ニュース更新の少ない年始だからこそ、自分たちの思い入れのあるゲームを紹介したい! そんなGamer編集部のメンバーたちが好き好きに書きなぐった、冬休みゲーム特集をお届け。第3回となる今回はカプコンの「パワードギア」を振り返っていこう。
目次
20年前のゲームセンター。当時はカプコンタイトルだけでも「ファイナルファイト」「エイリアンVSプレデター」「ダンジョン&ドラゴンズ シャドーオーバーミスタラ」「天地を喰らう2・赤壁の戦い」と、数々の名作たちがベルトスクロール界を席巻していた。そんな中で私の目にひときわ輝いて見えたのが、このロボットたちの饗宴「パワードギア」である。
今回紹介する「パワードギア」は、1994年にカプコンがアーケード向けにリリースした、ロボットを題材にした横ベルトスクロールアクション。ワラワラ出てくる敵ロボットたちを、ハイスピードで叩き壊していく爽快感が特徴のタイトルだ。「パワードギア」はいまだアーケードのみでの提供で移植は一切ない…つまり、現状のプレイのハードルは結構なものとなる。
なお、後に2D対戦格闘ゲーム「サイバーボッツ」という派生作品が作られ、その中の登場キャラクター「ジン・サオトメ」がさまざまな作品の場で活躍したことから、「パワードギア」の主役機「ブロディア」も色々な場でフィーチャーされることがあった。実際、「サイバーボッツ」で知ったという人もさぞかし多いことだろう。
「パワードギア」には、上下に広さを取ったステージ、パーツを敵から奪って戦うカスタマイズ性、バラエティー豊かな敵味方の機体群、至高のガッシャンガッシャン音、狡猾過ぎて涙が出てくるCPUルーチン、人生で一回しか経験したことがないけど超楽しかった3人協力プレイなど、一口では語り尽くせない魅力が満載だ。ここでは、それらを一つ一つを掘り下げながら紹介していこうと思うので、興味がある人は目を通して頂ければ幸いだ。
「パワードギア」のストーリー&登場機体を紹介
西暦2281年、地球連合軍とライア公国軍との領星権を巡る争いの停戦協定から1年。サイボーグ化を果たした元ライア公国軍の大尉アズラエルが、数千ものサイボーグ兵士を引き連れ、ライア公国に向けて宣戦布告を行う。ライア星より緊急通信を受けた地球連合政府は、機動兵器「ヴァリアント・アーマー(略称:VA)」を派遣。プレイヤーは国籍入り混じる機動兵器部隊「ブラッディ・アーマー」の一員として、戦争の火種の始末をしにいくこととなる。
ゲーム開始時に選択できる機体は全部で4機。ジェフ=パーキンス(コールサイン ラッシュ)が搭乗するバランス型の赤い機体「ブロディア」、レイ=ターナー(ジャスティス)が搭乗するスピード寄りバランス型の青い機体「レプトス」、グレン=リード(グレイ)が搭乗する耐久特化の緑の機体「ガルディン」、サラ=ホワイト(セイレーン)の搭乗するスピード特化の黄色い機体「フォーディー」。
個々の性能は違うものの、それらを表す数値が大幅に変動するという訳でもないので、ビジュアルのキャッチ―さで選択するのが一番……と言いたいところだが、ギリギリの場面をギリギリの状況でしのぐためには、ブロディアかガルディンをオススメしたい。何故かは後述。
ステージを侵攻するうえで必要なスキル
本作の特徴の一つは、そのスピード感である。VAからもたらされる「ダッシュ」「ジャンプ」の機動力は、画面上のどこであろうとも即座に駆け回れるほどだ。スピードはベルトスクロールにおいて重要なパラメーターであるのは、経験者ならば周知の事実だろう。だがしかし、本作で何よりも一番信頼できるのは耐久力とそれに連なって設定されている特殊武器「サブウェポン」の段数と言わざるを得ない。
耐久力は格闘ゲームのようなゲージ性が採用されているのだが、中盤以降は進めば進むほど雑魚敵からの2・3発の小突きで落ちるのもざら。耐久力に加えて復活用の残機も設定されているのだが、「耐久力自体が残機かな?」と思わせるほどの煉獄が待ち構えているため、巧みな操作技術が強いられるスピードよりも、安定・安心の耐久力の方が需要が高い。
もちろん、カプコン製のベルトスクロールにお馴染みの無敵行動として、移動しながらノーモーションで使用可+耐久小減少で放つ「メガクラッシュ」、画面全体攻撃+耐久大減少で放つ「超メガクラッシュ」は搭載済みである。これにより、上下移動で避ける反射神経よりも、“これは当たる”と決め打ちでメガクラッシュをぶっぱする方が断然リスクが少なくなる。
相手の攻撃を喰らうよりもずっと低リソースで盤面が仕切り直せるので、敵が飛んでくるたびに無駄撃ちしても構わない心意気が重要なこのゲーム。結果、よほど知識を叩きこんだVA乗りでもない限り、スピードよりも耐久力の多い機体から順に初心者の親友になると言って差し支えないだろう。それが上述したブロディアかガルディンになるわけだ。
ちなみに、普通にプレイしてもこのゲーム、とてもムズイ。アーケードゲームの鉄則に従って2面まではどうにか行けるだろうが、その先といったら「はやい」「みえない」「どうしようもない」の3拍子。このサイクルを打破するには、やはりメガクラに頼るしかないのだ…。
腕!脚!肩武器をとっかえひっかえ!
不穏な空気はひとまず置いといて、ここでは本作一番の男の子ポイントであろう「VAの並外れたカスタマイズ性」について紹介していこう。こちらも出だしに多少記したが、本作では敵機が装備している特殊兵装を、殴って倒して強奪し、その場で自機に取り付けることが可能だ。ほかにも、ステージ道中の箱やアイテム支援から入手できることもある。
各機体はアーム、レッグ、サブウェポンをそれぞれ違うパーツに換装できるため、一見ロボットとしてはノーマルスタイルなブロディアも、“ドリル+火炎放射器+四脚”といった、趣味嗜好全開な容姿へと変貌させていける。もちろんパーツには単純な強弱、ベース機体の得手不得手もあるが、入手頻度の少ないパーツ以外はステージ内に散らばって落ちていることが多いので、ワンタッチでとっかえひっかえしていくのも一つの手である。
さらに本作の面白い点として、ベルトスクロールゲームの中でも珍しくデフォルト拳(武器)が最弱の称号に近しく位置している。通常武装「パワーナックル」というのは連続攻撃&掴み技、さらに機体毎の長距離攻撃ができるなど汎用性も高く、ベルトスクロールらしい万能性を備えているのだが、如何せん「ファイナルファイト」ほど投げの有用性が高くない。連続攻撃や投げでダウンさせるなら、特殊アームで素早くダウンを奪った方が状況がいい。ダメージ的にも、モーション的にもだ。
ベルトスクロールゲームに出現する特殊武器というのは「一発ダウン」「高リーチ」「挙動重し」だったりで、使い勝手の馴染まないケースが多々ある。しかし、「パワードギア」の特殊アームたちはいずれも強者揃い。むしろ特殊アームを頼りにしていかなければ、攻略難度もグンと跳ね上がってしまうのだ。ここではそんな頼りになるアームの内、2つをオススメをピックアップしておこう。
高ダメ+突進の頼れる「デスドリル」
このデスドリルは、もう見た目からしてドリル以外の何物でもないと思ってしまうくらい純粋なドリル武器。その場、もしくは前進しながらドリルを回転させ、ガリゴリバキメキ相手を粉砕していくのは実に爽快だ。若干モーションに重みが感じられるのと、攻撃パターンの少なさはキズになるものの、ドリルを使う立ち回りで固めれば、トップクラスの火力でステージを制圧できるだろう。
また、長距離攻撃でミサイルを発射したり、ドリル攻撃中にボタン連打でダメージを稼いだり、ニュートラル攻撃→移動方向攻撃による2段階前進というエッセンスも欠かせない。一番最初に固定出現するアームということで、本作をプレイしたことがある人なら誰もがお世話になる、魅力の詰まったアームの一つだ。
軽快+多彩な「レーザーブレード」
もう一方の「レーザーブレード」は、見た目からしてレーザー的なもので形成されているブレード。他の武器に比べるとダメージも初段のリーチも欠けているが、モーションの軽さ、ディレイ操作できる溜め斬り、そして斜め上への飛び道具「エアーカッター」の汎用性がズバ抜けている。
初段攻撃以降いつでも派生できるこのエアーカッターのおかげで、連続攻撃を切り上げながら素早く相手のダウンを奪える。つまり、「連続攻撃中、いつでも軽いモーションで飛び道具判定+リーチを持ったダウン攻撃に派生できる」という、「パワードギア」でなければ壊れ技なんじゃないかと疑われるような性能を有している。
これらにより、全く隙のなさそうなレーザーブレードであるが、実は地味に辛いことも。それはダメージを稼ぐ意識をしっかり持たなければ、火力が貧弱になりがちなところだ。エアーカッターで仕切り直しをし過ぎると、1ターンで奪えるダメージがとても少ない。
安全ではあるものの、結局ドリルに比べるとダメージは雲泥の差となってしまう。また、敵機が大群で押し寄せてきた時も一点集中で数を減らすのが難しく、全面的に立ち会うケースも生まれてしまう。手数をしっかり&サブウェポン垂れ流しで火力を補ってこそベストなアームだ。
ほかのアームもやればできる子
上記以外に存在するのは、投げ特化の「フォースクロー」、電撃を放つ「チェーンスパーク」、射撃オンリーの「シールドキャノン」と、特殊性能に特化したアームたち。汎用性という点で使い辛さを感じてしまうアームたちだが、通常の「パワーナックル」も含めて決していらないレベルではないことは追記しておこう。
これらはステージ区間や一部ボスに対して適切に運用すると実に輝いてくれる。しかし、ドリルもレーザーもある程度出現場所が限られるため、汎用性を捨ててまでその場の攻略を取るのはリスクが高い。まあしかし、結論としてはいずれの武器も魅力とロマンの塊なので、プレイスタイルと好みでその場その場を切り抜けるのもいいだろう。
結局のところ、本作はアーム攻撃だけでなく、素早いジャンプ攻撃、レッグによってはドリル or キャタピラで轢き殺すダッシュ攻撃、兎にも角にもサブウェポンなど、アーム以外の攻撃を主力においた立ち回りでも充分進められるので、趣味に走るのもVA乗りの一興といえる。
レッグ&サブウェポンをサクッと紹介
アームのせいでレッグ&サブウェポンを紹介する時間が無くなってしまった。そのためここではサクッと紹介しておこう。レッグは移動速度+移動攻撃+ジャンプ性能などが変化する。2脚、4脚、キャタピラ、ジェットと、個性がそのままデザインになったバラエティ豊かなラインナップであり、個人的には高高度に飛んで地上に射撃の雨をまき散らしながら延命を図れる「ターボジェット」がお気に入りだ。
もう片方のサブウェポンには、バルカン、ミサイル、レーザーなどのこちらもユニークな射撃武装が取り揃えられている。この武装は一番入手頻度が高く、それに比例して装備している敵機が多い。そのため、道中では安易にサブウェポンを撃たせないことが最重要だ。サブウェポン持ちの敵機大群は見敵必殺の如き対応を取らねば危険なので、サクッと打ち込んで次々と換装するのもいいだろう。
なお、サブウェポンはいずれも使い勝手が良いものばかりだが、強力さでいえば高威力+広範囲+貫通+携行数少な目の「レーザーキャノン」が頭一つ抜けている。ボスによってはレーザー持ち込みで圧倒的に楽になる場面もチラホラ、道中にあっては確保してないと詰み気分になる場面もチラホラ、そんな愛おしい武器たちである。
最高峰のガッシャンガッシャン!
本作の魅力はまだまだある。個人的に好きな点を挙げると、やはり男の子のためのビートと称するべき効果音だ。ロボットを題材にしてるだけあって、そのガッシャンガッシャン鳴り響く効果音は強烈にカッコいい。もちろんカッコいいだけではない。敵機をバッキバッキに砕けば鉄の軋む音が軽快に鳴り響くし、敵機を破壊した際には大迫力に爆発音が胸を熱くする。
つまりところ、ロボットたちのアクションに対して効果音が心地良く噛み合っているからこそ、スタイリッシュな爽快感が生まれ、本作はよりスピーディ感を増すのだ。ロボットをゲームという題材に落とし込む時、ある作品によってはゲーム性を加味してゲーム演出的な音源を採用するだろう。ある作品によっては硝煙薫る硬派なリアル指向でハードな世界観をかき鳴らすことだろう。
しかし、本作は鉄と鉄とがぶつかりあうロボット的音源と、エンターテイメント性の高いゲーム的音源が高いレベルでミックスされているため、聴いているだけでも「いかにもロボ同士のバトルっぽい効果音」が、ゲームセンターという場所を熱い戦場だと錯覚させてくれる。やみつきになるこの効果音は、ぜひ自身の身体で体感してほしい。
至高のCPUルーチン
ベルトスクロールアクションをアーケードで長く遊び続けるには、ゲームをメタする独特な立ち回りと、それに連なる修練が必要とされる。そんな環境の中でこの「パワードギア」のCPUは泣けるほど狡猾なルーチンを有している。それはもう、とにかく狡猾だ。
このCPUたちは圧倒的に強いわけでも、滅茶苦茶早いわけでも、理不尽な攻撃をしてくるわけでもない。いや、少しはある。ただ、最大の理由として“敵機がプレイヤーの背後を延々と狙い続ける”ことに一途なのだ。その動き方といったらもうCPUの執念とも呼ぶべきもので、不規則に上下移動を繰り返した後、モタモタその場で待機していると思ったら、こちらの自機が背中を向けた瞬間に一直線に襲撃してくる。
かといってこちらが背後を取らせない立ち回りで戦っていると、上下を使った恐ろしいほどの大回りを意気揚々と仕掛けてきたり、それを察して自機の立ち位置でけん制すると、また上下左右不規則にウロウロし始める。至上命題の背面襲撃を達成するために徹頭徹尾「己の魂(ルーチン)」を以って襲い掛かってくるのだ。
もちろん、立ち合って殴り合いをしないわけでもなく、殴れるリーチに寄ってきたら所構わず殴ってくる、普遍的なアーケードスタイルは有している。普通にプレイしていると些細な違和感といえるだろう。しかし、おおよそ他のタイトルでは見られない本作特有のCPUアクションとなっているので、違和感に慣れるまでは何度も鉄屑に成り果てる。クリアの先を見届けるには、理屈を知り、プレイヤー力を高めて粉砕あるのみだ。
最大3人協力プレイに対応!合体ロボ
当時の横ベルトスクロールアクションでは、大概2~4人プレイというシステムが採用されていた。ゲームセンターの中でもベルトスクロールアクションというのは、昨今のような専用筐体でもなく、1プレイの長さからインカム(収入)が取れないゲームとして認識されており、気合の入った店舗以外では1台、最大2人(当時はコントロールパネルが2つ)という環境が大半であったことだろう。
昨今はオンライン通信のおかげで、見知らぬ人との協力プレイのハードルもずいぶん下がってくれた。PS3で再販売された「D&D」のような例も含めて、ベルトスクロールはオンラインマルチプレイに向いてるシステムといえるだろう。ちなみに、あの頃のコンパネ筐体で知らない人に対して「一緒にやっていいですか?」と聞ける羨ましい社交性を兼ね備えた人というのは、果たしてどれほど存在していたのであろう。実際気になる。
なお、筆者は人生で一度だけ、奇跡的に「パワードギア」を2台を置いている店舗で、友達同士による3人プレイをすることが叶った。1人プレイとは段違いの難易度であり、あらん限りの硬貨を皆で投入してクリア目前にまで至ったが、結果ラスボスは攻略できず仕舞いであった。しかし、合体ロボの完成形がようやく自身の手で動かせたことには感動したものだ。
ここでそう、合体ロボについても紹介しておかなければならない。これは、特定のボス戦前で変形できる文字通りの「合体ロボット形態」を指している。合体には2人プレイ以上の時、特定のステージで陽気な面白黒人スタイルの整備士・バーンズから特殊アイテムをもらうことで合体可能となる。
特殊アイテムを取得すると、空中から人型や戦車型の合体ロボの骨格が投下され、各々の使用VAが勇ましき者たちの様に、腕武器・背面武器へと変形しはじめる。その後、画面下部に表示されている特殊なゲージが無くなるまでの間は、完全無敵のままボスを一方的に攻撃することができるという、実に盛り上げ上手なシステムに仕上がっている。
ただし、本作では参加プレイヤー数に応じて敵機の出現数/耐久力が増加されてしまうので、ここで雑魚敵に対してロボット無双よろしく遊んでしまうと、その後は地獄絵図が展開するので注意しておこう。
レトロじゃない、最前線だ
そんなわけで、本日2015年1月3日だけに吹き荒れたこの最先端のトレンドの風「パワードギア」の紹介、いかがでしたでしょうか。20年前だし、レトロと言えば当然レトロゲーの分類に入ってしまう本作だが、そのビジュアルはいま目にしてみても、古めかしさよりも先鋭として研ぎ澄まされたドット絵の美しさを垣間見ることができる。グリグリと動き回る、挙動表現の中抜きを感じさせないロボットたちの躍動は、開発スタッフたちのこだわりが余すところなく詰め込まれている証拠なのだ。
なお再三に亘って追記しておくと、本作はアーケードゲームである。移植はまだ無い。自身の知っている範囲での稼働状況といえば、東京・秋葉原のゲームセンター「Hey」の2F ベルトスクロールアクションコーナーだけである。お近くまで足を運んだ際は、「ファイナルファイトがやりたかったけど仕方がないからパワードギアをプレイしてみた」的な初心者アピールをしながらプレイすれば、誰かが攻略法を教えてくれることも無きにしも非ず…やもしれぬ。
といったことで今回の【冬休みゲーム特集2015】はお開き。連日の記事を見ていただけた人、どうもありがとうございました。まだほかの記事に目を通していないという人は、これを機にお目通し頂けたら幸いです。これからもGamerでは多数の新規コンテンツを展開していきますので、今年もどうぞよろしくお願いします!