7月30日より佐賀県にて行われているスクウェア・エニックスの「サガ」シリーズとのコラボレーション企画「ロマンシング佐賀3」。ここでは、オープニングセレモニー後に行われた合同インタビューについてお届けする。
すでに「ロマンシング佐賀展」オープニングセレモニーやコラボショップ、スタンプラリーの模様についてお届けしている「ロマンシング佐賀3」だが、オープニングセレモニーの終了後、スクウェア・エニックスの河津秋敏氏と市川雅統氏、そしてイラストレーターの小林智美氏にインタビューを実施した。
三名に今回のコラボや「サガ」シリーズへの想いを色々と語ってもらったその模様をお届けしよう。
――まずは「ロマンシング佐賀3」の開催、おめでとうございます。早速ですが、今回の「ロマンシング佐賀3」で新たなコラボグッズがたくさん発売になりましたが、どれがお気に入りでしょうか?
市川氏:海苔のデザインは気に入っていますね。うちの社内でも海苔は評判でした。海苔の似合うキャラクターというのもなかなかいないので、面白いところにいったなぁと思っています。
――キャラクターのイメージから湧いたコラボグッズとかはありますか?
市川氏:「ゆきだるまのブラックモンブラン」ですね。「ブラックモンブラン」の製造元の竹下製菓さんのほうから提案をいただき、あのようなデザインになりました。コラボ先の企業さんから提案がをいただいたり、あるいはこちらから提案したり、お互いに調整を重ねています。提案はしてみたものの、合う、合わないなどはやはりありましたが、最終的にいい感じに仕上がったと思います。個人的にはモニカの紅茶のデザインが一番好きだったりします。
小林氏:どれも素敵だったんですが、海苔は実物を見て「これはいい」と思いましたね。「ロビンだよ」と(笑)。サイダーも、瓶が小柄なので、これ飲み終わったら花瓶になるなぁ、と。あと紅茶も、レオニード様とかエレガントな感じでいいなと思いました。
河津氏:ファイアブリンガーの扇子が、「サガ スカーレット グレイス」の初のグッズなので感慨深いです。いい感じにできていると思います。
――「ロマンシング佐賀 原画展」をご覧になっての感想をお願いします。
市川氏:佐賀県立美術館には改装された後(2015年7月にリニューアルオープン)は訪れていなかったので、あまりに広くて綺麗で、すごく驚きました。小林さんのイラストが美しく映えていましたね。
小林氏:私は16年前に滋賀県の美術館で、いのまたむつみさんや高田明美さんなどとグループ展をさせていただいたことがあるので、その16年前の個展と同じような雰囲気かと思っていたんですが、この美術館は天井が高くていいですね。私の絵は割と大きいですし、変化に富んだ展示をしてくださっているので、色々感動しました。
実はもっと開発資料とかも展示されているんだろうと思っていたのですが、本当にほとんど私の絵しかなくてちょっとびっくりしました。すごく嬉しかったです。
河津氏:自分の場合はいつも一番最初に小林さんの絵を見るんですけれども、まだ線画で色がついていない段階なんですね。そこで「これはもうちょっとこうしてください」とか「OKです」とか出してしまい、そのあと色を塗った完成品は自分はちらっと見るだけであとは担当のディレクターだったり宣伝担当だったりに任せてしまうので、いざ色のついた原画をじっくり見たことがほとんどないんです。
自分もあまり見たことがなかったので、今回こうして近くで見ることができて嬉しいです。特に最近はデジタルでのものづくりが進んでいますし、こうしてアナログ感を感じられる絵を見られるのは貴重な機会ですね。楽しんでいただけると思います。
小林氏:やっぱり絵がこうして額装されると、おめかしされるような感じになるのがいいですね。いつもアトリエでは雑然とした机の上に乗せて描いていますし、綺麗におめかしされた状態で見ると感動もひとしおです。
市川氏:小規模な展示はともかく、「サガ」シリーズのここまでの大規模な展示自体、初めてなんですよね。小林さんのイラストをあそこまでずらっと並べているというのはスクウェア・エニックスの社内の人間でも誰も見ていないので、非常に壮観だなと。他の方のイラストも多少ありますが、初めてあそこまで綺麗に展示したので、これはやっぱり素晴らしいことだと思います。
――今回70点程の作品が展示されていますけれども、思い出深い一枚をお願いします。
小林氏:決められないですね(笑)。でもやっぱり大きな絵は精神力も体力も使うので、今年の四月ごろに描いた「サガ スカーレット グレイス」の「光焔万丈」というタイトルの絵は気に入っています。そもそもファイアブリンガーがキャラクターとして私自身気に入っているので、昨年発表したファイアブリンガーの絵も気に入ってますね。
あとは「サガフロンティア」の絵もでしょうか。当時「話が七種類あるので絶対七種類イメージイラストを描いてくださいね!」と言われまして、「エー!」ってなりながら必死に描いていたことが走馬灯のように思い出されました(笑)。
市川氏:ここ数年智美さんのおうちに結構イラストを取りに伺っているんですけれども、先程おっしゃられていた「サガ スカーレット グレイス」の「光焔万丈」はタクシーに入らなくて、私が車を運転して取りにいったのが思い出深いです(笑)。でもそれだけ大きな絵も、これだけ大きな美術館だとすごく映えるなと思いますね。
小林氏:私は普段からアルシュというフランス製の特別な紙を使っているのですが、その「光焔万丈」はアルシュ紙の特大サイズを使っています。特大サイズは横103cmあって、そのサイズの紙を入れられる袋が売られていないんですよ。なので取引先にお願いして段ボールをいただきまして、そこに絵を挟んでお渡ししましたね。
特大サイズといえば、先日画材屋さんにいったら縦110㎝、横9メートルという更に大きい紙があって、「これは天野喜孝さんの絵のサイズだ」と思いました(笑)。私もいつかこのサイズの絵を描きたいなぁと思いつつも、部屋に広げられないので巻物のようにくるくると巻き取りながら描くしかないのかなぁ、なんて勝手に想像したりしましたね。
河津氏:思い出深いというか、攻略本のために描いてもらったミンストレルソングの絵が、背表紙部分が空白になっていて両側に分かれて絵がデザインされているんですけれど、絵として見てしまうと「どうしてこういう構図になったのかな」と不思議になりました。攻略本のための絵ならではと思いましたね。
――皆さんが感じた佐賀県の魅力をお願いします。
小林氏:牛ですよね、牛(笑)。
市川氏:熱い方が多いなと思いますね。色んな企業さんとコラボさせていているのですが、佐賀県の方々はすごく情熱的だなと思います。特に印象に残っているのが肥前吉田焼のグッズを作っていただいている224ポーセリンさんで、イベント開始に間に合うか間に合わないかのギリギリまで、何度も試作を重ねてくださいました。
今回たくさんグッズを作らせてもらいましたが、どれもいいものになっていると思います。佐賀の人たちと一緒にものを作りつづけられているのは、私にとって良い経験になっています。
河津氏:自分は熊本県出身の九州人なのですが、佐賀県だからこそできたコラボだと考えています。いい意味で佐賀県はコンパクトで、凄い集中してやれるのが魅力ですね。
小林氏:佐賀の鹿島市に友人がいるのですが、「お酒が美味しいので鹿島市にもおいで」と言われて、嬉野からも近いそうなのでそこに行ってみたいです(笑)。
――展覧会で絵をご覧になって色々と胸を過ぎるものがあると思いますが、その中でも開発当時の思い出がありましたらお聞かせください。
小林氏:私にイラストを依頼する際、河津さんの頭の中ではイメージができているようなのですが、それを河津さんが言葉にしたときに私が違う風に受け止めてしまって、そういう時はリテイクが何度もくるんですよね。
――特にリテイクが多かったキャラなどは覚えていますか?
小林氏:ヒューズですね。あと今回も展示してある「サガ スカーレット グレイス」のキャラクターの依頼時に「北関東風です」と言われたんですが、北関東風というのがわからなかったので弟に聞いてみたら「北関東といえば群馬でしょ」と返されて、「あ、そうか」と(笑)。
最終的に河津さんにジェームズ・ディーンみたいな感じと言われて、じゃあそんな感じで描けばいいのかと思って、顔だけ10種類くらい描いたのに全部だめでリテイクがきた時は自分でもなんだかもう変な笑いが零れてきてしまいましたね。
――11月から予定されている有田とのコラボのほうはいかがですか?
市川氏:これは今企画を練っているところです。現在佐賀市、嬉野市で開催しているイベントとはまた少し違う展開を考えていますので、発表を楽しみにしていてください。
小林氏:有田焼の絵付けがまたやりたいですね。前に描かせてもらった時、一番細い筆を使ったのに、私は結構線が太くなってしまったんですよね。顔の部分だけでも直径5~6㎝ほどのサイズがないと描けないと感じたので、そうなるとやっぱり大皿かなぁとか思っています。でもあれ中腰で描くんですよね。小さいと普通に描けるんですけど、大皿はそういうわけにいかないので。
――嬉野のほうのコラボは実際に行かれてみてどうでしたか?
市川氏:コラボメニューの販売と、グッズも置いていただいている224ポーセリンさんは、すごくおしゃれなところでした。お茶淹れ体験ができる中島美香園さんでいただいた嬉野茶も、本当に美味しかったです。宿にも二ヶ所行かせていただきましたけれど、嬉野館さんと入船荘さん、どちらも素晴らしかったですね。
実際もうかなり予約でいっぱいになっているものですから、私たちも宿泊できなかったんですけれど(笑)。すごくいいところで、嬉野でゆっくりしていきたいなぁと感じました。街自体、とても楽しめるところだと思いますね。
――「佐賀風呂」のほうは入られましたか?
市川氏:足湯だけ入ってきました。街の中心地にある足湯が「佐賀風呂」仕様になっていて、キャラクターのイラストがたくさん配置されていて壮観ですね。ぜひ体験してみてほしいです。足湯に浸かっているとどっと疲れが抜けていきますよ。癒されます。僕は自分で佐賀市内から運転して嬉野まで行ったんですが、慣れない道の運転って疲れるじゃないですか。その疲れが足湯ですごく抜けました(笑)。
――コラボのお宿はかなりの人気のようですが、今後拡大される予定とかはないんでしょうか?
市川氏:そうですね、温泉が気持ちいい時期にもう少し泊まれる宿を増やせられればいいなと考えています。
――グッズはやはり通販したりするのは難しいですか?
市川氏:以前の有田焼みたいに受注生産だと、注文していただいた分だけ作ればいいので出来なくはないんですが、在庫が残るとどうしても(笑)。
河津氏:実際「ロマ佐賀」のコラボグッズは、ゲームとコラボして商品を作るのが初めての方ばかりなので、皆さん手探り状態なんですよね。どれくらい売れるかも、どういう反響もあるのかもわからないので。そういう中で少しずつやっていければと思っています。
この先我々も含めて経験値が上がれば、通販なども可能になってくるでしょうね。それこそARTNIAやe-storeで販売したりもできるかもしれませんし。
――「ロマサガ3」は小林さんと河津さんにとってどのような作品でしたか?
小林氏:河津さんが当時「今回はこういうテーマなんだ」と話してくれて、「おお」と感動したのですが、それ多分NGなので話せないですね(笑)。「今回はこういう話ですか?」って言ったら「違う、そうじゃなくて」とメールで色々教えてくれたんですけれど(笑)。
もしかしたら河津さんがぽろっと言うかもしれないことに期待していてください。なんかこう、感動するテーマです。長いこと生きてきて思うことがテーマになっていると思います。
河津氏:ロブスターとかゆきだるまとかですかねぇ(笑)。ゆきだるまは最初にお願いしたときは普通にヨーロッパ風のサンタクロース風なものが返ってきたんですよね。「いやそうじゃなくて日本風ので」って戻しました(笑)。
小林氏:タイヤメーカーの「ミシュラン」のぼこぼこしたキャラクターがいるじゃないですか。ああいう感じで最初描いちゃったんですよね。
河津氏:それで「そうじゃない」と。あとロブスターは後ろに星がついているんですけれども、「なんだこれこんな指定俺はしていないぞ」となりましたね(笑)。あれは小林さんが何も言わずに黙って後ろに星をつけたんですよね。
小林氏:何か模様がないといけないかと思って、一生懸命模様を考えて、変化をつけようと思ったらそうなったんですけどね。
河津氏:何も言わずにそういうことをするから(笑)。
――それも、「ロマサガ」が三作目になってお互いに色々と気心が知れてきたからこそなのでしょうか。
河津氏:というよりかは、前の二作をやってきて、こちらがお願いした以上のものを上げてきてくれるのはわかっていたので、あまり言わないようにしていたのはありますね。
「ロマサガ2」の時のトカゲも、僕は「トカゲ」としか指定していなかったのに絵としてエリマキトカゲが上がってきて、「これはすごいな、プロのイラストレーターだな」と思いましたね(笑)。社内のアートの人間に「トカゲ描いて」って言っても、絶対あれは返ってこないですよ。普通はあそこまでは踏み込めないですね。
小林氏:我が家には資料として様々な図鑑があるんですが、「トカゲ」って言っても色々種類があってこういうものもいるんだなぁ、と図鑑を眺めながら感じた中で、ふとエリマキトカゲにしよう、と思って描いたんじゃないかなぁと思います(笑)。
――――もう覚えてないんですね(笑)。ありがとうございました。