モバイルコンテンツ業界の最新動向やマーケットをテーマとしたカンファレンス「GMIC TOKYO 2015」(グローバル・モバイル・インターネット・カンファレンス)が、本日7月10日に東京ミッドタウンにて開催された。ここでは、中国市場における戦略などが語られた3つの基調講演をレポートする。

「DeNAの海外戦略」

任宜氏
任宜氏

「GMIC TOKYO 2015」サブ会場の最初の基調講演「DeNAの海外戦略」を行うのは、DeNA執行役員を務める任宜氏だ。

任氏は、より多くの日本企業が海外進出していくためとして、「DeNAのグローバル化の歴史と戦略」「DeNA Chinaの軌跡」「DeNA Chinaの成長過程で学んだこと」の3つを軸に講演を行った。

DeNAのグローバル化の歴史と戦略

DeNAは現在、東京、上海、サンフランシスコを中心に、世界に幅広く拠点を持っている。このグローバル化に至るまで、4つのフェイズを経たという。

まず、2006年から2009年にかけて、DeNAはリーンスタートアップでの模索を始めた。中国に4人のスタッフを送り込み、中国でもMobageのようなサービスを展開しようとしたのだ。しかしこれがうまくいかずに撤退したDeNAは、次に数百億円単位の投資・買収・ビッグアライアンスを敢行し、ベトナムのデベロッパー・punchやアメリカのデベロッパー・mgmoco:)などを買収する。

その後、2011年から2013年にはグローバルに統一されたプラットフォームを目指し、フューチャーフォンのシステムをスマートフォンに移行することに注力。2013年以降は、各国・各事業の状況にあったローカルな最適化を施し、国ごとに切り分けて運営するスタイルへと行き着いた。

「グローバル統一」「ローカル化」という正反対な言葉が出てきたが、DeNAではこれらを切り分けて考えている。すなわち、「トランスフォーマー」「ワンピース」といったIPの獲得・活用、そして各国で成功したタイトルはグローバルに展開する。最近では、「ファイナルファンタジー レコードキーパー」のアメリカ展開がそれにあたる。

その一方で、各地域に最適な開発・運用・マーケティング体制を敷くことで、各地域でのローカルトッププレイヤーと互角にわたり合うポジションを築いているという。

DeNA Chinaの軌跡

DeNAが参入した2010年、中国のモバイルゲーム市場というものはないに等しかった。市場が立ち上がってきたのは2012年からで、当時は数百億円規模であった。それが2015年には7,500億円を超えると言われるほどになっており、想定以上のスピードで成長。このまま伸びれば、世界一位になると予想されている。

DeNAの中国事業は、2007年のフィーチャーフォン向けモバイルゲームSNSの立ち上げ、2009年の天下網の買収に始まり、中国のオンラインゲームの国外パブリッシングやMobageプラットフォームの中国展開と続けられたが、任氏いわく「いろいろやったけど全部失敗」だったという。

さらに2012年、2013年には日本やアメリカで成功したゲームをローカライズして配信したが、中国のトラフィックは日米ほど豊かに使うことができずにつまづいてしまう。また、どのメーカーが作ったのかわからないような端末も多く、ゲーム自体が動かない問題にも直面。これらを受けて、その後はオリジナルゲームの開発を進めていくことになる。

2013年にはNBA、2014年に「トランスフォーマー」「スラムダンク」「聖闘士星矢」、2015年には「ワンピース」といった、中国でも人気のIPを使って、オリジナルゲームを展開。ここでようやく、2014年にはコイン消費推移が増加してきた。平坦な道のりではなかったが、経験を積み上げて、何がダメだったかを把握しながら続けてきたからこそ、ここまでこれたと任氏は語る。

これらの経験を踏まえて、DeNAは“ローカル力”を培ったという。IPを持っているだけではダメで、それをどうやって中国に合った形で売るか……つまり、中国国内で開発・運用・マーケティングを完結させる体制作り、またそのための人材を採用するコーポレート力である。

加えて、本社が海外市場・海外進出を理解することも大切。数字だけ見るのではなく、現場では何が大変なのかを理解し、それに合ったサポートが海外での成功には欠かせない。

さらに、中国では政府対応をどう行うかなど、クロスボーダービジネスのノウハウが重要になってくる。発展途上国向けのそれは特に必要で、これを培うことで海外の強みを活かしながらビジネス展開をすることができるのだ。

DeNA Chinaの成長過程で学んだこと

中国市場はGDP、インターネット市場、モバイルインターネット市場でアメリカを抜いて世界一になることがほぼ確実だ。市場の競合相手も強く、日本よりもかなり厳しい環境になっている。その中で成功している日本企業、欧米企業はほぼ皆無だ。参入するなら覚悟したほうがいいと、任氏は釘を刺す。

中国市場は、海外から思われている以上にかなり進んでおり、中国より優れているだろうからと日本のプロダクトを持ちこんで失敗するパターンも多い。ただグローバル統一するより、市場の求めるものを素早く作ることが肝要だ。またコーポレートの側面では、「いいか悪いか」ではなく「どうやったらできるのか」を考えることが必要だという。

また、現地社長には現地のことがわかり、本社社長とシームレスにコミュニケーションできる人材が望ましい。これが確保できないならやらないくらいのつもりでと、任氏はこのポジションに据える人物の重要性を語る。また人材市場についても、日本は平均的状況とかなりずれていることを認識し、その国の人材市場を比較対象とすることが大事だと話した。

中国市場のハードルの高さを目の当たりにする講演だったが、そのぶん魅力的な市場であることも間違いない。最後に任氏は、「やるからには簡単にあきらめない事!」とエールを送り、講演を締めた。

「位置ゲームのチカラ―テクノロジーで人を外に連れ出す」

宮嶌裕二氏
宮嶌裕二氏

中国ではなかなか見かけないという位置ゲーム。一方で日本ではさまざまな位置ゲームが盛んだ。位置ゲームを3タイトル運営しているモバイルファクトリーの代表取締役CEO・宮嶌裕二氏が、位置ゲームの人を動かす力を語った。

宮嶌氏はまず、外国人聴講者のために位置ゲームをスタンプラリーに例えて説明。Ingress、Foursquare(現Swarm)を例に出し、一般的なゲームとの最大の違いは実際に移動しないと楽しめないことと表現した。

位置ゲームのおもしろさは、ゲームを遊ぶ上で「移動する」という体験が味わえ、その経験がエンターテインメントになることにある。実際、ユーザーアンケートによると、位置ゲームをプチ旅行感覚で楽しんだり、通勤・通学を楽しむためのアイテムとして使っている声が多いという。

モバイルファクトリーでは「駅奪取」「ステーションメモリーズ!」「にゃんこプレジデンッ!」という3つの位置ゲームを運営している。位置ゲームはライフログになるゆえに継続率が高いという利点があり、またT-MEDIAホールディングスとサービス提携して運営中の「にゃんこプレジデンッ!」によって、Tポイント加盟店にはより多くのお客さんが足を運ぶようになったと宮嶌氏は手応えを感じていた。

では実際にどれくらいのユーザーをどこに送ることができたのだろうか。「駅奪取」ゲーム内で岩手県の三陸鉄道とのキャンペーンを実施したところ、1ヶ月で400人ほどが足を運んだという。また、茨城県の鹿島臨海鉄道とのタイアップではおよそ2,300人が、愛知県のお祭り「ええじゃないか豊橋」とのキャンペーンでは約2,400人が現地を訪れた。現在は東武鉄道と、沿線の名所をめぐるモバイルスタンプラリーを実施中で、「驚くべき数字が出ている」(宮嶌氏)とのことだ。

これらの事例を踏まえると、ユーザーはゲーム内アイテムや称号といったものを目的に外出していると宮嶌氏は分析する。続けて、こうして地方に人を送り込んで活性化につなげ、また街に出る体験を提供することで、自分たちのゲームは社会に役立っていると自信を持って話した。今後は国内だけでなく、世界進出もしていきたいと意気込みを語り、宮嶌氏は講演を終えた。

「Kick9 DaaS- モバイルゲームの中国進出に架け橋」

王勇氏
王勇氏

Kick9は、モバイルゲームを海外展開させるための「Kick9 DaaS」というサービスを展開している企業だ。基調講演「Kick9 DaaS- モバイルゲームの中国進出に架け橋」では、Kick9 CEOの王勇氏が「Kick9 DaaS」を通じて見た中国市場を語った。

Kick9は2014年4月に設立され、「NBA All Net」などモバイルゲームのグローバルパブリッシングから事業をスタート。NBAや「豆しば」といったIPタイトルのソーシャルゲームの開発や、中国のモバイルゲーム市場に対するIPのコンサルタントも行っている。

中国市場の市場規模は2014年に約5,000億円、2015年はおそらく8,000億円に届くかという非常に早いスピードで成長している。ユーザーは6億人ほどいると考えられ、2016年には世界一の市場になると王氏は見ている。

日本や海外の企業が中国に進出する際、ローカルパブリッシャーに自社タイトルを預けて展開させようとするが、過去3年を見てもこれはほぼ成功していないと王氏は語る。パブリッシャーのリクエストとデベロッパーのコミュニケーションがうまくいかず、市場のポジションを確保するタイミングを逸してしまうからだ。

またマーケティングにおいてもパブリッシャーには大きなコストがかかる上、Androidプラットフォームに支払う費用もかさみ、大きな利益を出すことができない。つまり、パブリッシャーは早いサイクルでゲームを回さないと生き残れないので、配信から3週間ほどで結果が出ないタイトルは“塩漬け”にしてしまうのだ。

一方、デベロッパーから見てもパブリッシャーに利益を取られてしまうため、収益性は自ずと低くなる。そして前述のとおりコミュニケーションコストもかさむうえ、マーケティングに主導権はないので具体的な数字も見ることができない。このようなミスマッチにより、日本のゲームと中国市場、双方の相互評価が落ちていってしまう。

しかし王氏は日本のゲーム、海外のゲームに可能性を感じているという。中国のモバイルゲーム市場にいる6億人のうち、ほぼ半分が25歳から45歳という、消費力があり、教育水準も高い人たちだ。ゆえに、多様性のあるニーズが生まれている。

このニーズに応えるゲームを配信するため、デベロッパーとパブリッシャーのコミュニケーションを円滑に進めるソリューションが「DaaS(Disribution as a Service/ダス)」である。

DaaSにおいては、200に及ぶストアへの対応など、開発側ができないこと、ハードルが高いことKick9が行う。そしてローカライズやオペレーションなど、自分たちでできることはやってもらう。これにより、配信時期や予算などが開発側でコントロールすることができ、自分の力で中国市場に挑戦することができるという。

王氏は、アジアのコンテンツはもっとアメリカで強くなっていくと展望を述べ、どんどん日本のゲームもDaaSシステムを使って世界に輸出したいと語り、講演を締めくくった。

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