メディアコンテンツ研究家・黒川文雄氏主催によるトークイベント「エンタテインメントの未来を考える会」の第10回、「黒川塾(十)」が6月27日に開催された。

第10回となる今回は、“プレイステーション”をはじめ、ソニーで数多くのビジネスを立ち上げた247inc. 取締役の丸山茂雄氏とサイバーアイ・エンタテインメント 代表取締役社長 久夛良木健氏をゲストに迎え、「国産エンタテイメントの生きる道」というテーマで、これまでのコンテンツを振り返りつつ、未来のコンテンツ、そしてデバイスのあり方についてトークが行われた。

黒川文雄氏 (左から)丸山茂雄氏、久夛良木健氏

トークの中で黒川氏がたびたび話題に上げたのは、2人がどうやって新たなコンテンツを切り拓いてきたのかという点だったが、これについて丸山氏は、目標の実現のために必要な“エサの取り方”を覚える必要があると説明。丸山氏であれば読売広告社での経験であり、久夛良木氏であれば家業であった印刷業や、当時体が弱かったことを通して、生きるための術を学んだことが大きかったという。

ソニーに入社後、久夛良木氏は任天堂と組んで音楽関連の技術開発を行なっていた時期があり、当時CBSソニーレコードに在籍していた丸山氏に自慢しに行ったというのが2人の出会いだという。その後、スーパーファミコンにおける音楽の向上、いろいろな人との出会いを経て開発することになったのが、PlayStationだったそう。

当時のソニー内部はほほ全員が失敗すると思っていると同時に、プレイステーションそのものにビジネス、エンターテイメントとしての成功のイメージがなかったことで、結果的に30人ほどのメンバーで互いに何をやっているのかを理解しつつ開発が行えたと話していた。

今回の本題であるコンテンツのあり方について丸山氏は、現在の流行であるクールジャパンを例に挙げ、アニメの場合、本来国内外に向けて発信しなければいけない人が、その力を発揮できていない状況にあることが問題だと言及。

一方、久夛良木氏からは、PC、コンソールに加えて、現在はスマートフォンアプリのWEBアプリ、そしてネイティブも登場する中で、「可能性が広がっているのになぜ迷っているのか」という厳しい意見も。昔であれば説得しなければいけない人、どうしても超えられない国境、多大なお金とバックグラウンドはないと難しかったが、現在はまったく障害がないということで、「夢がある人たちが集まってチームを組んだら一気に世界を狙えるはずだ」と力説した。

さらに、2013年年末商戦期に発売予定のプレイステーション4については、久夛良木氏から「長生きはするものだ」と一言。自身が関わったのがプレイステーション3までということもあり、「親がいなくても子供は育つ」という不思議な感覚を味わったそう。

そもそも久夛良木氏はプレイステーション3開発時に「ネットに溶かす」というコンセプトを持っており、それは現在のクラウドに近い感覚ではあったものの、当時はネットワークと融合するということを実現できなかったという。

今後はクラウドになっていくことでネットワーク全体がプラットフォームになっていき、これからはおよそ妄想することは全て実現できる時代に突入する中で、プレイステーション4であってもiPhoneであってもネットワークにつながるものはユーザーにとってのインターフェイスになりうると説明。ただ、それをプレイステーション3で実現する上では、当時は理解されなかったのだと話した。

そして、「国産エンタテイメントの生きる道」というテーマで行われた本トークセッションの中で、久夛良木氏は「得意なことをやって受け入れられたものは残っていき、そこに才能が引き寄せられてチームが出来上がっていく」、丸山氏は「エサの取り方を習うところからスタートしないと、人生は切り拓けない」とそれぞれの言葉で若者に対してのエールを送っていた。

※メーカー発表情報を基に掲載しています。掲載画像には、開発中のものが含まれている場合があります。

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