スパイク・チュンソフトより2013年10月10日に発売されるPS Vita用ソフト「ダンガンロンパ1・2 Reload」。本作のプロデューサーを務める寺澤善徳氏に、作品の魅力やこれまでの歴史、そして今後の展開を聞いてきたので紹介しよう。
2010年にPSP用ソフトとして生まれた「ダンガンロンパ」シリーズは、その後ゲームの続編はもちろんのこと、コミックやTVアニメ、スマートフォンへの展開など、あらゆる方向への広がりを見せ、今やスパイク・チュンソフトを代表する作品になっている。
そして、10月10日にPS Vitaで発売される「ダンガンロンパ1・2 Reload」は、シリーズ2作品をまとめただけでなく、1作目「ダンガンロンパ 希望の学園と絶望の高校生」のキャラクターがコロシアイのない生活を送る「スクールモード」など、ファン必見の新要素も追加された意欲作だ。
今回、本作を含めたシリーズのプロデューサーを務めている寺澤善徳氏にインタビューを行い、1作目からここまでの道のりを振り返ってもらうとともに、これからの展開も伺ってきた。
さらに間口が広がった新生「ダンガンロンパ」
――前作にあたる「スーパーダンガンロンパ2 さよなら絶望学園(以下「スーパーダンガンロンパ2」)」から約1年と、かなり早いペースですが、なぜこのタイミングでリメイクを発売することになったのですか?
寺澤氏:一般的には「スーパーダンガンロンパ2」のベスト版を発売する時期だと思うんですよ。通常版の発売から1年が過ぎ、TVアニメも放送されましたし、タイミングとしてはピッタリですよね。ですが、PS Vitaが盛り上がりを見せる中で、ベスト版とはいえPSPのソフトを出しても、ユーザーさんは反応しないのではないかと思ったのです。
――PS Vitaの盛り上がりを予想したうえでの展開だったと。
寺澤氏:予想していましたし、盛り上がるべきハードですからね。ただ、「スーパーダンガンロンパ2」のベスト版を出すタイミングだからといって、2作目を移植するだけだと意味はないと考えました。1作目の「ダンガンロンパ 希望の学園と絶望の高校生」がPSPのままで、2作目がいきなりPS Vitaというのも気持ち悪いですから。
そこで、思い切ってシリーズのすべてをPS Vitaに移してみるのも面白いのではないかと考え、開発することになりました。
――PS Vitaといえば、本作と新型(PCH-2000シリーズ)は同じ発売日ですよね。
寺澤氏:それはまったくの偶然です(笑)。先程も言ったとおり、私たちはベスト版を発売する感覚で、自然な流れで発売日も決めました。特に狙っていたわけではないのですが、本当に幸運ですね。
――本作が正式発表されたのは6月ですが、SCEJAが2月に配信した、PS Vitaの価格改定を発表する映像にモノクマを登場させたりと、面白い試みをしていましたよね。
寺澤氏:なんの情報も出さずにチラッと見せるだけだったのですが、視聴者のみなさんからの反響はすごかったですね。中には「『ダンガンロンパ3』か!?」と予想するファンの方もいたりと、いろいろな想像が巻き起こっていました。素直に発表するのとはまた違った楽しみを提供できたのかなと思います。
――今回のPS Vita版ではタッチパネルの操作が採用されていますが、調整の面で気をつけた部分はありますか?
寺澤氏:PSP版をプレイした方がプレイすると分かると思いますが、タッチパネルで操作すると「学級裁判」パートの難易度が劇的に下がるんです。言弾(コトダマ)を発言にぶつけるとき、ボタン操作でカーソルを合わせる必要がありませんからね。となると、言弾を当てやすくするスキルの意味も薄れてしまいます。
――では、タッチ操作に合わせた難易度調整をしているのですか?
寺澤氏:いえ、ゲーム自体の難易度はあえてそのままにしています。「ダンガンロンパ」シリーズのファンは女性の方も多いので、アクション部分が「難しい」という意見も多くいただいていました。ユーザーさんの層を考えると、簡単になることは決して悪くないという考えです。
――ボタン操作もできるわけですし、コアなユーザーが不満に思うこともなさそうですね。
寺澤氏:今までどおりの操作ももちろん可能ですので、純粋に間口が広がったと考えていただければと思います。
――今お話にありましたが、やはり女性のファンも多くなってきているのですか?
寺澤氏:そうですね。ゲーム本編の購入者の男女比率は五分五分といったところですが、イベントのお客様やグッズの販売状況を見ると、圧倒的に女性のほうが多いです。ゲームの内容に関してはユーザー層をあまり意識せず、自分たちの作りたいものを作っていますが、グッズはやはり女性を中心に考えますね。
もう一度、体験版の衝撃を味わってもらいたい
――本作には1作目の体験版が収録されており、当時遊ばなかったプレイヤーからの注目も高くなっているかと思います。
寺澤氏:最終的には体験版、1作目、2作目を好きな順番で遊べるようにしましたが、初めは体験版をプレイしないと、本編に行けない設計にする案もあったんです。結局その案は、ユーザーさんのストレスになるということで無くなりましたが、そのくらい1作目の体験版は、「ダンガンロンパ」を語るうえで重要なものだと思っています。
――私自身も体験版から製品版に入り、衝撃を受けたので、今回また遊べることは本当に嬉しいです。
寺澤氏:体験版をプレイしてからだと、作品全体の見え方も変わってくるはずですし、多くの方にやってほしいですよね。1作目を発売したときから話題になっていましたし、さらにそれから3年も経っているので、体験版にどんな仕掛けがあるのかを知っている方も多いと思いますが、それでも遊んでほしいです。
――そもそも、なぜあんな凝った体験版を作ろうと考えたのですか?
寺澤氏:単純に、本編のネタバレを簡単にするわけにはいかないと考えたからです。普通の体験版ですと製品版の一部分だけを切り取るケースが多いのですが、「ダンガンロンパ」は色々な驚きを仕掛けてますので、それを見せてしまうのは勿体ないなと。ですが、学級裁判は遊んでもらわないと、ゲームの魅力は伝わりません。そこで辿り着いたのが、あの体験版だったのです。
時間がなくて断念したものの、当時は学級裁判を見せるためのオリジナルストーリーを作ろうかとも思っていたんですよ。
――結果論ですが、オリジナルストーリーで配信するよりも盛り上がったのではないでしょうか。
寺澤氏:体験版を遊んだ人は「製品版でも同じ箇所をやらなきゃいけないのか」と思っていたはずですし、上手くユーザーさんを誘い込めましたね。
――本作独自の要素というと、1作目の「スクールモード」がありますが、こちらを収録した理由を教えて下さい。
寺澤氏:すでに発表している通り、「スクールモード」は「スーパーダンガンロンパ2」にあった「アイランドモード」と同じく、本編とは違い、コロシアイのない世界で生徒たちとの交流を楽しめます。
会話ももちろん書き下ろしで、本編では描ききれなかったキャラクターの個性や心境を、ユーザーさんに見てもらうために用意しました。死んだはずのキャラクターも総登場するので、多少の矛盾は発生しますが、そういったところも含めて「アイランドモード」と同じ感覚で遊べると思います。
――今回収録することになったのは、「アイランドモード」の評価が高かったことも影響しているのですか?
寺澤氏:これは最初の企画段階まで話が遡りますが、「スクールモード」はPSP版の時からアイデアはあったのです。開発の都合もあり実際に収録することはありませんでしたが、ユーザーさんから「キャラクターとの会話を楽しみたい」という意見をいただき、続編では入れることになりました。
そして今回、せっかくPS Vitaで発売することになったのに、新要素が何もないのは寂しいので、新規に「スクールモード」を作ることにしたのです。
――構想自体は1作目の段階からあったのですね。
寺澤氏:1作目の企画書を出したときとなると、もう4年ほど前の話なのですが、スタッフとそういう話をしていたことは覚えています。
――「スクールモード」で特に注目してもらいたいキャラクターはいますか?
寺澤氏:朝日奈ちゃん(朝日奈葵)はおすすめですね。朝日奈ちゃんのかわいさは群を抜いていますよ(笑)。
本編ではあり得ないシチュエーションの会話も楽しめるので、思い入れのあるキャラクターが見つかった方は、ぜひ遊んでもらいたいです。そういう意味では、ほかにもおすすめしたいキャラクターはたくさんいるんですよ。ただ、それを話し始めたらネタバレになってしまうので(笑)。
――本編では喋る機会が少なかったキャラクターも、どうしても出てきますからね。
寺澤氏:やはりそこが一番の注目ポイントだと思います。早々にフェードアウトして、喋りたくても喋れないキャラクターもいますから。
――追加要素があるので多くのファンが買うと思いますが、同時に新規のユーザーもたくさんいると思います。初めてプレイする人には、まずはどのように遊んでほしいですか?
寺澤氏:正直なところ、どう遊ぶかは私がユーザーさんに聞きたいくらいなんです。TVアニメを見てファンになった方は、いきなり2作目を遊ぶかもしれないし、確認の意味を込めて1作目を遊ぶかもしれないので、読めないですね。だからこそ、本作はすべてのシリーズを自由な順番で遊べるようにしてあるのです。
私個人としても、どこから遊ぶかは完全に自由だと考えているので、体験版も含めてどれから手を付けたかを発売後に聞いてみたいですね。
――なるほど。
寺澤氏:ただ、TVアニメでのネタバレを恐れて途中から見なくなった、という人は、1作目からプレイしたほうがいいかもしれませんね。
――ネタバレというと、アニメの放送とゲームの発売時期の順番も、難しい判断だったのではないでしょうか。
寺澤氏:ゲームを先に出せばTVアニメのネタバレになってしまうので、結局はユーザーさんそれぞれが、どのように楽しむかだと思っています。ですが、TVアニメは詰め込める量に限界があるため、描かれていない部分も多いです。TVアニメで結末を知った人も、細かいところに注目する楽しみはあるのではないかと思います。
――そのTVアニメは放送が終わりましたが、どのような反響がありましたか?
寺澤氏:純粋に面白いという方もいれば、「もっと良くなるのでは」という方まで本当にいろいろな意見がありましたが、たくさんの反響をいただきました。
――「ダンガンロンパ」らしい仕掛けがあるなど、制作スタッフの愛を感じるアニメだったと思います。
寺澤氏:1クールであれだけのボリュームを入れ込むのは難しいと思いますし、アニメのスタッフの方々はどこを残してどこをカットするかすごく大変だったと思います。でも、オープニングをいきなり小林幸子さんが歌ったりと、かなり無茶な仕掛けをするアニメのスタッフたちは、本当に「ダンガンらしさ」を理解してくれている素晴らしいスタッフでした。
私たちゲームのスタッフが忘れていることすら覚えているんですよ。学級裁判のシーンも可能な限りゲームと同じ演出にしたいと言ってくれて、私も1人の視聴者として、非常に楽しみにしていましたし、毎週金曜日の夜は寝不足になりました(笑)。
――小林幸子さんと大山のぶ代さんの共演というのも、めったに見られない組み合わせですよね。
寺澤氏:この組み合わせだったからこそ、一段と盛り上がったのだと思います(笑)。
――今回のアニメ化が、今後のゲーム制作に影響することはあるのでしょうか?
寺澤氏:それはないと思います。ゲームはゲーム、アニメはアニメという考えですし、なにより、開発チームは自分たちのやりたいことをやる人が集まっていますから(笑)。
モノクマの声優を大山のぶ代さんにした理由とは
――「ダンガンロンパ」シリーズが始まって約3年が経ちますが、振り返ってみての感想はありますか?
寺澤氏:ユーザーさんはもちろん、アニメのスタッフや仕事で関わった方と、多くの人に愛されて育ってくれたな、ということが第一の感想ですね。1作目を発売した当時は、ファンの方の口コミで広まっていきましたが、それもネタバレをしないよう、気を使って拡散しれくれたんです。
また、1作目のときに「第1章までは実況プレイ動画をアップロードしていい」という決まりを作ったのですが、それもしっかり守ってくれました。当時はネタバレを含んだプレイ動画が氾濫していた時期でしたが、「ダンガンロンパ」だけはなかったんですよ。こうしたユーザーさんの行動がなければ、これほど愛されるコンテンツにはなっていなかったと思います。
――1章だけ見せることが、いい宣伝にもなりましたよね。
寺澤氏:元々は、すべてNGにしても抑えられないだろうと考えての施策でしたが、続きが気になる方もいたようですね。
――寺澤さん自身はシリーズを通して、なにか得られたものはありますか?
寺澤氏:弊社としてはこのような、グッズやアニメといった幅広い展開を見せる作品を作ったことがなかったのですが、今回挑戦して、その経験を積めたことは大きかったと思います。始めたころは右も左も分かりませんでしたが、苦労しながらも広げていけたことは今後にも繋がるはずです。
「ダンガンロンパ」以前のスパイク・チュンソフトというと、男くさいタイトルや、いわゆる「洋ゲー」のローカライズというイメージが強かったと思います。チュンソフトレーベルのタイトルも、ライセンスとしての広がりがあるタイトルは少なかったですから。
――初めてとなると、かなり考えを練っていたのではないでしょうか。
寺澤氏:ゲームの企画書にもアニメ化を目指すことは書きましたよ。そのような展開に、きっと繋がってくれるコンテンツだと信じていましたし。ですが、今こうして実現したことには驚いていますし、とても嬉しいです。
――ゲームの企画段階からアニメのことも考えていたと。
寺澤氏:とはいえ、当時は実現したいというより、企画を通すための手段でしたけどね(笑)。私は、「こういったビジネスチャンスもある、夢のあるコンテンツでしょ」ということを説明するために、という意味合いが強かったです。
――「ダンガンロンパ」はキャラクターをはじめとしたデザインも印象的ですが、こだわった点はありますか?
寺澤氏:何よりも小松崎(キャラクターデザインを担当している小松崎類氏)の絵にインパクトがあるので、それを活かせるように意識しました。小松崎の魅力的なデザインを如何にして見せていくか、その一点のみを考えていましたね。
――デザインというと、今回のパッケージも目につきやすく、印象的ですよね。
寺澤氏:このシリーズには「サイコポップ」という大きなテーマがあるのですが、これはシナリオを担当している小高(小高和剛氏)が言い続けていたキーワードなんです。だけど、サイコポップと言っても抽象的で、小高以外のスタッフはいまいちピンと来ていなかったんですよ。
しかし1作目が完成したあたりで、「サイコポップってこういうことなのか」となんとなく掴めてきたんです。そして、サイコポップというイメージが完全に洗練されて生まれたのが、今回のパッケージとなります。
――小高さんの話も出たところで、次にシナリオについてお聞かせください。本作の開発を始めた時は、小高さんのシナリオが先にあったのですか?
寺澤氏:いえ、初めに小高が作っていたのは、15人のキャラクターが密室に閉じ込められる設定だけで、あとはシステムの構想がありました。そして、設定とシステムを組み合わせたところに、シナリオが入ってきた形です。
――シナリオを初めて読んだときの印象は覚えていますか?
寺澤氏:プロットの時点でクオリティが高かったですし、純粋に面白いと感じました。もちろんゲームに落としこむ際に小高と話し合った箇所もありますが、基本的にプロットと製品版のシナリオは、ほとんど変わってないです。
――「ダンガンロンパ」にとって、小高さんはどういった存在なのでしょうか?
寺澤氏:「ダンガンロンパ」というゲームを作ることは、小高の頭の中にあるイメージを表現する作業だと思っています。このイメージがなければ「ダンガンロンパ」は生まれませんし、重要な存在であることは間違いないです。
――ひとつ気になることがあるのですが、1作目の時点で続編のシナリオを考えたりはするのでしょうか?
寺澤氏:続編ありきでシナリオを考えたことは一度もないです。最後まで遊んで、続編を期待する方もいると思いますが、私たちは「やれたらいいね」くらいの感覚なんです。もちろん私は続編を作りたいですが、こればかりはユーザーさんに認められなければ実現しませんし。
小高は、ひとつの作品を作ると必ず完全燃焼するタイプなんです。だから、少なくとも彼の頭には続編の構想なんてなかったはずですよ。本人も当時、「2は作れねえ」と言っていましたから(笑)。
――続編を作る前提ではなく、ひとつひとつに集中していたと。
寺澤氏:1作目に関してはそうですね。当たり前ですが、当時は売れるかどうかも分からないし、とにかく必死に作っていました。続編を強く考えるようになったのは、小高が前日譚を描いた小説「ダンガンロンパ/ゼロ」を書き始めた頃ですね。
――1作目が注目されたのは、声優の力も大きかったと思います。
寺澤氏:特に大山のぶ代さんですよね。モノクマを引き立たせるためには、どうしてもインパクトが欲しいという理由でオファーを出したのですが、まさか本当に受けてくれるとは思いませんでした。
――オファーしたとき、大山さんの反応はいかがでしたか?
寺澤氏:断るどころか、「どんなゲームなんですか?」「なんでこの子はこんなことを喋るの?」といった質問をいただいたりと、かなり積極的だった印象です。さらには「一度セリフを聞きたいので、お伺いします」と言っていただいて。
――実際に現場へ来られたんですか!?
寺澤氏:もう開発チームは大騒ぎで、急いでモノクマの喋りをまとめた資料を作りましたね(笑)。
――当然ですが、演じることへの熱意はすごいものがありますね。
寺澤氏:そうなんですよ。しかしこれは大山さんに限った話ではありません。「ダンガンロンパ」は声優さんに恵まれているシリーズで、みなさんプロ意識が高く、毎回勉強をさせてもらっています。
――大山さんは久しぶりにTVアニメにも出演したりと、今でもさまざまな話題を作っていますよね。
寺澤氏:ゲームに出たのが5年ぶりの声優業だったそうで、さらにアニメとなると、8年ぶりですね。5年や8年となると相当なブランクのはずですが、そんなことを一切感じさせない演技を見せてくれました。声の力に関しては他の誰よりも強かったです。
発表されたばかりの「絶対絶望少女」と、これからの展開
――9月9日の「SCEJA Press Conference 2013」では「絶対絶望少女 ダンガンロンパ Another Episode」を発表して、こちらも注目を集めていますね。
寺澤氏:3Dのアクションアドベンチャーになったことは、ユーザーさんもかなり驚いたと思います。今までのシリーズとは違うものを作りたいという気持ちからスタートしたゲームで、プロデューサーである私としては、確実にファンの方に届けられるスピンオフにしたいと考えています。
スタッフからも「新しいものにチャレンジしたい」という言葉をもらったので、それならやってみるかと。本当は3Dアクションに挑戦せず、もうちょっと楽をしようよ、とも思ったのですが(笑)。しかし、そんなことで収拾がつくスタッフではないですから。
――「絶対絶望少女」も含め、今後のストーリーをどう展開していくかは考えているのですか?
寺澤氏:小高の頭の中では徐々にできているのかもしれませんが、私の中ではまだまだですね。ただ、9月のカンファレンスで「『3』をやるよ」という宣言をしてしまった以上は、しっかりと進めていきますよ。
――ストーリーの見せ方として、「ダンガンロンパ」は小説での展開もしていますが、そちらについてはどのような考えを持っていますか?
寺澤氏:先日(9月13日)、「ダンガンロンパ 霧切」という小説が発売されましたが、あれは小高ではなく、ミステリー作家の北山猛邦さんにお願いしました。すべてを小高1人が引き出すのはなかなか難しいですし、ゲームに注力してほしいという理由もあります。
また、「スーパーダンガンロンパ2」では成田良悟さんに1作目のIFストーリーを書いてもらいました。あれはあれでとても面白い内容に仕上がっていて、私たちも「こういうモノの作り方もあるのか」と、いい刺激になりました。その刺激が、今回の北山さんの小説に繋がったのだと感じています。
これらを通して言いたいのは、私はたくさんの人が「ダンガンロンパ」のストーリーを広げるやり方もありだと思う、ということです。
――今後の展開という意味では、2014年には欧米でもPS Vita版を発売しますよね。海外にもファンは多いのでしょうか?
寺澤氏:海外からの反響もあるにはあったのですが、それが実際どれほどの大きさなのかは、どうしても読めません。ですが今回、欧米での販売を担当してくださるNIS(日本一ソフトウェアの連結子会社「NIS America, Inc」)のスタッフが「『ダンガンロンパ』なら大丈夫」と言ってくれたんです。彼らは「ディスガイア」シリーズなど、ジャパニメーションのイメージが強い作品を販売してきた実績がありますし、そんな方たちが太鼓判を押してくれるのだから、乗っかってみようと思いました。
――寺澤さんは、今後「ダンガンロンパ」シリーズをどのように育てていきたいと考えていますか?
寺澤氏:私たちはゲームという媒体でひとつのストーリーを作ることが仕事です。しかしユーザーさんの中には「マルチエンディングにしてほしい」という方もいれば、IFストーリーや、違う視点での物語を求める方もたくさんいます。
元々私たちも、マルチエンディングにできたら面白いだろうな、という考えもありましたが、今のゲームシステムでマルチにするのは非常に難しいのです。物語が分岐するとなると、犯人の動機やトリックを考える量が何倍にも跳ね上がりますからね。
しかし、ゲームでやるのは大変だけど、さまざまな角度からストーリーを広げたい気持ちも強いので、今後も小説やアニメ、アンソロジーコミックを通して、ファンの方に見せていけたらと思います。
あとは、どこまでいけるかは分かりませんが、10周年イベントが出来るくらいのシリーズには育てたいですね(笑)。ゲームとして続けていければ最高ですけど、そこにこだわりすぎず、多くの展開を見せていきたいです。
――いけるかどうか分からないと仰りましたが、実現できるくらい熱心なファンがたくさんいると思います。
寺澤氏:とはいえ、人の心は新しいものに傾いていくものなので、なかなか難しいですよ。だからこそチャレンジを忘れず、飽きさせない努力を続けていくつもりです。やはり、今支えてくれているからといって、安心して胡座をかくわけにはいきません。
――最後に、ファンの方へのメッセージをお願いします。
寺澤氏:10周年の前に、今年は3周年という記念の年なので、初のファンミーティングを11月30日(土)に開催予定です。ファンのみなさんに楽しんでいただければと思います。それ以外にもさまざまな展開を予定しているので、できる限り多くの方に付いてきていただけたら嬉しいです。
――ありがとうございました。