2019年2月28日にスクウェア・エニックスよりリリース予定のPS4/PC(Steam)用ソフト「LEFT ALIVE」。その発売を目前に迎え、ディレクターを務める鍋島俊文氏へのインタビューを実施した。
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まもなく発売を迎えるPS4/PC(Steam)用ソフト「LEFT ALIVE」。かつてフロム・ソフトウェアに在籍し、「アーマード・コア」シリーズを手がけてきた鍋島俊文氏がディレクター、「メタルギア ソリッド」シリーズでお馴染みの新川洋司氏がキャラクターデザイン、「アーマード・コア」を始め、数多くのロボットデザインを担当した柳瀬敬之氏など、豪華なスタッフ陣によって作られたタイトルで、その世界観はプロデューサーの橋本真司氏が手がけてきた「フロントミッション」シリーズのものを踏襲している。
すでにGamerでは本作のプレイレポートも掲載しているが、今回のインタビューでは、その際に気になったゲームの細かい仕様から開発の経緯、さらに鍋島氏が考えるヴァンツァーの魅力まで、多岐に渡るお話を聞くことができた。その模様をお届けしていく。
サバイバルアクションというジャンルを選んだ理由
――まもなく発売を迎える、現在の心境を教えてください。
鍋島氏:フロントミッションというお題はありましたが、これまでに自分が制作したことのないタイプのゲームですし、自分自身も新しい環境になって発売する最初のタイトルになります。まずは形になってよかったなと安心しているのが正直な心境です。思ったより時間も掛かってしまいましたしね。
――開発の期間としては、だいたいどのくらいに?
鍋島氏:(スクウェア・エニックスに)今年で入社5年目になるんですけど、入社した時から橋本と、フロントミッションで何か作りたいという話はしていて。その後に別のことをやっていた期間も挟まるのですが、企画を始めてからだと約3年くらいは掛かっていますね。
――そもそも、本作が作られることになった経緯は何だったのでしょうか?
鍋島氏:まず橋本から「フロントミッションをもう一度やりたい」という話を受けたのが始まりです。そこから企画を考え始めたのですが、どういうゲームにするにしろまずヴァンツァーは出てくるだろうと。なので先にヴァンツァーのデザインを始めて、これまでのラインとは違うヴァンツァーとして、前の職場から親交のあった柳瀬さんにお願いをしました。
その後にゲームの骨格が固まり、メカよりも人物の方に重点を置くことが決まったのですが、次はキャラクターデザインをどうしようと。その時ちょうど新川さんが、小島秀夫さんたちと一緒に独立されるというタイミングが重なったのもあり、お願いすることができました。元々、スクウェア・エニックスはメタルギアシリーズのフィギュアを作ったりもしていたので、新川さんとはご縁がありましたから。
――現在のサバイバルアクションというジャンルは、どの段階で決まったのでしょうか?
鍋島氏:元々「フロントミッション」シリーズはシミュレーションRPGですから、当然その方向性も考えていたのですが、自分はこれまでアクション主体でゲームを作ってきたので、シミュレーションRPGに対するノウハウがなかったんですね。橋本とも相談して、シリーズのリブートという意味合いも兼ねて、好きなように作っていいと任されたので、それならいっそアクションに寄せてみようという結論に至りました。
ただ、キャラもロボットも作りこむというのは開発規模的に厳しく、かといって僕がロボットを主体にしてしまうと、キャラを置き去りにしてしまうんじゃないかという懸念がありまして……(笑)。
――ロボットへの愛が強すぎると(笑)。
鍋島氏:自分としても新しいチャレンジがしたかったというのもありましたし、フロントミッションらしさとは何かと考えた時、世界観や人間ドラマというのがきちんと作られているというのが大きな魅力の一つだと思ったんですね。もちろん、そこにはメカも出てきて、という前提にはなるのですが、今回は人物の方に寄せてみようと。
あとは、フロントミッションというよりは、戦争モノのゲームを作るという考え方をしていました。戦争にはいろいろな側面がありますが、その中で人間ドラマとの相性を考えると、今回は厳しさや苦しさといった面を取り上げてみようと。その経過の中で、サバイバルアクションという現在の方向性が固まってきた形になります。
――発売前に自分もプレイさせていただいたのですが、かなり歯ごたえのある、難しいゲームだと感じました。最初からある程度難しいゲームにしようと考えていたのでしょうか?
鍋島氏:そこは自分の悪い癖で、純粋にプレイヤーの方への優しさが足りないというか……(笑)。ただ、ちょっと厳しめにしようという意図は確かにありました。
例えば最初のチャプター1なんかは、「なるべく早めに一回死んでもらおう」という意図で作られたステージになっています。何気なく曲がり角を曲がると敵に遭遇して、あっという間に殺されてしまうこともある。「君は今、それくらい厳しい場所にいるよ」ということが伝わるような作りになっていた方が、本作のコンセプトには合っているのかなと。
――本作の題材を考えると、爽快感とは程遠い内容になるのには納得がいきます。
鍋島氏:これまで自分が手がけてきた作品に関しては、作ってみたら結果的に難しくなっていたということが多かったのですが、本作は意図的にある程度難しくしています。とくにFPSとか、シューター系のゲームをプレイする時の感覚ではまずクリアは厳しいと思いますね。
というのも、そのプレイスタイルでクリアできてしまうと、ただのちょっと変わったシューターとして捉えられてしまいそうだなと。本作は、シューターとはまた違ったジャンルのゲームであるということが伝わる作りにしたかったんです。この点は、初期の段階から開発スタッフにも伝えていました。
――これまでとはかなり路線の異なる本作ですが、「フロントミッション」シリーズの一作として考えても大丈夫なのでしょうか?
鍋島氏:はい、そうなります。「フロントミッション」の名前がついてないことに関しては、当然いろいろな議論があって、「フロントミッション○○」といったようなタイトル案も出てはいたんです。
ただ、自分に新川さんや柳瀬さんといった、今まで「フロントミッション」シリーズに関わっていなかった人間がメインになって、これまでと違うジャンルを作るわけですから、まったく新しいゲームとして作った方がいいものができるのではという考えに至りました。
――舞台設定やキャラクターも、本作のために新たに作られたものになっていますね。
鍋島氏:ええ。これまでのシリーズに登場したキャラクターが出たりといったことはありませんし、ストーリーにも直接的な繋がりはないので、過去作をプレイしていなくとも楽しんでいただけるようになっています。
ただ、シリーズの一作として、「フロントミッション」の歴史の中のこの部分に入るという設定や、バックボーン的な繋がりというのは決まっていて、シリーズを通しての連続性はきちんと保っています。
ゲーム中には、世界観の背景設定などをより詳しく知ることができる「データベース」が登場するのですが、過去作を遊んでいただいている方が読むと、シリーズ同士の繋がりというのが分かるような作りになっています。
「選択」と「自由」に込められた鍋島氏のこだわり
――本作を作るうえで、とくに苦労したというポイントはどこでしょうか?
鍋島氏:これは新規タイトルを作る時に共通することだと思うのですが、開発メンバーにこのゲームがどういうものかを理解してもらうのって、意外と難しいんです。企画を考えている自分自身も含めて、手探りの状態から試行錯誤して形を作っていくので。
いわゆる続編ものの場合は、それはそれで違った難しさはあるのですが、基本の骨格はあるので、どういうゲームかというのはすぐに伝わりますし、ある程度の面白さというのが保証されているんですよね。新規のタイトルにはそれが一切ないので、その部分はやはり苦労しました。
これは本作の話ではないのですが、スタッフによっては、ほぼゲームができた開発終盤になってから、自分が始めてどういうゲームを作っていたかが分かるということも珍しくないですから(笑)。
――とくにこだわったという部分はありますか?
鍋島氏:一番は、サバイバル感というのをどう表現するかということですね。サバイバルをテーマにしたゲームというのは他にもたくさんありますが、その中で本作独自の要素をどう表現するか。
もう一つ大事にしていたのは、「選択のゲーム」だということでしょうか。敵と戦っても戦わなくてもいい、オープンワールドほどの規模ではないですが、ある程度自分で進行ルートを選ぶことのできる自由度、物語の中でも選択肢があって、ストーリーに変化が起きる。
これは個人的な好みで、「アーマード・コア」もそうなんですが、ゲームの中の遊びと世界観に一体感がある方が好きなんですね。よく操作が難しいと言われましたが(笑)、あれは操作を難しくするのが目的ではなく、簡略化することで思った動きができなくなるのが嫌だったんです。それならある程度複雑になっても、最終的にいろいろな動きができるようになった方が自由で面白いだろうと。
この自由というのは大事な部分で、プレイヤーに明確なプロフィールがなく、傭兵という形になっているのも、その世界の中でプレイヤーの思うままに生きて欲しいという話に繋がっています。本作と「アーマード・コア」はテーマこそまったく違いますが、そうした自由さというのは変わらず大事にしたかった部分ですね。
――サバイバルを題材としたゲームだと、よく空腹やスタミナゲージが存在したりもしますが、本作ではそれは考えなかったのでしょうか?
鍋島氏:あまり複雑にしすぎるのもよくないですから。実は開発の初期段階では、食料だったり、寒い地域が舞台なので体温を保つみたいな要素を考えたりもしたのですが、ゲームを整理していく段階でなくしました。その分、本作の物語は、ゲーム内では一日の間に起きた出来事として設定しています。これが一ヶ月くらいの期間だったら、当然お腹が空かないとおかしいと思いますが、一日であれば無理はないだろうと。
――さきほどの話の中に、最初の頃はシミュレーションRPGとしての制作も考えたとの話がありましたが、やはり今の時代にシミュレーションRPGを作るというのは難しいというのが実情なのでしょうか。
鍋島氏:そうですね……先ほどお話ししたように、僕自身にノウハウがないというのももちろんなのですが、シリーズの昔のままのスタイルが今のプレイヤーに受け入れられるかというと、難しいのではないかという考えは、正直なところあります。
これはもしもの話ですが、今後「フロントミッション」でシミュレーションRPGを作るとしたら、何か作戦を考えないといけないなと。個人的にはシリーズの中で、「フロントミッション オルタナティヴ」が好きで、あれは今で言うRTS的な要素を盛り込んでいたんですね。ああしたスタイルであれば、もしチャンスをいただけるならやってみたいという思いはあります。
――僕自身、シミュレーションRPGが好きで今でも遊ぶのですが、ゲームハードの進化の恩恵というのをあまり受けられないジャンルだという認識があります。よくも悪くも、昔から変わっていないというか。
鍋島氏:すでにジャンルとして完成されすぎているんですよね。あとはビジュアル的な部分もおとなしくなってしまいがちなのもあって、現代の目の肥えたユーザーさんにアピールするには、何か違うアプローチの仕方を見つけないといけないだろうなと。
もちろん、従来のシリーズファンに向けた作品作りをするのも選択肢なのですが、ビジネス的な観点からは、何かしら新規ファンにもアピールできる要素は必要になってくると思います。
攻略のカギはガジェットにあり
――本作は難度の高いゲームではありますが、どのような部分に重点を置いて難易度の調整を行っていったのでしょうか?
鍋島氏:ゲームの中のキャラクターの振る舞いとして、不自然なことをさせたくないという考えがあるんです。とくに本作は、自分よりも圧倒的に強い敵軍の真っ只中から生き延びるというゲームなので、簡単に突破されたらおかしいですよね。「もしこういうことをされたら、人間ならこう振舞うよね。その反応はおかしい」という話し合いは、よくAIの担当者としていました。そうしたシビアな世界ではあるのですが、あくまで本作はエンターテインメントでもあるので、そこをどう楽しんでもらえるように落とし込むかというのは工夫した部分です。
ある程度ゲームができた段階で社内の人間にテストプレイもしてもらったのですが、人によってプレイスタイルがまったく違っていたんですね。石橋を叩くように、索敵センサーを使って慎重に進む人もいれば、金属パイプでガンガン殴り倒して進む人もいて(笑)。二人が並んで話していると、ゲームに対する認識がまったく違う。テストプレイの段階でもそうした傾向が見られたので、目指すべき方向性としては間違っていなかったかなという手応えはありました。
――これまでにも出てきた、攻略の自由度という部分にもつながってくる話ですね。
鍋島氏:あとは一つ一つのガジェットの調整ですね。突出して弱かったり、逆に強すぎたものを潰していったり。実は最初の段階では、爆発缶がちょっと便利すぎたりしてました。投げるとすぐ爆発する上に威力も高かったので、これじゃフラググレネードがいらないなと(笑)。目指している部分として、それさえ持っていればどうにかなるというものがあってはいけなかったので、ガジェットの調整は一番時間を掛かけた部分かもしれません。
――個人的には、煙幕系のガジェットが使いやすかったです。相手の視界を遮ったところを、ローリングで強引に突破したりしていました。
鍋島氏:なるほど、だいたいどういうプレイングをされていたか分かりました(笑)。これは結構面白い話で、いろいろなメディアさんから取材を受けて原稿に目を通すのですが、そこに書かれているオススメのガジェットが見事にバラバラなんです(笑)。これは目指していたところでもあったので、うまくいったのかなと思います。
――ちなみに、鍋島さん個人としてはオススメのガジェットはありますか?プレイヤーの中にはどうしてもクリアできずに詰まってしまう人もいると思うので、その際のヒントになればと。
鍋島氏:僕が一番手堅いと思っているのは火炎瓶ですね。当てやすく、ダメージもそれなりに入りますし、空き缶と組み合わせて複数を一気に巻き込んだり、追撃してトドメを刺すもよし、火で怯んでいる間に逃げるもよしと、いろいろと応用も利きます。
あとはリモート爆発缶もオススメです。空き缶と爆発缶、リモコンの性能がミックスされていて、投げた先で音が鳴って敵が集まってくるので、敵がまとまった瞬間に起爆したりできるので、使いやすいです。
――どのゲームメディアも本作に対して難しいゲームだという評価をしていたのですが、我々のプレイ環境は、他のプレイヤーからの情報提供が一切ないという意味でかなり特殊なんですよね。ゲームが発売されると、当然プレイヤー同士で情報交換も行われると思うので、前評判に対して意外とあっけなくクリアできたという人も大勢出てくるのではないかと。
鍋島氏:それはその通りだと思います。テストプレイを見ていても、ある人が何度やってもクリアできないポイントを、別のプレイヤーはあっさり通過できているというケースがよく起こっていましたから。……というのも、その苦労しなかったプレイヤーは、そもそもその場所に行っていないからなんですね。なのでどうしても抜けられない場所があるという時は、やり方を変えてみるとか、少し道を戻ってもらって、別の道を探してもらうというのも良いのではないかなと思います。
個人的なオススメは、友達に見てもらいながらプレイすることです。マルチプレイとかには対応していないのですが、ウチの会社の中でやっていても、プレイしている人を後ろで見ているとめちゃくちゃ盛り上がるんです(笑)。
どうするか散々悩んだ結果、結局金属パイプで殴りにいったり、あらぬ方向にグレネードを投げたりといった失敗にツッコミを入れたり。いわゆる実況プレイみたいなスタイルにも向いたゲームだと思います。どっちのルートに行くかを投票で決めるプレイとかも見てみたいですね(笑)。
ゲームの細かい仕様についても直撃
――プレイしていて少し気になったのですが、本作の敵兵士たちはプレイヤーを発見した時、仲間を呼ぶようになっているのでしょうか?
鍋島氏:ドローンとか、必ず仲間を呼ぶタイプの敵もいますが、人間型の兵士に関しては小隊のようなものが設定されていて、そのグループ内で情報を共有して、行動するようになっています。基本そういうことはないように作っていますが、もし近くにいる者同士でも、グループが違えば応援に駆けつけないといったことも一応起こり得るような仕組みではありますね。逆に誰かに見つかると、マップ全域の敵全員がプレイヤーを探し始めるといったことはないです。
――圧倒的な戦闘力をもつヴァンツァーですが、人間のままで倒すことは可能なのでしょうか?
鍋島氏:決して簡単ではないのですが、撃破することは可能です。ゲームが進むとミサイルランチャーのような強力な武器も使えるシチュエーションがあるので、それを使用してヴァンツァーを撃破するというミッションもありますから。
基本的にはそういう特殊な武装がないと無理なのですが、強化EMPで動きを止めたり、いくつか絡め手での対策というのもあります。あと、これは完全にネタで、トロフィーの条件にもなっているんですが、一応金属パイプでもダメージは入るようになっていて、他の武器でギリギリまでダメージを与えたところにパイプでトドメを刺して破壊することもできます(笑)。
――マップを頼りに進んでいくと、道が塞がっていて先に進めないということが結構あったのですが、これは意図されたことなのでしょうか?
鍋島氏:それは意図したものですね。一度いったところはきちんと行き止まりとして表示されるようになるのですが、行ったことのない場所に関しては、マップだけでは通れるのかは分からないようになっています。行ってみたら無駄足だった……ということもたまに起こってしまうのですが、マップ画面だけでルートを判別できてしまうと、プレイヤーが通るルートが限定されてしまいそうだなと。
あとは余裕があれば、探索を楽しんで欲しいという思いもあります。違う方に行ったら敵が少ないルートを見つけたり、思わぬ発見があったりもするので。そのために、マップではあまり情報を出しすぎないようにしています。
――その探索の話とも繋がりますが、チャプター内では時折サブクエストが発生することもありますが、本作のサブクエストは報酬をもらえないことが珍しくないのがかなり新鮮でした。
鍋島氏:その部分については、プランナーから「何かしらの報酬をもらえるようにしたい」と言われたりもしたのですが、僕のこだわりとして現在の形にさせていただきました。「メリットは何もないかもしれないけど、それでもリスクを負って助けるか?」というエモーショナルな要素に寄せたかったんです。
あとは、助けることでアイテムをもらえるようにした場合、それを前提にしてゲームバランスを調整することになるので、結果的にそのプレイを強制するゲームになってしまう。誰も助けないプレイヤーが不利になるというのは、本作の目指すべき形と違いますし、平均して何人くらい助けるのかという基準も測りにくかったというのも理由の一つです。
助けなくてもいいということを分かってもらうために、助けるのがむちゃくちゃ難しいNPCを序盤から意図的に配置したりもしています。
――確かに、自分はサブクエスト的なものはすべて埋めないと気がすまないタイプなのですが、本作に関しては助けるのを断念して先に進むこともありました。
鍋島氏:実は僕もまったく同じタイプでして(笑)。ゲーマーの中には、リスト的なものがあるとすべて埋めないと気がすまない人が一定の割合いることは理解していて、その葛藤を楽しんで欲しかったんです。テストプレイヤーの中には、「何ももらえないんだったらいいや」と、完全に無視して進む人もいましたが(笑)。
ただ、大勢の人間を助けることは、より良いエンディングを迎えるための条件にもなっているので、是非チャレンジしていただければ。
鍋島氏から見た、ヴァンツァーの魅力
――メカデザインを担当された柳瀬さんとは、どのようなやりとりがあったのでしょうか?
鍋島氏:もう10年以上前になりますが、柳瀬さんもフロム・ソフトウェアに在籍していた時期があって、同じタイトルに関わったりもしていました。彼の退職後も活躍は拝見していて、今や日本を代表するメカデザイナーの一人ですよね。なのでずっと前から一緒に仕事をしたいと思っていて、今回の企画が立ち上がった時に、居酒屋で「相談したいことがある」と切り出して、ヴァンツァーのデザインをお願いしました。
当時からそれほど変わってなくて、相変わらず話しやすかったですし、最初は「今までのヴァンツァーとは違うデザインラインだけど、ヴァンツァーではあって欲しい」というかなりふわっとしたオーダーだったにも関わらず、しっかりとした仕事をしていただけました。
――それで上がってきたデザインで、すんなりと決まったのでしょうか?
鍋島氏:いや、簡単には決まらず、何度も修正対応をしてもらいましたね。これはあとで柳瀬さん本人が言っていたことなのですが、「最初のデザインは自分の色が出すぎていて、全然ヴァンツァーじゃなかったな」と。
ただ、デザインの作業って概ねそういうものだと表っていて、お題を提示している僕自身ですら、最初の段階では明確な答えはもっていないんですね。柳瀬さんから上がってきたデザインを見て、「この部分は良い、この部分は違う」といったやりとりを何度も行っていく内に、答えを一緒に作っていくような作業でした。一度基本的なラインが定まったら、あとはスムーズでしたね。
――これまで、外側から「フロントミッション」シリーズを見て来られたと思うのですが、そんな鍋島さんから見た、ヴァンツァーの魅力とはどこでしょうか?
鍋島氏:この質問って結構難しいんですよ。というのも、「アーマード・コア」もそうなんですけど、カスタマイズでデザインが変わるので、全体としての特徴ってあるようであまりない。個々のパーツの個性が強すぎると、組み合わせられなくなってしまうんです。
その前提の上で話すなら、ヴァンツァーの特徴的な部分としては、とにかく機械らしさに溢れてますよね。現在はいろいろなロボットの表現がありますが、その中でも比較的ヒロイックさが薄くて、重機……と言うと少し言い過ぎかもしれませんが、その延長線上のような魅力があります。
――すごく良く分かります。泥臭さに溢れているというか。
鍋島氏:頭身のバランスやディティールには、一昔前の兵器っぽさがありますね。現代の兵器はステルス性が重視される関係で表面がツルっとしていて、機械っぽさがあまりなくなってきているのですが、初代のフロントミッションでヴァンツァーがデザインされた90年代の半ばくらいの兵器のラインを残しているのも特徴なのかなと。
あとは肩幅と足幅と高さがだいたい同じで、全体のフォルムが正方形をしているんですよね。重心を下げて重量感を演出するために、おそらく意図的にそうしたデザインになっているんだと思います。
――発売後の施策として、何か予定しているものはありますか?
鍋島氏:お遊び的な内容になりますが、「World of Tanks」とのコラボレーション等を予定しています。楽しみにしていただければと。
――最後に、本作をプレイされる読者に向けてメッセージをお願いします。
鍋島氏:本作は、ちょっと変わったタイプのアクションゲームになっています。なるべくいろいろな遊び方ができるように作ったので、自分なりのスタイルを見つけてもらえれば楽しめるのではないかと思います。
あとは一度クリアしたら、他のプレイヤーのプレイを見ているのも面白いと思います。とくに慣れていないプレイヤーの動きを見ているとヒヤヒヤして、ついアドバイスしたくなってくるのではないかとと思います(笑)。
――発売後に、いろいろなプレイを見られるのを楽しみにしています。ありがとうございました。