セガは本日3月28日、Wii U版「ソニック ロストワールド」の無料ダウンロードコンテンツ「ゼルダの伝説Zone」を配信する。本DLCの先行レポートと合わせ、ソニックシリーズのプロデューサー・飯塚隆氏へのインタビューをお届けする。
本日より配信される「ゼルダの伝説Zone」は、そのステージ名からも分かる通り、任天堂の「ゼルダの伝説」とコラボレーションしたもの。「ゼルダの伝説」シリーズの主人公・リンクの衣装を着たソニックが、ハイラル平原とドドンゴ洞窟を冒険するという、夢のようなステージになっている。
すでに「NiGHTS」とのコラボステージ「ナイトメア」と、ヨッシーとのコラボステージ「ヨッシーアイランドZone」が配信されており、本作の公式サイトではDLC第3弾があることも告知されていたが、それがこの「ゼルダの伝説Zone」になるというわけだ。
今回、配信前に触らせてもらう機会を得られたのだが、プレイしてまず最初に「あっ、ゼルダだ!」という印象を受けた。リンクの衣装に身を包んだソニックは違和感なく世界に溶け込んでおり、目の前に広がる風景は、当時「ゼルダの伝説 時のオカリナ」で平原の広大さに感動した想いが蘇るようだった。
あっけにとられているわけにもいかず、ステージを進めてみたら、目の前にルピー(「ゼルダの伝説」でのお金)が落ちているし、草の塊はソニックのスピンダッシュで刈れるし、そこから体力回復のためのハートが出てくるし、ゴシップストーンから妖精も出てくるし、そのゴシップストーンにボムと当てたら……と、盛りだくさん。
そもそもソニックではリングが体力の役割を果たしていたが、このステージでは体力もハートで表現されるなど、細かいところまで徹底して「ゼルダの伝説」らしくしているところには感心させられる。
モンスターもガイコツ剣士が地面から這い出てきたり、狭い通路でデクナッツが待ち構えていたりと、お馴染みの顔ぶれが揃っている。平原の中でコッコ(ニワトリ)を見つけた際にはテンションが上がり、心の中で謝りつつもホーミングアタックを決めてみると、期待通りのリアクションが返ってきて、もう「楽しい!」の一言。
とことんまで「ゼルダの伝説」らしさを追求しただけでなく、フィールドには「ソニック」シリーズでは欠かせないバネなどのギミックもある。アクションもリンクのように回転斬りができるというわけではなく、「ロストワールド」本編でソニックが行えるものと同じになっている。
まさに“ソニックが「ゼルダの伝説」の世界を冒険”という言葉をそのまま形にしたかのようなステージで、ソニックを主人公に別ゲームを遊んでいるかのようにさえ感じられた。
そして忘れてはいけないのが、このコラボステージはハイラル平原とドドンゴ洞窟の二部構成になっているところ。ハイラル平原は本作の特徴であるチューブ状の地形をあえて採用しておらず、“ゼルダらしさ”を重視した作りだが、ドドンゴ洞窟はゼルダの世界を“ロストワールドらしく”作り上げたイメージだ。
実際にドドンゴ洞窟では、チューブ状の地形を進んでいくゲーム本編の楽しみに加え、ひび割れた壁をボムで壊すなどのギミックが仕掛けられている。道中にある宝箱からは“ハートのうつわ”を獲得できるのだが、それを手に入れる演出もバッチリ「ゼルダの伝説」風に仕上げられている。
2013年9月に「ゼルダの伝説 風のタクトHD」が発売されているので、HDクオリティで「ゼルダの伝説」の世界を楽しめる作品は存在するが、「ソニック ロストワールド」風のグラフィックで再現された世界は、また一味違った良さがある。「ゼルダの伝説」ファン納得のデキとなっているし、「ソニック ロストワールド」本編を隅々までプレイした人でも新鮮な楽しさが味わえるだろう。
また、「ゼルダの伝説Zone」で獲得したルピーは小動物に換算されるので、ゲーム本編を進める上でも役立つよう配慮されている。コラボステージはダウンロードすると最初のステージに出現するため、小動物集めが苦手だという人にとっては、ゲームプレイを手助けしてくれる存在にもなってくれる。
真っ直ぐクリアを目指せば10分とかからず終わってしまうため、唯一ボリュームという点では物足りなく思えてしまうが、そこはまあ、無料の追加コンテンツなので仕方ないところ。ただ、細かいところまで作られているので、フィールドをくまなく探してみると色んな発見があるだろう。本作を持っている人はぜひプレイしてほしい。
…と締めくくりのようにしてしまったが、先行プレイ時には「ソニック ロストワールド」プロデューサーの飯塚隆氏にインタビューする時間も設けられていた。コラボの経緯からこだわりのポイントなどを伺ったので、その内容もお伝えしよう。
今回のコラボでどうしても実現したかったことは?飯塚氏に話を聞いた
――まずは「ゼルダの伝説」とコラボしたきっかけから教えてください。
飯塚氏:「ソニック ロストワールド」は3DSとWii Uで発売した、任天堂さんハードのエクスクルーシブ(独占)タイトルです。任天堂さんとは、単にエクスクルーシブというだけでなく、“ならでは”のコラボレーションをやりたいと常々思っていました。
そこで「ソニック ロストワールド」の開発途中で一度相談に伺ったところ、快くヨッシーと「ゼルダの伝説」を貸していただけることになりました。本当はソフトの発売付近で配信できればよかったのですが、製作スケジュールの都合で伸びてしまい(苦笑)、昨年末に「ヨッシーアイランドZone」を、そして今回「ゼルダの伝説Zone」を配信することとなりました。
――ステージの随所から「ゼルダの伝説」らしさを感じましたが、コラボする上で気を付けたことはありますか?
飯塚氏:気を付けたというよりも「どうやってうまくコラボするか」を非常に考えました。ヨッシーの場合は卵を集めてゴールまで運んでいくこと、「ゼルダの伝説」の場合は謎を見つけて解いて進むこと、各タイトルのゲーム性をソニックでプレイしたら面白いのではないかと考えたんです。そういった理由から、極力ヨッシーはヨッシーのゲーム性を、「ゼルダの伝説」は「ゼルダの伝説」のゲーム性を活かすようにしました。
――今回のコラボで大変だったことはありますか?
飯塚氏:大変…というよりは、「ソニック ロストワールド」の製作チームが他社さんのIPを扱うことに慣れていなかったというのがあります。あまりオリジナリティを出し過ぎてもいけないですし、一方で任天堂さんからは「ソニックらしく仕上げていただければ」と寛大に監修していただいたので、どういう風に作ったらいいのかという戸惑いがありましたね。
――“らしさ”が重要だったと思いますが、コラボステージの題材にハイラル平原とドドンゴ洞窟を選んだ理由は何でしょうか?
飯塚氏:「ゼルダの伝説」シリーズはたくさんのタイトルがあるので、どこを選べばファンの方にとって喜んでもらえるのか模索していました。最新作の「ゼルダの伝説 スカイウォードソード」の世界を、と考えたこともありますが、やっぱり「ゼルダの伝説」といえばハイラル平原というイメージがありましたので、ここは外せないだろうと。
もうひとつは、「ソニック ロストワールド」のチューブ状の地形のような、こちら側のらしさを活かせるシチュエーションはどこかと考えました。それがないと「ソニック」とのコラボではなく、単なる「ゼルダの伝説」になってしまうため、どこかに「ソニック」らしさも取り入れたかったんです。そこから洞窟がいいのではないかとなり、ドドンゴ洞窟を選んでチューブ状のステージを進む形にしました。
――ハイラル平原は「ゼルダの伝説」らしさがある反面、「ソニック ロストワールド」っぽくないステージになっています。この辺り、チーム内で何かやり取りがあったのでしょうか。
飯塚氏:ゲームの舞台となる「ソニック ロストワールド」は空中に地形が浮いている設定なので、「ハイラル平原が空中に浮いているのか」「チューブ状にするのか」といったことを話し合いました。先ほどお話した通り、任天堂さんからは「ソニックらしくしてくれれば」と言っていただいていたので、チューブ状にする案もあったのですが、やっぱりお客さんの期待するハイラル平原を作ろうと思い、今の形になっています。
――たしかに「ゼルダの伝説」らしいハイラル平原と、「ソニック ロストワールド」らしいドドンゴ洞窟でうまく両立できている印象でした。
飯塚氏:ドドンゴ洞窟にはコウモリのキースも登場するのですが、洞窟を「ソニック ロストワールド」らしくぐるっと移動できるので、キースが天井ではなく地面に来ることもあるんです。そうしたら「ゼルダの伝説」の監修担当の方から「キースが地面にくっ付くのは想定外でした」という、思わぬ発見もありました(笑)。
――任天堂さんからの制約はなかったとのことですが、指摘を受けた部分はありますか?
飯塚氏:指摘というよりは、こうしたほうがいいのでは、というプラスのアドバイスをいただきました。ハイラル平原で草を刈ったら中からハートが出るというのも、そのほうが「ゼルダの伝説」ファンが喜ぶのではという、任天堂さんからのアドバイスです。
――コラボDLCの開発部分で苦労はありましたか?
飯塚氏:「ヨッシーアイランドZone」はもともと「ソニック ロストワールド」にあったサイドビューのステージをヨッシー風にしようという方針があったので、比較的作りやすかったですね。「ゼルダの伝説Zone」は「ソニック」らしさと「ゼルダの伝説」らしさを天秤に乗せ、どちらにどれだけ傾けるかなど、最初の下地作りが苦労しました。
――例えばハイラル平原を今の形にする、と決めてから大変だったところはありますか?
飯塚氏:実は最初、カラーパワーのイーグルを使って「スカイウォードソード」のように雲の上をロフトバードと並走できるようにという案もありました。ただ、ハイラル平原にしようと決まった段階で、ロフトバートの出番がなくなってしまったんです。かといって、平原にリンクを立たせるのは不自然ですし、会話ができるわけではないですし、ホーミングアタックするわけにもいかないですし(笑)。ですがコラボする以上はリンクにも登場してほしかったので「出せるタイミングで出す」という感じで進め、今は要所要所に登場するようになっています。
――もしほかにも入れられる要素があったら「これを入れたかった」と思うものはありますか?
飯塚氏:「ゼルダの伝説」を使わせていただけるとなった時に、カラーパワーのボムでひび割れたところを壊し、ギミック解除のあの効果音を鳴らせることが1番やりたかったんです。どうしてもこれだけは実現したくて(笑)、それができたので私個人としては満足しています。
――ソニックがリンクの衣装を着るという案はどのように生まれたのでしょうか。
飯塚氏:やっぱりハイラル平原って自然の地形なので、パッと見たときに「ゼルダだ」という印象を持ちづらいですよね。そのため、一目見て「ゼルダの伝説」と分かるように、ソニックにリンクの衣装を着てもらうことになったんです。ただ、ソニックはトゲがあるので帽子をかぶせづらく、我々も試行錯誤しました。どうしたらリンクの帽子っぽく見えるのか、いくつもパターンを作って今の形に落ち着きました。
――開発中はどのような案があったのでしょうか?
飯塚氏:単純に頭の上にポンと乗せるか、それともトゲの1本が帽子になっているかなどがありました。頭の上に乗せた安打と、まるでパーティー帽子のようでした…(笑)。今回のDLCのメインビジュアルでもリンクの帽子をかぶったソニックが描かれているのですが、こちらは任天堂の方との共同制作なんです。ソニックのベースとなる下地は我々が作ったのですが、「スカイウォードソード」と同じ見た目になるよう、任天堂さんに着色していただきました。
――初めて見たときの印象はいかがでしたか?
飯塚氏:もう感動しましたね。感動してみんなに見せまくっていました(笑)。ソニックのイラストはCGなので、ヨッシーとコラボした際はマッチしたのですが、「ゼルダの伝説」のイラストは手書き風なので、どうしても雰囲気が合わなかったんです。困って任天堂さんに相談したら手伝っていただけることになり、このイラストができあがりました。
――「ゼルダの伝説」では謎解きで頭を捻る必要があったりしますが、コラボステージでは複雑なものはありませんでした。難易度設定はどのくらいを想定して作られたのでしょうか?
飯塚氏:「ゼルダの伝説」だけでなく3つのDLC全て共通ですが、ダウンロードしてすぐに遊べるようにワールドマップの冒頭に出現するようにしています。なので本編のゲームをほとんどプレイしていない人でも遊べるようにしました。謎解き自体はあくまで誰でも気付くレベルで、でも見つけたら嬉しい隠し要素も…という難易度を心掛けています。
――本日配信となりますので、最後にユーザーの方にメッセージをお願いします。
飯塚氏:「ソニック ロストワールド」を機にWii Uを購入された方もいらっしゃると思いますが、Wii Uというハードで発売した本作ならではの追加コンテンツを制作しましたので、ソニックファンの方だけでなく、Wii Uでもっと遊びたい任天堂ファンの方もぜひプレイしてみてください。ヨッシーや「ゼルダの伝説」の雰囲気を少しでも感じていただきたいという気持ちを込めて作りました。そして何より無料ですので(笑)、記事をご覧になった方はこの後ダウンロードして楽しんでいただければと思っています。
――ありがとうございました。