日本マイクロソフトは本日1月27日、研究・開発に関する最新動向として、テクノロジーに主眼をおいた記者説明会を開催、新型Kinectの機能などを紹介した。

加治佐 俊一氏
加治佐 俊一氏

発表会では、マイクロソフト ディベロップメント代表取締役社長 兼 日本マイクロソフト業務執行役員 最高技術責任者の加治佐 俊一氏が登壇した。加治佐氏はまず、日本マイクロソフトは2013年7月にサービス&デバイスカンパニーへの変革や、それに伴う組織改編を行ったと説明。

今回のテーマとなる研究開発の部門は下図のようになっており、テクノロジー&リサーチとマイクロソフトリサーチの2グループが研究部門に位置づけされている。同部門には、新しい技術を作った際、各国の政策とのすり合わせや交渉を行う、テクノロジーポリシーというグループもある。

政策と技術の問題と言うと、どんなものかパッと具体例が思い浮かばないかもしれないが、近年何かと話題になることがあるプライバシーの問題などがこれに当たるという。

もう一方の開発部門は5グループに分かれている。こちらも詳細は図に記された通りだが、組織改編が行われる前は9つのグループに分かれていたという。現在はそれが5つになっているだけでなく、各グループがお互いに連携し合うことで、組織改編の合言葉である“ワンマイクロソフト”の通りに開発が行えているとのこと。

開発の体制も変わっており、これまでは3年単位で開発プロジェクトを回していたという。当時の開発モデルで作られたものの代表例として挙げられるのが、OSのWindow 7だ。Windows VistaからWindows 7までは実際に3年近くの期間があり、こうした大きなプロジェクトは明確に定義され、なにを作るか決めたうえで開発が進められる。途中で大きく中身が変わることはないが、Windows XPからWindows Vistaでは例外として大きな変更が加わり、3年のサイクル以上に長い時間が空いてしまったという。

この開発モデルも変革が行われ、OSとそれに連携するシステム管理などは、これまでの3年単位から1年単位などに変わっている。「など」というのは、Windows 8からWindows 8.1のリリース期間は約1年だが、Windows 8.1の1年後に必ず何かが出るわけではないため、あくまで目安程度のものとなるためだ。こうした年単位でのプロジェクト以外にも、アジャイル開発を取り入れ、日から週、月単位での小さな機能開発も繰り返し行われている。

アジャイル開発の例として、OneNoteのカメラキャプチャーのデモが行われた。

また、開発の規模に関わらず重要なポイントとして、テレメトリデータについても触れられた。PCを使用していて、例えばデバイスドライバの不調などによってクラッシュすると、そのレポートをマイクロソフトに送信することができる。そうしたデータの統計をもとに、マイクロソフト自体が修正したり、あるいはパートナー各社に修正依頼を出したりしているという。単なるクラッシュレポートだけでなく、どのような使われ方をしているか把握することで、製品をより良くすることにも繋げているようだ。

最後に大きなテーマとして、世界7か所に設立されている研究所「Microsoft Research」についての話も行われた。この研究所のうち、1998年に設立されたアジアでは、都市のさまざまなデータを収集したりすることで地域の問題解決に取り組むアーバンコンピューティングをはじめ、3Dモデルの表情生成と音声合成をリアルタイムに行う「Talking Head」、昨今普及の兆しが見え始めている3Dプリントの課題解決、Kinectが活用されていることでも知られるNUI(Natural User Interface)などに取り組んでいる。

Microsoft Research Asiaのある北京では、PM2.5の数値測定と、センサーがない場所の予測などが行われている。
これまでの「Talking Head」は大きなコンピューティングリソースを使うため、
身近なデバイスでも使えるよう、クラウドの活用も視野に入れて研究が進められている。
3Dプリンタにおける課題は、ソフトウェアで解決できるであろう部分に焦点が当てられた。

NUIの研究に関しては、Xbox Oneで使用される新型Kinectの紹介も行われた。新型Kinectはカメラの解像度が1080pに強化されているだけでなく、アクティブIRの採用によって赤外線撮影が可能であったりと、さまざまな機能が追加されていることがポイントだ。

音声認識にも対応しており、会場では加治佐氏が「エックスボックス、オン!」と声を出して、Kinectで実現できることのデモを開始。Xbox 360でのKinectでは実現できなかった手の向きを判別できたり、トラッキングできる関節の数が25個、人物は最大6人まで増えていることなどを説明した。

利用者の顔を認識してアカウントにサインインすることもできる。
手の向きの認識はXbox 360の頃でも課題とされていたポイントだろう。
赤外線撮影が可能なため、暗い場所でも深度を取ることが可能なほか、
重心を変えることに伴う筋肉への加重状況や、加速度も認識できる。
顔の赤い色素を捉えることで、脈拍を測ることも。

新型Kinectは現在開発者向けに限定的に配布されているが、その競争率は高いという。日本で新型Kinectが出回るのはまだ先になりそうだが、ゲーム以外でも活用されるケースが増えてきたことで、一気にKinectが進化したように感じる。実際には日頃の研究開発の賜物なのだろうが、これにより開発者が実現したいことの幅が広がることにも期待が持てそうだ。

※メーカー発表情報を基に掲載しています。掲載画像には、開発中のものが含まれている場合があります。

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