるといった何かしらの仕掛けが発動するのだ。

また、本作は2人プレイに対応しており、2Pの人が外れたヘッドをキャッチしてクウタロウに戻してあげるなど、1Pをサポートすることができる。逆にヘッドを引っ張って外してしまうこともできるので、1Pの人に怒られない程度にちょっかいを出すことも可能だ。

ステージには魔法石「ムンピー」が落ちていて、これを100個集めると、全てのヘッドを失くしても魔法で生き返ることができる。ムンピーはクウタロウが集めるのだが、空中も自由に移動できる2Pもムンピーを拾えるので、通常はステージのギミックを活用しなければ取れないムンピーを、2Pが手早く集めてサポートすることもできる。

2Pが集めたムンピーはクウタロウに渡さなければ獲得したことにならない。
単に難易度を下げるだけでなく、プレイヤー間のコミュニケーション要素にも一役買ってくれている。

さらに2Pキャラクターは、ステージの各所に仕掛けられたダメージオブジェクトを破壊したり、ザコ敵を攻撃することもできる。アクションゲームが苦手な人は友達に協力してもらったり、親子でプレイする際に子供を手助けしてあげれば難易度を大きく下げられるので、物語や演出を最後まで楽しみたい人でも安心だろう。

一人でプレイする場合は右スティックを使えば2Pキャラクターを自分で操作できるし、2Pキャラクターのアクションコマンドを使いたいときは、ボタン一つでシームレスに操作キャラクターを切り替えることもできる。

そのため、最初から一人でプレイする場合はもちろん、2Pの人が途中で抜けてしまっても、ゲームが進められなくなることもない。逆に「このステージだけ手伝ってもらいたい」とか、「ちょっと時間あるから」「見ていて面白そうだから」といった理由で、途中から一緒にプレイすることもできるのだ。

本作における2Pプレイは、ゲームバランスの調整とコミュニケーション要素、どちらにとっても重要な要素でありながら、プレイヤーを縛り付けることがない、非常に考えられているシステムだと感じた。

強敵を相手にした場合も、2Pなら攻撃を出す前に妨害するといったサポートが可能だ。

チュートリアルを進めていくと、魔法のハサミ「カリバス」を手に入れることができる。このカリバスが本作のアクションにおける要となっており、ステージのギミックを切ったり、敵を攻撃することに使用できる。何かをチョキチョキ切っている間はずっと空中を飛び続けることができるので、一度も失敗せずギミックを全部切り終えたり、長く地面に足を付けずに飛び続けていると、それだけで気持ちいいと思える魅力がある。

ゲーム後半のステージにも挑戦

続いてプレイしたのは、乗り物に乗って進むゲーム後半のステージ。チュートリアルではクウタロウが自由に移動できたが、ここは自動で横にスクロールしていくタイプの場所となっていた。

乗り物に乗った状態でのアクションは、しゃがむとジャンプの2つと非常にシンプルなもの。ただ、ゲーム後半というだけあってダメージオブジェクトがたくさん仕掛けられていたり、足場が崩れてジャンプする回数が多かったりと、歯ごたえのある難易度となっていた。ジャンプはタイミングを見て1Pが自分でやらなければいけないが、ダメージオブジェクトは2Pが排除することが可能なので、ここでも協力して遊べば一気に難易度が下がるだろう。

ステージを進んでいる時にはナレーションだけでなく、クウタロウが乗るフラミンゴも頻繁に喋るので、かなり賑やか。しかも難しい場所を突破すると、「やればできるやん!」と2Pキャラクターのピカリナが褒めてくれたり、姿は見えないものの観客から歓声が上がったりと、自分のプレイに合わせて盛り上がってくれるのが嬉しい。

このステージにはドラゴン将軍と呼ばれるボスもおり、これまでに入手したヒーローヘッドと呼ばれる特殊なヘッドを駆使して戦うこととなる。ヒーローヘッドは敵の攻撃をガードするものや、爆弾を投げるもの、フックで敵を近くに寄せ付けるものなどがある。

敵の攻撃を防御したり、レーザーを跳ね返せる「ナイトヘッド」。
空中から地面に急降下して範囲攻撃ができる「レスラーヘッド」。
フックを使って敵を引き寄せたり、何かを引き剥がしたりできる「海賊ヘッド」。
爆弾を投げて攻撃できる「忍者ヘッド」。爆弾は2Pキャラクターが持って敵に投げつけることもできる。

本来であればゲームを進めるうちにアクションをひとつひとつ覚えられるので問題はないのだが、今回はチュートリアルを終えていきなり挑戦したため、なかなかに操作が忙しかった。かなり危なっかしいプレイだった自覚はあるが、スタッフが2Pで協力したこともあって無事にクリアすることができ、プレイしていた筆者たちだけでなく、その様子を見ていたスタッフも思わず熱くなってしまったほどだ。

なお、今回プレイできたのはクウタロウが連れ去られたお城と、空のようなステージの2つだったが、ほかにもファンタジックな雰囲気のステージをはじめ、竹林のような和風のものからメキシコの街のような場所まであり、絵替わりが非常に豊富だという。ひとつのステージ内でも、例えば最初の城内では牢屋やキッチン、ムーンベアキングのいる玉座の間など多数の場面が用意されており、短いプレイ時間でも絵替わりの豊富さは実感できた。

劇場という一風変わったコンセプトと、それをうまく活かした演出、そしてアクションゲームとしてのレベルデザインも、“ゲームが苦手な人からコアゲーマーまで楽しめる”を体現したかのように高いレベルでまとまっていた。実はこれまであまり気に留めていなかったタイトルだが、いざ遊んでみると、一発で本作を気に入った。プレイしてこそ分かる面白さも多いタイトルであるため、体験版が配信されるといいなという期待も込めて注目していきたい。

プレイ終了後には、本作の開発に携わるディレクターのギャビン・ムーア氏、ゲームデザイナーの佐藤一信氏に話を伺う時間も得られたので、その内容をショートインタビューとしてお届けする。最後には「パペッティア」開発の舞台裏を紹介するインタビュー動画「魔法劇場の舞台裏」第1弾を掲載するので、そちらもチェックしてほしい。

「パペッティア」開発陣へのショートインタビュー

(写真左から)ギャビン・ムーア氏、佐藤一信氏、インタビューに同席してくれたプロデューサーの水谷崇氏。

――本作のコンセプトは何をきっかけに誕生したのでしょうか?

ギャビン氏:私の息子はゲームで遊び始めても、「このゲーム面白くない」と言って外に遊びに行くことがあります。父親としては外で遊んでくれるのは嬉しいですが、ゲームクリエイターとしては、なぜそのゲームをやりたくないと思うのかを考えてしまいます。そこで思い至ったのが、最近の子供はテレビやインターネット、タブレットなど、気軽にちょっとだけ遊ぶことが多いんです。

だから5分~10分ぐらいプレイすると世界観が変わり、次に何が来るのかプレイヤーがワクワクドキドキできるようにしたいと思いました。でも普通の世界観では実現できないため、劇場のような世界でやると、ステージが次々と変わっていって面白いのでは、と考えたんです。劇場であればナレーターがいますし、複数のキャラクターが別々に喋っていても面白いし、それに反応してくれるオーディエンス(観客)もいます。

――たしかに見えない観客がいるというのは珍しいですね。

ギャビン氏:ゲーム業界の人って遅い時間まで仕事をしますよね。家に帰ってゲームをやりたいと思ってもみんな寝ているので、一人でプレイしてボスを倒して「イェーイ!」と盛り上がっても、誰もいない(笑)。だから自分のオーディエンスを作りましょう、となったんです。

――見えない観客から歓声が上がるのも面白いですが、ステージの演出で一番こだわったのはどこでしょうか?

佐藤氏:基本的に2Pの人が暇だと思わないように気を付けました。例えば、ステージ内にあるものを見て「これは動くだろう」と思ったら動くようにしています。僕らもゲームを作って長いですが、動くと思ったものが動かないときのガッカリ感ってあるじゃないですか。そういったものをなるべく減らしたかったんです。

――確かにプレイヤーのヘッドを2Pが引っこ抜けるっていうのは面白い発想だなと思いました。細部にまでこだわっていると思いますが、開発期間はどれくらいになるのでしょうか?

佐藤氏:約4年ぐらいですね。全てではありませんが、アセット(ゲームデータ)の使い回しをあまりしないように作っています。

ギャビン氏:アニメーションやモデルを一から新しく作るのは大変ですが、手間をかけて作っているので、その分クオリティは高くなっています。その方がユーザーのみなさんは喜んでくれると思いますが、(開発が大変になるので)「パペッティア」チームのみんなは私のこと嫌いですよ(笑)。

佐藤氏:嫌いじゃないよ(笑)。ゲームの背景って使い回しすることがありますよね。ステージ1に出てきたものが別のステージでも出てきたりといったように。ですが、劇場のような絵替わりを実現するためには、使い回しはできなかったんです。

ギャビン氏:ステージの中にはすごい変なものも置いてあるんですよ。キッチンの中にたい焼きがあったり(笑)。日本人にとってたい焼きの存在は珍しくないので、なぜかキッチンの中にあっても面白いと感じないかもしれません。でも、外国人は面白いと思うんです。逆に洋風なものを入れたいってなると、私は面白くないのですが、日本人にとっては面白いので、「どうぞ入れてください」と言って、上手くバランスを取っています。

――開発で一番時間をかけたのはステージなのでしょうか?

佐藤氏:どこかひとつに特別時間をかけた、ということではないですね。ただ、キャラクターのアクションよりも、ステージのレベルデザインやグラフィックの方が、当然長い時間がかかっています。

――ゲームシステムに関係ないところも含め、個人的に気に入っているオブジェクトやアニメーションはありますか?

佐藤氏:僕はギターヘッドが好きなんですが、スタッフの中ではバナナヘッドが好きな人がいたり、ステーキヘッドが好きな人がいたりと、結構好みが分かれますね。

ギャビン氏:私はサブキャラクターが好きですね。Mr.ピンクというフラミンゴが登場するんですが、ずっと喋っていてうるさいんです(笑)。後は墓場にいるヴァンパイアも全然怖くなくて、美女を探している設定が面白くて好きです。やっぱりゲームをプレイしていると、早く次に進もうとしますが、キャラクターたちが喋っているのも面白いので、立ち止まってセリフを聞いてみてほしいですね。

私の妻はゲームをやらないんですが、「パペッティア」は劇場っぽくて物語も面白いですし、アクションとしてもステージのオブジェクトを壊せたりするので、ゲームを見ていて「面白いね」って言うんです。それで「じゃあちょっとやってみて」「いい、やらないよ」「いやいや、やってみて」と説得して2Pで遊んでもらったら「あっ、私でもできる」ってなったんです。ゲームって本当に面白いですし、「パペッティア」はゲームが分からない人でも好きになれるので、ぜひいろんな人に楽しんでほしいです。

――ありがとうございました。

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(C)Sony Computer Entertainment Inc.

※画面は開発中のものです。

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