「NOeSIS」で相反する人格を好演＆ED曲の歌唱と作詞も担当！3rdシングル「雨の菫青石」佐藤聡美さんインタビュー

声優・アーティストとして活躍している佐藤聡美さんの3rdシングル「雨の菫青石」が10月12日（水）にリリースされる。

表題曲「雨の菫青石」とカップリング曲「恋は劇薬、口に甘し。」は、ともに自身が鷹白千夜／鷹白一夜役として出演しているゲームアプリ「NOeSIS 羽化」フルリメイク版のエンディング主題歌。もう1曲のカップリング「crystal song」（OVA「英雄」解体 主題歌）も含め、収録曲の作詞はすべて佐藤さん本人が担当している。

「NOeSIS 羽化」は、スマホ向けADVゲームとしてカルト的人気を博したサスペンスAVG「NOeSIS」シリーズのフルリメイク第二弾。原作者・cutlass氏がすべてのシナリオの見直し・テキストの全リライトを行い、原作（＝フリー版）には登場しない新キャラクターの追加やゲーム内のデザインの刷新など、すべてをフルリメイクしている。

今回、3rdシングル「雨の菫青石」の発売を間近に控えた佐藤さんにインタビュー。「NOeSIS 羽化」の魅力や作品を彩る楽曲についてたっぷりと語っていただいた。さらに、佐藤さんのゲーム嗜好についても聞いているので、そちらもぜひご覧いただきたい。

「NOeSIS 羽化」はミステリーホラー系の醍醐味が詰まった作品

――まずは「NOeSIS 羽化」についてお聞きしたいと思います。本作の魅力や面白さはどこだと感じていますか？

佐藤さん：ミステリーやホラーといった部分はやはり「NOeSIS」シリーズの大きな魅力だと思います。ちょっとグロテスクな表現もありますが、とにかく文章の描写がすごくリアル。台本を読みながら「振り返ったら何かいるんじゃないか」と思うほど伝わってくる情景が怖くて、怯えながら台本チェックをしたぐらいです。

また、今作「羽化」は、前作よりもキャラクター1人1人にググッと踏み込んだシナリオが用意されています。しかも、今まで抱いていたキャラクターのイメージや、きっとこういう感情を抱いているんだろうなと思っていたものが裏切られる内容となっているんです。プレイしながら答え合わせをしていく感覚も楽しめるのではと思います。

――シリーズ第二弾ではありますが、今作から入っても大丈夫でしょうか？

佐藤さん：もちろん前作を知っていた方がより楽しめますけど、丁寧に描かれているのでキャラクターの顔と名前と特徴が一致していれば全く問題ないと思います（笑）。シナリオのボリュームも膨大なので、「羽化」だけでもとても満足度が高いですよ。

――その中で佐藤さんは鷹白千夜と鷹白一夜を演じています。この2人はどのようなキャラクターなのか教えて下さい。

佐藤さん：千夜と一夜は、ひとつの体に2つの人格がある、いわゆる“二重人格”なんです。千夜はとても賢く、謎を追って主人公の時雨くんと行動をともにしていて、自身が抱える闇と現状との間で葛藤するところと年相応に照れるところのギャップが可愛い、いわゆるツンデレ要素のある子です。性格はとてもクールで、自分以外の人のことを「ブタ」と平気で言うような、ちょっとぶっ飛んだところもあります。一部のファンにとっては「ブタ」と呼ばれるのがご褒美だと耳にしたことがあるので、そういう属性をお持ちの方にはとても相性のいいキャラクターだと思います（笑）。

――それと対照的なのが一夜です。

佐藤さん：一夜は千夜とは正反対でとてもおっとりしていて、お姉さんキャラクターです。時雨くんのことは弟のように接しているのですが、彼女も腹にドス黒いものをしっかりと抱え込んでいて、今回の「羽化」ではそれがどんどん暴かれていきます。今作の鍵を握るキャラクターでもあるので、たまに核心めいたことを言ってくるんです。

――ちょっとした発言や気になる部分は注目ですね。

佐藤さん：普段は「～ですよぉ」とボケボケしているのに、突然真面目なことや意味深なことを言い出すことがあって。それが物語の鍵になっていたり、彼女のバックボーンを表していたりするので、シリアスな一夜もチェックして欲しいです。

――サスペンス系のノベルゲームはそういうところも醍醐味ですからね。

佐藤さん：そうなんですよ。こういうミステリーホラー系の作品は、言葉の裏を読む快感もありますよね。キャラクターが可愛い、内容がぶっ飛んでいる、ということに加えて先を読む力も重要な要素であり、それが試される作品でもあるのかなと思います。

――千夜と一夜は二重人格で、それぞれも多面性のあるキャラクターですが、演じる上で大変だった点はありますか？

佐藤さん：2人の気持ちや考えていることが、（演じている）私は当然わかるんですよ。でも、2人はお互いに相手の思惑を知らないわけなので、千夜を演じながら「実は一夜はこう思っているんだよ」と複雑な想いになったり、やきもきした気持ちになったりしました。ただ、台本が緻密だったおかげで、演じ分け自体はスムーズに出来たと思います。

演じたからこそわかるのですが、違う視点から作品を見ると、新たな感じ方や発見、考察が出来る要素がたくさん散りばめられている作品なんです。1回だけでなく別のキャラクター視点で2回、3回とプレイしていただくことで、「NOeSIS」の沼にズブズブとハマっていただけるかなって（笑）。

――2人のシナリオで特に見て欲しいシーンを教えて下さい。

佐藤さん：千夜は一夜のことをすごく大事にしているんですが、とあるシーンでは珍しく感情的になって具体的な言葉で自分の想いを口にするんです。普段はクールで思ったことを淡々と喋るキャラクターなので、「こんなに感情的な一面があったんだな。感情的にさせてしまう対象が一夜なんだな」と良くも悪くも衝撃を受けました。

――では、一夜の方はいかがですか？

佐藤さん：一夜は、自分の生まれてきた理由を教えてくれるシーンで泣けてきちゃいました。「そんな理由で生まれてきたんだね」と思って。この作品は“哀しさ”が魅力のひとつで、読んでいて哀しい気持ちになることが多々あるんですけど、こういったシーンでは特にそれがドラマチックに描かれていると思います。

千夜と一夜の根底にある感情はなんだろうなと考えた時に、「喜怒哀楽」のうち「喜」と「楽」では絶対になくて、根底にあるのはマイナスな暗いものだと思うんです。でも、時雨くんが真っ直ぐな気持ちや喜びといった温かい気持ちをくれて、段々と人間らしくなっていくんですよ。私自身、時雨くんがいて良かったなと感じながら収録していたので、ぜひそういう目線でもプレイしてもらいたいです。

菫青石には多面性や真実を見抜く力、羅針盤という意味があります

――それでは、シングルの話をお聞きしたいと思います。今回は全曲をご自身が作詞をされていて、特に「雨の菫青石」と「恋は劇薬、口に甘し。」は千夜と一夜のエンディング主題歌です。作詞をしたきっかけから教えて下さい。

佐藤さん：もともと私の方から「次にシングルが出たら作詞をやりたいです」と話をしていたんです。そうしたら「『NOeSIS』のタイアップ曲としていかがですか？」と言われて、「やらせて下さい！」と。実は、以前ドラマCDで2人を演じた時に、原作の先生から「いつかアプリや据え置きのゲーム、アニメなどになることがあったら佐藤さんに歌ってもらいたい」という嬉しい言葉をいただいて。私もいつか「NOeSIS」の曲を歌う機会があればいいなと思っていたんです。念願叶っての今回の2曲だったので、作詞にも力が入りました。

――先に曲をいただいてから作詞をしたそうですが、曲の第一印象はいかがでしたか？

佐藤さん：作曲をお願いする前に、プロデューサーさんたちと話をして「千夜の曲なら壮大で、でも悲しくて。弦の音とか入っていたら美しくていいですね」「逆に一夜は女の子っぽくて可愛らしいキャラクターなので、お花畑のようなイメージで」などとリクエストを出していたんです。そして、実際に曲をいただいたら「雨の菫青石（アイオライト）」の方はイメージ通りだったんですが、「恋は劇薬、口に甘し。」の方は「なんか難しい曲がきた！」と正直びっくりしました。でも、「羽化」の一夜は何でもありのキャラクターになっているので、曲もこのぐらい変化球の方が救われるかなという思いもありましたね。

――メロディや歌声がとても素敵であると同時に、シナリオを最後まで読んだ上で聴けばさらに違う感じを受けると思います。特に「雨の菫青石」の詞はかなり深みを感じましたが、どのような思いを込めたのでしょうか？

佐藤さん：この曲は“起承転結”を重視して作詞をしました。シナリオとリンクしたらいいなと思って。先ほど、千夜が冒頭で感情をあらわにしたと話しましたが、彼女の怒りや煮え切らない思いは収録していて印象的だったので、どうすることも出来ない苛立ちを曲の前半に持ってきています。そして、後半は時雨くんに助けてもらうことで、どんどんと光のある方向に歩いて行くという内容になっています。彼女の気持ちの流れを追いつつ、この曲がパズルの最後のピースになるように意識したので、そういう風に受け取ってもらえたら嬉しいです。

――“菫青石（アイオライト）”は見る角度によって色が変わる宝石ということで、まさに多面性を象徴していますよね。作品の中に宝石は出てくるのですか？

佐藤さん：出てこないんです！！（笑）

――出てこないのに使うのはセンスがすごいなと思います。2曲目には「アメジスト」が出てきて繋がりを感じますし。

佐藤さん：アイオライトは多面性や二面性がある中で真実を見抜く力、羅針盤というような意味があるんですよ。歌詞やタイトルの「アイオライト」の部分は、夜や青をイメージ出来るフレーズはないかと探していた時に、「そういえばパワーストーンっていろんな色や意味があるよね」と見てみたんです。その中で「アイオライトがすごく綺麗だな」と思って調べたら、ちょうど意味が多面性や二面性とあって「NOeSIS」にピッタリだなって。「菫青石」はアイオライトの和名なんですよ。

――「きんせいせき」ですね。

佐藤さん：そうです。それをあえて漢字にすることで、「NOeSIS」の言葉の美しさや、言葉のトリックといったものを彷彿とさせられるんじゃないか、あえてこういう書き方をしていることで作品のファンにニヤッとしてもらえたら嬉しいなと思って。ちなみに、2曲目の「アメジスト」は恋のお守り、恋愛の石なんです。3曲目には「クリスタル」も出てきます。

――アメジストはなぜ選んだのですか？

佐藤さん：振り向いてくれない、何の見込みもない恋、というのをテーマにしたかったので選びました。実は、宝石の色のことでちょっとした裏話がありまして。

――ぜひ聞かせてください。

佐藤さん：ここ最近にガンプラを初めて作ってから、すごくハマっていまして。事務所に「ガンダム同好会」というのがあり、そこの仲の良いメンバーたちと「紅武者（レッドウォーリア）アメイジング」を組み立てて、“隠密集団”という設定で自分の好きなカラーリングにしたんですよ。エメラルドとかトパーズとか。私はカーネリアンというオレンジ色の機体を作りました。それをきっかけに宝石のことをいろいろ見ていたので、多分ガンプラを作っていなかったら「アイオライト」や「アメジスト」という言葉は出てこなかったんじゃないかと思います（笑）。

※これらの作品は「PVC展覧会」や「山口キヨヒコ SD SHOW」などで展示された。

――今回の作詞の原点にはガンプラがあったんですね！

佐藤さん：そうなんです（笑）。何がどこで生きてくるかわからないですよね。ガンプラの塗装から宝石にいろんな意味があると知って、それを作詞にも取り入れました。「アイオライト」「アメジスト」「クリスタル」という単語そのものが裏テーマであることを感じてもらえたらいいなと思って、3曲とも宝石の名前を入れたんです。

――宝石は神秘性があるので作品に合うと思いますし、1曲目はそれに「雨」を組み合わせているのがオシャレだと感じました。

佐藤さん：主人公が「時雨」という名前だから、「雨」は入れたいなと思っていたんです。雨は凶器にもなるし希望にもなると私は捉えていて。千夜にとって時雨くんは、最初は本当に異物で受け入れられないもので、「言っていることが1mmも理解出来ない。邪魔。嫌い」という存在だったんです。そんな頑なだった気持ちを洗い流してくれるというか、新しく生きる勇気や意味をくれる存在が時雨くんなのかなって。雨にもブルーのイメージがあるので、アイオライトと雨という単語を組み合わせました。

――レコーディングで意識した点はありますか？　演じたからこそ感情の込め方も違ってきたのではと思うのですが。

佐藤さん：そうなんですよ。ずっとキャラクターと寄り添ってきたし、でも思いが強すぎてもいけないし……と悩んでいたら、ディレクションをしてくださった編曲のSiNさんがアドバイスをたくさんくださいました。SiNさんは私が声優であることを尊重して「佐藤さんはキャラクターとか作品のことをわかっていると思うから、このフレーズはお芝居をいれてもいいですよ」と言ってくださって。そのおかげで変にフラットにならずに、しっかりと千夜というキャラクターを気持ちの真ん中に置いた状態で、でもキャラクターソングではなく佐藤聡美として歌うことが出来たと思っています。とても新鮮なレコーディングでした。

――曲自体にグッと来るところと、キャラクターの心の奥の奥にある気持ちが刺さるところと、まさにその両面を感じられる曲だと思います。

佐藤さん：いろいろディレクションしていただいた中で、「歌手の人には出来ないことが声優さんには表現として出来る、また逆もしかりだから、自分の本業である声優という部分を大事にしてくれた方が嬉しい」とも言っていただいて、自信が持てました。アーティストと声優とどっちに寄りすぎてもいけないんだろうなと葛藤したままレコーディングに臨んでいたのが、その言葉をいただいてすごく素直な気持ちで歌えたと思います。

カップリングには仕掛けやギミックが満載

――「恋は劇薬、口に甘し。」はポップでアップテンポな楽曲です。一夜は何でもありと話していましたが、歌詞も面白いですし曲の中にいろいろな要素を取り入れていますね。

佐藤さん：「雨の菫青石」は千夜や作品を象徴する曲にしたいなと思ったのに対して、この曲は“一夜から見た時雨くん”をテーマにして書きました。皆さんが一夜に抱いているイメージである「可愛らしい」「ポップで天然」といった等身大の感じをあえて出す面白味といいますか。それを出した方が一夜ルートは救われると思ったんです。もっと大きな意味で言えば“片思いしている女の子の歌”なので、そういう状況の人は感情移入してもらえるかなと思いながら書きました。

――ポップな恋愛ソングとして聴いても心地いいですし、キャラクターにもすごく合っていますよね。実際のレコーディングはいかがでしたか？

佐藤さん：この曲はギミックがふんだんに取り入れているんです。例えば、イヤホンで聴くと左右で音が違ったり、逆再生でしかけがあったり、セリフも入っていたり。「NOeSIS」が好きな人ならこういう遊びが好きだろうなというものが満載なので、何度も何度も聴いて解析していただく楽しみもあると思っています。

レコーディング自体は比較的スムーズにいきました。ポイントを挙げるなら、Dメロの「うばわないで さわらないでね」の部分は彼女の本質的な切ない気持ちをしっかり出そうと意識しています。完成するまでは不安もあったんですが、いざ聴いてみたら面白い曲に仕上がりました。スルメ曲になると思いますので、ぜひヘビロテして好きになってもらいたいです。

――曲中に入っているセリフはゲームで出てくるセリフそのままなのですか？

佐藤さん：そうです。全部作品の中からプロデューサーさんがチョイスしてくださいました。印象的な言葉だけはしっかり聴こえるようにしているんですけど、それ以外は私も何と言っているのかよくわからないので、「あのセリフかな？」と謎解きのように考えてもらえたら面白いですね。

――3曲目「crystal song」はどのような曲でしょうか。

佐藤さん：この曲はOVA「英雄」解体の主題歌です。「自分が自分らしくいることが一番大事だ」ということをテーマに書いています。ファンタジー作品ですので、言葉のチョイスはファンタジー寄りにしていますが、応援ソングになったらいいなという意味も込めています。高校、大学、社会人、転職など新天地に移って戸惑うことって誰しもありますよね。でも、歌詞にあるように「鎧に隠れたままじゃ誰の瞳にも映らない」と思うんです。だから、自分が自分であることを大事にして欲しいなという思いで書きました。

――聴く人それぞれが主役になる曲なのですね。

佐藤さん：そうですね。3曲とも感情移入をバリバリして聴いてもらうととても気持ちがいいと思いますし、そういう風な聴き方は作品としてもマッチするのかなという気がします。

高校の夏休みは乙女ゲームに費やしました（笑）

――最後にゲーム全般のこともお聞きします。佐藤さんは普段からゲームをしますか？

佐藤さん：します！

――どんなジャンルが好きなのですか？

佐藤：一番好きなのは乙女ゲーム。あと、パズルゲームも好きです。今まで据え置き機のRPGはあまりやっていなかったのですが、8月に発売した「テイルズ オブ ベルセリア」でマギルゥというキャラクターを演じさせてもらったので、この夏は腰を据えてPS4に向かっていました。とっても楽しいです！　基本的にゲームはすごく好きで、「NOeSIS」はもちろん第一作からダウンロードしてプレイしました。でも、怖い絵がバンと出てくるので明るい時間にやることにしています（笑）。

――ちなみに、一番好きだった乙女ゲームは？

佐藤さん：最初にやった乙女ゲームは「アンジェリーク トロワ」で、そこから「遙かなる時空の中で」にいき、「金色のコルダ」をやって。私はファンタジーよりも学園モノが好きなんだと思っていろいろプレイした中で「うたの☆プリンスさまっ♪」にハマりました（笑）。

でも、一番やりこんだのは間違いなく「ときめきメモリアル Girl's Side」ですね。高校の夏休みは「ときメモ」に費やして、スチルも全部集めました（笑）。その時やっていたのは1作目ですね。その後、2作目、3作目もやり、3作目はPSP版をやり込み過ぎて睡眠時間がなくなって大変でした（笑）。

――本当にゲームがお好きなのですね。またぜひゲームの話を聞かせて下さい！

佐藤さん：ぜひぜひ！　その時は“私のルーツは「サモンナイト」”というところから話さないといけないですね（笑）。