6月26日、御茶ノ水 デジタルハリウッド大学大学院 駿河台キャンパスにて、黒川文雄氏が主催するおなじみのトークイベント「黒川塾(十九)」が開催された。
2周年記念企画・第1弾なる今回は、「ノーモア★ヒーローズ」「LOLLIPOP CHAINSAW」などを手がけたグラスホッパー・マニファクチュアの須田剛一氏、「冷たい熱帯魚」「凶悪」などを製作した日活の映画プロデューサーである千葉善紀氏、数々の映画ポスターのデザインを手がけ、ライターとしても活躍している高橋ヨシキ氏というゲームと映像、映画の両ジャンルに精通したクリエイターがゲストとして参加。「ゲームと映画の創造性と、その未来へ」というテーマのもと、ゲームと映像の未来についてさまざまなトークが展開された。
まずは須田剛一氏がアメリカ・ロサンゼルスで6月10~12日に開催された、今年のE3について雑感を述べた。須田氏は今年のE3ではスマートフォンのゲームがほとんど消えていて、コンシューマーゲームが中心だったことを第一に挙げ、「目玉となるAAAタイトルがガンガン出てきた充実したE3でした」とコメント。「今年は出展されているタイトル数が少なく、縮小気味だったのでは?」という黒川氏の質問には「お金がかかるからでしょう。ただ、タイトルが絞り込まれていたので、どのブースも目玉が明確になっていました」と答えた。
ちなみに、ソニーのカンファレンスで格闘ゲーム「モータルコンバットX」のグロテスクなシーンが大受けしていたことにライバル心をかきたてられたとのことで、自身の最新作である「LET IT DIE」では「絶対に負かせてやる!」「これからはグロとゴアでいくぞ!」と宣言。スタッフにも言ったところドン引きされたそうだ。
映画人も魅了するロックスター・ゲームスの魅力
イベント当日に発売された「ウォッチドックス」をすでに購入ずみという千葉善紀氏は、高橋ヨシキ氏にすすめられてプレイした「デッドライジング」でゲームにハマってしまったと告白。さらに、「グランド・セフト・オート」シリーズなどを手がけた、ロックスター・ゲームス制作の「レッド・デッド・リデンプション」を例に挙げ、「ゲームで泣けるんですよ!」と、海外のゲームの魅力を猛烈にアピールした。
「レッド・デッド・リデンプション」については「あれを経験していないのは人生損していますよ」(須田氏)、「馬に乗って走っているだけでも楽しい」(高橋氏)とゲスト陣がいずれも大絶賛。さらに、高橋氏はロックスター・ゲームスの作品はライティングが自然で、人間の視覚に近くなるように工夫されているから、高い没入感を生み出しているのではないかと分析した。
この点について須田氏は「普通はポリゴンにテクスチャーを貼って、そこに光源処理をして終わりなんですが、ロックスター・ゲームスは生のテクスチャーというものを信頼していなのではないか」と予測。キャラクターと風景がなじむように、さまざまなエフェクトをかけるなど「彼らはとことん絵作りにこだわっているんです」と説明した。
ハリウッドと日本映画の一番の違いもライティングではないか、という黒川氏の問いに、千葉氏は「ハリウッド映画はデカい照明をバコバコ当てた上で絞るのが基本だけど、日本はそんなことできないですからね」と語るなど、絵作りが根本から違うことを強調。「だから(日本の映画は)奥行が狭い絵になっちゃうんです」と自嘲気味に述べた。
高橋氏によると日本と欧米の絵作りの差は、美術の伝統の違いという説明に帰結しがちで、「日本は輪郭で描く文化、欧米は光と影で描く文化だから」という説が一般的になっているのだという。高橋氏はこうした考え方を一部認めつつ、映画「モンスターズ・ユニヴァーシティ」のライティングの最高責任者が日本人であったことを紹介し、「もちろん個人の才能の部分もあるけど、(文化の違いを)乗り越えられると思っています」と結論づけた。
世界を意識しすぎず、自然体で勝負する須田氏
ライティングのこだわりについて、「影が好きで、初期の頃から影を強く出していきたいと思っていました」と答えた須田氏。もっとも影響を受けたのは永井豪氏のマンガで、「デビルマン」「凄ノ王」「手天童子」などを愛読していたという。また、ゲームではアタリ版の「スターウォーズ」に強いショックを受けたそうだ。
そんな須田氏のことを千葉氏は「日本発信でアメリカなどの海外で売れる作品を作っているクリエイター」と高く評価。千葉氏はかつて海外の映画の買い付けなどもやっていて、いつも買わされる側だったので、いつかは海外の人に買わせたいと思っていたのだそうだ。三池崇監督、園子温監督、井口昇監督といった個性派の映画監督と組むのもそのためで、「そういった個性派の監督は日本では“変な作品を作っている人”で終わっちゃうけど、海外に出すとスゴい反応が返ってくる」と、千葉氏は楽しそうに語った。
須田氏自身は「killer7」で初めて海外マーケットの存在を実感するようになったそうで、今も「日本のゲーム業界をリードする」「世界に打って出る」といった意識はないそうだ。さらに、伝説のプロレスゲーム「ファイヤープロレスリング」でデビューしたことから、「今もプロレスラーだと思っていますから、海外の団体でも総合格闘技でも、どんなリングでも上がりますよ」と笑いを交えつつ語り、「日本とか欧米とか関係ありません。今も日本の人たちに一番に遊んでほしいし、世界の人たちにも遊べるんだったら遊んでほしい」と述べるなど、どのマーケットでも勝負するという自負をうかがわせた。
また、須田氏は海外ではインディーからメジャーになる流れができていて、日本でもそうなってほしいとコメント。同時に「コンソール機が一番の晴れ舞台だと思っているので、スマホでデビューした人たちがメジャーなパブリッシャーと契約して新しいゲームを作ったり、既存のタイトルを扱ったりしたら面白いと思います」とも語った。
ゲームと映画の今後と両者のかかわりについて
ゲームや映画における、課題や問題点についても議論がなされた。高橋氏はテレビの民放で洋画の放送が少なくなったことに触れ、テレビでたまたまハズレの映画や変な映画を見て、そこで受けたショックが作品作りの糧になったりするが、現在ではそういった体験がなくなりつつあると問題提起。これには千葉氏も同意のようで、自分の嗜好の範囲に選択がとどまってしまうのは良くないと苦言を呈し、「ハズレの中に宝があるんです。これはゲームも同じ」と力説した。ちなみに、須田氏はユル・ブリナー主演の「ウエストワールド」などをテレビの洋画劇場で見て強烈な印象を受けたそうだ。
千葉氏は「ガラパゴス化」と言われる問題にも言及。「アベンジャーズ」や「バットマン」といった、世界中で大ヒットした作品が日本で当たらなかったことを挙げ、「日本は世界のエンターテインメントの流れから取り残されつつある」と現状を危惧した。さらに、巨額の資金が投入された作品を映画館で見ないのは人生の損失であるとコメント。ゲームも同じで、「200億円かけて作られた大作をプレイせず、スルーしてしまうのはもったいないし、すごい損をしていると感じてほしい」と主張した。
また、高橋氏は「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズを手がけたピーター・ジャクソン監督が、「ブレインデッド」というB級スプラッター映画を作った際、ニュージーランド政府の補助金を受けていたことを紹介。近年、クールジャパン構想が話題になったが、日本はコンテンツの内容で選り好みせずに援助できるのかと疑問を投げかけた。
須田氏は日本における映画とゲームの関係について、ゲーム業界の人間も映画を上に置きがちであると指摘。海外では映画とゲームが対等の存在であり、その例として須田氏は映画「スカーフェイス」の主人公であるトニー・モンタナが生き残っていたらという“if”を体験できる「Scarface: The World is Yours」と、同名映画の前日譚を描いたロックスター・ゲームスの「The Warriors」を紹介した。
これらは映画を知っていれば、より深く遊べる作品になっていて、ゲームに対するリスペクトがあるから、こういった作品が作れるのだと須田氏は持論を述べた。また、高橋氏も同様の例として、マフィアの下っ端となって映画の名場面を再現できる、ゲーム版の「ゴッドファーザー」を挙げていた。
その上で、須田氏は「海外の若い映画監督はたいていゲーマーです。日本もじょじょにそうなりつつあると思うので、日本でも海外のような映画とゲームの深いつながりが生まれていってほしい」と期待のコメント。ただ、千葉氏によると「日本の映画業界でゲームをプレイしている人は少ない」とのことで、なかなかハードルが高そうだ。
ここでは書けないような危ないネタも飛び出し、あちこちで笑いが起きるなど、大いに盛り上がった今回の「黒川塾」。最後にゲームと映画の未来についてゲストの3氏のコメントを紹介し、まとめとしよう。
高橋氏:「LAST OF US」などもそうだったんですが、最近はプレイ映像とムービーシーンの区別がつかなくなりつつあるので、ゲームはますます「動かせる映画」という部分が大きくなっていくと思います。ただ、キャラクターやストーリーの描き方は、それぞれのメディアに合った方法があると思うので、映画がゲームのマネをするというのはやめてほしいですね。
千葉氏:洋ゲーはとっつきにくいという印象があると思うんですが、今のゲームは意外とプレイしやすくなっています。新しい「トゥームレイダー」なんかもすごい没入感があって、映画をプレイできるという感覚を味わえるので、大人の人にもっともっとプレイしてもらいたいですね。
須田氏:海外の強みは映画や音楽といった、いろいろな文化の人たちが一緒になって楽しみながら作っていることだと思うので、日本でも同じようになったらいいですね。ゲームの文法なんて壊していけばいいんです。ゲーム屋の考えなんかに固執せず、現場で誰かが面白いことを言ったらどんどん取り入れていく。ウチのゲームはそうしていきたいですね。
※画面は開発中のものです。
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