セガゲームスが2017年1月19日に発売するPS4/PS Vita用ソフト「蒼き革命のヴァルキュリア」。バトルだけに留まらない、本作の魅力が垣間見えたゲーム序盤のプレイインプレッションをお届けしよう。
「戦場のヴァルキュリア」に連なるヴァルキュリア プロジェクトの新たな展開として、いくつかのキーワードを継承しつつも、世界観を一新した物語を描く「蒼き革命のヴァルキュリア」。PS4用ソフト「戦場のヴァルキュリア リマスター」の初回特典としてプロダクトコードが封入されたバトル体験版Ver.1.0に始まり、東京ゲームショウ2016でのプレイアブル出展、その後配信されたバトル体験版Ver.2.0、そして年末に配信された序章体験版を経て、いよいよ発売を迎えることとなった。
今回は、一足早く製品版相当のROM(PS4版)を用いて、体験版でプレイできた序章の少し先までをプレイ。その時点で感じることのできた本作の魅力について、過去の体験版もプレイしてきた筆者の目線で紹介していこうと思う。
語り部のリシェールによって紡がれる物語
プレイを始めてまず筆者の耳にすっと入ってきたのが、歴史の真実を知るという立場から、本作の語り部を担うリシェールの言葉だ。落ち着いた口調でありつつも、耳に残るその声が物語にも重厚感を与え、これから描かれる五人の大罪人の行く末を否応にも意識させられる。リシェールのボイスを担当する池田昌子さんによる語りは圧巻なので、ぜひ注目してもらえればと思う。
そうして描かれる本作の物語だが、序章に関しては、後に「五人の大罪人」として謗られるアムレートら5人の若者、ルーシ帝国ら列強4国の経済封鎖によって困窮にあえぐユトランド王国の姫であるオフィーリア、そして敵対するルーシ帝国で皇帝として君臨するクローディアスと彼に付き従う帝国四将などへとシーンが切り替わり、多角的に物語を紡いでいく。
こういったストーリー面での特徴は、これまでのバトル中心だった体験版ではなかなか確認できなかった要素だ。RPGをプレイする上で、プレイヤーが興味を持つ要素のひとつとしてストーリーは欠かせないが、本作の序盤のストーリーからは、大人でも楽しめるドラマ性が垣間見えた。
また、ストーリーはリシェールの口から語られるメインのストーリーのほか、断章と呼ばれるサブエピソードも見ることができる。ゲーム内でプレイヤーが操作するキャラクターは、基本的にはアムレートならびに「ヴァナルガンド」の隊員だが、ほかの4人の大罪人など幅広いキャラクターたちの側面を確認することで、物語に深みが見えてくるはずだ。
ミッションに臨むまでのゲームサイクルも確認
ストーリーを進めていく上でのゲームサイクルはいくつかの要素で構成されている。敵部隊と交戦するミッションはもちろんだが、プレイヤーの立場としてはそこに至るまでにいくつかの準備が必要となる。そのために用意されているのが、アムレートたちにとっての拠点となるユトランド王国の首都、エルシノアだ。
エルシノアでは、ミッション中に使用するアイテムを購入したり、素材を用意して防具の作成依頼を出すなど、ミッションをクリアする上で役に立つさまざまな行動をとることができる。また街の様子はミッションの結果によって変化していき、その状況に応じてアイテムの価格や品揃えに反映されるため、街中の人々の会話などにも注目しておくといいだろう。
そのほか、街中では“コミュニティ”と呼ばれるヴァナルガンドの隊員同士の会話も楽しむことができる。先程触れた断章とはまた違う、等身大のキャラクター同士の会話を通して、愛着の湧くキャラクターも出てくることだろう。
もちろん、ただ会話を楽しむだけでなく、コミュニティでの会話の結果として、“マニフェスト”と呼ばれるキャラクターごとの行動指針を獲得できる。これはバトル時におけるキャラクターの思考・判断の基本形となり、キャラクター固有のポテンシャルとは異なる、キャラクターのカスタマイズへと繋がる。
また、大罪人のひとりであるバジルの経営する咒工場では、バトルパレットに咒術などを設定したり、入手したラグナイトを用いてキャラクターの専用咒構武器の強化やカスタマイズを行ったり、銃やグレネードなどのサイドアームの開発などが可能となっている。これらの要素でキャラクターを強化し、さらなるミッションへと挑んでいく。
バトルシステムは遊びやすさと緊張感のバランスに注目
バトルシステムに関する基本的な説明は過去の記事で紹介しているのでここでは割愛するが、実際にゲーム冒頭からプレイしてみて感じたポイントとして2点について触れておきたい。
まずは過去の体験版を通じて気になっていたのがゲームの難易度。バトル体験版Ver.2.0でプレイしたミッションは、一瞬の気の緩みが一気に部隊の瓦解に繋がりそうなバランスで、慣れない内からこのレベルは難しいと感じていた。逆に序章体験版でプレイしたチュートリアルミッションはやり応えという意味で少し味気なく、RPGでの大軍戦を実現すると謳う「LeGION(レギオン)」の魅力を味わうほどには至らなかった。
だが、1章のストーリーとミッションを進めていく中で、その章の途中に待ち受けるマクシムとの対決を通して、その印象は変わった。ヴァナルガンドを苦しめる強敵というその触れ込みの通り、部隊を圧倒するスピード感、そして攻撃のバリエーションに多少なりとも苦しめられた。
ちょうどプレイに慣れてきたこのタイミングでこういった敵との戦いを用意するあたりに、プレイヤーのプレイ感覚に合わせた調整がなされているように感じた。またプレイヤーサイドとしても、バトルパレットを用いることで不利になる前に状況を整理し、その上で最適な行動を行うことができるため、アクションに不慣れな人から戦術的に楽しみたい人まで、幅広い層にリーチしている。
先ほど触れたマクシム戦は1人の敵に対するシチュエーションではあったが、複雑な地形や地雷など障害物の存在、そしてルーシ帝国が用いる咒機の数々と、ゲームを進めていくうちにプレイヤースキルと並行して増していくであろうやり応えにも注目したい。
また、ミッションにおける大きなポイントとして挙げられるのは、ゲーム中に瀕死状態になったキャラクターを助けられなかった場合、そのキャラクターは「消失(ロスト)」するということ(アムレートなど一部のキャラクターは除く)。これは「戦場のヴァルキュリア」でも見られた要素ではあるが、本作は部隊員それぞれに固有の兵科が設定されており、一人の役割が大きいため、そのリスクはより高くなっていると言えるだろう。
そして何より、愛着のあるキャラクターが死んでしまうことになったらと思うと、当然ながらバトル中の緊張感も増してくる。システムとして用意されている感情による戦局の変化も含め、ミッション中は状況に応じた判断を求められるからこそ、常にリスクが伴う戦場ならではの駆け引きを存分に味わうことができる。
すべての要素が組み合わさることで、ひとつの作品に
冒頭にお伝えした通り、筆者もまだ序盤をプレイしただけにはなるが、その中でも国家間の争いの中で個人の私怨を上手く織り交ぜたストーリー、シンプルかつ深みを感じさせるバトルシステム、“GOUACHE(ガッシュ)”と呼ばれる絵画調の表現が生み出す独特のグラフィック、そして作品が持つ世界を表現する音楽の数々と、「蒼き革命のヴァルキュリア」が持つ要素の一つ一つを繋ぎこんで理解することができた。ゲームという枠に留まらないひとつの作品として、アムレートらのたどり着いた結末をぜひ見届けられればと思う。