イチオシのギャルゲーを大ボリュームで紹介する連載企画「ギャルゲー一本釣り!!」。第36回はdramatic createより2016年11月24日に発売されたPS Vita用ソフト「乙女理論とその周辺 -Bon Voyage-」の魅力をお届け!

目次
  1. ストーリー
  2. キャラクター
  3. プレイインプレッションをお届け!

三度の飯よりギャルゲーが大好きな私が己の煩悩の赴くまま旬のイチオシゲームを紹介する連載企画「ギャルゲー一本釣り!!」。今回はdramatic createさんより2016年11月24日に発売された「乙女理論とその周辺 -Bon Voyage-」を紹介しますよ!

ギャルゲー好きはおなじみのゲームブランド・Navelさんが、ハイスペック女装っ子の学園潜入ラブコメ「月に寄りそう乙女の作法(以下、つり乙)」シリーズの第2弾として発表した「乙女理論とその周辺」。同作に新たな要素を追加してPS Vitaでリリースされるのが、今回紹介する「乙女理論とその周辺 -Bon Voyage-(以下、乙りろ)」です。

原画にはイラストレーターの鈴平ひろ氏、西又葵氏、シナリオには東ノ助氏、王雀孫氏、森林彬氏、真紀士氏と、盤石のスタッフが参加する本作は、舞台をパリに移し、人気キャラクターである妹の大蔵りそながメインヒロインに昇格、さらに新たな攻略ヒロインやサブキャラクターが登場するなど、前作の世界観をベースとしつつも新たな物語が展開します。

記事を読んでくださる方には前作をプレイされた方もいるかとは思いますが、正直なことを申しますと私は前作を全くプレイしていないという体たらくです。しかしながら実際にプレイしてみると、そうしたことが全く気にならないほどにゲームにのめり込んでしまいました。ストーリーとキャラクターのプロフィールを先に確認しつつ、本作ならではの魅力を紹介していきたいと思います!

ストーリー

主人公「大蔵遊星」は、日本の財界を代表する“華麗なる一族”大蔵家の末端に、望まれぬ子として生を受けた。長じて人並みの夢と希望を手に入れた遊星は、性別を偽り「桜小路ルナ」に仕えることで、大蔵家という自らを閉じこめる籠を脱して夢の一端に触れることができた。しかし些細なミスで掴んだ夢の端は崩れおち、居場所をなくした遊星は、兄に拾われて再び籠の中の鳥となった。

遊星の妹「大蔵里想奈(りそな)」は、大蔵家の嫡子と正妻の間に生まれ、愛の上に愛を重ねて大切に育てられた。何一つ不自由なく育てられた里想奈だが、幾重にも重ねられた両親の愛は、やがて固まり歪な繭となって、さなぎになる前の彼女を包みこんだ。里想奈が気付いた頃には、その繭は自力で破れなくなってしまった。居心地の良い繭の中で抵抗する気力を奪われ、里想奈は外へ出ることを捨てた。

 ――ある日、彼らの兄は試みとして、籠の中へ繭を放りこんだ。

里想奈は外の世界に憧れて、兄に尋ねた。「私は繭の外へ出られますか」

遊星は繭を啄き、その殻を嘴で壊せることに気が付いた。「出られるよ」

安全だった籠と繭を捨て、遊星と里想奈は微笑みあいながら同じ言葉を口にした。「二人なら旅立てる」――

「フィリア女学院日本校」へ通えなくなった遊星のため、りそなは「パリ本校」への留学を提案する。遊星は再び庶民の娘「小倉朝日」となり、りそなに使えるメイドとして、服飾専修機関へ通うこととなった。

パリには新しい少女たちとの出逢いがあった。純粋な心に卓越的な才能を持ちあわせる「メリル」。その主人であり、明るく親切に二人を迎える「ブリュエット」。同級生の「リリアーヌ」や、個性的な留学生の「ディートリンデ」。そしてそれぞれの従者たち。

新しい国で様々な出会いを経験し、遊星兄妹の主従としての生活が始まった。遊星=朝日は自らの夢を追い、りそなは自立するための勇気を求める。しかし全てが前途洋々に進むはずもなく、新天地の厳しさ、二人を逃がした兄、さらには大蔵家の追跡が襲いかかる。

果たしてお互いの願いを支えあいながら、遊星兄妹は学院生活を送ることができるのか?

キャラクター

小倉 朝日(こくら あさひ)/本名:大蔵 遊星 (おおくら ゆうせい)

CV:中村繪里子
キャラクターデザイン:鈴平ひろ

身長:164cm
出身:イギリス(マンチェスター)
家柄:○ 学業:◎ 運動:◎ 服飾:◎

性別や素性を偽り、妹である大蔵りそなに仕えるメイドとしてフィリア女学院パリ校へ通う。以前に暮らしていた”桜屋敷”では、半年の間性別を隠して自然に振るまっていた。もとから万能ではあったものの、使用人として過ごすうちに家事全般のスキルは格段に上がった。本人は服飾デザイナーの道を望んでいるものの、周囲にパタンナーとしての才能を見出され、進路に迷う若者らしい一面も。極めて正常な恋愛観を持っており、同性や兄妹間での交際は考えていない。

以前は桜屋敷で桜小路ルナに仕えていたが、性別が露見したために放逐同然の形で屋敷を追われた。その後は兄に拾われ、一時落ちこみはしたものの、持ち前の明るさで現在は前向きに暮らしている。幼い頃に教育の一環として世界各地を周遊させられたため、海外での生活はお手のもの。以前にパリを訪れたこともあり、フランス語も堪能。その経験を活かして、海外留学を望む妹・りそなを側で支えるために、再び女装をして服飾専修機関へ潜入することになる。

「使用人が主人の交友関係に関わろうとするなど許されることではありませんが、彼女は私にとって肉親同然の大切なひとです」

大蔵 りそな(おおくら りそな)

CV:又吉 愛
キャラクターデザイン:鈴平ひろ

身長:149cm スリーサイズ:B85/W56/H81
出身:日本(東京)
家柄:○ 学業:◎ 運動:× 服飾:△

主人公の遊星と血の繋がった実の妹(異母兄妹)。負けず嫌いで自尊心が高いものの、見知らぬ人間の前では無口になる典型的な内弁慶。両親のいない環境で同世代の人間と接する際は対人恐怖症の域に達しており、長く不登校の時期を過ごし、現在も続いている。

幼い頃に遊星と出会い思慕の情を抱くも、その後は思春期の年齢に達するまで再会することはなかった。そのために通常の兄妹とは違い別居期間が長く、その結果憧れが肥大化し、本人曰く恋愛感情にまで発展している重度のブラコン。その他の家族に対しては、権力や財産のために争っている様を目にしていることから、同じ類の人種にはなりたくないと、遊星に対する感情とは全く逆の冷めた見方をしている。

しかし自身が他の家族と比べて能力的に劣っていることは認識しており、周囲の期待や失望に押しつぶされた結果、ある程度達観した位置から斜め下に世の中を見るようになった。

現状から脱却するために新天地での再スタートを望み、兄である遊星にパリ留学への同行を依頼することになる。

「聞いてください、妹、とうとう見つけました。スウェーデンには異母兄妹の結婚を認めた判例があってですね」

メリル(メリル・リンチ Meryl Lynch)

CV:後藤麻衣
キャラクターデザイン:西又葵

身長:148cm スリーサイズ:B80/W55/H81
出身:アメリカ(ニューヨーク)
家柄:× 学業:× 運動:× 服飾:◎

フランスの中でも、過疎化の進む片田舎の修道院で育った素朴な少女。ニューヨークからパリへ引っ越してきた両親とは死に別れ、現在は天涯孤独の身。村から外へ出た経験がほとんどなく、親切な村人のみと接してきた純粋培養の善人。修道院に訪れた老若男女様々なタイプの人たちと接したことで、他人と話すことに抵抗がない。

幼少時に修道院へ預けられていたブリュエットとは幼なじみの関係。その頃に、女性同士で結婚ができないということを知らないまま、ブリュエットと見様見真似で式を挙げた経験を持つ。現在でもブリュエットとの交流は続いており、彼女から付き人として誘われフィリア女学院パリ校へ通うことになる。

修道院では、衣服を修繕したり、時には一から縫いあげることもしていたため、立体裁断や縫製の技術を高いレベルで身に付けている。

「いいえそんな、気になさらないでください。どうしてお礼を言われているのかわかりませんが、きっと神の思し召しです」

ブリュエット(ブリュエット・ニコレット・プランケット Bluette Nicolette Planquette)

CV:清水 愛
キャラクターデザイン:西又葵

身長:160cm スリーサイズ:B88/W55/H82
出身:フランス(マルセイユ)
家柄:◎ 学業:◎ 運動:◎ 服飾:×

愛称は”エッテ”。自らの身分を顧みない、奔放で明るく、親切な旧貴族のお嬢様。ユルシュールの”ジャンメール家”や、瑞穂の”花之宮家”にも劣らない家格を持った、欧州の貴族”プランケット家”の長女。

性格には気取ったところがなく、フォーマルな場でなければ誰が相手でも同じ話し方をする。フランス内の上流階級で育ったお嬢様界隈に友人が多く、クラスでも同級生から信頼を受けている。お嬢様育ちのため金銭感覚に鈍いところがある。親切だと思えばお金を迷いなく使うため、しばしば両親に注意されている。

プランケット家の家訓で幼少時を修道院で過ごすことと決められており、そこで孤児として預けられていたメリルと知り合う。幼い頃の遊びでメリルと婚約を交わしている。メリルは子どもの頃の戯れとしか意識していないが、ブリュエットは今でも当時のことを口にしてはメリルを困らせている。

メリルのために何かをしたいという気持ちから、その服飾の才能を伸ばすために正しい授業を受けさせるべきだと考え、自分の付き人としてプランケット家で雇い、ともにフィリア女学院パリ校へ進学する。

本人が目指しているのは女優業であり、服飾生としては卒業できるだけの成績を修めれば良いと考えている。周囲にはモデル志望と嘯く。

「そんな義務的に言われても、気持ちが伝わってこないよ?」

プレイインプレッションをお届け!

「乙りろ」では、ルート分岐に関わる選択肢が共通ルートの後半にいくつか用意されていますが、基本的にはテキストを読み進めていく形で進行していきます。

先に触れておきますと、本作では主人公の小倉朝日(大蔵遊星)と、その主人にして妹である大蔵りそなを、主に2つの立ち位置で見ていくことになります。ひとつはパリという異国の地でいくつもの逆境に立たされながら生活する姿、そしてもうひとつは、服飾専修機関であるフィリア女学院に通う服飾生たちと交流をしながら切磋琢磨していく姿です。

大蔵兄妹には日本で大きな影響力を持つ大蔵家、パリの階級社会を感じさせる同級生との確執、さらには服飾生としてのさまざまな課題が立ちはだかりますが、その中で兄妹の関係、主従の関係、そして時にはそれらを超えた距離感で触れ合う2人の姿が描かれます。朝日自身の立ち位置による変化はもちろんですが、りそなが家族として、さらには一人の女の子として朝日に見せる表情の変化が魅力的に写ります。

パリで出会うことになるメリル、ブリュエットもそれぞれで立場が異なるため、攻略対象ヒロインごとに違うやり取りが楽しめるのもポイントです。りそなは前段でお伝えしたとおりですが、メリルは田舎育ちの純朴さを持ちつつ、天才的な服飾の才能を随所に感じさせる場面、ブリュエットは旧貴族の生まれでありながらも気取ったところがなく、一方で育ちが良いためか融通が利かない側面があったりと、朝日との交流を経て見せる表情が面白いです。

3人に共通するのは朝日とのやり取りを経ての変化が随所に見られることですが、メリルとブリュエットに関しては朝日を女性として認識して接しているため、いわゆる男女間の関係を描く恋愛アドベンチャーゲームの感覚とは少し違った、憧憬のようなものが見えて、そこがまた可愛らしく映る側面だったりします。

もちろんそのほかにもキャラクターは多数登場します。2人の前に何かと立ちはだかってくる兄・衣遠、朝日にとってのあこがれの存在であるスタンレー、級友のリリアーヌ、ディートリンデとその従者である華花、ヴァレリア、さらにパリで知り合い、時折親しげに話しかけてくるスルガなどなど…。もちろんフランス生まれのキャラクターもいれば、中華圏、ロシア、そして日本と生まれ育った環境が幅広く存在します。それに対して朝日が見せる驚異的な対応力も、“ハイスペック女装っ子”たる由縁の一つと言えるでしょう。

また、本作では服飾にまつわるさまざまな知識が盛り込まれており、なんとなく認識はしていたような用語の数々を学びつつ楽しむことができるのも面白いと思います。同時に、多少脚色されているとはいえ、パリという街の生活面にも触れられており、その環境下で日々を暮らす姿が等身大に描かれています。特にアパートでの生活は距離感が近くなりやすいこともあり、女装している朝日はいきなり危機に直面する場面もありますが、そのあたりはぜひ実際のプレイで確認していただければと思います。

私のように前作をプレイしていないという方でも十分に流れを理解できるよう、ゲームの冒頭は朝日(=遊星)が桜屋敷を出てからどのように過ごし、そしてパリに行くことになったのかの流れが丁寧に描かれます。直接的に語られるわけではありませんが、補足という意味では十分ですので、本作をプレイした上で前作に触れるのもいいかもしれません。

第36回、いかがだったでしょうか。今回は前作「つり乙」をプレイしていないことを前提として紹介していったものの、前作のセーブデータをPS Vita本体に保存している方は前作のアフターストーリーをプレイすることができます。あくまでも本作とは別の軸で描かれる、前作のヒロインたちとのその後の物語を堪能できますので、そちらもぜひ!

気がつけば年に3回しか更新できていないという事実に打ち震えつつ、今年はこれで最後になります。来年もギャルゲー界隈を盛り上げるための一助になれればと思いますので、引き続きご愛顧のほどよろしくお願いいたします。

乙女理論とその周辺 -Bon Voyage-

dramatic create

PSVitaダウンロード

  • 発売日:2016年11月24日
  • 15歳以上対象
  • PS Store ダウンロード版

※メーカー発表情報を基に掲載しています。掲載画像には、開発中のものが含まれている場合があります。

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